「て、転校したんですか織莉子さん」
「えぇ、そのほうが今後の魔法少女としての活動しやすいでしょう?」
キリカとの契約が無事に完了した次の日
織莉子が着ている制服は白鳥学園の制服である真紅色の制服ではなくクリーム色の制服である見滝原中学校の制服を着ていた。
彼女の話だと生徒会長をしていたらしくその役職を棄ててまでエミル達が通っている見滝原中学校に編入してもらったらしい。
「前の学園にいてもお父様をとおして私のことを見てる人ばかりでした…ですがエミルさんがいるこの学校ならありのままの私を見てくれるかと思いまして」
「よく久臣さんが許してくれましたね」
「お父様も責任を感じていたらしく、友達がいる学校に行きたいなら何も言わないと言ってくれました。それに…」
ピッタリとくっつくようにエミルに寄り添っていると安心したかのように力を抜いていた。何気に手が制服の袖に触れている。
「ここならエミルさんと長くいられますし…」
張りつめた糸のような生活をし、生徒の手本として気が抜けるようなことはしなかった。
父である久臣の汚職疑惑に学校では陰で悪口を言われ、世間からも冷たかった。もしエミルがいなかったら汚職疑惑の圧力に耐えきれず、命を絶とうとしていただろう。
「お、織莉子さ-」
「はい、エミル君あーん」
顔を赤くしているとサンドイッチが口に放りこまれる。モゴモゴと口を動かしてキリカが作ったサンドイッチを飲み込んだ。
「前よりマヨネーズ薄くしたけど大丈夫?」
「この濃さなら大丈夫です。あと、無理矢理、口に入れないでください。びっくりしちゃいますから」
「織莉子がエミル君といちゃついていたのに腹が立ったから」
「それに関しては同意見ね。近すぎるから離れなさい美国織莉子」
「ふふっ、ごめんなさい。エミルさんと同じ学校なのがつい嬉しくて」
エミルが座っているベンチから離れるとその隣に座るべくキリカが動くが
「呉キリカ、そこの席は私の場所よ」
「いや、私の場所だからすっこんでな」
相変わらずこの二人は仲が悪い。お互いに嫌っていてなおかつエミルのことが好きだから余計に険悪な関係だ。
「ほむらちゃん、私の座ってる場所に座る?」
「ダメよまどか、他の人の気持ちを優先するのは良いことだけど、時には自分のことも優先しないと」
立ち上がろうとしたまどかを織莉子が肩に手を置いて制止させる。
「でも、美国先輩」
「エミルさんの隣で一緒にお昼はとりたくないの?」
「それは…」
「とりたいわよね?」
「…はい」
口で言っているが本当はエミルの隣をとられたくない。観念して正直に答えると織莉子はクスリと笑う。
ほむらとキリカとの仲が悪いのに対してまどかと織莉子の関係は良好だ。織莉子がまどかを殺害しようとしたのは魔女になったら世界が滅ぶからだ。
まどか自身、魔法少女になる気持ちはなく世界を滅ぼしたいという気持ちはこれっぽっちもないと分かり、彼女を殺そうという気持ちはなくなった。
「それにしても似てるな」
「似てるってなにが?」
思っていたことを口にしているとさやかが反応した。
「まどかさんが織莉子さん、ほむらがキリカさんと雰囲気が似てるなって思って。まどかさん達を見てると世界は光と闇で出来ているんじゃないかなって」
「あんたが言うとなんか妙に納得しちゃいそうなんだけど」
普通なら何言っているんだ?と思われるがエミルは誰よりも長く生きているので言葉の重みが違う。
まどかと織莉子はみんなを照らす光ならほむらとキリカはその光を守る闇
光が強く照らされると闇が深くなり、想いが強ければやがて歪みとなっていく。
光と闇
世界は二つの景色で出来ているかもしれない。
「(ここの世界は僕がいる世界よりも平和だな…)」
まどかと織莉子が仲良く話しているのに対してほむらとキリカがいがみ合っている光景を眺めていていると心が暖かい感情になる。
インキュベーターにはこの光景の素晴らしさが分からないだろう。感情を持つ生き物がどれだけ素晴らしいものか。
「(だけど僕は精霊ラタトスク、この世界にいるべきではない存在)」
今のエミルにはラタトスクの力を宿している。あちら側にいるもう一人の自分がいつまでニブルヘイムに続く扉を守れるか分からない。
ワルプルギスの夜を倒したら元の世界に帰るだろう。そのときはまどか達とお別れするだろう。
それがどれだけ悲しい結末であってもこの決意だけは揺るがない。
精霊ラタトスクであり、エミル・キャスタニエである自分の使命であるから
「…」
ただ一人だけはエミルの決意を知らずこの光景をつまらなそうに見ていた。
魔法少女まどか☆マギカ ラタトスクの騎士が投稿一周年向かえました
これからもよろしくお願いします