入学二日目。
兵部が一年A組の教室に入ると、笑い声や雑談の声でがやがやとしていた。
多くの人が昨日のホームルームに出席したのだろうか、すでにいくつかの友達グループが形成されつつあった。
「おはようございます、兵部さん」
声をかけられ兵部が振り返ると、ほのかと雫がいた。
「おはよ」
「ああ、おはよう」
その後、兵部は二人に昨日のホームルームで決まった席を教えてもらい席についた。
「私はここ」
「私はここです」
雫は兵部の隣の席に腰を下ろし、ほのかはその前の席についた。
「なんだ、また隣か。ま、一年よろしく」
「なんだとは心外」
「そうですよ。いなかった兵部さんのために雫がわざわざ席を取っておいてくれたんですよ」
「ん。でも、ほのかもノリノリだった」
そんな話をしていると、兵部の前の席に見覚えのある人物が腰をおろし、話しかけてきた。
「おはよう。雫、ほのか」
「あ、おはよー」
「おはよ」
「ところで、そちらの方は?」
「俺は兵部惣介。はじめまして。確かアンタは新入生総代の……」
「司波深雪よ」
前の席には多くの男子の憧れである司波深雪。
隣には表情こそ少ないもののクール系美少女である北山雫。
斜め前には大人しくやさしい感じの美少女である光井ほのか。
兵部を囲むようにそれぞれタイプの違う美少女が位置している。
「まさかこう美少女に囲まれようとは……北山さん、よくやった!」
兵部は雫に向かって親指を立てた。
「ん。兵部さんは私に感謝すべき」
そう軽口をたたいているうちに予鈴がなり、生徒たちが席に着き始める。
皆が席に着くと、教室前面のスクリーンにメッセージが映し出された。
[――5分後にオリエンテーションを始めますので、自席で待機してください。IDカードを端末にセットしていない生徒は、速やかにセットしてください――]
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授業のカリキュラムや校内施設についてのガイダンスを受け、選択科目の履修登録を行い、順調にオリエンテーションは終了した。
その後、兵部はこれからの勉強のために資料の目録を眺めつつ、1時間ほど時間を潰した。
「さてと、食堂にでも行くか」
雫、ほのか、深雪の3名は既に教室から出て行っていた。
おそらく工房や闘技場などの校内施設でも見学しに行っているのだろう。
兵部は仕方ないので一人で食堂に向かった。
兵部が食堂に到着すると、割りと空いていて楽に席を確保することができそうだった。
「早く来たかいがあったな」
兵部は好物のカレーを注文し、席へと移動する。
そのときちょうど雫とほのかも食堂に入ってくるところだった。
「あっ、北山さんに光井さん。そこ、席取っとくから一緒に食べようよ」
「あ、兵部さん、わかりました!」
「ん。了解」
それから少しして、三人は同じテーブルで食べ始めた。
「ところで二人はどこ行ってたんだ?」
「闘技場」
「意外だな。二人ともちゃんと戦えんのか?」
「心外。私だってやるときはやる」
「そうですよ。あまりみくびらないでください兵部さん。私たちだっていざとなったら戦えるんです」
そうして兵部たちが話しているうちに、食堂が混雑してきてガヤガヤとし始めた。
さらに遠くのほうではなにやら一科生と二科生がもめているようだった。
「お、あれ司波さんじゃないか?」
「あ、ホントですね。何かもめているみたいです」
「大方、深雪と二科生が一緒に昼食を食べているのが気に入らない、一科の男子が文句言ったんだと思う」
「そうみたいだな。どうでもいいや。食堂も混雑してきたし、俺たちはもう教室に帰らないか?」
「それがいい」
「私もそうします」
そうして三人はトラブルから逃げるように教室に帰っていった。
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「いい加減に諦めたらどうなんですか?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挿むことじゃないでしょう」
(なんだこの状況は……司波さんもいるし…。あの人実はトラブルメーカーなのか?)
兵部がこれから帰宅しようとしていたところ、校門近くで昼に食堂で言い争っていた面々がまたも口論していた。
(邪魔だなぁ。しょうがない、避けて通るか……あ、光井さんと北山さんもいるじゃないか)
兵部がゆっくりと歩きながら傍観している間に、状況は悪化していった。
「だったら力の差を教えてやる!」
一科生の一人がCADを起動させる。
しかし、魔法を発動する前に二科の赤い髪の女子に弾き飛ばされた。
「この間合いなら身体を動かした方が速いのよね」
しかし、それに続き数人の一科の生徒がCADを起動させた。
「やめてください!」
それを止めるために、ほのかまでもCADを起動させる。
(――仕方ない、か)
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その瞬間、すべての魔法が不発した。
「……魔法が発動しない!?」
「領域干渉か!?」
深雪は一瞬、達也がやったのかと思ったが、そうではなかった。
いったい何が起こったのか、深雪は達也に視線を送る。
「お兄様?」
「あいつみたいだな」
達也がそう言って指をさしたところには、遠くの方から歩いてくる真っ白な男がいた。