がっこうぐらし!(難易度:ナイトメア) 作:十円玉になりたい。
・主人公は男のオリ主。だって原作メンバーだけだと死んじゃうから。
・ゾンビの身体能力底上げ。もしこうなってたら生存者はもっと減っていた。
・原作では死んでる人が生きてるかも。こうして対ぞんびの戦力を増やしていく(と思いたい)。
・学校のライフラインの微小強化。ここには余り触れないで。
そんなわけで、アニメしか見てない作者が原作を頑張って良い方向に壊していきます。ゾンビ強いけど。原作遵守の方はブラウザバック推奨です。それではどうぞ
いちわ じごくがはじまる
巡ヶ丘学園高等学校、その屋上より更に上。
学校の設備には珍しい太陽光パネルや屋上菜園などが下にある中、給水塔の上で寝ている影が一つあった。
「…つまんないよな……」
白いワイシャツの上に紺色のカーディガンを着込み、高校指定の黒いブレザーは彼の隣に乱雑に投げ捨てられている。直射日光の当たる屋上ではまだ春半ばと言えど流石に暑いのだろう、怠そうにしつつも腹筋に力を入れ上体を起こして、手元に置かれていた先ほど購買で買ってきた冷たいレモンティーを一口含むと再び横になる。
「こりゃ幾ら何でも生温いにもほどがあるだろ…冷たいやつはちゃんと冷やしてから売れよな」
太陽の熱を吸収して更に温くなった中身に文句を言いつつ、朗らかに吹いている春風を浴びる。黒く伸びた髪がそれに合わせて揺らめく。
彼の名前は橋野透。そして俗に言う転生者である。
生前でも現段階と同じ、高校3年生だった。しかしある日の高校の帰りに通り魔に遭いナイフで心臓を一突き。医者の懸命な治療も虚しく命を落としてしまったのだ。
そして気付くと生前と同様の名前で、しかし中学一年生の身体になって逆行していた。
しかも外に出ると知らない街というおまけ付きだったために最初こそかなり戸惑ってはいたものの、異世界ファンタジーや殺伐としているアニメの中に入ったという訳ではなくむしろ町並みを除けば両親も生前と同じで人間関係も場所こそ変わっているが中学当時のそのままであった為に一週間もすればその点においてはあまり違和感を感じなくなっていった。流石に低くなった身長やこの前まで高校三年生だったのに再び中学へと通いなおさなければならないことには差異を感じると共に辟易としていたが、それも特に問題という問題には発展せずに無事一度目で死亡してしまった高校三年生にはなることができた。そして普通より二倍くらいの時をかけてしまったがその後は大学へと進学し、社会人へとなる日も近いだろう。幾ら何でもまた通り魔に刺されて死ぬなんてあり得ないだろう、そう透は考えていた。
空を見上げながら気怠げに何気なく携帯をポケットから取り出す。高校三年生になった時に買ってもらったスマートフォンだ。安くするため型落ちではあるが、それでも性能は申し分なく全く不満はない。といっても特に使う機会がないためにニュースや天気などの情報を知るための手段としての範囲でのみしか使っていなかったりする。
徹は適当に入れているアプリを開いていくが、特にこれといって興味をそそるようなものはなかったのかすぐに携帯をスリープモードに変えてポケットに入れてしまう。多少世間を騒がせているニュースはあるようだが、恐らく自分は関与することは無いだろう。そう頭の中で結論を出していた。
そうして再び暫くの間寝っ転がっていると校舎から本日の授業終了の鐘の音が響き渡るのが透の耳に聞こえてくる。その音でそれまで寝ている体制だったのを上半身を起こして伸びをし、意識を覚醒させる。
「よし、帰るか」
素早く横に投げ捨てていたブレザーを羽織りバックを持ち、そばにあるレモンティーをバックの中へ無造作に突っ込む。
早くしないと面倒な奴が来る。
そんな習慣から来る勘から給水塔のハシゴを降りるスピードも気付けば早足となっていた。
しかしそんな透の撤退行動は、屋上と屋内からの階段とを繋ぐ頑丈な鉄扉が鈍い音を立てて開く音が耳に入ってきたためにピタリとハシゴを降りる足を止めてしまう。
透はギシギシと錆びた機械を無理矢理動かすように後ろを振り返ると、そこには徹にとってとても良く見知った女子生徒がこちらを睨むように注視していた。
栗色の髪の毛に、今はあまり感じさせないが普段はほんわかとさせていそうなおっとりとした容姿、そんな彼女の名前は若狭悠里。透と同じクラスかつ放課後の屋上で普段活動する園芸部の部員である。
「とーおーるー?何で授業終わってすぐに来たはずなのにそこにいるのかしらー?」
透の体中から冷や汗が流れに流れる。悠里のその声は第三者からすれば間延びした穏やかな声に聞こえるかもしれない、しかし透には悪魔の声に思えてしまう。
…このままだとやられる!
そう思い焦りながらもこの好ましくない状況を打開するために透は自身の弁論を試みた。
「い、いやなぁ。天気が、良いからな?」
瞬間、終わったなという五文字が透の脳内を占拠する。事実、悠里の今浮かべている笑みは相手に安心感をもたらすそれではなく、自分の捕まえた獲物をその後どうしてやろうかという過程から生じた透にとってどうしようもなく恐ろしい笑みだった。
「正座」
近づきながら悠里はそう言う。
ハシゴから降りた透はそれに素直に従った。否、従わざる負えなかった。午後の授業をサボり、挙句の果てに常時は園芸部と教師以外は立ち入ってはいけない屋上の更に上、給水塔の上で寝そべっていたのだ。反論する余地など一欠片も無かった。
…昼休みに教室からバック持って悠里にバレず抜け出すの、結構苦労したんだけどなぁ……。
そんな事を考えながら、まるで母親のように叱る悠里の言葉を聞き流していく。常習犯に顕著に現れる癖である。
「…だから、そんな訳で今回こそ本当に分かった?」
「分かりました悠里さん二度とこんなことはしません」
「ならばよし!」
漸く開放されたとばかりに透は足に力を込めて立ち上がり、腕を太陽への伸ばして伸びをする。因みにこの主人公、一切合切反省も後悔もしていない。再犯するつもり満々である。
そして悠里もその事に気付きながらも見逃していることから意外とこの日常的に何度も繰り返されたやり取りを気に入っているのかもしれない。
普段ならば周りには園芸部の部員が何人か居て、悠里の説教が終わると話しかけてくるのだが…。
ふとそんな日常を透は思い出して、説教されてた時には疎かにしていた周りを改めて見渡してみる。しかし誰もいない。
不思議に思った透は悠里にその事を尋ねてみる。
「なあ悠里、今日って園芸部お前以外全員休みなのか?」
その質問に悠里も先程から不思議がっていたのか、思案顔をしながらも応える。
「そうねぇ…今日は誰からもお休みの連絡は来てないのだけど…どうしたのかしら?」
「まさかお前以外の部員全員でサボり…」
「部員が全員透だったらそうかもしれないわね」
「そういう心に来る発言止めてもらえますか?いや、確かにもし俺だったら幽霊部員待ったなしだけどさ」
「…早くその根性を直らないかしら…」
「もっかい死なないと無理」
悠里は思わずため息をつきながら水道近くに置いてあったじょうろに水を入れる。
それを横目で見ながら透はふと空を見上げる。日はすでに落ちかけていて、先ほどまでは青かった空には紅い光が差し込み幻想的な色合いを醸し出している。夕日は園芸部で育てているトマトなどの野菜に満面なく光を浴びせ、気のせいか風に揺られている野菜たちがその体を使って表現しているようにも見える。
そうして互いに無言の空間が形成される。悠里は野菜たちに目を向け、透は空や街並みを観察する。そこに会話は無いが、だからと言って無言故の気まずさも存在しない。既に長い付き合いとなっているこの二人だからこそ作れる空気と言っても良いだろう。
普段ならばそうして悠里が部活を終えるまで適当に園芸部の部員や悠里と話しつつ巡ヶ丘の町並みや空を見ながら屋上で待つのだが、今日はどこか様子がおかしい。
町並みをぼーっと見つめていて透がそれに気づいたのは二人独特の空間が作られてからさして時間も経っていない頃であった。
「…なあ、何か町の方、騒がしくないか?」
「確かに…少し人の声がするわね」
「この辺で今日イベントとかあったけか?花火大会とか、デモ行進とか」
「無かったと思うけれど…というか春に花火大会は無いわよ」
「そりゃそうか…」
透はポケットからスマートフォンを取り出し、カメラアプリを望遠鏡代わりに起動して町の方にズームした。当然携帯に付いているカメラであるので、高性能のカメラと比べると遠くの様子を見るにはあまりにも杜撰とも言える画質ではあったが、それでも透の目にはしっかりと一連の光景と共に現実的に異端とされるソレが捉えられていた。
「…何だよ…あれ」
「鍵、空いてたね…」
透が一人戦慄していると、突然屋上のドアがガチャンと開く。何事かと思い透は素早く振り返ってみるとそこに居たのは、変な帽子を被り制服を着た背の小さい一人の女子生徒と、ピンクと紫の中間とも言える髪色に教師には珍しい十字架のネックレスをしたこの学校の国語教師の佐倉先生がドアの前で立っていた。
「あ、すいません。また締め忘れてました…鍵かけておいて頂けますか?」
「うわぁ………すごーい!あ、園芸部の人…ですか?」
「見ての通りよ?貴方は見学かしら?」
「はい!トマト、すっごく美味しそうですね…!」
「食べたい?」
「いいの!?」
「ええ、お手伝いしてくれるならね」
「うん!」
そんな呑気な会話に呑まれてしまっていた透はつい、今さっきのカメラで確認した光景を夢かと疑いかける。だが全く脳裏からそれが離れる様子はない。むしろ無理矢理脳がそのシーンを引きずり出して、それを思い出してしまう度に恐怖心に苛まれていく。
血まみれの全身。
飛び出した内蔵。
逃げる誰かを重症の状態で走り、追いかける何か。
そして追いついた先。
顔、腕、胴体、足。
何体ものソレがその部位部位に噛みついて、肉を千切り取り、鮮血が勢い良く溢れ出す。
…その光景はまるで質の悪いC級ホラー映画だった。その中でも特にゾンビ映画に似ている。感染がどうとかは未だ安全な校内に居た透には何も分からないが、人が人を喰らう、そんな非日常的なやり取りの一端は透が昔見たゾンビ映画のゾンビに追い詰められた生存者の最後の場面にとても酷似していた。
…こうしてはいられない。未だ事実を見ても信じられる心など有りはしないが、もし仮にあの光景が今日の現実世界だとしたならば、速急に手を打たなければ殺される。
そう透は思い、弾かれたようにまずは一旦はポケットに戻したスマホを再び取り出してニュースの記事を見る。
トップ記事には暴動事件の見出し、しかもこの隣町で起きたらしいそれを透はタップして詳細を素早く読む。
しかし、どうやら暴動事件という以上の情報はその記事には存在していないようで、人が人を食べる、そんな日常離れした事が書かれた文章は一文字足りとも記されていなかった。
恐らく、もしゾンビが本当に居たとしてその情報を日本全土にばら撒いたなら国民が混乱して更に状況が悪化すると見越した国の情報操作だろう。ただでさえ暴動事件というだけでも国民の不安を煽っているのに、更にそれが本当はゾンビ事件でした、何て追加情報を出したらその不安が爆発するに大した時間は要らないだろう。
そう結論付け、ニュース記事を諦めた透が次に手を伸ばした先は有名動画サイトだった。
ここならもしかしたらその暴動とやらに巻き込まれた人たちが撮影した映像がアップロードされているかもしれない。
そう思い今日の日付でフィルターを掛けて検索ワードを暴動で探すと、その動画はいとも容易く見つかった。
「な……!」
そしてその映像は、透の先ほど見た光景を裏付けた上にさらなる地獄が既にこの世に存在してしまっている事を知らしめていた。
撮影した場所はどうやらショッピングモールだろう。何処なのかはいまいち分かり得ることは出来ないが、それでもそのたった1分も無い動画にはこの安定した世の中の終焉がこれでもかと言うほどに詰められていたように透には思えた。
ゾンビだろうそいつらが、必死に逃げ回る生存者を追い回す。それだけならば、まだ良かった。
「…走ってやがる…!」
生存者を追うゾンビは総じて走っていた。
足を深刻に怪我しているゾンビはその限りではなかったが、それでも大半のゾンビはかなりの速度で走り、生存者に飛びつきしがみついて首筋を噛み千切っていた。
それはガタイの良さそうな大の大人でも結果は同じで、透はゾンビが大体100mを12秒前後で走っていると冷静に推測する。100m12秒、陸上としては高校の中でもそこまで速いとは言い難いタイムではあるが、その記録を全部のゾンビが出してくるとしたら途轍もなく大きな壁だ。更にこの速度をいつまで維持できるのかも分からない。それに女子や運動の苦手な人からしたらこのゾンビの速度にもすぐに追いつかれて殺されてしまうだろう。
そう考えるだけで透は背筋が凍りそうになる。
まず出来ることは何か…透は始めにそう考える。
今から外に行き避難するのはあまり得策とは言えない。走れないゾンビならともかく、それなりに走るゾンビなんかに追いかけられたら何処まで体力が持つか分からない。それに今のこの場にいるメンバーを見る限り、体力がありそうなのはここに居る唯一の男の俺以外居ないのでマトモにゾンビと追いかけっこなんて出来ないだろう。そもそも外に出た瞬間に囲まれて詰む可能性だって少なからずある。
つまり移動は無理、残る手段は立て籠もり。
幸いにしてここには菜園と太陽光パネル、雨水タンクに高度な浄化施設がある。どれも普通の高校にはあまり必要性を感じないものではあるが、こんな普通じゃ起こりえない緊急事態が起きた今としては感謝の念しか思い浮かばない。
それに継いでの現段階の目標は生活区域の確保だろう。屋上では雨も凌げず、気温も大気に左右され、食料などは全くままならない。
出来る事ならば学校全体の安全を今からでも確保したいが…と思い透は下を見ると既にゾンビと思わしき奴らは開いていた校門を悠々と走り去り、レーンで走っていた陸上部やいつも通り練習していたサッカー部、野球部などに襲いかかってきている。この状況下だと、学校中が奴らに侵食されるのは時間の問題、いやもう侵食は始まっているのかも知れない。一応今のところはこの屋上の扉は思い鉄製な上鍵がかかっている為安全ではあるがいつまで持つか……。
神妙な顔で携帯とグラウンドに目線を行き来させる透を尻目に、変てこな帽子を被った女子生徒である丈槍由紀と悠里は今起こっていることをまだ知らないため、尚も平和な会話を続ける。
「悠里さんはいつもそこにいる先輩と菜園のお世話してるの?」
「ううん、今日はどうしてか誰も来ないのよね…。あとそこの先輩…というか透は帰宅部だから何もしてないわよ?いつも私か他の園芸部の部員と話してるの」
「部活入ってなのに部活に来てるんだ…園芸部見学部?」
「うん、確かにそうかもしれないわ。全く透も園芸部に入れば良いのに…」
そんな何でもない、日常会話を終わらせるかのように屋上の金属製のドアが唐突にドンドンと激しく叩かれる。その大きな音にその場にいた全員がそちらへと注目をする。唯一透だけはそれに対して一瞬心臓が止まるような感覚を覚える。
「…他の当番の子かしら?」
悠里は不思議に思いながらそう口にし、由紀も少し激しすぎるノックを不思議そうに扉を見つめる。佐倉先生は誰かと電話しているようで、そのドアを警戒しながらも電話に集中している。
…これは俺が行くしかないか。そう自分に言い聞かせると、不思議な事に先ほどまで感じてた緊張感や焦りが和らいでいく。
「誰かそこにいるのか!?」
気を持ち直した透は声を掛けながらドアへと全力で駆け寄る。もしかしたら生存者かもしれない、そんな希望を見据えながら。
「早く開けてくれ!もうすぐそこにまで奴等が迫ってる!!」
「今開ける!!」
生存者と確信した透はロックを素早く外しドアを開く。開いた先には体操服姿の女子が一人と、もう一人無事だった男子生徒が屋上へと走り込む。
そして透はドアを閉めようとして、後5cmというところにもう一人何かが居るのに気づく。先ほどの二人の影のせいで見えなかったのだ。目は白く濁り、歯と口の周りには血の残りがべたりと付いている。完全に奴らだった。
このまま閉めればドアの隙間に手を入れられてそのまま抉じ開けられると一瞬で直感した透は、血のこべり付いた歯をむき出しにして襲いかかってきたゾンビへとカウンターを入れるように大きく膝を曲げたヤクザキックを顔面へと叩き込む。すると、ゾンビは勢い良く後ろへと倒れ、その間にドアを思い切り閉めてロックをかける。
この扉は見た目より厚いのでそう簡単には破られないだろう、そう安心しつつも背後を警戒しながら先ほど助けた二人に目を向けた。
実は作者は受験生なので、応援とやる気次第で次を書くペースなどで変わると思います。なので感想を自由にお願いします!(露骨)