龍亞「死ぬ運命だなんて!そんな事、あり得ないよ!」
暦「黙ってて、悪かったな。お前だけには、知られたく無かったんだ…。」
暦は、弱々しく笑った。
暦「だがな、後継者も出来た。龍亞を護れた。
俺が死ぬ事に、後悔も無念も無い。」
その直後、暦はその場に座り込んだ。
その時の暦の顔に、既に生気は無かった。
暦「でも、1つだけ未練があるならば、お前達に何にも形見をやれない事かな?
まぁ、あるとすれば俺の左目かな。」
座っている暦の前に、涙を流しながらルイズが前に立った。
ルイズ「ボクは、昔からお前のその暖かさ、生きざまに憧れていたんだ。
だから、お前がボクを後継者に選んでくれて、本当に嬉しかった。少しでも、お前に近づけると想って、嬉しかった。」
ルイズ「だから…だから、ボクがお前の、鬼灯暦の後継者として生きてく!
だから、お前のその左目は、ボクが受け取る。鬼灯暦から、託された者として、ボクが受け継ぐ!」
暦「何だよ…。最後になって、俺を泣かせに来たのかよ。全く、お涙頂戴には強い筈だけどな。」
ルイズの言葉に、暦は涙を流しながら、右手に握られていた左目を、渡そうとした。
だが暦の右手を、龍亞が止めた。
暦「どうした龍亞?黙ってた俺が、許せないか?」
龍亞「そんな訳無い…、そんな訳無いよ!暦兄ちゃんが、俺に心配かけないようにしてた事くらい、わかったよ!
暦兄ちゃんはいつも、肝心な事は内緒にして、俺を安心させてたね。」
龍亞「でも、俺だってもう一端の男だ!目の前で起きてる事を、ちゃんと理解出来てる!
だから、俺は泣かないよ!絶対に泣かないよ!」
暦「既に、滝のように涙流してるじゃねぇか…。
龍亞、今まで色々と迷惑かけたな。すまなかった。」
暦はその場で、龍亞に向かって頭を下げた。
暦の行動に、2人は何も言葉を発しなかった。
龍亞「俺は強くなる!暦兄ちゃんが、心から安心出来る様に、強くなる!
だから俺が、その左目を受け継ぐ!」
ルイズ「いくら龍亞の頼みでも、それだけは譲れない!」
龍亞とルイズの言い合いを見て、暦は微笑んだ。
そして、何の躊躇いも無く左手で、残っていた右手を取った。
暦「お前ら、こんなぼろ雑巾ごときのせいで、喧嘩は止めろや。
俺の目は、ちゃんと2つある。左目はルイズ、右目は龍亞にやる。だから、仲良くしろ。」
暦はそう言って、自分の両手を差し出した。
そして、龍亞は右目を、ルイズは左目をそれぞれ、受け取った。
暦「さて、そろそろスイッチを押そうかね。お前達、その目玉、いらなくなったら、捨てても良いぞ?」
ルイズ「何があっても、この左目と龍亞だけは捨てないよ!」
龍亞「そうだよ!暦兄ちゃんの右目は、俺の命よりも重いよ!」
2人の言葉に、暦は少し引きながら笑った。
そして、スイッチの台を頼りに、暦は立ち上がりスイッチに手を置いた。
暦「お前達、いつまで泣いてんだよ?まぁ、そんな最後も悪くないか…。
そろそろ、押すとするか。じゃあなお前ら、幸せにな!」
スイッチを押そうと力を入れた時、暦の瞼の裏に昔の走馬灯が映った。
それは、旧モーメント研究メンバーと過ごした日々だった。
楽しそうに笑う皆。暦は満足した笑顔を見せ、スイッチを押した。
すると、出口の出現と共に、1本の槍が暦の頭を貫いた。
暦は、糸の切れた操り人形の様に、その場に崩れ落ちる様に、眠りについた…。
……暦、お前はかっこ良かったよ。
ありがとう。