魔法科高校の桁外れ   作:兵部少佐

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第3話 棚に上げる

(あいつ、何者だ?あの距離からあれほどの領域干渉ができるとは……。魔法力は深雪以上か。あいつ、本当に人間か?)

 

達也は自身の化け物ぶりは棚に上げて、目の前の白髪の少年に人外認定を下していた。

 

「深雪、あいつ知っているか?」

「はい……私と同じクラスで兵部惣介と名乗っておりました。これほどの魔法力を持っていたとは、知りませんでしたが……」

「兵部惣介か……」

 

---

 

「お、お前!お前もブルームだろ!なぜ邪魔をした!!」

 

森崎が吼える。

 

「何言ってるんだ?ブルームだろうがウィードだろうが、自衛目的以外の魔法による対人攻撃は犯罪だぞ?わざわざ未遂で終わらせてやったんだ。むしろ感謝してほしいよ」

 

兵部は心底心外だといった感じで肩をすくめる。

 

「なんだと!」

 

冷静さを著しく欠いている森崎に対し、兵部はため息をつく。

 

「止めなさい!生徒会です!」

 

そう言って現れたのは生徒会長の七草真由美だった。

 

「お前たち、1-Aと1-Eの生徒だな。事情を聞きます。全員ついてきなさい」

 

真由美の隣に立った生徒が硬質な声でそう命じた。

彼女は風紀委員長の渡辺摩利という名の三年生だ。

摩利のCADは既に起動式の展開を完了していて、抵抗すれば即座に取り押さえられるように準備している。

先ほどまで争っていた面々は言葉なく、硬直していた。

兵部は面倒くさいことになった、と頭を抱える。

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

「悪ふざけ?」

 

達也が摩利の前に歩み出て、弁明を始めた。

 

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらうだけのつもりだったんですが……」

 

達也と摩利の間で数度やり取りをした末、厳重注意でお開きとなった。

 

「僕はお前を認めないぞ、司波達也。司波さんは、僕たちと一緒にいるべきなんだ」

 

森崎がそう言うと、堪えかねた兵部が口を挟んだ。

 

「おい、森崎とかいったな。お前そんなくだらないことのために揉めていたのか?巻き込まれた俺の身にもなれ。わけのわからないこと言ってないで、早くここから立ち去れ!」

 

兵部の周りで激しく風が吹き荒れる。

魔法を使ったわけではない。

それは兵部の事象干渉力の賜物であった。

森崎とその取り巻きたちは言い返すこともできず、走り去っていった。

兵部はそれを見て、一転して雫、ほのかに話しかける。

 

「北山さん、光井さん、俺たちももう帰ろう」

「ん。でも少し待って。ほのかが少し用があるみたい」

 

ほのかが帰ろうとする達也たちの前に立ち、頭を下げた。

 

「光井ほのかです。さっきは失礼なことを言ってすみませんでした」

 

達也たちはいきなり頭を下げられて面食らっていた。

そして、さらにほのかは恐る恐る達也たちにたずねる。

 

「……駅までご一緒してもいいですか?」

 

少し離れたところで成り行きを見ていた兵部と雫は、そのセリフに驚きお互いの顔を見合わせた。

 

「……どうするんだ?北山さん」

「……同行する」

「なーる。じゃ俺も」

 

---

 

駅までの空気は微妙な空気だった。

メンバーは兵部、雫、ほのか、深雪のA組の四人と、達也、美月、エリカ、レオのE組の四人。

つい先ほどまで達也が深雪のCADを調整しているという話題から、CADについての話題で盛り上がっていたが、その話にも一区切りしたところで、達也が兵部に話を振った。

 

「兵部、お前アルビノだろ?紫外線は大丈夫なのか?」

「達也君、なに?アルビノって」

 

エリカが質問する。

反応からすると、他の面々もわかっていないようだ。

 

「先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患だ。メラニン色素を持ってないため、肌や髪が白く、血液の色が透けて瞳孔が赤いのが特徴となる」

「へー、なるほど。それで兵部君は真っ白なんだ」

 

エリカが感心したようにそうつぶやく。

 

「しかし、本来メラニンというのは紫外線から身体を守るためにあるものだ。それが無いということは紫外線に対して無防備だということだ。必然的に皮膚ガンなどのリスクが高まるんだが、こんなに長時間外に出ていて大丈夫なのか?」

 

みんなの視線が兵部に集まる。

 

「大丈夫。俺には紫外線は当たらないからね」

「は?」

 

兵部以外全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。

 

「仕方ないな。ちょっとレオ、俺を思いっきり殴ってみてよ」

「は?え、大丈夫なのか?」

「いいからいいから」

「……わかったよ、後から文句言うなよッ!」

 

レオが思い切り拳を振り上げ、兵部に殴りかかる。

周りはハラハラしながら見ていたが、まさにレオの拳が兵部の顔面に当たる、というところで信じられない光景を目にした。

レオの拳が兵部に当たった瞬間、弾かれた、いや跳ね返されたのだ。

兵部は涼しい顔をして直立不動、ノーダメージ。

殴ったレオの拳のほうがダメージを受けている。

 

「……なるほどな」

「お兄様、どういうことですか?」

「兵部、お前、『反射』しているな?」

 

兵部はその問いかけにうなずく。

 

「俺は普段、俺に有害なものをすべて反射している。そういう先天性スキルだ」

「え、それで紫外線も反射してるの?」

 

エリカが兵部にたずねる。

兵部はまたも是と返した。

 

「そうだ。紫外線どころか有害な波長の電磁波、花粉、病原菌など俺に害があるものは全て反射している。仮に狙撃されたとしても反射する。俺には物理攻撃は一切効かないんだよ」

「なにそれズルーい!私の紫外線も弾きなさいよ!」

「……ズル過ぎ。どんなチート」

 

兵部は主に女性陣から非難の目を向けられた。

 

「魔法で攻撃された場合はどうなるんだ?」

 

達也から素朴な疑問が投げかけられた。

 

「わからない。俺はこれまで魔法で攻撃されたことなんか無いからね。大抵は俺の魔法力的に領域干渉や情報強化でなんとかなるし」

 

普通に考えて魔法で攻撃されることなど、そうそうあるものじゃない。

魔法競技の部活に入っているなら別だが、中学までは普通そのようなことはしない。

あるとすれば、軍関係者や何かわけありの人物だ。

失言だったか、と一瞬達也は思ったが、そのことを気にする者はその場にはおらず、ホッとする。

 

「確かに、あの領域干渉はすごかった。ほのかの魔法ですら発動しなかった」

 

雫が淡々と述べる。

 

「そうですよ。しかもあんな距離から領域干渉だなんて……。私、魔法は得意な方だと思ってたんですけど、自信なくなりそうです……」

「ハハ、俺のは例外だと考えておいてくれよ」

「例外というか、もはや人外」

 

雫の的確なツッコミが決まったところで、一同は駅に到着した。

 

---

 

深雪とともに帰りの電車に乗り込んだ達也は、先ほど知り合った人物について考えていた。

 

「兵部惣介……か」

「どうかしましたか?お兄様」

「いや、少し兵部について考えていただけだよ」

「兵部さんですか……私も今朝、教室で挨拶したぐらいですから、彼についてはよくわかりませんが……。確かに便利な能力を持っていましたね。さらにあれほどの魔法力とは……」

「ああ、おそらく魔法力は深雪よりはるかに上だろう。信じがたいことだが、目の前で見た以上信じるしかない」

 

達也の経験上、あれほど離れた地点から領域干渉で魔法の発動を阻害させるほどの魔法力を持つ者など、見たことがなかった。

十師族すら遥かに越える魔法力。

まさに桁が違う。

 

「そしてあらゆる物を反射するという先天性スキル」

「十文字家のファランクスも強力な防御魔法ですが……」

「兵部惣介の能力より優れているとは思えないな。しかもそれほどに強力な先天性スキルを持って生まれてくれば、普通は魔法演算領域が埋まってしまい、他の魔法は使えなくなるはず。俺のようにな」

「お兄様……」

「しかし兵部はあれほどの魔法力を持っている。信じられんほどの莫大な魔法演算領域を持っているのだろう」

 

(しかも、あのあらゆるものを反射する能力、本質はもっと違うところにあるのではないか。そんな気がしてならない)

 

「何より、あれほどの力を持っていながら、名前すら聞いたことがないということが不自然だ。一応、調べておいたほうがいいかもしれないな。深雪も何か気がついたことがあったら教えてくれ」

「はい、お兄様」

 

達也は自分のことは棚に上げ、兵部を『化け物』カテゴリーに分類するのであった。

 

 

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