もし仗助が3部にいたら?   作:しろた

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動物と触れ合おう!2

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もし間違いだったとしても怪我なら治せるといいながら、クレイジーダイヤモンドを檻の中に入らせようとする仗助。

ところがクレイジーダイヤモンドは檻を透過することができなかった。

ただの檻であれば、スタンドは本体の人間の意思によって透過できるはずだ。それができないのは何故か。

思えば初めから怪しいところはあった。船室に続くあの狭い扉からどうやってこの巨大な檻は運び込まれたのだろう。

 

「こりゃあマジにビンゴかもしんねぇーな。」

 

檻の鉄柵をつかみ、パワーにものをいわせて折り曲げる。

ようやく檻の中に入ることができたクレイジーダイヤモンドがオランウータンにコブシを振り上げたその時、オランウータンが笑った気がした。

 

「なッ!!」

 

一同が驚くのも無理はない。

少しでも仗助から距離を取ろうと檻の隅まで後退していオランウータンの身体が突如壁と一体化し、そのままズブズブと壁の中に姿を消していったのだから。

しかしこれではっきりした。オランウータンは明らかにスタンドを認識したうえで、一度に6人も相手にするのは不利とばかりに逃亡したのだ。

 

唖然とする一同の中で、ジョセフが最悪の展開に思い至った。

逃げたオランウータンは一体何処へ向かったのか。この船にはスタンド使いではない非力な一般人が乗っている。

ネズミごときが人間を手玉にとれるのであれば、ネズミよりも遙かに高い知性を持つオランウータンが、彼らを人質にと考える可能性もあるのではないだろうか。

 

「いかん!!船員たちが危ない!!」

 

ジョセフの言葉に即座に反応し、一行は操舵室を抜け船室へ続く廊下へ進もうとするが、操舵室の窓から見えた外の光景に思わず足を止めた。

窓の外では、ぐにゃぐにゃと甲板が波打ち、クレーンや貨物もまるで炎天下の中放置したアイスクリームのように不定形ななにかになってしまっている。

 

「な、なんだこれは・・・!?やはりこの船おかしいぞ!!」花京院が叫ぶ。

 

異常は船の外側から内側へとどんどん広がっており、数呼吸の内には操舵室にまで到達した。

 

「チィッ!とにかく船室に向かうぞ!!」

 

幸か不幸か船室があるのは船の中心部。

後ろから迫ってくる悪夢のような光景から逃れつつ、長い長い廊下を延々と走っていく。

ようやくジョセフたちが目的地にたどり着こうかというときに、船室から甲高い悲鳴が聞こえた。

 

仗助と承太郎が走る勢いそのままにスタンドで扉をぶち破る。

とたん、中から血の匂いが漂い、次に目にするだろう惨状を一同に予感させた。その予感は的中する。

 

船室に入った一同を出迎えたのは、死屍累々の体で無惨に血まみれで転がる船員たちの姿だった。

さらにその奥で、先ほど逃亡したと思われたオランウータンが、今まさに密航者の少女に襲いかからんとしていた。

 

物言わぬ物体と化した死体が埋め尽くす船室の中で、動いている一人と一匹だけが奇妙に浮かび上がっているように見えた。

 

 

「こんのクソザルがぁああああーーーーッ!!」

 

「暴漢に襲われる黒髪の少女の姿」という、自身の感情を最大限に刺激するタブーを目にして激昂したポルナレフがオランウータンに突進しようとする。

しかし、大きく踏み出した第一歩はまるで底なし沼に足を踏み入れたかのように深く床に沈み込んだ。

思わずといったていで手を伸ばしたアヴドゥルを道連れに、あっという間に二人が床に飲まれていく。

 

ポルナレフの足元を中心にして床の脈動はさらにジョセフたちの足元にまで及ぶ。

それが自らに届く前に、入室前からスタンドを展開していた承太郎と仗助が、自身の近くに居た花京院とジョセフの襟首をつかみスタンドの脚力で跳躍した。

 

「あぁ畜生ッ!なんだってんだよこの船はッ!!」

「まさか、この船全体がヤツのスタンドだというのかッ!?」

 

今や胸元近くまで床に沈みこんでいるポルナレフが悪態をつく。ガッチリと床に嵌ってしまっているせいか、スタンドを出すことができないのだ。

その言葉にアヴドゥルが驚愕しつつ自身の推察を答えた。

この巨大な船を形作り、一般人にも見えるほどの強力なパワー。ヤツが『力』のカードの暗示を持つ刺客なのか、と。

 

 

一方、一旦は空中に回避したと思われた他の4人にも追撃の手が伸びていた。

天井から人の背丈ほどはありそうな大きさの送風用プロペラが外れ、回転しながら4人に接近する。

 

「ドラァッ!!」

 

飛んできたプロペラを「治そう」としたクレイジーダイヤモンドのコブシが空を切った。

コブシが羽に接触する直前に、羽そのものがぐにゃりと変形してその軌道を変えたからだ。

プロペラはそのまま鞭のようにしなりつつ、4人を殴り飛ばした。

承太郎と花京院はポルナレフ達の居る船室の壁へ、仗助とジョセフは反対側に設置してあったシャワー室まで吹っ飛ばされる。

 

配水管やらカーテンやらを巻き込みながら、シャワー室の壁に叩きつけられうめき声をあげる二人。

壊れた給水装置から水が勢いよく噴き出し、あたりを水浸しにしていく。

 

たたみかけるように周囲の壁や床が蠢き、立ち上がろうとした仗助はスタンドごと壁から、倒れていたジョセフは床から飛び出してきたパイプに四肢を拘束された。

同様に、船室の壁に衝突した承太郎と花京院も無数のパイプで縛りあげられている。

 

オランウータンはその光景を満足げにながめ、先ほど邪魔をされたお楽しみを再開させようと再度密航者の少女に近づいて行く。

そして一同は悟った。このエテ公はさきほど逃げたのではない。

確実に全員を殺すため、自身のスタンドの中心部まで彼らを誘いこんだのだと。

では、人質など必要ないこいつが少女のみ殺さなかったのは何故か。

その答えはいやらしく脂下がったオランウータンの顔を見れば、おのずと知れよう。

 

 

このまま全員なすすべもなくやられてしまうのか、と悔しげにオランウータンを睨みつける仗助の耳に、届くか届かないかというほど小さな囁き声が聞こえた。

 

(まだ諦めるのは早いぞ仗助。)

 

声の主、ジョセフが毅然とした態度で続けた。

 

(わしに良い考えがある。)

 

 

 

「おいそこのエテ公!!なぁに俺を倒した気になってんだコラぁ!?」

 

仗助の声に、面倒臭そうにオランウータンが顔を向けた。

 

「人間様に色目使ってんじゃあねーぞ!サルはサルらしくお仲間とバナナでも食って

 りゃあいーんだよッ!いや、そのツラじゃあ仲間にも相手にされねぇか?可哀想に

 よぉ~~!」

 

正確に言葉の意味を理解したわけではないのだろうが、挑発されていることはわかったのか、どすどすと足音に苛立ちを込めながらオランウータンがシャワー室に向かってくる。

 

(そうだ・・・もっと近づいてこい・・・!)

 

だがそのまま仗助に殴りかかると思われたオランウータンは、シャワー室の入口でとまってしまった。

そして何かに気付いたように不気味に顔をゆがませ、仗助とクレイジーダイヤモンドの拘束を更に強める。

 

身体全体に加えられた骨が折れんばかりの強い力に仗助の意識が薄れ、クレイジーダイヤモンドの手から小さな金属片がこぼれ落ちた。

 

仗助はオランウータンの意識が密航者の少女に向いた隙に、自身の制服から飾りを引きちぎり、クレイジーダイヤモンドに投げ渡していた。

その上でクレイジーダイヤモンドの能力によって飾りをライフル弾のような形状に変化させ、こっそりと掌の中に隠し持っていたのだ。

 

『お前のチンケな策なんざお見通しなんだよこのマヌケが!大方もっと近づいたところで

 確実に脳天目がけて撃ち込もうとしたんだろうが、残念だったな!』

 

「目は口ほどに物を言う」というが、オランウータンの表情からは彼が今考えているだろうことがありありと見てとれた。

折角のお楽しみを邪魔したツケはスタンドではなく直接手を下すことで存分に支払ってもらうつもりなのだろう。

もはや抵抗する術の無い死に体の人間に警戒するのも馬鹿らしい、と言わんばかりに、今度は悠々と歩み寄ってくる。

 

 

オランウータンの足が床に出来た水溜りを踏み越え、シャワーのように噴き出す水がやつの全身を濡らしたのを確認した仗助が、後ろ手でコン、と軽く壁を叩く。

それを合図に、気絶したふりをしながら特異な呼吸法により力を貯めていたジョセフが動いた。

 

(・・・今じゃ!青緑波紋疾走ッ!!)

 

水溜りに接していたジョセフの右手から発せられた波紋は、水面をつたいオランウータンの全身を巡る。

これまで感じたことの無い、身体の表皮から血管内の血液にまでしみこむような独特の衝撃に全身を硬直させるオランウータン。

思わずスタンドの制御が甘くなり、一同を苛んでいた拘束がゆるんだ。

 

オランウータンの硬直が解けたのはジョセフが波紋を止めた数瞬後。

なぜジョセフが波紋を止めたのか疑問に思う間もなく、オランウータンは背後から猛烈な殺気を感じてふり向いた。

そしてすぐ、ふり向かなければ良かったと後悔することになる。

 

彼が最後に目にしたのは、自身の鼻先数センチにまで接近していた赤、青、緑、銀の色とりどりな影だった。

 

 

 

ボロ雑巾のようになったオランウータンを横目に、ジョセフ達は足早に船室を後にした。

スタンド使いが意識を失った今、そのスタンドがいつまでも形を保ち続けるとは思えない。現に周囲はみるみるうちに変形し縮んでいく。

 

再び長い廊下を走り抜け、幸運にもここまで乗って来たボートに辿り着くことができた一行。

からくも危機から脱し安堵の息を吐く一行の背後には先ほどまで乗っていた貨物船の姿はなく、ただ一艘の古ぼけた小さな船だけがあった。

 

「これでまた漂流に逆戻りか・・・。」

 

日本を出てから3日と半日。着々と時計の針は進んでいく。

 

 

 

 

「花京院さん。その櫛貸してくれませんか?俺のどっかに落としちまったみてぇでよぉ~。」

「そういや仗助、お前に貸してたワックスどうした?」

「あッ・・・。」

 

締まらない様子の一同を、頭上の太陽がギラギラと照りつけていた。




アンちゃん「やっと出番が来たと思ったらこれかよ!」
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