切り裂きジャックの孫   作:猫つまみ

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戦闘

 小柄な人物は長老達が驚いているのを確認すると、持っていた鎌をそっと離す。すると再び雲の様な煙が現れ、その雲が人の形を成していく。

 

「知ってるんやろ? 俺ら【リィン】家の事を」

 

 鎌だった筈の存在が真紅の髪を形成し、最終的には人の形へと戻っていった。

 

 ヨシュアが長老へと目線を向けると、他の者達までもが長老に注目する。

 

「……知っているも何も【リィン】と言えば、かの有名なジャックの一族。ワシは詳しくは知りませぬが、村に伝わっている伝承ならば、分かりますぞい」

 

 ヨシュアとサクヤは小さく頷き、静かに座る。

 

「その昔……この世界に迷い込んだ異世界人を、元の世界へと送り届けたと伝えられていますのお。そして、その力で沢山の魔物を倒したとも……」

 

 長老は長い髭を器用に肩へと乗せ、運ばれて来たお茶を飲みながらノンビリと話す。

 

「……まあ間違いでは、あらへんな。せやけど種については、世界樹が植えてある3つの町や村の一番偉いやつが管理しとるって聞いたで? だから、あんたに交渉持ちかけたんや」

「ヨシュア……貴方の言葉はかなり聞き取りにくいだろうから、ちょっと黙ってて」

 

 少し怒った様な口調で、ヨシュアの口に茶菓子を放り込む。

 

「失礼。話を戻します……種は、僕達一族しか扱えない。僕達以外がその種を植えても、絶対に生えて来る事はない。それはお分かりでしょう? 無理にとは言いません。こちらも、きちんと見返りを用意してありますし……」

 

 見返りと言われ、長老の眉はピクリと反応をした

 

「世界樹を活性化させる。これでどうでしょう? 知ってるかは分かりませんが、世界樹とて永遠に生きれる訳ではありません。寿命という物はあります」

 

 淡々と話すサクヤだったが、一瞬だけその視線をタクマへと向ける。それに気付くタクマだったが、直ぐに目を反らされたので、勘違いだと思ってしまい気にも止めなかった。

 

「まあ、今すぐに結論出せちゅう訳やない。俺らは、学校っちゅうもんに興味あるさかい。こいつが暫くの間体験入学するさかいにな。その間に決めてくれればええで」

 

 ヨシュアのなまりが混ざった言葉を上手く聞き取れなかったのは、長老だけではなくタクマもマリアも同じだった。

 

「はあ~。後で僕が通訳しますので、ご安心下さい」

 

 半ば諦めているかの様な態度のサクヤは、ヨシュアの耳たぶを引っ張りながら謝罪する。

 

「お話を戻しましょう。学校云々は追々お話しますが……世界樹です。長老……貴方なら、気付いているのでしょう? 世界樹に寿命が近付いている事を」

 

 長老は眉を動かし、野次馬だった村人は騒ぎ始めてしまう。

 

「……お客人方。余り村の連中を怯えさせるのは、感心しませんなあ」

 

 髭を触りながら片目を瞑り、少し怒った口調でサクヤを睨む。

 

「……勿論、失礼な事を言っているのは承知しています。ですが……」

「まあ、まちいーや……堪忍な? こいつ、余り人慣れしてないせいか、少し独りよがりな所があるんや」

 

 口答えをするかの様な態度になっていたサクヤの腕を引っ張り、ヨシュアは頭を下げた。

 サクヤは苦虫をかじる様な表情をし、バツが悪そうに長老から目を反らす。

 ふてくされてしまったサクヤの頭を優しく撫でてから、長老との会話を進める。

 

「こいつにも、色々と事情っちゅうもんがあるんや。勿論……俺にもな」

 

 何かを含む言葉を発したヨシュアの笑顔は、憂いを帯びた表情へと変わっていた。

 

 静寂だけが村を包み込もうとした時、長老の家の外から何かが聞こえて来た。

 

「ん? 何事じゃ?」

 

 外を確かめ様と長老が立ち上がった時、家畜の馬の鳴き声が村全体へと警報の様に響き渡る。

 

 村人は動揺しながらも、女性と子供と老人を家の中へ避難させ、若い男や普段農業等をしている中年男性達が桑や鎌を手に持ち、馬の鳴き声がする方へ向かおうとするが、ヨシュアが止めに入った。

 

「待ちや! 長老。こんな事は、日常茶飯事なんか?」

 

 長老すらこんな事を予想していなかったらしく、慌てて首を左右に振った。

 

 長老の態度で事の重大さを察知したヨシュアはサクヤの腕を掴み、自らも立ち上がる。

 

「おい、村の連中。よく聞きや! これは、世界樹の結界が弱まった影響の可能性がある」

 

 掴まれた腕を小さな風が生まれる程度の力で振りほどいたサクヤも、その言葉に続く。

 

「結界が弱まった末路………なのでしょうね」

 

 客間から外へと繋がる戸が開いていたので、二人はそこから外へと出た。

 

「え? あの……」

「おい! あんたら、どうする気だよ!?」

 

 マリアとタクマは、二人に続く形で後を付いていく。

 

「あ? 何で付いて来るんや?」

「邪魔。バカ。向こう見ず」

 

 ヨシュアは、付いて来てしまう二人を咎めるかの様に。サクヤは主に、タクマに向かって悪意の様な毒を吐く。

 

「ほっとけねーだろ!? あんたらの口振りからすると……」

 

 馬の鳴き声が近付いた時四人はスピードを緩め、ある者を目撃する。

 

「……魔物」

 

 タクマが呟くと、マリアは「ひっ!」という小さな悲鳴をあげた。

 

 数頭いたであろう馬小屋には馬だったであろう死体と共に、吐きそうになる程不快な血の匂いが散乱し、血の海と化していた。

 頭がなかったり、内臓を剥き出しにされていたりと、とても女の子のマリアが見て喜べる光景ではなかった。

 

 唯一無事だったであろう仔馬は怯えている為か、小屋の隅で生まれたての小鹿の様に震えていた。

 

「おいおい……ゴーレムなんて、聞いてへんで!?」

 

 鋼の身体は小屋の隙間から射し込む太陽の光を反射させ、鏡の様にタクマ達を写し出す。

 目玉と言える部分は1つしかなく、獰猛な獣を思わせる赤い目は点滅していた。

 

「おい。茶色い髪のヤローと、可愛い女の子。あんたらは、戦えたりするんか?」

 

 タクマとマリアに対する呼び方にムッとはする物の、言い争ってる場合ではないと感じたタクマは、側にあった細身の木の枝を手に持った。

 

「……学校で剣術ならってるから、基礎程度なら」

 

 少しは戦えると認識したヨシュアは、ニッと笑う。

 

「わ……私は、回復魔法しか……」

「じゃあ、下がってろ」

 

 サクヤはマリアの前に出て、後ろへ下がる様に促す。

 自分では役に立たないと感じたマリアは口答えする事なく、コクリと頷いて下がる。

 

「なるべく被害は、最小限にするんや。ええな!?」

 

 ヨシュアの言葉が聞こえているかの様に、ゴーレ

ムの目はより一層赤く獸染みて行く。

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