学校の屋上
「エミル君、なんで泥棒猫にお弁当を渡しているんだい?」
エミルがいつものようにほむらにお弁当を渡しているとキリカが羨ましそうにほに渡されたお弁当を見ていた。
「私の親は仕事であまり家にいなくて。私は料理が出来ないと言ったらエミルがお弁当を作ってくれるって言ってくれたからよ」
「それをよこせ!」
「嫌よ、エミルが作ったお弁当は私にとって唯一の楽しみなのよ」
まどかを助けるために何度も過去に遡り、ゲームの周回プレイと同じような体験をしていたほむらは授業の暗記以外に暇潰しとしてまどか達が食べているお弁当も覚えていた。
エミル・キャスタニエというイレギュラーがいるこの時間軸はどんなお弁当なのか分からない為、それが楽しみで仕方がなかった。
それに好きな人のお弁当が食べたいという女の子らしい考えもあった。
「私もエミル君が作った料理が食べたいんだよ!」
「自分のお弁当でも食べてなさい」
キリカがほむらのお弁当を奪おうとするが時間を止めて移動してなんかと奪われないようにしていた。
「あぁ!もう、僕のお弁当をあげますから!」
そんな光景を見たエミルは業を煮やして自分のお弁当をキリカに渡した。
「いいのエミル君?」
「そんな風に争うよりかはマシだと思ってます」
「じゃあ私のお弁当をあげるね」
エミルとキリカはお弁当を交換する感じで場は収まった。
「うわっ美味しい!エミル君が作ったお弁当。本当に美味しいよ」
「口に合って良かったです」
「あの泥棒猫はこんな美味しいのを食べていたんだ。エミル君!」
「なんですか?」
「私のために毎日お弁当を作ってよ!」
「それ男の人が女の人に言うことですよね?」
「それでも構わないよ。さあエミル君、私に毎日お弁当を作ってと言ってみたまえ」
「いや、それだと」
「駄目よエミル、あなたには私のお弁当を作るという大事な役目があるじゃない」
「自分で作るという発想はないのかあんたは」
「ないわね」
さやかの突っ込みにさらりと返す。
「そんなんじゃ一人で生活なんて出来ないんじゃないの?」
「そういうあなたは料理は出来るの?」
「い、一応出来るよ?」
「なら明日作ってみんなに食べさせてくれる?」
「あぁ、いいよ。やってやるさ」
ほむらの挑発に乗ってお弁当を作る約束をした。
「(どうしよう…料理とかあまりしてないのに)」
啖呵を切ったのはいいが料理はせいぜい親の手伝いぐらいの技量しか持っていなかった。
「(私が料理下手だと知ったらエミル君は失望するのかな…)」
帰ったら徹夜で料理の勉強をしようと心から決めた。
「ほむらさん、前にさやかさんに魔女の力があるか調べようと言ってたけどやってなかったよね?」
「確かにやってなかったわね」
「魔女の力?」
ほむらの言葉にキリカは首をかしげている。
「さやかと百江なぎさはエミルと契約して魔法少女とは別の存在になった。二人は魔女のまま契約したから魔女の力があるか調べているの」
「魔法少女のまま契約したらどうなるの?」
「それは分からない。それも試してみたいけど」
誰が魔法少女のまま契約して魔女になるのか。
魔法少女の真実を聞いたら誰しも魔女なんかにはなりたくないと考えるのが普通だ。
だが魔女になってもエミルと契約すれば問題はないことはさやかとなぎさで検証済みであるがそれでもあまりにもリスクが大きすぎる。
「そのことだけど私が」
「私がやるよ」
マミが言おうとしたがキリカが先に口を開いた。
「呉さんが魔女にならなくても私がやったほうが」
「けど魔法少女のなかでマミが一番戦いに慣れてるんだろ?私と織莉子は魔法少女になったばかりだから戦いには慣れてないけど織莉子は未来予知があるからみんなをサポート出来る。だったら私が契約したほうが戦力があまり減らないと思う」
確かに戦いのなかでエミルを除けばマミが一番ベテランである。
もし契約出来なかったら戦力ダウンになってしまう。なら経験の浅いキリカが契約したほうがデメリットは防げる。
「呉キリカ、あなた本気で言ってるの?自分の意思で魔女になる気なの?」
「そうだよ。エミル君のためならば私は喜んでエミル君に命を捧げるよ」
ためらいもなく彼女は魔女になると言った。
「エミル君と会ってなかったら私は一生自分を変えることは出来なかった…エミル君と出会ったから私は自分で自分を変えられるようになった」
魔法少女になる前の暗い表情で地面をみていた。
あのときコンビニにいて、お金を落とさなかったらエミルと逢えなかった。エミルと話して勇気を貰って、勇気を持って前に進んだ。
そのおかげでマミと友達なり、織莉子は良き理解者、多くの友達と囲って過ごせるようになった。
「だから私はエミル君に一生を尽くす。エミル君が幸せになるなら私は死ぬことなんて怖くない」
迷いのないまっすぐな想い。まどかのために戦っていたほむらにとってそんな風考えられるキリカが少しだけ羨ましかった。