頭部に身体の半分がほぼ消し飛び、残った片腕はあらぬ方向へと曲がっている。
そんな状態で生きている生物は大抵人間では無いだろう。
ここは欧州。
彼の地にて上記の様に凡なる人では死に絶える様な傷を負った少年がいる。
目の前には【Hydrā】
其れも焔や猛毒を吐く希少種だ。
ー“妖夢”という存在がある。
其れらは遙か古代より世界を徘徊する異形のものとして捉えられ、その姿は千差万別でどこからやってくるのかさえも不明な存在である。
中には人を食料とする危険極まりない妖夢も存在し、其れらは全て一般の人には見えないという特徴がある。
その妖夢とやらがこの不愉快なほど危険で希少種なヒュドラさんである。
僕はその妖夢を討伐して、人を守護するという(お金を稼ぐ)異界師の1人である。
「おいおい、僕を溶かしたら君は僕という夕食にありつけ無くなるんじゃないか…?」
身体の半分を失いながらも未だ余裕を保つ少年。
対して九つの首のうち5本の首を潰され、対峙するヒュドラー
はたから見たらどちらが勝っているかなど一目瞭然である。
だが、少年は余裕を保っている。
何故か…?と、問われると答えに少し困るが一番シンプルなのは彼の方が強いからだろう。
「「「「ヒギャアアアァァァアアアーーー‼︎‼︎‼︎」」」」
ヒュドラが鳴く。その残った四つの首からこの世のものとは思えない程の不快な音で鳴き喚く。
少年は、もう、
少年は少し言葉を漏らす。
「不愉快だよ」
その瞬間、翠光が周囲を迸り。
その中心に居た少年は“最強にして最凶のケモノ”と化した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ク…ソ、腹が減っ………た…」
僕は今、名前も知らぬヨーロッパのとある森の中で行き倒れている。
何故かって?お腹が減ったからさ、一昨日から本来なら中学1年生の成長期な僕が一昨日から何も食べてないんだよ⁉︎いやさ、僕は断食とか慣れてないから3日で限界だよ。
えっ、何でお腹が空いているのか?
それは語るも辛い一昨日の事だ。旅の途中に訪れた小さな田舎町にてストリートチルドレンの子供たちが余りにも可愛くてついつい自分の財布の中身を考えずにご飯を恵んでしまったからさ。
という事はだ。
善意な事をした筈なのに神は僕の事を見放したのか……!
というかお腹が空い…た…。
あー…何でこんな事になってるんだろうなぁ…武者修行に出ろって師匠が言ったせいからかなぁ……もし死んだら父さんの眼鏡フェチと母さんの絶望的なまでの音痴が治ってますようにーーー「だ、大丈夫ですか…?」
「………んぁ?」
可愛らしい声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
顔を上げると天使が居た。
「て…天使さ……ま…お助け下……さ…い」
それも金色に輝く髪を束ねた可愛らしい天使だ。
きっと父さんが居たら眼鏡が似合う美少女天使というだろう。
「………えっ⁉︎」
可愛いなぁ、なんて思いながら僕は意識をBlackoutした。
今日は母の誕生日であり、私は近くの森にあるといわれている絵本にあった世にも不思議で綺麗な紫水の花を母にプレゼントしたくて近くの森を歩いていた。
…私が絵本のお花見つけたらママは喜んでくれるかな?
なんて思いながらスキップまじりで歩いている私は静かな森の中から聞こえてくる声を耳にしてしまったのだ。
「ク…ソ、腹が減っ………た…」
私と殆ど変わらないような年の少年の声。
私は花を摘むためのバケットを投げ、その声がした方向に走った。
ーーー「だ、大丈夫ですか…?」
「………んぁ?」
ーーーーーーこれが私、シャルロット・デュノアの人生が不幸の路線から幸せの路線へと切り変わった瞬間だった。