生徒会室では、真由美、摩利、あずさ、深雪、達也、兵部の6人が昼食をとっていた。
男女比は2対4。
摩利、深雪に続き、真由美までお弁当を作ってくるようになり、ダイニングサーバーを使う人はあずさと兵部のみとなった。(達也の分は深雪が作っている)
兵部は声を掛けられなければ、雫やほのかと学食を食べに行くのだが、意外なことに達也が声を掛けて、彼を生徒会室に連れて行くのであった。
兵部がいなければ、男女比が1対4になりバランスが悪いというのが達也の理屈だ。
兵部はレオを連れて行けばいいだろうに、と思っているが、わざわざ声には出さず、黙ってついていく事にしている。
「達也くん」
「何でしょうか、委員長」
兵部の正面から、摩利が達也の名前を呼んだ。
テーブルの位置関係は、深雪、達也、兵部が横に並び、深雪の正面があずさ、達也の正面が真由美、兵部の正面が摩利が座っている。
「昨日、二年の壬生を言葉責めにしたというのは本当かい?」
「ブハッ!」
「おい!兵部!ご飯粒を飛ばすな!!」
衝撃的な内容に兵部は思わず粗相をしてしまった。
達也も食べ終わっていたからよかったものの、何か口に含んでいたら、おそらく兵部と同じ結果になっていたであろう。
「す、すいません。……マジかよ、達也」
兵部と摩利が野次馬精神満載で、ニヤニヤとしながら達也を見る。
「その顔をやめろ、兵部……。そんな事実はありませんよ」
「おや、そうかい?壬生が顔を真っ赤にして恥らっているところを目撃した者がいるんだが」
深雪から冷気が漂い、局所的に室温が低下し始めた。
「お兄様……?一体何をされていらっしゃったのかしら?」
「ま、魔法……?」
深雪は事象干渉力がかなり強いため、感情が高ぶると、たびたびこのようなことが起こるのだ。
魔法の暴走は、未熟の証であると同時に、卓越した才能の証でもある。
そして――
「はいはい、寒い寒い」
兵部が人差し指でトンと机を叩くと、冷気が途端に収まった。
それほどの事象干渉力を、さらに上書きするほどの桁外れの事象干渉力。
それは兵部の才能が”卓越”どころではなく、まさに”桁外れ”ということを意味していた。
「ホント…今年の一年はいろいろと凄いわね……」
真由美が呆れたように、そうつぶやいた。
「落ち着け、深雪。ちゃんと説明するから」
「申し訳ありません……」
それから、達也は壬生紗耶香と話したことを説明した。
剣道部での乱闘騒ぎなど、兵部は初耳だったが、そんなこともあるだろう、と特に何も思わなかったが――
「点数稼ぎに強引な摘発なんてあるんですか?少なくとも俺はそんなこと聞いたこともないんですけど」
風紀委員が自分の点数稼ぎに、強引に摘発するということは聞き流すことはできなかった。
兵部の質問に、摩利は首を振る。
「それは壬生の勘違いだ。風紀委員はまったくの名誉職で、メリットはほとんどない」
キッパリとそれは違う、と言い切った摩利に兵部は安心する。
誰が好き好んで、一昔前の腐敗した警察の真似事をしたいというのだろうか?
少なくとも兵部はそんなことはしたくなかった。
しかし、その後に続いた真由美の回答に、兵部は驚きを禁じえない。
真由美いわく、校内で強い権力を持つ風紀委員を権力を笠に着た走狗という風に、印象操作している輩がいるという。
「例えば、『ブランシュ』のような組織ですか?」
達也がそう口にすると、真由美と摩利が硬直した。
その様子を見て、兵部は達也の言ったことが当たりなのだと確信する。
「何だ?そのダッサイ名前の組織は」
しかし、残念ながら兵部は『ブランシュ』なる組織を知らなかった。
いや、普通の人は知らないことが当たり前なのだが。
達也が簡単に説明をする。
反魔法国際政治団体『ブランシュ』。
魔法能力による社会差別の根絶、が彼らの理念である。
そして、達也いわく、その組織の息のかかった工作員を、生徒として紛れ込ませている可能性があるということだった。
「マジかよ……この学校ってそんなに面倒くさいことになっているのか?」
「ああ、そうだ。そして、学校側はそれを秘密にしておきたいらしい。実際に兵部のように『ブランシュ』なんて、名前すら聞いたこともない生徒がほとんどだろう。中途半端に隠しておいても、悪い結果にしかならないものなんだがな」
その後、真由美が責任を感じて落ち込み、それを達也がフォローするという流れになり、達也のジゴロ疑惑が浮上した。
まもなくして、昼休みが終了する。
(『ブランシュ』か。面倒くさいことにならなければいいんだけどな……)
兵部はそんなことを考えながら教室に戻っていった。
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雫、ほのか、英美の三人は司甲の後をつけていた。
「どこに行く気なんだろう」
「こんな場所……普通じゃないことは確か」
司甲はどんどん人通りが少ない路地裏に入っていく。
三人の緊張も高まっていった。
そんなとき、司甲は急に走りだした。
「気づかれた!?」
三人は急いで追いかける。
「……いない?」
司甲が進んだ先は行き止まり。
そこに彼の姿はなかった。
三人が困惑していると、数台のバイクの音が響き、たちまち囲まれてしまう。
「な、なんですか、あなたたちは!」
いきなりのことに驚き、ほのかは叫んだ。
しかし、黒いライダースーツにフルフェイスのヘルメットをかぶった、その集団がもはや普通の集団でないことはあきらかだった。
黒い集団はジリジリと三人に近寄っていく。
そこで、英美が動いた。
「ただの女子高生だと思って……なめないでよね!」
収束系魔法で空気の密度を高め、移動系魔法でその空気を固まりを動かし、殴りつけた。
空気のハンマーとも言える魔法だ。
「私も!」
ほのかの手から閃光が放たれる。
目眩ましで、その間に逃げる算段だ。
三人が走り出すと、急に強烈な耳鳴りのようなものが襲い、あまりの不快感に三人はその場でうずくまってしまった。
「司様からお借りした、アンティナイトによる、このキャストジャミングがある限り、お前らは一切魔法は使えない」
一人がサバイバルナイフを振り上げる。
「この世界に魔法師は必要ない!」
(……兵部さん!!)
雫は目を瞑って、心の中で兵部に助けを求めた。
そのとき、三人の周りを白く発光した膜のようなものが囲った。
振り下ろされたナイフはその膜に当たるとたちまち溶けていく。
何が起こったのかと思い、雫たちが後ろを振り向くと、黒い小銃を構えた白髪の少年がそこにいた。
メルトダウナーのシールドタイプ。
さっそく使いこなしちゃってます。