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しばらく行くと、街道沿いにぽつんと小さな休憩所が見えてきた。
「おっ、良い塩梅に茶屋があるじゃあないか。あそこで休憩しておこう。」
ジョセフの言葉に従い、ポルナレフが休憩所のそばに車を停めた。
休憩所で飲み物でも飲もうと注文するジョセフたちだったが、その背後にいつの間にか例の怪しい車が停められていることに気づく。
「あの車はッ!やつが居るのかッ!?」
さっきはよくもとポルナレフが例の車に駆け寄り、そのあとに承太郎と仗助が続いた。
何故か開いていた運転席側のサイドガラスから車内を見るも、誰も居ない。
無人の車から早々に興味を失くしてドライバーを探すため店の前に戻る2人をよそに、仗助が車体に手を伸ばした。
触れた指先から伝わる金属特有のつるつるとした感触はそこいらにある車となんら変わらないものだ。
(一応、確かめとくか・・・。)
ただの車なら自分の意思ですり抜けられるはず、と展開したクレイジーダイヤモンドが車に触れる・・・
前に背後から花京院に呼ばれ、仗助は振り返った。
「仗助ッ!キミも一緒に止めてくれッ!」
「あぁ~はいはい。怪我人ならこの仗助さんに任せて下さい。」
「違うッ!そういう意味じゃあない!」
「怪しい人間全員ぶん殴ろうぜ!」的物騒なノリで目撃した特徴に一致する客に掴みかかるジョセフ、承太郎、ポルナレフ。
慌てて止めに入る常識人花京院の切実な叫びに、やる気なさそうに反応した仗助が車から離れる。
そもそも花京院も仗助に加勢を求めるのはおかど違いだろう。
何せ彼はこれまで何度も似たような手を使っているのだから。
仗助が車から数メートル距離を置いたところで、背後から扉が閉まる音とけたたましいエンジン音がした。
振り返る一同の顔に排気ガスを振り撒きながら、例の車が走り去ろうとする。
「~~~ッ、おちょくりやがってぇ~~!!」
素早くランドクルーザーに乗り込み例の車を追跡するジョセフたち。
途中あった標識と地図の道が一致しないことに花京院が疑問を口にするが、ポルナレフは構うものかとスピードを上げつづける。
徐々に例の車との距離が縮まり、次のカーブで追いつくか、と思いきや、カーブを曲がった先に追い求めた例の車の姿はなく、かわりに断崖絶壁が広がっていた。
すんでのところで急停車したランドクルーザーの背後から、どうやって回り込んだのか例の車がぶつかり、車を奈落の底に落とそうとする。
物凄い馬力でぐいぐいと道の端に押しやられ、ついに力負けしたランドクルーザーが崖から追い落とされた。
が、それで終わる彼らではない。
花京院のハイエロファントグリーンと承太郎のスタープラチナの土俵際の駆け引きのような見事な連携によって、彼らの乗るランドクルーザーは崖の上に復帰し、入れかわりに例の車が落ちていく。
車から降り、彼の者の末路を見届けるジョセフたちの耳に、ランドクルーザーのラジオを介して宣戦布告が届いた。
敵は自らを『ホウィール・オブ・フォーチュン』の暗示を持つスタンド使いと名乗り、新たなるDIOの刺客であることを明かす。
「車から離れろッ!!」
ジョセフの警告に従い、さっと車から距離を取る。
ゴゴゴという地鳴りと共に、ランドクルーザー直下の地面から、先ほど崖から落下していったはずの車が姿を現した。
あおりを受け大破したランドクルーザーは爆発こそしていないものの、もう使い物になりそうにない。
地面を抜けボロボロだった敵の車体が見る間に凶悪に変形していく。
禍々しく光るヘッドライトはまるで生物の目のようだ。
息つく暇もなく、車、いやホウィール・オブ・フォーチュンが承太郎に襲いかかった。
相手のスタンド能力を見極めるまで無闇な攻撃は控えるべきだというジョセフ。
ジョセフの言葉はある意味正論だが、攻撃をすることによって分かることもある。
何より相手は車で自分たちは人間。
追いかけっこをしてどちらが早いかなど目に見えているではないか。
それに、多少の無茶をしたとしても、少なくとも今だけは敵の注意をひきつけなければならない。
スタープラチナの視界の端に引っ掛かった、「あるもの」のために。
承太郎はその場を動かず前方を睨みつけ、さらに相手に向かって挑発の言葉を吐く。
彼の目はホウィール・オブ・フォーチュンのヘッドライトに劣らず凶暴な光を宿していた。
まっすぐ向かってくるホウィール・オブ・フォーチュンに対峙し、戦闘態勢を取る。
その身体から、突然血が吹き出した。
「承太郎ッ!!」
ホウィール・オブ・フォーチュンが発した音で、やつが何かを飛ばしたのはわかった。
弾丸程度のスピードで飛んでくる物体など、スタープラチナならば余裕で対処できる。
それなのに、承太郎は気付いたら身体の随所をえぐられていた。
「なんだ今のは・・・攻撃が見えなかった・・・!」
攻撃を受け、よろめく承太郎にホウィール・オブ・フォーチュンが迫る。
「フヒャハァッ!俺の攻撃の正体はすぅーぐにわかるさ!わかった時にはどうしよう
もないがなッ!」
車の進行方向から逃そうと、花京院とポルナレフが承太郎を両脇から支える。
何人でも同じことだとホウィール・オブ・フォーチュンの速度は揺るがない。
三人まとめて不可視の攻撃の餌食にするつもりなのだろう、ホウィール・オブ・フォーチュンからまた何かを装填しているような音がした。
攻撃が発射されようとした、まさに、その時。
「うぉおおおおおおーーーッ!!」
寸前で、ホウィール・オブ・フォーチュンの左側面に破壊されたはずのランドクルーザーが突っ込んできた。
「んなァッ!?車だとぉ!!こいつらの車はぶっ壊したはずッ!!」
ランドクルーザーのハンドルを握っているのは、いつの間にかジョセフたちの前から姿を消していた仗助。
彼は敵の意識が承太郎にいっているうちに、破壊されたランドクルーザーを「治し」て乗り込んでいたのだ。
車がホウィール・オブ・フォーチュンに体当たりをした瞬間を見計らい、承太郎が道中やってみせたようにクレイジーダイヤモンドですかさずラッシュを叩き込む。
衝突と、追加で加えられたラッシュによる反動で二つの車が空中を舞う。
両者はドオオン、と大きな音を立て、離れた位置に着地した。
衝撃によりひしゃげた部品が、ぐねぐねと元の形に戻っていく。
「そうか!アンノウンのガキの能力は『壊れた物を元に戻す』ものかッ!死角から一気に
おれを崖につき落として、その隙にその車で逃げようとでも思ったのかぁ?そうは問屋
が卸さねェよ!!」
もう一度、今度こそはとアクセル全開で果敢に突っ込んでくるランドクルーザーに向き直り、余裕をもって答えるホウィール・オブ・フォーチュン。
相手の蛮行に律儀に付き合うことはないと、ホウィール・オブ・フォーチュンのタイヤから鋭利なスパイクが伸び、地面に突き刺さる。
「ヒャッホハハッ!これでもうおれが吹っ飛ぶことはねぇ!!きさまだけ反動で崖下まで
落っこっちまえ!!」
早くも勝った気でいるのか、第4部完ッ!と言いださんばかりの勢いで高笑いをあげる相手と対照的に、静かに仗助は笑みを浮かべた。
(吹っ飛ばすだぁ?スタンドを出したのは吹っ飛ばすためじゃあねぇぜ・・・。)
双方が迎えた二度目の邂逅。
先ほどの光景の焼き増しのように、ランドクルーザーの前面に上半身だけ出したクレイジーダイヤモンドが、ホウィール・オブ・フォーチュンにこぶしを振り上げる。
だが、同じであったのはそこまで。
ラッシュを叩き込むと思われたクレイジーダイヤモンドは握りしめた掌を広げ、ホウィール・オブ・フォーチュンのボンネットをがっしりと掴んだ。
「てめぇを逃がさねぇようにするためだッ!!」
「ヒハッ!?」
「仗助、そのままそいつを押さえてろよ。」
承太郎たちに追撃せんとしたホウィール・オブ・フォーチュンへ、仗助の運転するランドクルーザーが衝突したのが左側。
反動で承太郎たちから見て左右に離れた車が向き直り、再度正面から衝突。
つまり今現在、ホウィール・オブ・フォーチュンは右側の運転席を承太郎に無防備に向けたまま、動きを止めていることになる。
自身の受けた攻撃から、とっくの昔に体勢を整えていた承太郎が、スタープラチナを発現してホウィール・オブ・フォーチュンに猛然と迫る。
タイヤからスパイクを消し後退しようとするも、クレイジーダイヤモンドの絶大なパワーによって抱え込まれ、浮き上がる車輪が空転するばかり。
狭い車内から咄嗟に逃げ出すこともせず、ここが最後の砦であるかのようにろう城を選択した敵スタンド使いの末路は・・・。
いっそ哀れなほど明らかだった。
「オラオラオラオラァッ!オラァッ!!」
ホウィール・オブ・フォーチュンのドアごしに本体へスタープラチナのコブシを打ち込む。
スタープラチナのラッシュは鉄板程度の装甲など無意味と運転手に衝撃を伝え、反対側のドアまで突き破って敵を外へ放り出した。
車外に飛び出した敵スタンド使いは、これまで見えていた逞しい腕以外は貧相な体型をした男だった。
金を貰って雇われただけだと命乞いをする男の折れた精神を反映し、スタンドが消えていく。
いつぞやのオランウータンと同じように、後に残されたのは古びた小さな車。
「こいつの車からガソリンをいただこう。念のため、車も崖から落としておくか。」
敵を捕獲した際に使えるかも、と一応ランドクルーザーに積んでいた鎖で男を岩に縛りあげ、通行人が誤って助けないよう苦行中であるという偽りの立て札を立てる。
タネが割れてしまえば随分と見かけ倒しな敵だったと笑うジョセフたち。
その中でポルナレフが言った。
「あッ!仗助ッ!!お前運転できんの隠して楽をしてやがってたなッ!次はオマエが運転
しろよ!」
「えっ?俺免許なんて持ってないっスよ?」
「はあぁ?」
「レーシングゲーム好きなんで、17になったらすぐ免許取ろうと思って勉強してたんス。
いやー、ゲームみてぇに高速スピンしながら相手を吹っ飛ばすっつーの一回やってみた
かったんだよなぁ~~、失敗したけど。」
うんうんと仗助の言葉に何故か深く共感している様子の花京院以外のメンツは思った。
たとえ免許を持っていたとしても、こいつにハンドルを握らせてはならない、と。
そして花京院、お前もか。