のんのんびより二次創作   作:やさま

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二回目の小学生生活。

それに対して僕が抱いた感想を、一言で言い表すなら———ただただ、退屈だった。

 

別に、小学生レベルの勉強ならもう簡単だからというわけではない。

むしろ勉強という点に関して言えば、視点が昔とは異なっていた事もあり色々と新しい発見も多かった。

特に先生が何をどのように教えたいのかという意図や思惑が手に取るように分かるというのは、非常に新鮮な経験であった。

 

では何が問題であったかというと、それは先生ではなく生徒にある。

思春期などは既に経験済みな僕にとって、彼らの行動や言動が非常に幼稚に見えて仕方なかったのだ。

実際彼らは心身共に未熟で幼稚であり、それを非難や否定するつもりはない。

それが自然で、当たり前なのだから。

だが、同時に彼らはそれを僕に対してもそれを要求する。

そして子供らしくある事に抵抗があった僕には、当然のように友達なんてまともに出来やしなかった。

 

考えても見てほしい。

皆で楽しく無邪気に遊んでいる中、一人冷めたように傍観している人が居たとしよう。

貴方には、その人と仲良くなれる自信はおありだろうか。

 

……自分で言っておいてなんだが、僕にも仲良くなれる自信はない。

 

だが、幸か不幸か虐められる事は無かった。

———いや、実際にはあった。

しかし彼らにとっての虐めは、僕にとってはただの可愛らしい悪戯にすぎなかった。

筆箱が隠されるのなら、常にペンや鉛筆をポケットに忍び込ませておけばいいだけ。

上履きや靴が隠されるのなら、毎日持ち帰ったり手提げに入れておけばいい。

教科書やノートが汚されたら、先生に相談して新しいモノと交換してもらえばいい。

やや面倒な時もあるが、無視されず構われているのだと思えば、むしろそんな子供たちに愛しさすら感じた。

直接的な暴力も振るわれる事は無かったため、きっと根は優しい子らなのだろうとすら思っていたぐらいだ。

歯車時代での理不尽な経験に比べれば、彼らのそれは甘々で生ぬるい。

 

そんなだから、そのことを僕は決して先生や親に相談する事はなかった。

相談するようなことでもないと思っていた。

ポケットから剥き出しの鉛筆が出てきたら、うっかり忘れてたと弁解し。

上履きを持って帰った事についても、自分で洗いたかったのだと嘘を付き。

教科書について先生に不審がられても、自分で汚したのだと言い張れば先生はそれ以上追及することはない(正直それを信じる先生もどうかと思うが)。

 

けれど、僕がこのようになんとも感じずにいられたのは、学校の外、つまり社会を経験し自分の世界が広がっていたからである。

だが学校での生活がそのまま自分の世界とイコールになっている諸生徒は、僕のようにはいられない。

当然虐めを受ければ落ち込むし、泣き出す子だっている。

僕は子供らしくはあれなかったが、しかしその代わりに、そういう子らに率先して手を差し伸べるようにした。

 

その結果、その子へ向かっていた虐めが自分へ来ようがどうでもいい。

そして助けた子がそんな僕を避けるようになったとしても、特に不満や非難の声を上げることも無い。

人には適材適所というものがあり、僕の適所というのがちょうど「それ」であっただけ。

 

それに報われようが報われまいが、助けた子らには「助けられた記憶」は必ず残る。

その記憶が、いつか社会人になったときにその子の助けとなって、誰かを救うきっかけになりさえすればいい。

そういう一人ひとりの誰かを救う心が、誰かを思う気持ちが、歯車に満ちた社会をよりよくすると僕は信じている。

 

……なんて、殊勝な事を考えてはみたものの、実際のところは子供の泣き顔や落ち込んだ雰囲気というのが苦手なだけなのもまた確か。

一人も友達らしい友達は出来なかったが、それでもクラスでは常に笑いが絶えず楽しげであった。

特に、かつて虐められていた子供達同士で遊んでいた場面を目撃した時は、わが子の成長を目撃したかのように喜んだ。

まぁ、そこに自分が居ない事に、物寂しい思いをしなかったといえば嘘になる。

だが友達とまではいかないが友好的な子供も中には居て、そこそこクラスにも愛着が沸いている。

 

退屈ではあったが、6年に渡る小学生生活が良い想い出になったのは間違いなかった。

 

 

 

 

 

—————

 

 

 

 

 

日本中で春の息吹が吹き荒れ、ニュースでも桜の話題が取り上げられ始めた時分。

僕の退屈な小学生生活も終わりをつげ、中学生としての新たな日々が始まる頃。

 

今日も夕食を終えた僕は、腹八分目の充実感に満たされつつ、蛍の部屋で宿題を教えていた。

 

「お兄ちゃん、ここが分からないんだけど」

「んー、どれどれ……あぁ、ここはね」

 

今年で、蛍も小学5年生になる。

以前に比べれば、心身ともにとても成長した。

それでも僕に対する態度が激変する事はなく、母さんの弁を借りるなら妹は依然お兄ちゃんっ子のままであった。

僕としては、思春期を迎えてなにか変化が起こるかとビクビクしていたのだが、何も変わらなかった事に安堵している。

妹の隣が僕にとって安心できる場所であることは、今もまだ変わらない。

 

「……あぁ、そっか!ありがとうお兄ちゃん、分かったかも」

「そうかい、それは良かった」

 

嬉しそうに笑う蛍に、僕までもが嬉しくなる。

これがいわゆるシスコンだというのであれば、きっと僕はシスコンなのだろう。

 

「蛍。学校は楽しいか?」

「楽しいよ。友達もいっぱい出来たし!」

「それはよかった」

 

その言葉に嘘は無いようだった。

少なくとも、蛍が虐められているような事はないだろう。

そんな心配をすること自体あまり無かったが、注意しておく事に越した事は無い。

やがてすらすらと宿題を解きだした妹を後ろから見守りつつ、ふと本棚に視線を移した。

 

「……毛糸玉?」

 

そこには、色とりどりの丸い毛糸玉が置かれていた。

そういえば、前に蛍が母さんに買ってもらっていた気もする。

 

「ぬいぐるみを作る練習をしていたの」

「へぇ。器用だなぁ蛍は」

 

市販のプラモデルすらまともに作れなかった僕には、到底真似出来そうにもない。

試しに毛糸玉の一つを手に取ってみると、柔らかな感触が心地いい。

これで作るぬいぐるみは、大層触り心地がいいのだろう。

 

「ん?練習していたってことは、いくつか完成したぬいぐるみがあるのか?」

「え!?」

 

それは、ちょっとした好奇心だった。

蛍が作るぬいぐるみの出来もそうだが、肌触りを試してみたくもあったのだ。

そんなわけでなんともなしに蛍に聞いてみただけなのだが、そんな蛍から返ってきたのは驚愕の視線。

まるで悪事がバレたかのように、目を見開き固まっていた。

 

「蛍?」

「れれれ、練習だから!まだ練習だから、完成はしてないよ!」

「ふぅん……?」

 

何かやけにどもっていたが、完成していないのなら仕方ない。

無いものを見せろとねだったところで意味は無いし、仕方なく毛糸玉を元あった場所へ戻した。

 

「そ、それよりお兄ちゃん。宿題終わったら、久しぶりに一緒にゲームしようよ」

 

一緒に、とはいうものの、うちには二人でプレイできるゲームが少ない。

何か二人で競争したり争うようなゲームが苦手なためで、基本的には蛍がゲームしているのを後ろから僕が観察している形に落ち着く事が多い。

 

「いいよ。宿題終わったらな」

「うん」

 

きっと、今日も同じような事になるのだろう。

見ている事自体は面白いのだが、僕自身は何もしないものだから結構眠くなりやすいのが難点だ。

今日はどこまで耐えられるだろうかと考えつつ、蛍のベッドに腰かけながら宿題が終わるのを待つ。

 

 

 

両親から引っ越しの話をされたのは、蛍の宿題が終えた直後の事であった。

 

 

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