魔法少女まどか☆マギカ ラタトスクの騎士   作:如月ユウ

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52話 勇気は人を成長させる

「みなさんにご迷惑をお掛けしました。本当にごめんなさい」

 

決闘が終わると織莉子は謝罪をした。

 

「さやかさん、織莉子さんに謝ってください」

 

「その…美国先輩ごめんなさい。あたしあのとき頭に血がのぼって…」

 

「次はマミさん」

 

「美樹さん、本当にごめんなさい…エミル君が傷付いたから…」

 

「ほむらさん」

 

「呉キリカ、学校の屋上のときのことで謝罪するわ」

 

「これでもう手打ちですね」

 

エミルは満足そうに頷いた。

 

「エミル、決闘するって言ったけど深い意味はあったの?」

 

「いや、ないけど?」

 

「ないならなんで提案したのよ!」

 

提案しといて無意味なことだと言ったエミルにほむらがカッとなって掴みかかろうとする。

 

「強いて言うなら戦っておお互いの気持ちを理解するってことかな」

 

「あ~河原で喧嘩して仲よくなるってやつね」

 

さやかの例えでみんなが納得する。

 

「争っても意味はない。それをわかってほしかったから決闘という形にした。無駄に争うより協力したほうが良いって理解してほしかったんだ」

 

「そうね…無駄に争うよりかは良いわね」

 

エミルの言葉に冷静になったほむらを確認すると彼女と織莉子に質問する。

 

「織莉子さん、まどかさんを殺そうと思っていますか?」

 

「いえ、あの子を殺そうと思う気持ちはもうないわ」

 

「ほむらさん、織莉子さんとキリカさんを殺そうと思っていますか?」

 

「私も二人を殺そうとはもう思わないわ」

 

彼女達の口から殺さないと言ってくれた。

それを聞いて安心する。

 

「自己紹介していなかったわね。私は美国織莉子。これからよろしくね」

 

「暁美ほむらよ。こちらこそ」

 

お互いに手を握り合う。

 

「実はというとあの子…まどかが言ったあの言葉で少し迷ったの」

 

「まどかが言った言葉?」

 

「自分を殺そうとしているなら構わない。勇気を持って決めたのなら私は何も言わないと、私にはとても言えないわ。自分を殺しても良いなんて」

 

「それが普通なのよ。誰しも死にたくないものよ」

 

「あの子はとても強いわ。魔法少女にならなくてもきっとみんなの力になる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織莉子の豪邸

中庭

まどか殺害を諦めた織莉子は改めてエミル達と友達になり、まどかを危険な目に遭わせたそのお詫びとして彼女の中庭にあるバラ園でお茶会をすることになった。

 

「(本当に和解が出来るなんてね)」

 

これは現実なのかと疑ってしまうほど事が進んでいた。

これでほむらを邪魔する者はいなくなった。

 

「(これで障害になるものはいなくなった…これでワルプルギスの夜の対策。私の目的を話すことが出来る)」

 

もう他のことを気にすることは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのキリカさん、そんなにくっついてますと」

 

「私とエミル君の仲だから気にしないの」

 

いや、気にすることはあった。

和解したとはいえ織莉子とキリカはエミルを狙っていることは間違いなかった。

 

「呉キリカ、エミルが迷惑してるから離れなさい」

 

「エミル君ベタベタする女の子はいや?」

 

上目遣いをして首をかしげて見つめる。

 

「えっとその…」

 

「いや?」

 

さらに潤んだ目で追い討ちをかける。

 

「いや…ではありません」

 

「ほら、エミル君は問題ないって言ってるから泥棒猫はあっちいってな」

 

「私のほうがエミルと長く一緒にいるわ。後からきたあなたが泥棒猫だと私は思うけど?」

 

ほむらの言葉にカチンときたらしくキリカは反論する。

 

「だとしてもエミル君に触れている時間は私のほうが長い」

 

「なぜそう言えるのかしら?」

 

「織莉子の家でエミル君と泊まったことがあるからね。それとエミル君と一緒に寝た」

 

「私はエミルの家に泊まったことあるわ。寝るときは『二人っきり』で寝たけど」

 

二人っきりという言葉を強調した。

 

「な、なら私はエミル君と一緒にお風呂はいったんだから!」

 

「本当なのエミル?」

 

肌に突き刺さるような鋭い目付きで睨んでいる。

 

「えっと…その…僕がはいっているときに織莉子さんとキリカさんがはいってきて…」

 

「はいったのね」

 

「はい…」

 

誤魔化さず正直に答える。

 

「どうだ、泥棒猫はエミル君と一緒にはいってないだろ?」

 

「はいってないわ」

 

「そうかそうか、それなら私の勝ちだね」

 

愉悦に浸るがすぐさまほむらの反撃が始まる。

 

「けど私はエミルが作ったご飯を食べたわ」

 

「えっ、なにそれずるい!」

 

「エミルが作ったご飯はとても美味しいわ。心まで満たしてくれる」

 

「ぐぬぬ…」

 

ほむらの嬉しそうな顔がキリカをイライラさせた。

 

「仕方ない…ずっと隠しておくつもりだったけどここまで言われたら出さずにはいられない」

 

スマホを取り出すと

 

「エミルの写真だぁぁぁ!」

 

エミルが驚いた顔の写真を待ち受けにしていており、ほむらに見せつけた。

 

「これは誰も持ってないから今度こそ私の勝ちだね」

 

無言でスマホを取り出したほむらはエミルに向けるとカメラのシャッター音が聞こえた。

 

「これでおあいこね」

 

「ぬがぁぁぁぁ!」

 

イライラが爆発したのか頭をかきむしる。

こんなことなら隠しておけば良かったと思ったがいまさら遅い。

 

それに

 

「あ、あたしもエミルが作ったご飯食べたし…ねぇ、まどか」

 

「えっ、あ…うん。私もエミル君の家で食べたよ」

 

まどかを巻き込んでさやかが参加してきた。

 

「それにマミさんの家で一緒に泊まって一緒のベットで寝たこともあるから」

 

「そうだったわね。あと私もエミル君の家に泊まったことがあるわ。エミル君が作ったご飯を食べて、お風呂も一緒にはいって、エミル君のベットで二人っきりで寝たの」

 

マミの家のことを話すと彼女まで乱入してきた。

 

「あたしはエミルとは一緒に寝てないけど泊まったことがあるからアリなのか?」

 

「アリなんじゃない?」

 

「うがぁぁぁぁ!」

 

杏子も参加してキリカは二度目の発狂をする。

それからエミルに何をしてもらったか口論になっていく。

 

「頭が痛くなってきた…」

 

「よしよしなのです」

 

エミルが作ったご飯とお泊まりをしていないなぎさだけが唯一の癒しだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからしばらくしてエミルにしてもらったことについての口論が終わったが

 

「なんか…かなり話したね」

 

「泥棒猫もそう思うのかい?私も同じ意見だよ…」

 

「ちょっと疲れた…」

 

「大丈夫さやかちゃん?」

 

「ここまで話したのは久し振りね…」

 

「マミもそう感じているのね…私もよ」

 

全員が息を切らしていた。

 

「とりあえず軽く休憩しようじゃないか」

 

最初に脱落した杏子がポットを持って全員分のカップに紅茶を淹れる。

 

「もう僕のことの話は終わりにしましょう。そろそろ…あのことについて話さないと」

「あのこと?」

 

「ほむらさん、もうみんなに言ったほうが良いかと思います」

 

視線がほむらに集まる。

 

「でも…」

 

何か言おうとしても口が震えて恐怖に青ざめ手が震える。

不安におしつぶされて心臓病が再発するんじゃないのか。

今の彼女はそれほど弱々しかった。

 

「勇気は夢を叶える魔法」

 

ほむらの手に自分の手を重ねる。

恐怖で冷えた身体はエミルの体温がじんわりとほむらの手を温かくしてくれる。

 

「不安になるのは分かります。僕も自分の正体を明かすときは不安の気持ちでいっぱいでした」

 

テネブラエと出会って本当の自分を知ったとき自分を否定するような自分が自分じゃないと感じた。

本当の自分を話してみんなが信じるのか不安にもなった。

リヒターが言ったあの言葉を思い出して本当の自分と向き合えた。

大切な仲間を守れた。

 

「僕の勇気をほむらさんにあげます。だからほむらさん…」

 

「私は…」

 

まどかを助けたい。

エミルと離れたくない。

みんなと一緒に過ごしたい。

 

もう…

 

「私は…未来から来たの」

 

時間を戻したくない。

 

「未来から…?」

 

全員がほむらの言葉に疑いを感じたが織莉子だけは黙ってほむらの言葉を聞く。

 

「私はまどかを助けるために時間を繰り返しているの…だけど何度やってもまどかを救えなかった…」

 

触れていた手に力がこもっていた。

 

「本当のことを話しても誰も信じてくれなかった。だから私は誰も頼らないって決めたの」

 

少しづつ声が大きくなる。

 

「何度も繰り返して行くうちにみんなと過ごした時間と気持ちがずれて言葉も通じなくなって私は独りになった」

 

我慢出来なくなった心の中にあるものを吐き出すように涙が溢れた。

 

「でも心の底で誰かに頼りたかった!私の気持ちを理解してほしかった!すがって辛いって言いたかった!」

 

悲痛な声と共に手が痛いほど力がこもる。

 

「私はもう時間を繰り返したくないの!みんなが死ぬ所を見たくないの!だから…私は…」

 

しゃっくりを上げてそれ以上は話せなかった。

両手を広げてほむらを優しく包む。

 

「よく頑張ったね。偉い、偉い」

 

「エミル…エミルぅ…」

 

抱き締めて服を掴んだ。

今の…いや、本来の暁美ほむらはどこにでもいる普通の少女だった。

 

「ひっぐ…ぐすっ…」

 

「大丈夫…大丈夫だよ…」

 

ほむらの頭を撫でるエミルの姿はまるで父親のような優しさが溢れていた。

 

「ほむら…そのごめん。あたし、ほむらのことを…」

 

なんであんなに他人と馴れ合うのを拒んだのか。

最初は嫌な感じだったけど本当のことを聞いていたら…ほむらもまどかのために頑張っていたんだ。

 

「良いのよ…気にしないで。さやかから見れば私は馴れ合いを拒んでいる嫌な魔法少女だから」

 

「そんなあたしは…」

 

「否定しなくていいわ。慣れているから」

 

エミルから離れて涙を拭く姿は落ち着いたのか清々しい表情だった。

 

「一ついいか?」

 

ほむらの正体を聞いて杏子は気になったことを聞く。

 

「時間を何度も繰り返してるならエミルが助けているんじゃないの?」

 

「いえ、今回がはじめてなの。エミルがいる時間軸は」

 

「時間を繰り返しているのになんでエミルがいる時間軸がはじめてなんだ?」

 

「それが分からないの。だけど私の能力が影響してエミルをこの世界に巻き込んだのは本当よ」

 

「ちょっとまって、いや…だけど…もしかしたら…」

 

エミルが指を口元に置いて何か思いあたる節があるか考えているようだ。

 

「もしかしたら僕の世界にあった武器が影響したかもしれない」

 

「エミルがいた世界の武器?」

 

「あくまで僕の推測だけどほむらさんの能力が影響したのはエターナルソードがあったからかもしれない」

 

「エターナルソード?」

 

「時空を越えることが出来る剣。英雄ミトスはその剣を使ってシルヴァラントとテセアラを二つに分けた。ロイドから聞いた話だとロイドがその剣で二つの世界を一つにもどしたんだ」

 

「ならそのロイドって人が私達の世界に来るんじゃないないの?」

 

「それはない。ロイドはエターナルソードを二つに別けて一つをロイドのお母さんの墓に置いた。だからロイドが来る可能性はない」

 

エミルは続ける。

 

「ロイドが亡くなったあとロイドのお母さんの墓に置いてあった剣が誰かに盗まれた。その剣は大きな塔に置かれてそれを入手した剣士がいたんだ。それでオリジンと契約して再びエターナルソードに戻った。魔王と呼ばれる人を倒した後はその剣を封印したんだ」

 

「それがどうエミルと関係しているの?」

 

「多分封印した場所がギンヌンガ・ガップ…異界の扉に近い場所だったかもしれない。ほむらさんの魔法がエターナルソードと干渉して僕がこの世界に飲まれた」

 

「なるほど時空を越える剣…とても興味深い話だ」

 

いつの間にかキュゥべえがいてエミルの話を聞いていた。

 

「時空を越える剣が影響してラタトスクがこの世界に来た。それなら納得だ。それにこの世界以外にも感情を持つ生き物が存在するということになる」

 

「インキュベーター、もし僕の世界を狙っているならやめたほうがいい。もう一人の僕が全ての配下を使ってインキュベーターという存在を消します。僕よりも好戦的だから見つけ次第すぐに配下を召喚する」

 

屋上で見たあのエミルの表情がもう一人のエミルだと思うと好戦的な性格だと予想できる。

ここにいるエミルとは正反対だ。

 

「無駄に減らされるのは困るからね。やめておこう」

 

「懸命な判断です」

 

「それに暁美ほむらの正体も納得だ。なぜまどかの契約の邪魔をするのか。なぜ僕達の正体を知っているのか。そして一つの仮説が証明された」

 

「仮説?」

 

全員がその仮説は何か気になった。

 

「なぜ平凡な人生を与えられたまどかにあれだけの素質があったのか。暁美ほむら、もしかしたら君の魔法の副作用が影響しているかもしれない」

 

無表情のまま説明をする。

 

「何度も繰り返し幾つもの平行世界を辿りその結果、交わるはずのない平行世界の因果線がこの世界のまどかに連結された」

 

ほむらを見つめた。

 

「君には感謝しないとね暁美ほむら、君が鹿目まどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

 

「じゃあ…私が…」

 

声が震えて息がつまりそうに顔が真っ青になる。

 

「そうさ、君がやってきたことは全て」

 

キュゥべえの身体が引き裂かれる。

 

「話はわかりました。エミル様がなぜこの世界に呼ばれたか、それさえわかれば十分です」

 

テネブラエが召喚したインプの牛刀にはキュゥべえの血肉が付着していた。

 

「やれやれまだ話は終わってないのに困るよ」

 

別のキュゥべえが出てきた。

エミルは不安で押し潰されそうなほむらの手を触れる。

 

「インキュベーター、なぜ未成年の女の子に契約を持ちかける」

 

「全ては世界の延命を伸ばすためだよ」

 

「延命を伸ばす?」

 

「ラタトスク、エントロピーという言葉を知っているかい?」

 

「いや…」

 

エミルは首をふった。

 

「簡単にいえば育てる労力と使うエネルギーにロスが生じる。そういうことですね?」

 

テネブラエが説明してくれた。

 

「そう、エネルギーは形を変換する毎にロスが生じる。宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方なんだ。僕達は熱力学の法則に縛られないエネルギーを探し求めた」

 

「それと魔法少女とどんな関係があるんですか?」

 

「魔法少女が絶望してグリーフシードになる瞬間、膨大なエネルギーを発生させる。そのエネルギーを回収するのが僕達の役割さ」

 

「そのエネルギーは何に使うんですか?」

 

「僕達の文明は感情をエネルギーに変換するテクノロジーを開発した。けど僕達は感情というものがない。だから魔法少女が絶望した瞬間に発生する膨大なエネルギーを使っている」

 

「ほむらちゃん達はあなたの道具だと言うの!」

 

まどかが怒りを見せ付けてキュゥべえを睨む。

 

「この宇宙にどれだけの文明がひしめき合い、一瞬ごとにどれ程のエネルギーを消耗しているのか分かるかい?君たち人類だっていずれはこの星を離れて僕たちの仲間入りをするだろう。その時になって枯れ果てた宇宙を引き渡されても困るよね?」

 

まどか達には理解出来なかったがエミルだけはキュゥべえの言葉に一理あった。

住めない星を提供されても生き物は生きていけない。

それを理解していた。

 

「長い目で見ればこれは君たちにとっても得になる取引のはずだよ?」

 

「こんなの取引じゃねぇ!ただの詐欺じゃねぇか!」

 

「騙すという行為自体、僕たちには理解できない。認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は他者を憎悪するんだよね」

 

「前に言ったはずです。契約をするならまずメリットとデメリットを包み隠さず話すことだと」

 

「確かに聞いたよ。だけど言わなかっただけでなぜ僕達を憎悪するんだい?」

 

「それが騙す行為だと言っているのになぜわからないんだ!」

 

「今現在で69億人しかも4秒に10人づつ増え続けている。君たちがどうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?」

 

「それは…」

 

「全てを見ていないからです」

 

まどか達は答えられなかったがエミルが代わりにキュゥべえの質問に答えた。

 

「僕もインキュベーターと同じように世界を見てきました。一人の人間を殺しただけでなぜ怒りをあらわにするのか最初は理解出来ませんでした。精霊であることを忘れて人間と同じように暮らしてきてわかりました。なぜ人は感情的になるのか…それは自分の周りしか見えていないからです」

 

「自分の周り?」

 

キュゥべえは首をかしげた。

 

「人は見えないものには興味を持ちません。だから人は見えるものに感情をあらわにするんです。泣いたり笑ったり、怒ったり、悲しんだりします」

 

静かな怒りだが心のなかでは、はらわたが煮えくり返るほどの怒りを抑えていた。

 

「インキュベーター、感情がある生き物がどれだけ素晴らしいものか。あなたには一生理解出来ないでしょう」

 

手で合図を送るとインプがキュゥべえの胴体を斬りつけた。




みなさんには申し訳ありませんがワルプルギスの夜までもう少し先になります
あと話を二つほど執筆する予定です
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