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史実よりも半日ほど長く漂流するはめになったジョセフ達だが、無事航海中の船に救助され、シンガポール共和国に入国できた。
まずは宿をとり今後の方針を決めようとホテルに足を向ける一行の後に、当然のような顔をして密航者の少女がついてくる。
話を聞くに、色々と格好をつけてはいるが父親と合流するまで行くあてがないようだ。
ここまで同行してきて多少情がわいたのか、ジョセフは少女のホテル代を出してやることにした。
「申し訳ございません、観光シーズンで家族連れのお客様が多く、ファミリータイプの
お部屋は予約で埋まっております。」
ツインを2つ、シングルを3つであればご用意できるのですが・・・、と7人分の空き部屋を確認しつつ答えるフロント係の言葉に、ふむ、と顎に手を当て考えるジョセフ。
はじめはあまり離れずにまとまって行動した方が良いかと考え、せめて3人以上が寝られるような部屋をオーダーしてみたが、とりあえず目に着いたまま訪れたホテルでこれなのだ。他へ行っても同じような答えが返ってくるに違いない。
仕方なく、ツインを2つ、シングルを3つ依頼する。
うち1つはすぐに決まった。密航者・・・既に船からおりているのだから元密航者というべきか、少女の部屋だ。
DIOの刺客に一行の関係者とみなされ少女が襲われることも考えられなくはないが、同室にした場合に戦いに巻き込まれる可能性と比較すれば微妙なところだ。
なによりも少女が同室をいやがるのだから、無理に誰かと同室にしたとしても勝手にふらふらと何処かへ行ってしまうことだろう。
「えーっと、わしと仗す・・・」
「お、俺はシングルがいいなぁ~!」
「俺も一人の方が気が楽でいい。」
二人きりで同室は気まずいとばかりに仗助がジョセフの言葉を遮り、ポルナレフも続けて希望を述べる。
ジョセフとしてはこれまで一人きりで旅をし、それなりに単独での戦闘経験を積んでいるだろうポルナレフはともかく、仗助が一人で襲われかねない状況は出来れば避けたいところだ。
しかしそれを言葉にしたら、仗助は更に反発しかねない。幸いシングルの部屋のうち2つは同じ階にあるのだから、なにかあった時にすぐにどちらかが駆け付けられるだろう。
そうジョセフは一応納得し、二人にルームキーを渡した。
「はやく部屋に行ってシャワーでも浴びようぜ」と言いながら言葉通りさっさと部屋に向かうポルナレフ。
そのあとを足早に追いかける仗助の視界の端に一瞬、走り去る小さな影が映り込んだような気がした。
「そんで、それ聞いた億泰がマジ泣きしやがってよぉ~。」
「ぎゃははは!おんもしれぇやつだな億泰ってのは。一度会ってみたいぜ。」
流石は世界有数の商業都市で生き残っているだけのことはあり、機能的でありながら美しく広いホテル内は廊下の隅々にまで掃除が行き届いている。
他の面々が宿泊する部屋と階が異なっているため少々行き来しづらい部屋しかとれなかったのが、難点と言えば難点か。
丁度会話にひと段落がついたところで仗助の部屋の前に到着し、そこでポルナレフと分かれた。
分かれる前に受けた「念のため、部屋に入ったら怪しいところがないかチェックしとけよ」というポルナレフからの忠告に従い、部屋の隅々まで異変が無いか確認する。
戸という戸を開け、ついでにスタンドを出して家具や設備を透過できるかまで確かめた仗助は、特に問題はなさそうな室内の様子に、ようやくほっと胸をなでおろした。
ホテルまでの道中で購入したわずかな荷物の入ったカバンを無造作に放り投げ、服も脱がずにベッドに倒れ込む。
糊のきいたシーツからかすかに洗剤の香りが漂い、なんでもない「日常」を彼に強く意識させた。
思えば遠くに来たものだ。
教師や警察官という長期休暇の取りにくい家族を持つ仗助は、修学旅行などの学校行事を除き、これまであまり泊りがけの旅行をしたことがなかった。
夏休みにも近場の遊園地へ行くのがせいぜいだ。それが今や時間すら飛び越えて異国のホテルの一室に居るのだから、人生というものは何があるか分からない。
自分が姿を消したあと、吉良は、仲間はどうなったのか。
未だ帰り方の分からない自分がいくら心配したとしても無駄ではあるが、想像せずにはいられない。
仗助が最後に見た時、すでに吉良は右腕を失い抵抗する手段もないようだった。
ならば、あとは承太郎が無敵のスタープラチナでなんとかしてくれるだろう。
(そういや、なんで『こっち』の承太郎さんはあんまりアレを使わないんだろう・・・。)
これまで遭遇した敵との交戦では「時止め」を使うまでもないか、射程距離の関係で使うことができなかったのかと勝手に思い込んでいた。
あるいは「時止め」は承太郎にとって対DIO戦までとっておきたい奥の手なのかもしれない。
だが、あのオランウータンとの戦闘中、全員が敗北しそうになった時にはたして手段を選べるものか。
少なくとも船室という狭い空間内で「時止め」を使う機会はあったはずだ。
あとでこっそり聞いてみようかな、と考えながら猛烈に襲い来る睡魔にあらがわず、仗助は瞼を閉じた。
仗助の眠りは、ベッドサイドに置かれていた電話から鳴り響く呼び出し音によって妨げられた。
何かまた奇妙な夢を見ていたような気もするが、夢の余韻はけたたましいベル音でかき消されてしまった。
意識が落ちていたのは短時間だったようで、ちらっと確認した時計はさほど進んでいない。
大きく欠伸をし、片手で乱れた髪の毛をなでつけながら受話器を取る。
「仗助!無事かッ!?」
「ちょッ、いきなり大声ださないでくださいよぉ~。どうかしたんスかポルナレフさん。」
「あ、あぁいや、無事ならいいんだ。ちょいと俺の部屋まで来てくれないか?さっき俺の
部屋に・・・」
そこで不自然に通話が途切れた。
「・・・?もしもぉ~し?」
仗助が呼び掛けるが、受話器は「ツーー」と、つれない機械音を返すのみ。
なんだったのかと受話器を置いた電話から間髪をいれず、再び呼び出し音が鳴った。
「あ、ポルナレフさん?なんか途中で切れちまったみたいで・・・。部屋にゴキブリでも
出たんスか?」
電話をかけて来たのはポルナレフではなくジョセフだった。
ジョセフは手短に、ポルナレフが敵スタンド使いと思われる人物に襲われたこと、敵は既に逃げたがポルナレフが足を負傷したこと、アヴドゥルの推測によると敵は暗殺に長け、一人一人着実に始末するつもりであることを告げ、ポルナレフに合流してジョセフたちの部屋へ来るよう指示する。
ジョセフの話は仗助を心胆寒からしめた。
自分は部屋を確認した後無防備に眠ってしまっていたが、その隙に襲われていたらあっけなく殺されていたかもしれない。
いや、それよりも今はポルナレフだ。
ジョセフは「敵スタンド使いは逃げた」と言っていたが、それではさきほど不自然に途切れた通話の説明がつかない。
もしや、ポルナレフはこうしている間にもスタンド使いに襲われているのではないか?
すぐ行きます、と叩きつけるように受話器を置き、取るものも取り敢えず仗助がポルナレフのもとへ向かう。
高々数十メートルの距離が、今はもどかしい。
「大丈夫ッ・・・です、か・・・?」
ノックをする間も惜しいとばかりにドアを開け、部屋の主へかけようとした言葉がその途中で急速に勢いを失った。
仗助の目の前には、ベッドの上で涙目になりながら縄に縛られ、興奮した様子で息を荒くするポルナレフの姿。
仗助は思わず開いたドアをそっと閉めた。
ツインの部屋が空いてなかったのはきっと道中買い物してて
ホテル到着が史実より遅かったから(白目)