十一話
リ・エスティーゼ王国 エ・ランテル ポーション工房 昼過ぎ―――――
「やあやあ、ンフィーレア君、リイジーさん。 また来ちゃったよ」
「今回も戦利品の鑑定業者を紹介して頂きたいのですが、お二人とも宜しいでしょうか?」
「………よろしく」
リ・エスティーゼ王国の“城塞都市”と呼ばれたエ・ランテル。
その中で最高の薬師として知られるリイジー・バレアレ、その孫であり自身も同様の才能と
一人は細身の20代後半の男性。 髪は此処では珍しい黒髪、瞳は昔に遭った事故で見えなくなったらしく、固く閉ざされている。
服装は所謂、旅人の服なのだが細部の装飾が非常に凝った作りの物で、羽織っているマントに刺繍された蝶の細やかさも彼が一般人ではない事が伝わる。
その右隣に居て、今回来た目的を話したのは20代前半の同じく黒髪を腰まで伸ばした、その美しい顔立ちを全く動かさない女性。
彼女の纏う服装は此処より遠く離れた東国の女性の民族衣装“キモノ”に近い物で、
それは真紅のマントで隠されていて全体を見る事は出来ない。
左隣に居て、平坦な声音で最小限の言葉しか話さなかったのは
その服装は黒髪の男性の物と似た様な作りだが、こちらはそれよりも女性的なデザインになっており、迷彩柄の手袋とブーツとマントを装備している。
「ウェストさん! サウスさん、ノースさんも! 今日も来てくれたんですね!!」
「全く…ウチは仲介業者じゃないってのに。 お前さん、孫と茶飲み話がしたいならそこの“妹達”にでも頼んでみたらどうだい?」
最早、この来訪者達に慣れっこになったリイジーの皮肉が混じった軽口に“妹達”から僅かではあるが剣呑な気配が漏れ出す。
ウェストは原因である二人にダブルチョップを放ってその気配を打消し、穏やかな表情で薬師達に向き直る。
「いやー、ハハハ……バレていたのならしょうがない。 リイジーさん、お孫さんを少しの間お借りしても構いませんか?」
「ふん。 業者を紹介するだけならこの子だけでも十分さ。 ンフィーレア、あんまり時間を掛けるんじゃないよ」
「―――っ! うん、ありがとう!! おばあちゃん!!」
祖母の許しを受けて喜ぶ少年の気配を“黒髪から感じ”、ウェストは微笑を浮かべて彼は“戦利品”の道具を持っていた袋から出す。
「取り敢えず今日は……この短剣と、水晶と、ブローチかな」
「うわぁ……一見しただけで珍しい物だって分かりますよ。
これ全部がウェストさんの
「その反応は当然ね、ンフィーレア君。 これ等はお……兄様達が数多の冒険を潜り抜けて手に入れた至高の一品ばかり。 そこらの安物と一緒にするなんて失礼極まりないから」
「………これは、兄様達だから手に入れられた。 他のヤツ等には絶対無理」
ンフィーレアは自分の素直な感嘆に全力で乗ってくるウェストの妹達に対して「同じ無表情でも全然違うんだな…」という感想を抱きつつ、若干引きながらも業者への推薦文とそこまでの地図を作成する。
「―――――良し、これで終わりました。 それじゃあ、ウェストさん。
いつもみたいに、これ等を手に入れた時の冒険の話をして貰っても良いですか?」
「うん、構わないよ。 まず、この短剣は絶海の孤島に眠るゴーレムを守護していたモンスターが所持していて―――――」
彼の話を聞きながらンフィーレアは思う、3日前にこの三兄妹に助けて貰えなかったら自分は今頃こんな面白い話を聞けなかったんだろうな、と。
――――――――――
「痛っ…!! ごめんなさい、余所見をしちゃって……」
「いってー…。 あーあ、いってーなぁー」
「…何だぁ? 坊主、高そうな物持ってんじゃねえか」
3日前に彼が祖母の言いつけ通りに現在作っているポーションの作成の為に必要な高価な薬草を受け取った帰りに、大通りでガラの悪い連中にぶつかってしまったのがそもそもの始まりだ。
はっきり言って祖母と
そんな自分にここまで分かりやすく絡んでくるこの連中は此処に来たばかりの新参者、
ンフィーレアは「どうか殴られる位で済みます様に」と祈りながら彼等によって人気の無い場所まで連れて行かれようとしたその時―――――
「あー……そこの人達、その子は僕の遠縁の親戚でね。 慰謝料なら僕が払うので彼に乱暴するのは勘弁して貰えませんか?」
「いきなり出て来て何だテメェ……良く見りゃ、イイ女を二人も連れてんなぁ?
ソイツ等が俺等の相手してくれるってんなら考えてやってもイイぜぇ?」
男が言った通り、彼の後ろには二人のタイプの違う美女が控える様にして立っていた。
彼は見間違いだったのか、ほんの少し髪を揺らめかせながら荒くれ五人に対して十指に髪の毛で出来た指輪を嵌めた手で「まぁまぁ」というジェスチャーをする。
「申し訳ありません。 彼女達は生まれは違えど、僕の大切な妹なので金銭で解決できるのであれば僕一人でも……」
「お……兄様。 私であれば別にこの方達の相手をしても構いませんが?」
彼の言葉に返したのは長い黒髪を持つ美女。
彼女も兄と同様に髪を少しだけ揺らめかせて、顔に無表情を張り付けたまま男達をじっと見ている。
「サウス……分かったよ。 ノース、この子を家まで送ってやって。 僕等も後から行くから」
「………分かった、兄様。 待ってる」
気付けば
捕えられていた筈のンフィーレアの手を引いて大通りの方へと歩き出していた。
「なっ!? 何時の間に……お前等! 勝手な事をしてくれんじゃ……」
「いやー、すいませんね。 ささ、“お話をしたい”ので人気の無い所でゆっくりしましょうか」
見た目以上に力強い彼女の手に引かれながらンフィーレアは黒髪の男性の言葉を背中で聞き、
工房まで帰る事になった。
それから暫くして彼等はどうやって道順を知ったのか、無傷のままで工房に到着し、その後に自分が素性を語ると大層驚きながら自身の持つアイテムの鑑定業者への紹介を報酬として頼んで来た。
これが僕、ンフィーレア・バレアレと遠くの国からやってきた
男として強く、穏やかな彼の気性は僕にとって大変好ましく、尊敬できる人物だ。
彼の様な人と知り合えた事は僕にとってきっとこれからの人生で大事な財産の一つになるだろう。
――――――――――
「―――――以上がこのブローチにまつわる話だけど、面白かったかい?」
「はい! 凄いなぁ……そんな大冒険をして手に入れた物だったら付価値も相当な事になるでしょうね」
ウェストは「業者さんが信じてくれたらね」と苦笑混じりで答えた後、迷いない手つきでテーブルに置いてある温くなってしまった紅茶を手に取り、それに口付ける。
目が見えない彼は感覚器官代わりの髪で周りの状況を把握して行動しているらしい。
それはンフィーレアと同じく
もう一人の妹であるノースも何か不思議な力を持っているらしく、正しく規格外の兄妹だ。
「うん……紅茶は良い。 冷めてしまっても香りが付いているのがとても良い」
「へぇ…そうなんですか。 良ければお代わりをお持ちしますけど?」
「いや、気持ちだけ貰っておくよ。 僕も妹達も“小食”なんでね」
現に彼の妹達は出された紅茶に全く口を付けていない。
代わりに「…私の方が上手に淹れられる」とか「うん、分かる分かる」とか小声で会話していたが、それは兄を除いて誰にも聞かれることは無かった。
「ところでウェストさん。 さっきから気になっていたんですけど、アイテムの横に置かれてる
その花は一体どんな品種なんですか?」
「おっと、忘れる所だった。 ポーション職人である君なら知っていると思って訊きに来たんだけど、その反応だと知らないのか……」
「これはお…兄様が此処に来る前に花売りの娘から買って来たものだよ」
「…兄様の期待を裏切るとか、使えないヤツ」
妹二人に「使えねー」という視線を向けられたンフィーレアだったが、彼はそれに気付く事は無く、むしろサウスの言った入手経路に大慌てだった。
「は、“花売りの娘”って! 体を売ってる女性から花を買うって事は、それは…その……」
「あー……大丈夫、そういうのじゃないから。 安心して」
「まったく…ナニを想像したのやら、これだから童貞は……」
「………うわぉー、えっちー」
三兄妹の返答にンフィーレアは羞恥で真っ赤になった顔を見られない様にテーブルに突っ伏した。
そんな彼を不憫と思ったのか、ウェストはその姿を見なかった事にして話を進める。
「この花は僕の故郷にあった“スズラン”と言うのに良く似てて、小さい花弁が寄り添っている様が綺麗だから買って来たんだ。 良ければこれを君にあげたいんだけど、構わないかい?」
「えっ!? そんな、頂けませんよ!! ウェストさんが折角、買った物を……」
「見た事が無いのなら新薬の実験にも使えるんじゃないかと思ってね。
道を決めかねている今の君に“新しい物”は必要だろ?」
「―――――っ!?」
ンフィーレアはその言葉に驚いた。
この人は才能があるからと、何となくで続けて来たポーション職人の道をこのまま進んで良い物か迷っていた自分の考えを見抜いていた事に。
「……ありがとうございます。 そう言う事でしたら喜んで頂きますが、ウェストさん達の分は……」
「それなら大丈夫。 僕等の取り分は………」
彼はそう言ってその花を三房だけ取り、それを一房ずつ妹達のマントに飾り付ける。
「これで十分さ。 これ以上の装飾は綺麗な者にとって余計だからね」
「お……………兄様。 私、とても嬉しいです!」
「……………兄様。 ありがとう、大事にする」
彼の行動に妹達の片方は無表情であるにも係わらず分かりやすく喜びを表し。
もう片方は分かり辛いが身を震わせて感謝の言葉を口にした所を見ると、こちらも喜んでいるのだろう。
その一連の動作には下心は全く感じられず慈しみの感情だけがあり、ンフィーレアは感嘆の溜息を吐く。
「ウェストさんはまるでお父さんみたいですね……僕もいつかこんな風に女性に接する事が出来れば……」
「僕は君が思っている様な立派な人間じゃないよ……。
でも、ンフィーレア君ならなれるさ、僕なんかよりずっと素敵な男性にね。
君は昔の僕にそっくりだからつい余計なお世話を焼いちゃったけど……迷惑だったかな?」
「いえ!! そんな事はありません!! むしろウェストさんにはいつも助けられてばかりでこっちこそご迷惑をお掛けしてしまって……」
「待った。 僕も君の真っ直ぐさには助けられてるから謝らなくても良いよ。
それより花の件、お婆さんの許可を取らなくても良いのかい?」
「そ、そうでした。 おばあちゃん! ウェストさんがくれた花についてだけど………」
『わしは別に構わないよ! お前の好きにしな!!』
どうやら奥で二人の会話をしっかりと聞いていたらしい祖母の返答を聞いて二人は顔を見合わせて互いに笑いあう。
「それじゃ、僕等はそろそろお邪魔しようかな。 紅茶、ご馳走様」
「よ、良ければ明日も来て頂けませんか? ウェストさんに依頼したい事もありますので」
三兄妹が鑑定業者のリストを手に取って工房を後にしようとした時、ンフィーレアが彼等を呼び止める。
「……僕等はこの国の“冒険者組合”に登録してはいないんだけど、依頼って受けても大丈夫なのかい?」
「ええ、構いませんよ。 依頼したいのは個人的な事なのでウェストさんが良ければ、になるんですけど」
「………明日も来るよ。 その時に受けるか受けないかは決めてると思うから」
「―――はい! それでは、また明日」
その言葉を最後に今度こそ工房に来た三人の
すると入れ替わるように奥の作業場に居た祖母が顔を出して来る。
「……お前も随分とあの男を気に入ったんだねぇ」
「うん。 だってウェストさんは優しくて立派な人だよ」
「わしの経験だとああいう男程、敵には残忍な顔を見せるもんさ」
「そんな! ウェストさんに限って………」
孫の驚きの言葉に耳を貸す事は無く、リイジーは彼等が去って行ったドアを静かに見つめていた……。
――――――――――
「お父様。 あのような子供が淹れた紅茶を飲んで人形に不具合はありませんか?」
「お茶の一杯位は時間が経てば勝手に異物として消去されるのは実験済みだから大丈夫だよ。
後“サウス”、お父様呼びはやめなって言っただろ? どこで誰に聴かれてるのか分からないんだ」
「………申し訳ありません。 お…兄様」
「………マキナ姉、怒られた」
「“ノース”も本名を軽々しく呼ばない。 …基本的にアドリブが利かないんだよなぁ(ボソッ)」
僕、アインズ・ウール・ゴウンの一員である
自分の作った最高傑作、
製作者は違えど同じく
ちなみにマキナの球体関節部分は自室の人形工房で人と同じ様に見える人工皮膚を装着済み。
付ける際にいちいち無表情で喘ぎ声をあげるのは勘弁して欲しかった。
僕は今入っているこの人形と同じ名前であるウェスト(西)、マキナはサウス(南)、
シズはノース(北)と名前を変えているが、その理由はズバリ“資金調達”と“情報収集”だ。
上司であり同胞でもあるアインズさんと話し合って、この世界に来ているユグドラシルプレイヤー達に気付かれても問題無い程度の価値を持つ
万が一敵プレイヤーに感付かれたとしても、売却場所を絞っているのでこちらから先手を取れる準備はしてるし、信頼出来る業者を見繕ってくれた彼には感謝しなきゃね。
彼を見てると本当に高校生だった頃の自分を振り返れて良い刺激になる。
出来る事なら、これからも末長いお付き合いをしたいものだ。
ちなみに情報収集に関してだけど、これは普通の聞き込みと―――――
「………兄様。 アレ、さっきの」
シズの指差した方を向いてみると路地裏でさっき買ったスズラン似の花を売っていた少女が三人の男達に囲まれているのを確認した。
ンフィーレア君の時と同様にあの子自体には何の思い入れも無いのだけど、
“情報収集”する相手としてはうってつけだね。
僕は迷い無く路地裏まで道筋を変更し、花売りの少女に危害を加えようとしている男達に声を掛ける。
「すいません。 その子を離してやってはくれませんか?」
「……何だよ、お前。 俺達はコイツから花を買ってやろうと―――――」
その言葉を言い終える前にマキナが少女を保護し、その場から離れさせていた。
ンフィーレア君の時のシズといい、二人とも仕事が早いのは大変助かる。
「あ…ありがとうございます!」
「じゃーねー。 早くお家に帰りなさいねー」
「………ばいばーい」
少女が知覚内から消えた事を確認した後、僕は“情報提供者達”の品定めする。
「(頭)悪そう、悪そう、まだマシ。 消去法で君、かな…?」
「おい、こらぁ!! ワケわかんねぇ事、言ってんじゃ―――――」
ボゴォ!!
こちらに掴み掛ろうとした頭悪そうなヤツ1の頭に技術も何も無い“ただの裏拳”を放つ。
たった一撃で男は動かなくなり、その顔からは片方の眼球がずるりと零れ落ちていた。
……コレ、ギリギリで生きてるよね?
シズの同僚であるエントマやソリュシャンのおやつ代わりにしようかと思ったけど、
普段使いのミルキーウェイと違って力加減がどうにも難しい。
アインズさんみたいにもう少し練習しておけば良かったかもなぁ……。
「ひ、ヒィッ!!! ばけ、ばけも―――あぱっ!!」
仲間が瞬時にやられてパニックを起こした頭悪そうなヤツ2は何時の間にかマキナが顕現させた
蛹(クリサリス)の槍で顎から脳天を串刺しにされていた。
「お前、至高の存在であるお父様に対して今『化け物』って言おうとしたでしょ?
お父様達の気紛れで生かされているだけの下等な屑の分際で何、図に乗ってるの?
ホント、身の程を、知らない、くせに、口だけは、立派なんだから……ふひひひひ……」
髪をざわつかせながら一言喋る度に槍を回転させて脳味噌をグチャグチャに掻き回す愛娘の姿に僕は戦慄する。
怖い……怖過ぎだろ、しかも笑顔がまた怖い! こんなん夢に出ちゃうよ!!
生憎、睡眠欲は消え失せてるけど。
「……マキナ姉。 顔、怖過ぎ」
「―――ハッ!? …ありがとね、シズ。 お父様…今の私の顔、見てませんよね?」
「……(実眼では)ミテナイヨ。 それより二人とも、呼び方呼び方」
僕の言葉に二人は即座に呼び方を直す。
こっちの方ももっと練習してから連れて来るべきだったな……。
まぁ、来ちゃったからには仕方ないし、取り敢えず今は目の前に残った男の―――――
「脳味噌から情報を頂くとしようかな」
「良いな~。 お…兄様に頭の中覗かれるなんて私からすれば御褒美だよ」
「……抵抗しなければ苦しまずに死ねると思う。 多分?」
「あ、あ、ああ、あぁぁぁあ………」
腰を抜かして最早逃げる気力も無い頭がまだマシっぽいヤツの脊髄部分に僕は髪で出来た指輪……出す場所を変えた繰糸を解いて接続する。
「―――――〈
「かぁ!? か、か、かかか、こここ、かこかかか………」
「ふむふむ、読み書き出来る位の学はあったか。
没落貴族の三男坊で家から追い出され………あ、壊れた」
以前、召喚された天使にこのスキルを使ってみた所、ゲームの時と違って接続した瞬間に構造を把握出来たので、完全に使い物にならなくなった陽光聖典の一人で試してみたら、ソイツが持っていた記憶や知識を見れる事が分かった。
精神が壊れかけていたから所謂“お試し版”程度の情報しか得られなかったので街に出てこういった居なくなっても誰も困らないヤツ等から情報を抜いたお陰で今ならこの世界の軽い読み書き位なら可能だ。
使った相手の心を壊してしまうのでおいそれと使う訳にもいかないがそれでも便利な能力である事には違い無い。
今のヤツでこの地域の必要最低限の知識は手に入れたからアインズさんにも教えたいんだけど、彼は今日、この国の英雄になる為……後、息抜きの為に冒険者組合に登録するそうだから物を教える時間は無さそうだ。
ンフィーレア君の依頼の話もしたいし、夜に纏めて報告って形にしようかな。
「お…兄様。 屑共を殺す前と同じく情報収集系スキルで覗き見されていないか確認しましたが、
問題はありません」
「情報収集系スキル使用時の対策は忘れてない?」
「大丈夫です! お父様の教えを私が忘れる事はありません!! ね、シズ?」
「………うん。 バッチリ」
二人は互いに向き合ってサムズアップした。 やだ何この子達可愛い。
僕がプレイヤーだった頃にアインズさんを初めとするギルメンの皆から受けたPK講座。
それをマキナに教えたのだが、その子がシズに教えるという“繋がり”が人間ではなくなってしまった僕の心を温かくさせてくれる。
後、呼び方戻ってんぞ。 愛娘よ……。
「……出で座せい、〈クール・ボックス〉。 ハイ、二人とも生ゴミ入れて」
「了解しました!」
「……(コクリ)。 頑張る」
この〈クール・ボックス〉は中に入れた物を傷つけずに
ちなみに移動する時は老若男女10人分の手足が側面から生えてくるというギルメンの皆を引かせた素敵仕様。
その中に僕等は書き損じて丸めた手紙を捨てる様な要領で死にかけ、死亡、精神破壊された三人をポイポイと入れる。
「最後にこれと手紙も入れておこう」
「それは私達に授けて下さった花……」
「……………“スズラン”?」
「多分、違う品種だと思うけどね。 第六階層でマーレに育てて貰おうかと思ったのさ」
「その手紙には入れたヤツ等が食人系の皆さんへの御土産である事と、マーレに対しての勅命が記されているのですね」
「勅命って程の物じゃないけど………強いて言えば“お願い”かな?」
「マーレ羨ましーい! お父様に“お願い”して貰えるなんてー!!(ギュルルルン)」
「………うん。 凄く、羨ましい(コクコクコクコク)」
僕の言葉にマキナは首を720度回転させ、シズは頭を高速で上下させるので最早ヘッドバンキングをしてる様だ。
あっれ~……
作り手である僕等の問題なのかなぁ……?
気を取り直してクール・ボックスをナザリックまで送り終えたらシズが僕に質問をして来た。
「…兄様。 この花、一つ一つが寄り添って綺麗だって言った。 それは私達と同じ?」
「うん、そうだね。 皆が協力しているからとっても綺麗に見えるんだと僕は思う」
「……だったら、今まで殺したヤツ等も“寄り添ってた”?」
その言葉に僕は確信を持ってこう答える。
「シズ、彼等はね、“寄り添ってる”んじゃなくて“群れてる”だけさ。
明確な目的も無く群れて他人に迷惑を掛けてる存在は決して、綺麗じゃない」
「お父様もアインズ様もそういった本来、無価値な連中を有効活用してあげてるの。
むしろあいつ等は至高の方々のお役に立てたという事に対して喜んで死ぬべきだった位だよ」
「……おー、納得」
シズは僕等の答えに満足したのか今度は普通のスピードで頷いた。
表面的に畏まっていないこの子の態度は僕とアインズさんからすれば一服の清涼剤だ。
だから今回、ポータル役として同行をお願いしたんだけどね。
「…そろそろ宿屋へ戻ろうか。 守護者統括への定時連絡はゆったりとした場所でやりたいし」
「はい。 お父様のお望みのままに」
「………分かった」
こうして僕等は宿屋に戻る事になったのだが、実は二人に言って無い事が一つあった。
あのスズラン似の花、マーレが上手に栽培出来たらナザリックの皆に労いの形として渡したいと思っている、と言う事を。 昔からサプライズは好きな方だったし。
………“彼女”が居る場所には固定化の魔法を掛けて貰った方が良いよね。
寒い場所で一人きりの部屋にあの花を置いたら、その主と共にきっと綺麗に見えるだろうな。
僕はその光景を想像して髪を少しだけ震わせながらマキナとシズを連れて現在、宿泊している宿屋への道を歩き出した。
二人の娘を連れた子連れ人形使いの始まりです。
ウェストの盲目設定は邪眼は月輪に飛ぶの主人公、杣口鵜平から。
娘に頭が上がらない親父キャラはそれだけで萌えますね。
「スズラン」、「路地裏」の元ネタはからくりサーカスのシルべストリ。
彼との戦いが本人の生き様も含めてからサーで個人的に一番好き。