時間は午後の7時を回っていた。
おれは持てる限りの全速力で最寄りの倉庫に向かっていた…こりゃ明日は筋肉痛だななんて冗談を脳内で呟くことも出来ないくらいの焦りや緊張を抱えていた。
唯一の救いだったのが母親が今日は夜勤だということだ。朝まで帰ってくることは無い。
そう長引かせるつもりはない。相手が何の目的があってそんなことをしたか知らないがさっさと片付けさしてもらう。
この際、能力を隠して解決だとかばれないようになんか頭になかった。
最優先は妹…めいの奪還だ。その後の処理は二の次三の次になる。
倉庫に来いということだから恐らくめいもそこにいるのだろう…それはよくないな、衛生上よくない。倉庫といっても家から1番近い倉庫は廃倉庫だ。
それに衛生上よくない点はもう一つ。
相手が男だろうと女だろうと何人いようがうちの可愛いめいに下卑た視線を送っているに違いない…少なくとも目は潰さないとな…
住宅街から30分くらい走ったところに倉庫はある。あと5分もこのペースで走ればつくだろう。
信号待ちをしている間に最終確認をする。
相手の人数によるが、必要であれば構わず能力を使う。
そして、相手を殺すことに躊躇わない。
最後にこれが最も重要で、目的だ。めいを返してもらう。無傷で。
もちろんめいの記憶はけす。こんな嫌な思い出を後に引きずって欲しくないからな。
そうして目的地に到着…今日最後のタスクを完了させてもらう。
どうどうと正面から入ると一つの古びたソファとその上に横たわっている…めい…だれだあんなことをしたのは寒くて風引くだろうが!
そして、その少し後ろに2人の男。
「よう、お兄ちゃん遅かったじゃんか」
そいつは俺を煽るようなセリフを投げかける。
「まさかお前らなんてな…どこまで馬鹿なんだ?」
「馬鹿なのはお前だろうが!」
突然、もう1人のつんつん頭が怒声を上げる。
犯人が誰かわかった時点で冷静になったおれは途端に笑いがこみ上げてきた。
「ははは…お前ら本当に馬鹿なんだな」
「馬鹿なのはお前だよ。中二病が!」
「この目は生まれつきだあほが」
おれが一歩踏み込むと、相手は声を上げる。
「おっとそれ以上動くなよ?」
「ほぉ?まぁ大方、うちの妹を人質にとってリンチでもしようとしたんだろう?けど残念」
「何言ってんだお前は。文句いうだけで殴る勇気なんてあんのかあ?」
そういって2人は包丁だかナイフを取り出す。
「そんなんで勝てるとでも?…もう話すのも面倒になってきた。おれも妹も腹が減ってんだよ!」
そう語気を強め、俺は右手を鉄砲のような形にしてひとりに向ける。
「うちの妹に手を出したのがお前らのそもそもの間違いだったな。大人しくしてればいいものを」
そういって拳銃を撃ったあとの反動が来たかのように右手を鉄砲の形のままあげる。
すると1人が倒れた。
「な、なにしたんだてめぇ!」
相手は語気を荒らげて威嚇しようとするが完全にびびってる。
「あああああああああああっ!」
倒れ込んだやつは何やら叫びながら悶えている。
おれは右手の形を維持したままやつらに近づく。
「こ、こっちにくるな!」
相手はやけになったのかナイフを振り回しながら後ろに下がる。
「何も考えずに行動するからだ。お前らみたいなやつらがいるからこうなる」
そして、ナイフを振り回してる相手めがけて立て続けに2回、右手を跳ねあげる。
「いてぇぇぇぇぇ」
ナイフは吹き飛んで近くの床に転がりナイフと同じくそいつも床に転がる。
なんとも惨めな姿だ…滑稽でならない。
「はははは…」
俺は乾いた笑いを上げながら近づいていく。
突然さっきまで叫んでた1人が喋り出す。
「おれが悪かった!だから許してくれ!」
おれは立ち止まる。
相手は許してもらえたと勘違いしたのか安堵の表情をする。だが、おれが出した答えは…
「ここまでして今更泣いて謝れば済むと思ったのか」
右手を跳ねあげる。次見た時には許しを求めたやつは頭から血を流し動かなくなっていた。
「あ…ああああああ…ひっ」
もう1人は言葉にならない音を出している。
「お前はどうなんだ?」
だがそいつからまともな反応など期待していないのでやつに近づく。
…葵の妹を拉致した片割れが最後に見、聞いたものは闇の中からこちらに近付いて来る、ふたつの碧眼と「死ね」というシンプルな死の宣告だった…