魔法科高校の桁外れ   作:兵部少佐

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第8話 人外認定

帰宅途中、兵部の端末にアラームが鳴り、自動的にマップが起動した。

それは雫に渡したトレーサーシグナルのボタンが押されたということ。

つまり、雫の身に危険が迫っていることを意味していた。

兵部は地面を蹴ると、上空まで一気に上がった。

このまま最短距離を行くつもりだ。

兵部は音速で空を飛び、一瞬で目的地へ到着する。

 

「この世界に、魔法師は必要ない!」

 

そう言ってフルフェイスの見るからに怪しい男が雫たちにナイフを振り下ろすところが、兵部の目に飛び込んできた。

兵部は自身の小銃型CADを取り出すと、雫たちに向かって引き金を引いた。

雫たちを覆うように、白く発光した膜が現れる。

 

原子崩し(メルトダウナー)』。

電子を粒子でも波でもない、曖昧な状態に留める、その魔法は攻撃に転じれば鉄をも溶かす熱量で、強力な矛となるのだが、防御に転じれば、今度はその”留まる”性質で強力な盾となるのだ。

 

「間一髪だったな」

「兵部さん!」

「兵部さん!?どうして!?」

「兵部さん?」

 

兵部の登場に三者三様の反応を見せる。

 

「まあ、いろいろ聞きたいこともあるが、後でな。今はとりあえずそこから動くな。それとその膜に触れるなよ、溶けるぞ」

 

さて、と兵部は敵に視線を向ける。

 

「兵部さん!気をつけてください!この人たち、キャストジャミングを使います!!」

「キャストジャミング?……へぇ……なるほどね」

「もう遅いッ!!」

 

怪しい男たちが一斉にキャストジャミングを発動させる。

 

「誰だか知らないが、我々の計画を邪魔する者は抹殺する!!」

「さいですか……それで?これで終わり?」

 

兵部は大きくため息をつく。

何なんだ、この茶番は、そう思っていた。

原子崩しが相変わらず発動し続けていることに気づき、男たちは目に見えて動揺し始める。

 

「なぜだ!?このアンティナイトは高純度の特注品なんだぞ!」

「知らねーよ。三下が使っても意味がないってことだろ」

「この化け物がぁぁああ!!」

 

男たちは半狂乱状態になりながら、兵部に向けてマシンガンを乱射する。

 

――ベクトル操作

――設定『反射』

――0.1度上方に修正

 

銃弾は全て、ヘルメットを突き破って、男たちの眉間に撃ち込まれた。

その様子がきっちり監視カメラに映っていることを確認すると、兵部は雫たちのほうに振り返り、原子崩し(メルトダウナー)を解除する。

 

「ほら、終わったぞ」

 

雫、ほのか、英美が兵部に駆け寄る。

 

「ありがとう兵部さん!本当に助かりました!」

「私からも言わせて。ありがとう兵部さん」

「本当にありがとう!あっ、はじめまして」

「ああ。それよりまず警察呼ばないとな」

 

兵部スッと倒れた男たちに視線を移す。

それを見て、急いでほのかが警察に連絡をし始めた。

 

「死んでるの?」

「ああ、まずかったか?」

「いや、私たちのせいで兵部さんにこんなことを……」

「大丈夫さ」

 

兵部は雫の頭にポンと手を置いた。

 

「マシンガンを打ってきたのはアイツらだ。監視カメラにもその様子は撮られているし、一応、風紀委員のレコーダーで会話と映像も記録している。間違いなく正当防衛だよ」

「……そう」

「それより、警察が来るまでの間に、ちゃんと説明してもらうぞ。何があったのかを、な」

 

それから、ちょうど警察に連絡し終えたほのかを含めて、ほのか、雫、英美は事の経緯を兵部に説明した。

一通り聞き終えたところで兵部は大きくため息をつき、ほのか、雫、英美の順に頭をチョップしていく。

 

「いたっ!」

「うっ」

「痛い!」

 

自分にかかる反作用までも反射しているため、2倍の威力になっているチョップだ。

それなりに痛い。

 

「バカが。危ないことはするな、と言っておいただろう」

「ごめんなさい……」

「……反省」

 

そうこうしている内に、警察が来て、4人は事情聴取を受けた。

監視カメラにバッチリ映っていたことや、相手が明らかに武装していることから、案外すんなりと正当防衛が認められ、ものの数時間で解放された。

 

---

 

ようやく入学関連のイベントが一段落して、兵部の生活も落ち着きを取り戻していた。

1年生はようやく魔法実習が本格化してきたところだ。

とはいえ、まだまだ始まったばかりだ。

実習の課題も、一科生、特に兵部あたりは、欠伸しながらでもできるような簡単なものであった。

しかし、そういう者がいる反面、この課題でも必死にやって、ようやくクリアする生徒もいる。

義務教育でもないのに、できる人からできない人まで、足並み揃えてがんばりましょう、というわけにもいかないため、一科、二科の区分けがされている。

本来なら、英語ができる人とできない人を分けて、レベルに応じた授業をしましょう、という感じで正当な理由だとも思えるのだが、人間社会とは、そう単純にはいかないらしい。

 

そんな中、兵部は深雪、雫、ほのかと共に昼食を持って、魔法実習の居残りをしている達也たちのもとに来ていた。

 

「やっと終わったぜ~」

「ようやく終わった~」

 

レオとエリカの歓声が、課題終了を告げる鐘の音となった。

 

「二人ともお疲れ様。お兄様、ご注文のとおり揃えて参りましたが……足りないのではないでしょうか?」

「いや、もうあまり時間も無いことだし、このくらいが適量だろう。深雪、ご苦労様。兵部も手伝わせて悪かったな」

「うむ、もっと労いたまえ。お前らの昼飯を持ってくるというのは、意外と重労働なんだぞ。ほらよ」

「よく言うよ」

 

そう言って兵部は三人にビニール袋を渡す。

中身はサンドイッチと飲み物だ。

居残り組一同は和気藹々(わきあいあい)と、遅い昼食をとり始める。

そんな中、美月が質問をした。

 

「深雪さんたちのクラスでも実習が始まっているんですよね?どんなことをやっているんですか?」

 

気まずさから、ほのかと雫が顔を見合わせる。

兵部は相変わらず飄々とした感じだ。

そんな中、深雪は間髪入れずに即答した。

 

「多分、美月たちと変わらないと思うわ。ノロマな機械をあてがわれて、テスト以外では役に立ちそうもないつまらない練習をさせられているところ」

 

兵部はうんうんと大きくうなずく。

 

「ねぇねぇ、A組でも同じCADを使っているんでしょ?」

 

エリカが好奇心を隠し切れない表情でそう問いかける。

ええ、と深雪が肯定すると、エリカがウキウキしながらお願いした。

 

「参考までに、どのくらいのタイムかやってみてくれない?」

 

深雪が少し困惑しながら、達也に視線を向ける。

 

「いいんじゃないか」

「お兄様がそう仰るのでしたら……」

 

深雪はパネルに指をおき、計測を開始した。

 

「……235ms……」

「えっ……?」

「すげ……」

 

その結果にレオ、エリカ、美月の顔が強張る。

 

「深雪の処理能力は、人間の反応速度の限界に迫っている」

「いえ……私はまだまだです。兵部さんのほうが……」

「うそ!兵部ってそんなに凄いの!?」

 

エリカが驚いたように声を上げる。

その流れで結局、兵部も計測することになった。

 

「これ、嫌いなんだよなぁ……」

 

兵部はパネルに手を置き、計測を始める。

余剰想子(サイオン)光が閃き、

 

――エラー

 

「……もっと遅く」

 

――エラー

 

「……うぜぇ」

 

――11ms

 

「ふぅ……やっと計測できたか。このポンコツ、10ms以下は計れないんだよな」

 

兵部が大きくため息をつく。

 

「なぁ、達也……さっき反応速度の限界がどうのって言ってたよな?」

「……あぁ」

「じゃあ達也くん、あれ何?」

「まあ……人外、というやつじゃないか?」

 

兵部以外がなるほど、と納得する。

 

「おいおい、何勝手に人を人外認定してんだ?俺はれっきとした人間だぞ」

 

そう言った男の言葉には、まるで説得力というものが存在しなかった。

 

 

 

 

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