もし仗助が3部にいたら?   作:しろた

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保健室に行ってみよう!

 

時刻はまだ午前中。

学び舎たる高校は、無数の生徒の退屈な溜息と、その中で滔々と紡がれる教師のあらかじめ決められた台詞により、静かなかつそれでいて多数の気配を感じさせるいわゆる「いつもの」授業風景を繰り返していた。

 

しかし校舎の一角の保健室では、今まさに、日常に似つかわしくない暴力の応酬が繰り広げられている。

 

方や、線の細い青年が、マリオネット片手にどこか陶酔した目を前方に向けている。

彼の頭髪は赤く、前髪は一方のみ長くたれており、耳にはさくらんぼを模したようなピアスを付けていた。

 

対峙する青年は、改造した学生服を身にまとい、筋骨隆々の美丈夫である。

しかし普段であれば女子生徒に黄色い声をあげられるような目線をさらに鋭くし、今は前方の線の細い青年、自身に殺害予告をしてきた花京院典明をねめつけている。

 

その傍らには血を吐きながら白目をむく保険医と、ベッドの上で苦痛にのたうつ不良、それを見て慌てふためくもう一人の生徒がいる。

 

ガタイの良い青年・・・空条承太郎が啖呵を切り、花京院を自身のスタンドで殴り飛ばそうとした時、突如として「それ」は現れた。

 

一瞬目の前に現れた「それ」を、承太郎は敵が投げつけたタワシか何かかと考えた。

・・・もっとも、その印象を「彼」に直接投げかければ、ここで意図せぬ三つ巴に発展したことだろう。

 

タワシのようなもの・・・いや、次の瞬間には地面に垂直落下し、無様に「グエッ」という声をあげたことで、それが生物であると認識はできたのだが、今まで何もなかった空間からいきなり現れた物体に、思わず警戒態勢を取る双方。

 

数瞬の後、それが学生服を身にまとった、自身とほぼ年齢の変わらない人間であると確認した2人は、思わず顔を見合わせた。

 

「おい、光ったメロンの次は便所掃除の後のタワシか?DIOってやつは随分と

 変わったモンをお仲間にしてぇようだな」

 

「・・・・・・ということは貴様も知らない人間らしいな。しかし、単なる部外者に

 してはあまりに奇妙な登場シーンじゃあないか・・・」

 

睨みあいを続ける二人の間で、床に寝そべっていた男がゆっくりと身を起こした。

 

「っつ・・・っててて・・・!?」

 

顔を上げ、周囲をきょろきょろと見回しながら、男は有り得ないものをみたように、顔を青ざめさせた。

 

「ッ!!っこ、ここはッ!?吉良の野郎は何処行きやがったッ!?」

 

男が驚くのも当然だ。

なにしろたった今まで彼、東方仗助はあらゆる物を爆破する能力をもつ殺人鬼、吉良吉影と対峙し、身体の随所に穴を開けられながらもあと一歩のところまでやつを追いつめていたのだ。

 

傷のせいで意識は朦朧としていたが、自分が何処に居たかくらいは認識できていた。少なくともこんな周囲を白い壁で覆われたまさしく学校の保健室のような場所ではなかったはずだ。

 

彼が周囲を見回す中でまず認識したのは、自身が最も尊敬している人物の一人。

先ほど見た白いコートから何故か黒い学生服のような姿にかわっているが、いきなり場面が変わったことによる混乱と、直前まで続いていた死闘による興奮から、即座にその違いには気が回らなかった。

 

「!!承太郎さんッ!?ここは一体何処っすか!?吉良はッ!?」

 

思わず掴みかかるような勢いで承太郎に近づく仗助に、わずかに眉間にしわを寄せながら承太郎は答えた。

 

「・・・キラ?何を言っているんだオマエは・・・?俺はキラってやつのことも、

 てめぇなんぞも知らねぇぜ。」

 

その言葉に仗助は茫然とした。これまで仲間と共に追い求めて来た殺人鬼を知らない?

いや、そもそも今自分がすがりつくようにせまっている相手は自分の知る空条承太郎にしてはあまりに若い。よく見てみると自分よりも1つか2つしか歳が違わないような青年ではないか・・・?

それに、先ほどまで歩くのもおっくうになるほど傷つき疲弊していた身体が、今ははじめから傷など負っていなかったように動かすことができる。戦闘でボロボロになっていた制服にも汚れやほつれは一つとして存在しない。

 

 

混乱の極致にある仗助を置き、展開は進む。

 

「貴様は知らないと言うが、どうやら空条承太郎、貴様の知り合いのようだな。

 そして先ほど空中から突然現れた様子・・・お前もスタンド使いか?」

 

背後から声がし、振り返る仗助。

 

「あぁ。今日は良い日だ・・・。DIO様の敵となる輩を2人も始末出来るなんて」

 

そこには狂信者のように熱にうかされた歪んだ笑みをたたえた、もう一人の学生服を着た男が立っていた。

 

 

 

「あぁ?・・・始末する、といったか?」

 

承太郎は、投げかけられた言葉に挑発するように答えた。

 

「とんだ闖入者が紛れ込んだが、俺がてめぇをぶちのめすことには変わらねぇぜ」

 

自身の前に居た仗助を強引に脇に避け、承太郎が一歩前に進む。そして。

 

「お前はこいつの後だ。何処で俺のことを知ったのか、こいつを再起不能にした後でじっくり話を聞かせてもらう。」

 

押しのけられた仗助は、まだ幾分か動転していたが、どうやらここで自分が割って入るのは得策ではないと空気を読み、おとなしく壁際に後退した。

ところが、ここで花京院がいらぬ一言を放つ。

 

「おいおい、随分お優しいじゃあないか。巻き込まないため他人を装おうというのかい?

 それとも本当に知らないのか?だとしても、そんな見ず知らずの変人をかばう貴様の

 美的感覚が知れないな。その焦げたハンバーグのような髪型より、私のヘアースタイ

 ルの方が格段に洗練されているとは思わないか?」

 

その時、その場にいた人間は、聞こえるはずの無い音が聞こえた気がした。

まるで太い張りつめられた糸を力任せに引きちぎったような、それでいてこれからの暴走を予感させるような不吉な音を。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

花京院は狂気にとらわれながらも、目の前の光景にわれ知らず冷や汗をかいた。

それまでどこか動揺しつつも少年を感じさせるような光を帯びた仗助の瞳が、漆黒の殺意に塗りつぶされたかのように徐々に変化していったからだ。

 

「・・・・・・てめぇ・・・今、この俺のヘアースタイルのことなんつった・・・?」

 

ドドドドド、という音は仗助の背後から発せられるのか、それとも自分の心臓から奏でられているのかもわからない。

仗助のそばにいる承太郎も、あまりの仗助の変化に唖然としている。

 

そして次の瞬間、花京院の顔面にコブシが叩きこまれた。

 

「ドラァッ!!」

「グァッ!!」

 

パンチの勢いのまま保健室の壁に叩きつけられる花京院。彼の左頬は無残にもコブシの形にひしゃげている。

 

しかし、花京院もそれで終わりではない。

勢いのまま更にラッシュを叩きこもうとする仗助のスタンド「クレイジーダイヤモンド」は、突然動きを止めた。

 

「ぐッ・・・かなり強力なスタンドパワーだ・・・しかし!!」

 

ふとクレイジーダイヤモンドを見れば、彼のスタンドは緑色の紐のようなものでぐるぐると縛られていた。

花京院がよろりと立ち上がり、前に進む。

 

「私のスタンド、ハイエロファントグリーンが、ごほッ・・・貴様の自由を奪った!

 貴様のスタンドはパワー型のようだが、数瞬であれば動きを止められるだろう!!」

 

紐状の物体の先にある、人型の上半身を持つスタンド、ハイエロファントグリーンが

両手に何か力を込めるように突き出す。

 

「くらえッ!!エメラルドスプラッ・・・・」

 

だが、その技が仗助に届くことはなかった。

 

「後ろががら空きだぜ。」

「・・・ッ!?」

 

背後から容赦の無い、かつ正確に叩きこまれた当て身により、花京院の意識はあっけなく闇に沈んだ。

倒れ伏した花京院の意識が完全に失われたことを横目に、承太郎はため息をつく。

 

「やれやれ・・・とんだクレイジーな野郎だな。」

 

保健室は今や、倒れた数名の負傷者と、ようやく身体が自由になったクレイジーダイヤモンドが創り出す奇怪なオブジェの山で混沌の様相を呈していた。

 

 

 




花京院の鼻が豚っぱなに!と想像しましたが止めました。
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