誰一人、口を開くことがなかった。
エミルがこの世界に来た理由とキュゥべえの正体、目的を聞いて頭の整理が追い付いてないだろう。
エミルは温くなった紅茶を一気に飲んでカップを置いた。
「みなさんはどうしたいですか?」
「どうって…」
「その…」
口もごったり首をふったりして答える人はいなかった。
「僕は何も変わりません。魔女を魔法少女に戻して街を守っていきます」
ワルプルギスの夜を倒して自分の世界に帰る。
エミルのなかで変わることは何一つなかった。
「考えがまとまってないのは無理はありません。今日はここでお開きにしてゆっくり考えるべきです」
異論を挟む人はいなく全員がエミルの提案に賛成した。
ほむらはまどかと一緒に帰っていた。
キュウべぇがこの隙を狙って契約して魔法少女にさせるかもしれない。
「まどかはどう思った?」
「どうって?」
「エミルが言ったこと…自分はどうしたいかって」
「私は…わからないかな」
なにも取り柄がない自分に何が出来るのか
「前の私だったら魔法少女になれば良いかもしれないって思ってたかも」
「今はどうなの?」
今のまどかは魔法少女になりたい気持ちがあるのか聞かざるをえなかった。
「魔法少女になりたいって思わないかな」
「本当に!?」
グッと近寄るとまどかは少し驚いて身を引いた。
「エミル君とさやかちゃんに言われたの。私が魔法少女になったらみんなが悲しむって…ほむらちゃんも私が魔法少女になったら悲しむ?」
「とても悲しむわ。私はまどかを魔法少女にさせないために何度も時間を繰り返したから」
私なんかのために何度も辛い思いをさせてしまった。
これ以上彼女に辛いことをさせたくない。
「大丈夫だよほむらちゃん。私は魔法少女にはならないからね」
「まどか…」
「今まで私のために頑張ってくれてありがとう。もう無理しなくていいからね」
「まどかぁ…」
今日で二度目の涙を流した。
まどかはほむらを抱きしめる。
「ほむらちゃん…ほむらちゃんが最初に会った私のこと教えてくれる?」
「うん…私の家に来てくれる?」
「ありがとうほむらちゃん」
離れると手を繋いでほむらの家まで歩く。
ほむホーム
「ほむらちゃんが最初に会った私ってどんな感じだったの?」
まどかを家に招いて二人は対面して椅子に座っていた。
「まだ魔法少女じゃない頃は心臓病が治ったばかりで友達がいなくて…保健委員だったまどかが私に声をかけてくれたの」
「そうだったんだ」
「保健委員がまどかじゃなくてエミルだったのが驚いた。いつもの時間軸ならまどかと一緒に保健室まで行ってたから」
「本当は私がやる予定だったけど他の人がエミル君に頼んだらしくて。エミル君、頼まれると断れない性格だから」
エミルがクラスメイトに何か頼まれ事をしている姿を想像すると苦笑いしながらやってくれる姿が容易に想像出来た。
「学校の勉強についていけずに一人で帰ってたとき魔女の結界に巻き込まれて、そのとき魔法少女になったまどかと巴マミに助けられたの」
「マミさんも魔法少女だったんだ」
「まどかよりも凄かったわ。まさに魔法少女の鏡ね」
自然と口が綻んでいだ。
「けどワルプルギスの夜が出たときに巴マミは死んで私は逃げようと言ったけどまどかは街を守るために戦ってくれて…死んだの」
まどかが倒れて動かなくなった姿を思い出すと悲しみが蘇る。
「私に力があれば、私がまどかを助ける力あったらと何度も思ったわ。その時インキュベーターが現れて私と契約した」
「なんて契約したの?」
自分のことだとわかっているが聞きたくなった。
「まどかとの出会いをやり直したい。まどかに守られる私じゃなくて守る私になりたいって。それでもらった力が過去に戻る魔法だったの」
盾を召喚してまどかの手に触れる。
カシャンと音がすると景色が白黒になった。
「これが私の魔法なの」
「ほむらちゃんの魔法…」
「私に触れている間はこの空間を一緒に移動出来るの」
「あのときほむらちゃんとマミさんがいなくなったのは」
「私が時間を止めて移動してたの」
盾に触れて時間を動かす。
白黒の背景から元の色彩に戻った。
「私はこの魔法でまどかを守ろとしたけど…何度も何度もまどかと出会ってそれと同じ回数だけあなたが死ぬところを見てきたの」
そう言ってまどかから視線を外す。
「意味わからないよね…まどかからして私は1ヶ月も経ってないただの転校生だから」
「ううん、そんなことないよ」
まどかはほむらの言葉を否定した。
「私ね、ほむらちゃんが転校した日に夢のなかでほむらちゃんを見たの。さやかちゃんと仁美ちゃんは笑って信じてくれなかったけどエミル君は笑わないで信じてくれたの」
「エミルが…?」
思わずまどかをみた。
「そのときからエミル君は何か思い出したかもしれない。本当の自分のことを…」
自分がこの世界の住民じゃないということを
「マミさんに助けてもらった日からエミル君が変わった。言いたいことをハッキリ言って、積極的に前に出て、みんなをまとめて、これが本当のエミル君なんじゃないのかなって思って」
そうなのかもしれない。
魔女との戦いでみんなに的確に指示を出して
危ないときにはすぐに駆け付けて
それがエミルの…いや、戦いに慣れている人の強さだと思う。
「…って、なんで私はエミル君のことを話しているんだろう。ほむらちゃんが最初に会った私について聞いていたのに」
なんだか急に恥ずかしくなってあたふたする。
その姿に思わずフフッと笑ってしまう。
「もぉ、笑わないでよ」
「ごめんなさい。けど…フフッ」
「ほむらちゃんはやっぱり笑ってたほうがいいよ」
「私に笑顔なんて似合わないわよ」
「そんなことないよ。ほむらちゃんは笑ってたほうがいいって」
「笑顔ならまどかのほうが似合うわ」
「私よりもほむらちゃんのほうが」
「いえ、まどかのほうが」
そうやって言い合っているとお互いに笑った。
「これじゃあどっちもどっちもどっちだね」
「そうね」
再び笑った。
「ねぇ、まどか。エミルは最初はどんな人だったの?」
「そうだね…エミル君は海外の人だったからクラスのみんなからすごい注目されてたね」
「エミルって海外から来たの?」
「ほむらちゃんは知らないと思うけどエミル君はアメリカから日本に来たんだって」
名前からして海外の人だと思っていたがまさか本当に海外から来たとは思わなかった。
「入学式が終わってある程度落ちついたときエミル君が海外から来たって聞いたらみんなが質問してきて、エミル君は一つ一つ答えてくれたの」
「どんな質問したの?」
「海外の学校はどうなのとか、海外はどんな暮らしなのとか色々質問してきてエミル君が困ってたときに上条君に助けてもらって、それからさやかちゃんから通してエミル君と友達になったの」
「まるで私とまどかが最初にあったときと同じね」
「そうなの?」
「私もエミルと同じようにクラスに質問攻めされていたときまどかに助けてもらった」
そう言い終わると口を閉ざした。
「ほむらちゃん?」
「誰も頼らないと決めたときまどかさえ無事ならそれで良いって思ってた。だけどそれがまどかに辛い思いをさせていたことをエミルが教えてくれた」
一人で考えていたから狭い視野の考えしか出来なかった。
エミルがいてくれたおかげで他人に悩みを打ち明けて一緒に考えると教わった。
「それでようやく分かったの。まどか以外を考えなかった理由。私にとってはまどかもそれ以外も全部ひっくるめて大切だから。私…やっぱり守りたい。この街を守りたい。私の大切な人達がいる。この街を守りたい」
さやかがエミルに修業をして欲しいとお願いしたときと同じような表情だった。
「私もほむらちゃんと同じ。私も大切な人とこの街を守りたい…けど」
「けど?」
「私って鈍くさいし何の取り柄もないから。昔から得意が学科や自慢出来る才能とか何もなくて」
「そんなことないわ。私にとってまどかはみんなに自慢出来る友達よ」
「ありがとうほむらちゃん。でもほむらちゃんがそう思っても私は…」
まどかは気を沈めて暗くなってしまう。
なにか言っても気休め程度にしかならないだろう。
「誰かを守ることなんて私には出来ないけど…守り合うことはできるだけんじゃないかなって最近思いはじめたの」
「守り合う?」
「お互い一緒に守り合って戦う。それならほむらちゃんに守ってもらいながら戦えると思う。だから…」
「まどか待って-」
ほむらは次の言葉を予想していた。
まどかはキュゥべえとは契約するつもりなんてない。
なら誰に?
決まっている
キュゥべえ以外に契約させる立場はただ一人
「私…エミル君と契約する」
最初は契約させるか迷いました
まどかが死ねばほむらは時間を戻すかもしれないですが同時にエミルもいなくなります
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