がっこうぐらし!(難易度:ナイトメア)   作:十円玉になりたい。

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名前を匿名にして投稿しているのにも関わらず沢山の感想ありがとうございます!返信は時間の都合により出来ませんが、それら全てを読ませてもらっていて元気をもらっています!本当にありがとうございます!



あと一言、なんかゾンビが思ってたより高性能になってしまった…


にわ みんなでたたかう

「あっ透!?」

 

そう声を上げた屋上に逃げてきてた片割れの男子生徒は、知り合いが助けてくれていたことに驚いたような声を上げる。

 

「あ、颯太じゃん。久しぶりだな」

 

透はそう軽く返す。先ほどこの二人が逃げ込んだ時に一瞬顔を見ていたので、そうではないかと半分くらい確信していたためかその声は特に意外性は無い平坦である。

 

 

「えっと…恵飛須沢さんと南茅部颯太君よね?一体何がどうなってるの?」

 

佐倉先生は未だ不透明な現状に対する緊張感から来る警戒心を持ちながらそう聞いた。悠里と透はこの二人が下の状況を直に見てきた生存者ということもあり、屋上より下の現状が知りたいと思って押し黙る。由紀は未だ状況が掴めず混乱しているため、疑問の声は上げても場を乱すような事は言わなかった。

そして颯太はその質問に対し、少し間を開けてから口を開く。

 

 

「…俺にもいまいち分かってないんだ。俺と胡桃はいつも通り陸上部に居たんだが、突然奴らが現れて部員たちを襲ってきたんだ…。しかも奴らの走る速度、並大抵じゃなかった。下手したら高校の全国大会レベルの速度で俺たちを追い回してきたんだ。最初は胡桃と一緒に数人以上の足音を背後に聞きながらひたすら走って逃げてて正直死ぬかと思ったけど、階段を上ると徐々に足音の数は減っていったから何とかここまで来れたって感じだ…。」

 

「…颯太、下はどうなってる?」

 

「…俺がいた時は奴らのせいで酷い有り様だったとしか言えない」

 

「そうか………」

 

 

再び沈黙が空間を支配する。しかしその沈黙は直ぐに、激しくドアを叩く音により霧散した。

 

「…おい、ここ大丈夫なのか!?突破されたりしないよな!?」

 

「それは多分だけど、大丈夫だと思うわ。この扉、前から思ってたけれどかなり厚いのよね…以前間違えて大きいシャベルを扉にぶつけた部員が居たけれど扉は凹みもしなかったわ」

 

「その部員はどうやってシャベルをぶつけたのかしら…」

 

悠里のその言葉と、いくら叩かれても全く変化していない鉄扉から幾分余裕が戻ったのか、佐倉先生はそんな軽い疑問の声を上げる。先程ならそんないつもの思考に戻ることも無かっただろう。しかしドアの前にゾンビが増え、一次関数的にドアをノックする音が益々激しくなっていっているにも関わらず実際ドアの方は殆どビクともしていない。

その事が佐倉先生のみならず、この場にいる全員の緊張感をある程度和らげていることは確かだった。

 

「…一応園芸部のロッカーを押してドアの前に置いておこう。万が一押し切られたら洒落にならないし」

 

「そうね、取り敢えず出来る限りのことはしましょう」

 

 

念には念を、それはこの場の全員にとっても死活問題だったので屋上にある園芸部の重い器具や用具を未だ鈍く叩かれる音がするドアの前に移動させる。

6人もいた事もあり太陽があまり動かない内にその作業は終わり、その後直ぐに悠里の提案から円になって話し合うことになった。

 

 

「まずは現状の確認をしましょう」

 

「…でもそれって大体分かってるんじゃ…」

 

「だけど情報の共有は必要でしょう?いざという時に情報の錯綜とかがあったら困るわ…」

 

胡桃の疑問に間を置かず悠里が答える。情報というのはどれだけあっても足りないものだ、特にこんな状況になってしまった今では正確な情報に対する重要性の比率もかなり重くなってしまっている。加えて無線や電波などを使う機器が使用不能になるのもあまり遠くない未来であると思われているからには、やはりこのようなやり取りで勧めていくのが今後のためにも賢明であると悠里は考えていた。

 

「だけど今言えることと言ったら、ゾンビ、走る、なう屋上って事くらいじゃないか?」

 

「お前は黙ってろよ颯太」

 

透はそつ言って颯太の頭を割りと力を込めて叩き、颯太は叩かれた部位を両手で抑える。本気で痛かったようだった。

 

 

「…私、さっき職員室の先生と電話で話したけど、聞いた限りやっぱり職員室も似たような状況になってるっぽいわ………」

 

「因みにその話をしてた先生は……すみません」

 

悠里は佐倉先生に質問投げかけたが、その沈痛な表情を見て大まかに察する。こんな状況だといくら職員室が中から鍵がかけられるとしても直ぐにドアそのものが突破されてしまうだろう。そしてその中の人たちがどうなってしまうかも容易に想像がつく。

 

「…めぐねぇ、これって本当に現実なのかな…?本当は夢だったりしないのかな…!」

 

 

由紀は涙を目に溜めながらその場で唯一面識の深い佐倉先生へと話しかける。

由紀には今までの穏やかな日々がものの十分足らずで破壊し尽くされたことが信じられなかった。当然それはこの場にいる、いやこの騒動に巻き込まれた被害者全員が思っていることだろう。

しかし由紀はこれらの事件を現実に直視した今でも受け入れることはできなかった。だが、全て嘘で、夢で、幻だと信じて目を瞑っても耳から聞こえてくるゾンビの呻き声から脳裏ではその悲惨な現状が現実に起きているものだと嫌でも理解しようとしてしまう。

 

ーーーううん、やっぱりこれは夢だ。深い深い、だけどたった一晩限りの夢。私はこの夢から覚めたらまた何時ものように朝ごはんを食べて、学校に行って、授業を受けるんだ。そして放課後にめぐねえの補修を受けて、家に帰ってお菓子を食べる。そうだよ、そうじゃなかったらおかしいもん…!

 

 

 

 

「いいや、さっき見ただろ?今起こっている血みどろの地獄絵図は全部現実だ」

 

だが、そんな由紀の願望を一言で切り捨てた。勿論佐倉先生ではない、そして悠里でも胡桃でも颯太でもなかった。

 

「…透、今の言い方は無いんじゃないのか?こんな小さな女の子にそこまで切り捨てた言い方は無いだろ」

 

「だけど今現実逃避されても困るんだ。まだ危機的な状況は続いてるからその解決もしなきゃならないし」

 

「それでもこんなの酷すぎるだろ!もっとやり用があったはずだ!」

 

二人の間に険悪な雰囲気が漂い始める。現状の解決を最優先する透に対して、それ以外の事はまるで度外視するかのような透に反発心を感じた颯太。互いに無言で睨み合う。

その間で大きく泣き始めた由紀を抱きしめ頭を撫でる佐倉先生。胡桃は困ったような表情で二人を見比べていた。

 

そして、それぞれの考えが錯綜しあうこの場を一旦収めつけようと悠里が動こうとした時にそれは起こった。

 

 

「……!!!シャベルだ!シャベルを持て!」

 

突然透はそう言いながら急いで立ち上がり、ドアを塞ぐのに利用していたロッカーからシャベルを持ち出してドアとは反対側へと構える。

当然その行動の奇怪さに透以外のその場の全員は付いて行けず、代表して颯太がその行動の意図を尋ねる。

 

「…おいどうしたんだ?」

 

「馬鹿野郎!早く周りを見て確認したらシャベルを持て!」

 

颯太はその上からの発言に軽い苛つきを覚えながら、しかし切羽詰まった声でそう言う透に仕方なく従い取り敢えず後ろを振り返る。

すると、フラフラとふらついている一つの人影が菜園の奥に存在していた。その影は未だ顔を俯かせている為誰かは分からないが、それが着ている青色のパーカーの真ん中には腹に大きく食い破られたような穴が空いており、それは内臓や腸などが見えてしまうほどだった。その傷からは血がポトリポトリと滴っており、常人ならば既に動けなくなっているはずで、寧ろ普通に致命傷で死亡していてもおかしくない傷だ。

 

颯太にも一瞬でその影が誰かは分からないが、何かは分かった。

奴らだ。

 

 

「…!!!全員ドア側に寄って一応シャベル持ってて!」

 

颯太もそう言いながら先ほどの透のように急いでシャベルをロッカーから取り、構える。

ドアからのノックがいつの間にか消えていたのに颯太は気づくが、今はそんな事を考えている余裕はないと判断して頭の隅に置いておく。

 

残った他の女子陣も周りを確認し、それに気づいて今のところ一番安全である硬いドアをバックにする。颯太はそうすることで一番憂慮すべき背後からの襲撃を無くせると考えたのだ。

 

 

佐倉先生は由紀を慰めながらロッカーの中身を見ると、残りのシャベルは2つしかなかった。

 

「…ん…!これ、重い…!」

 

一先ず佐倉先生はシャベルを握って持ってみるがシャベルを上手く中断で構えることが出来ない。元々幼い頃から運動派ではなく、教師になった現在は殆どと言っていいほど運動していなかった佐倉先生にはこの大きなシャベルを何とか持ち上げるので精一杯であった。

 

「…じゃあ私、一つ持っていて良いでしょうか?一応園芸部でこのシャベル使い慣れてるので、大丈夫だと思います」

 

「そうね…お願いしようかしら…」

 

その言葉と一緒に佐倉先生はシャベルを構えようとするのを止め、悠里にシャベルを渡す。悠里はそのままシャベルを持ち上げ、いつでも奴らが来ても良いように構えを作っておく。

悠里も佐倉先生ほどでは無いにせよ、そこまで力があると言うわけではない。確かに園芸部でシャベルは使ってはいたがそう頻繁なものでもないし、その上力のある透や部員たちに任せてしまうことだって少なくなかった。そんな事実から悠里は若干の不安を感じていた。

 

 

「この感じだとあとシャベルを取るのは私だな…」

 

残ったのは自分とめぐねぇと知らない女子生徒、めぐねぇはさっき自分から辞退したしこの女の子の体型からだとこんな荒事に向いている様には全く見えないな…。そう思い胡桃は残った中で一番戦えそうなのは自分だと冷静に判断してシャベルをロッカーから取る。

 

「恵飛須沢さん…私、先生なのに…ごめんなさい…」

 

「気にすんなってめぐねぇ。私は運動得意だし、動かないでじっと守られてるよりは自分から守りに行く方が性に合ってるからさ」

 

そう胡桃は軽く言うが、その内心は揺れに揺れていた。

未知の現象、そして元は同級生で今は化け物となってしまったモノと対峙して、殺すことに対する恐怖。そんな気持ちから自然と今シャベルを握りしめたばかりの手のひらが冷や汗で一杯になるのを感じてしまう。

出来ることならばこの状況から逃げてしまいたい、だがそれは二人の命を捨てると共に、目の前で今戦おうとしている"好きな先輩"からも逃げてしまうことを意味する。

 

 

ーーーそれじゃあ、二重の意味で絶対に逃げられないじゃん…。…なら手っ取り早く、覚悟を決める!

 

 

戦おう事を決意し、よりシャベルを握る手の力を強くした胡桃は先にシャベルを持っていた悠里の隣に並ぶ。

 

「ええと…確か恵飛須沢さんだったわよね?私は若狭悠里っていうの。今言うのは少し変かもしれないけど…、これから宜しくね」

 

「ああ、こちらこそ宜しく悠里さん」

 

 

「ウラァァァァァ!!」

 

そんな会話をしている間に前方では停滞していた状況が変化していた。ゾンビが遂に走り始めたのだ。それを日切りに透もシャベルを思い切り上段へと上げて首を折るべく走り始める。

 

 

「…こいつら何処から!?」

 

また颯太も同時に、他に侵入してきたゾンビを発見してシャベルで襲いかかっていた。ここは屋上、謂わば四階である。地上からの高さ的にもかなりあるのにどうして…そんな当たり前の考えを持ちながら颯太はまだ走ってきていないゾンビの首を狙いにいった。

 

 

 

透は走ってくるゾンビと自分との距離を予測して、シャベルの射程距離に入った瞬間に一思いにその金属部分をその首へと流れるように打ち込む。首は見事に圧し折られ、ゾンビは小さく呻きながら倒れる。

 

透はその倒れた哀れな姿に対し、油断なくその頭を狙いシャベルを振り下ろす。確実に死んでいなかった場合のことを考慮してだ。もしまだ生きていて、立ち上がれるとしたらそれはつまりバックアタックというゾンビにとって千載一遇のチャンスを許してしまうことになる。

地獄になったこの世界では不注意の対価は誰かの命で償うしかない。そうなるのを恐れての行動だった。

 

そうして血の海となった足元を透は見てみると、グロいとか、吐き気とか、そんな事を感じる暇より早く最も重大な事実を発見する。

 

 

ーーゾンビの爪が鋭く尖り、まるで雪山登山にでも使うアイスピックのようなのだ。

 

 

「まさかこいつら…これを使ってここまで登ってきたってことか!?」

 

そんな予想をして透は末恐ろしくなる。幾ら高い場所に逃げようともこの爪がある限りは殆ど効果がなくなってしまうからだ。即ち、これが意味するところはこの屋上も気付かない内から危険地帯であったということだった。

 

 

「うっ…ぐぁ…!」

 

「…!颯太!」

 

颯太のうめき声が聞こえてきたのでそちらを向いてみれば、颯太がゾンビに押さえ付けられ今にも噛まれそうになっているのを透は発見する。何とかゾンビの口にシャベルを嵌めて噛まれることは阻止してはいるものの、いつゾンビに抵抗されそれに颯太が蹂躙されてしまうかは分からない。

 

「そこをどきやがれぇぇ!」

 

それを見た透はすぐに颯太の元へと走りつけ、ゾンビの首に重い一撃を横殴りの要領で叩き込み、颯太に乗っかっていたゾンビを退かした上で素早く追撃して頭にシャベルを振り下ろす。

 

 

「わ、悪い透…相手が人間の形をしてるもんだから、つい振り下ろす直前に寸止めしちまって……気付いたらああなってた…」

 

颯太にはシャベルを振りかぶり首を折る直前の一瞬、敵対している相手が不意に普通の生きている人間に見えたのだ。そいつはツナギを着ていたからにして学校の関係者ではなく、かつ顔も血で赤く染まっていたが、どうしてか普通の生を享受している人間に見えてしまったのだ。

 

そしてその一瞬が命取りだった。

 

その後は見た目より予想以上に力強いゾンビの腕力に押し負けて押され、何とかシャベルを盾代わりにして死の危機だけは防ぐことは出来たものの力強いゾンビから逃げることができなかった。透の助けが無かったらそのまま押されて殺されていただろう。

 

 

「そんな事よりも怪我はないか?」

 

「…ああ、アイツの鋭い爪が掠った以外は何も問題は無い」

 

その言葉通り、颯太の顔には浅い切り傷があった。透はこれを軽傷なので颯太と同じように問題ないと判断する。加えるとそこにはそもそも屋上には治療道具は無いためこの傷を処置することが出来ないという理由もあった。

 

「…気を付けろよ?男は俺とお前以外居ないんだからな?」

 

「分かってるさ…」

 

そんな会話をしつつ周りを観察すれば、再び二体のゾンビが屋上の端に立っているのが視界に入ってきた。フラフラとしていて、かつゆっくりではあるが確かに足取りは此方へと向かってきている。走り始めるのも時間の問題だろう。

 

「というかアイツら何で最初から走んないんだろうな?」

 

「さあな…案外映画とは違ってスタミナが無限じゃなかったりするんじゃないか?」

 

「…かもしれないね。じゃ、行こうか…!」

 

「そうだな…!」

 

これから長い間相棒となるであろうその武器をガッシリと掴み、未だフラフラと千鳥足で歩いているゾンビに二人は全力で走り出した。




さて、次回はいつ投稿できだろうか……受験勉強の合間縫って書いてるので中々ペースは遅いと思われますがご容赦ください

余談ですが、作中に出てきた南茅部颯太くんの名字は(みなみかやべ)と読みます。読めたでしょうか?
因みにこの名前、十秒で決めました。その意味、あなたには分かりますか…?
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