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翌日になり、SPW財団経由で手配したチャーター船が到着したという連絡を受け、ジョースター一行は港に向かう。
積み重なるコンテナで出来た迷路を抜けて、海辺の波止場に辿り着くジョセフたち。
そこで彼らを出迎えたのは、昨日タイガーバームガーデンでアヴドゥルと殺し合いを繰り広げたポルナレフだった。
戦闘後、肉の芽から解放され意識を取り戻したポルナレフに、ジョセフがDIOについて知っていることをたずねたが、結果は芳しくなかった。
ポルナレフは1年ほど前にDIOに遭遇して肉の芽を埋め込まれた後、ほとんどDIOと接点のないまま「ある目的」のため各地を転々とし旅を続けていた。
つい最近になって彼らを殺して来いと命令されたときも、DIOのアジトに招かれたのではなく、人づてに指令を受け取ったのだと言う。
DIOの呪縛を解いてもらったことに一言礼を告げたかったと語るポルナレフに、礼はいらないと返すアヴドゥルと承太郎、仗助。
お礼を受けいれられずポルナレフは一瞬微妙そうな顔をしたが、すぐに気を取り直し、もう一つの目的を果たすべくジョセフに話しかける。
「昨日から気になっていたんだが、ジョースターさん。貴方の左手は右手ではあるまいな。」
ポルナレフが同行している間、ジョセフは食事中でもずっと手袋を外さなかった。
手袋の種類によっては右手を左手であるかのように見せかけることもできるだろう。
だが、そんなことをしてなんの意味があると言うのか。
あまりにも奇妙な質問にジョセフが首をかしげる。
このままでは埒があかないと思ったのか、ポルナレフは更に自身の抱える問題を語る。
それは、両腕が右手という特徴を持つスタンド使いによって、彼の妹シェリーが辱めを受け殺された話であった。
話すうちに当時の記憶がよみがえったのか感情を高ぶらせながらも、必ず犯人を見つけ出し復讐を遂げるという彼の誓いを聞き、ジョセフはすっと左手の手袋を外した。
そこには生身の手ではなく、武骨な金属製の義手が存在するのみ。
自身の左手は50年前、超越者との戦いで失われ、以後ずっと義手を使用しているというジョセフの顔には悔恨ではなく懐かしさがにじんでいた。
ちなみに現在使用している義手は、50年前にとある軍人から贈られた初代義手の設計図を基にしてSPW財団が改良を重ねたものである。
ポルナレフはジョセフの左手を確認し、不躾だったと謝罪した。そして、自分もジョセフたちの旅に同行させてほしいと願い出る。
洗脳から解かれて初めて気付いたが、ポルナレフは徹底的にと表現できるほどDIOと距離を置かされていた。
ポルナレフをしもべとするにあたり彼の心理につけこむためにも、DIO側はあらかじめ彼の事情を調べていたはず。
その中でスタンド使いの疑いの強い、しかもDIOに共感しやすそうな邪悪さを持つ人物が登場していれば、仲間に引き入れていてもおかしくはない。
もしくは、先に仇を仲間にしていて、そこから執拗に両右手の男を追い求めるポルナレフへと辿り着いたか。
肉の芽を寄生させたあとポルナレフを自由にし距離を置いていたのも、DIO周辺に居た仇と遭遇させないため、と考えれば説明がつく。
ポルナレフと対峙した際に披露されたDIOの手際の良さからすれば、後者の方が確率は高いだろう。
どちらであっても、両右手の男はDIOの仲間になっているに違いない。
そうであるならば、DIOを倒すこの旅路の中で、妹の仇は必ず刺客として襲いかかってくる。
申し出という形をとってはいるが、ポルナレフからは同行を拒否されたとしてもなんとかしてついてこようとする強い覚悟が感じられる。
ジョセフたちにとっても、強力なスタンド使いが仲間になることに異存はない。あっさりとポルナレフの同行は認められた。
その後、承太郎を逆ナンしようとした若い女性観光客をポルナレフがナンパし返し、承太郎がため息をつく一幕もあったが、5人に1人を加えた面々はチャーター船に乗り込んだ。
海上に出てはや数時間。一行は思い思いの格好で休息を取っている。
その中で仗助は一行から離れ、比較的風の当たらない操舵室の外壁にもたれかかっていた。
念のため、何かあった際に声が届くようにと、1人で船室には入らないように言われているのだ。
彼は先ほどからずっと、海風に乱れそうになる自慢のヘアースタイルをなんとかして整えようと、整髪料と櫛を片手にデッキ上に置いた手鏡とにらめっこをしている。
一人不毛な戦いを続ける仗助の耳に、子供と大人がもめている声が届いた。
櫛と整髪料の瓶をポケットに仕舞って立ちあがり、声のした方を見る。
言い争っている内容からすると、どうやら子供は密航者のようだ。
警察につき出すと言う船員の言葉に、子供は船員の手を振り払い海に身を投げた。
「オイオイ、大丈夫かよぉー?」
思わず欄干まで走り寄る仗助の背後から、承太郎が放っておけと声をかける。
自分には関係の無い事だと突き放した物言いをする承太郎だったが、つづく船員の「ここはサメの出没する海域である」という発言を聞き、さらには泳ぐ子供のそばに巨大な影が現れた時、周囲の人間よりもいち早くスタープラチナを出現させ海に飛び込んだ。
先行させたスタープラチナが、子供に巨大なあぎとを開け迫っていたサメを殴り飛ばす。
数メートル望まぬ空中飛行を楽しまされたあと、腹を上に向け哀れに海面に浮かぶサメ。
近くで周回していた他のサメもただならぬ気配を本能で察したのか、足早ならぬヒレ早にその場を離れていった。
とりあえずの危機は脱したと、そのまま子供を抱えて船に戻ろうとした承太郎に、再度何かが迫ってくる。
海上に出ているのはヒレのみだが、明らかにサメとは異なる形状をしているそれは、先ほど殴り飛ばされ浮かんでいたサメを真っ二つに切り裂きながら見る間に二人との距離を縮める。
「JoJoッ!掴まれッ!!」
そのヒレが承太郎たちに到達するよりも早く、寸でのところで一行の中で最も長い射程距離を持つ花京院のハイエロファントグリーンが子供ごと承太郎を船上まで引っぱり上げることに成功する。
獲物を逃した腹立ちまぎれのつもりなのか、正体不明の襲撃者は近くに浮いていた浮き輪をズタズタに引き裂き、海の中へと姿を消した。
承太郎と共に船上に帰還した少年、いや、帽子を取った今の姿から実は少女であったと知れたが、彼女はまるで動物病院に連れてこられた猫が医者に威嚇するかのように、およそ容姿に似つかわしくない下品な言葉を一同に浴びせながらちっぽけなナイフを抜いた。
あまりに迫力の無い様子に、すわ新手のスタンド使いかと警戒をしていた一行は毒気を抜かれる。
そこにこの船の船長テニールがやって来た。
背後から少女を捕まえた船長は、そのまま煙草を吸っていた承太郎に近づき、船上は禁煙だと煙草の火を承太郎の帽子の飾りにグリグリとなすりつけ消す。
更に近くに立っていた仗助にも声をかける。
「そこの坊っちゃんも、デッキの上に鏡なんか置いとかないでくれよ?船の上は不安定で
いつ何処に転がって割れてしまうかわからんからな。」
そこまでで終わっていれば、仗助も素直に謝っただろう。
しかし不運にも、船長は言ってしまったのだ。自身にとって最悪の一言を。
「ガキがいきがるのは勝手だが、この奇麗な海に煙草の吸殻やら鏡のカケラやらが
ばらまかれたらどうするんだ?あんたら反省して頭でもまるめてくれんのか?
アワビみたいな髪型しくさって。海を舐めるのも・・・」
その時、クレイジーダイヤモンドのスピードは、自身を止めようとするスタープラチナのそれを凌駕した。
仗助「このヘアースタイルがサザエさんみてぇーだとぉ」
テニール「いやそこまでは言ってない」