昨日は模試があり、更新できませんでした。
兵部は風紀委員会本部に向かっていた。
第一高校では今日から1週間、クラブの新入部員獲得合戦が始まる。
この期間はただでさえ勧誘が激しいなかで、デモンストレーション用に特別にCADの携行が許可されているため、無法地帯と化してしまう。
そういう事情もあり、違反者の取り締まりや乱闘の鎮圧のため、風紀委員が総動員されるのだ。
兵部が本部に入ると、すでにあの男がいた。
「な、何故お前がここにいる!」
「いや、それはいくらなんでも非常識だろう」
司波達也だった。
「……冗談だよ、達也。真面目に捉えんなって」
「はぁ……」
兵部はへらっとそう言った。
「なんか言わなきゃいけないような気がしてさ」
「よくわからんやつだな……」
達也はペースを乱され頭を抱える。
しかし、そこには先日までの兵部への警戒はすっかり無くなっていた。
それからまもなく、2人の三年生が入ってきて、風紀委員が全員揃ったところで摩利が立ち上がった。
「そのままで聞いてくれ。今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間がやってきた。今年は幸い、卒業生分の補充が間に合った。紹介しよう。立て」
兵部、達也がスッと立ち上がった。
「1-Aの兵部惣介と1-Eの司波達也だ」
「役に立つんですか?」
そう発言したのは2年の岡田だ。
言外には二科生が役に立つのか、という意味が感じ取れた。
しかしこの程度のことは予想の範囲内であった。
「ああ、心配するな。2人とも使えるヤツだ。司波の腕前はこの目で見ているしな」
他に言いたいことのあるヤツはいるか?と続ける。
摩利は全体を見渡して、発言する者がいないことを確認する。
「よろしい。ではさっそく行動に移ってくれ。兵部、司波の両名については私から説明する。他の者は、出動!」
摩利、兵部、達也以外が部屋から出たところで、摩利が二人に風紀委員の腕章と薄型ビデオレコーダーを渡した。
レコーダーは胸ポケットに入れるとちょうどレンズが外に出て、撮影できるようになっている。
次に摩利は委員会用の通信コードを二人の携帯端末に送信した。
これで指示を受けたり、報告をしたりする。
「渡辺さんのプライベートナンバーは頂けないんですか?」
「あいにく私は誰彼かまわず番号を渡すほど、軽い女ではないんでな」
「えー。じゃあ達也は?」
「俺は別にかまわないが……」
兵部と達也が互いの番号を交換したのち、
二人は風紀委員のCADの携行と不正使用をした場合の罰則について説明を受けた。
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二人は部活連本部へ行く摩利と分かれた。
「しかし、達也、お前もCAD二機同時に扱えるんだな」
「その言い方だと、お前もできるのか?」
「まあな。大抵、片方は情報強化や領域干渉に使って、もう片方で攻撃、という形が多いかな。達也もそんな感じか?」
「いや、俺はお前みたいに魔法力が高くないからな。そういう使い方はできないんだ」
「ふーん。どうやって使うのか気になるところだけど……まあいいや」
そろそろ俺たちも行かないとな、そう兵部が言って二人は分かれた。
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兵部が巡回に出たときには、既に外はお祭り騒ぎであった。
「バカ騒ぎ」とはまさにこのことである。
これからのことを想像して若干憂鬱になった兵部であるが、気合を入れなおして、改めて現状を把握する。
すると、人ごみの中で特に人が密集している場所があることに気づいた。
「……あれは…北山さんと光井さん…だよな」
その場所の中心には雫とほのかがいた。
どうやら二人に対する勧誘が激しすぎて、脱出できないようだ。
――ある者は腕を引っ張り、ある者は肩を引っ張り、またある者は後ろから抱きつく――
ドン引きの獲物の奪い合いが行われているのを見かねて、兵部は地面に足を叩きつける。
兵部の足元から二人の下まで、地面が何か下から突き上げられたかのように捲れあがった。
何が起きたのか理解できず、群がっていた者たちは一歩身を引き、結果的に兵部は二人までの道を作ることに成功する。
「風紀委員だ!過剰な勧誘は禁止だぞ!二人から離れろ!!」
「兵部さん!」
「……助かった」
兵部はそう警告しながら、歩いて近づいていく。
それを見て、雫とほのかは安心して脱力した。
もう大丈夫、そう二人が思ったとき、不意に二人は抱え上げられた。
そこにはスケートボードに乗って、ほのかを抱えた女子生徒・萬谷颯季と、雫を抱えた女子生徒・風祭涼歌がいた。
そのあまりの手際のよさに、兵部が一瞬呆けていると、二人はそのままスケートボードに乗り、ものすごいスピードで逃げていった。
「バイアスロン部だ!」
「取られた!」
と、周りが騒ぐ。
(なぜこう面倒くさいことになるのだろうか……。)
兵部の怒りゲージは次第に高まっていった。
「……ブチ、殺す」
そうつぶやき地面を蹴ると、兵部の体は地面に水平に飛行し始めた。
「飛行魔法!?」
「そんな馬鹿な!?」
などと騒ぐものもいるが、今の兵部には聞こえない。
兵部の目に映るのはスケボに乗る二人の人攫いのみ。
「わっ!兵部さんがものすごい怒っている!」
「なんか空飛んでる……相変わらずムチャクチャ」
ほのかと雫は後ろを確認し、そう言うと、
颯季、涼歌の二人も驚き、感心したかのようにつぶやいた。
「風紀委員の新入りか……?また凄いのが入ったもんだな」
「そうね。でもそう簡単には捕まらないわよ」
涼歌はCADに手を伸ばす。
「新人風紀委員のお手並み拝見と行きましょうか」
加速・移動系の魔法だ。
竜巻状の気流が兵部を襲う。
しかし、兵部はそこに正面から突っ込み、悠々と突破する。
「うそっ!直撃したのに効いてないの!?」
兵部は自分に害あるものは全て反射するようにしている。
風も例外ではない。
「いい加減、二人をおいて……逝きやがれ!」
兵部が手を前に突き出すと、颯季、涼歌の二人を突風が襲い、スケボごと空中に投げ出された。
とっさに二人はCADを操作するが……
「ここまで近づけばお前たちの魔法は発動しない」
「領域干渉!?」
「なんて規模なの!?」
その間に兵部は二人に追いつき、減速魔法を使い、落下スピードを落とし、軟着陸させた。
「ま、負けたわ……」
「凄いな、今年の新人くんは……」
「こ、怖かった……」
「兵部さん、ありがとう。助かった」
と、各々反応を見せていると、「萬谷先輩!風祭先輩!」と声がかかる。
声の主はSSボード・バイアスロン部の部員たちであった。
「バイアスロン部か。お前たちもグルなのか?」
「ち、違います!」
兵部がそう確認すると、部員たちはブンブンと首を横に振った。
どうやら颯季、涼歌両名の暴走であったらしい。
「北山さん、光井さん、もう大丈夫だよな?」
「はい、どうもありがとうございました!」
「助かった。ありがとう」
「じゃ、俺はこの二人を連行するから」
「ん。がんばって」
そうして颯季、涼歌の二人は兵部の手によって連行されたのであった。
兵部の一日は、まだまだ終わらない。
ほとんどの読者がわかっていると思いますが、兵部の先天性スキルは「反射」ではありません。
かなり強力なスキルですが、兵部自身隠そうとはしていません。
とはいえわざわざ自分から言う必要もない、そういうスタンスです。