もし仗助が3部にいたら?   作:しろた

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お年寄りを労わろう!1

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「ガソリンを弾丸みたいに発射してくるなんて器用なやつでしたね。」

「引火しなくてよかったわい。」

 

承太郎と承太郎の学ランに開いた穴を「治し」、それでも残るガソリン臭に一行は不可視の攻撃の正体を知る。

あのまま攻撃を受け続けていれば、全身にガソリンが染み込み、ささいな火花や静電気で発火していたことだろう。

 

「まぁタネが分かればそれも治せるんスけどね。」

 

ゆであげられたパスタを乾麺の状態に戻せる仗助にとっては、制服とガソリンを分離させることもたやすい。

むしろ戻しすぎて繊維の塊にならないよう気を使うくらいだ。

ただ、本人に言わせると小便をかけられた食器をいくら奇麗に洗ったとしても使う気が失せるように、なんとなくいやぁな気持ちは残るそうだが。

 

承太郎も仗助の例え話に嫌そうな顔をしたが、着られるならそれでいい、と結論付けたらしく、今でもその制服を大事に着続けている。

 

 

 

国境を越え、道中点在する町で休息を取りながら、パキスタンの大地をひた走るランドクルーザー。

アヴドゥル亡き今、無免許運転上等な三人に加え、生きた交通事故フラグまでいる車内で、もはや頼れるのは己だけだとポルナレフが運転を続ける。

 

車内が一発芸の話で盛り上がるなか、からりと晴れた空に似つかわしくない前方に広がる乳白色に、ポルナレフが愚痴をこぼした。

 

「うげぇ、なんだぁこの霧は?ロンドンかっての。」

「まずいな。どんどん霧が深くなっておる。このままでは今度こそ崖から落ちかねん。

 まだ早いがあの街で一泊するしかあるまい。」

 

霧の合間から途切れ途切れに浮かぶ街並みを確認しつつジョセフが言った。

 

霧の中、慎重に車を走らせて山道を下り、目当ての街に辿り着く一行。

街の外観を覆い隠していた霧は、この街の中をも包み込み、数メートル先も見えないほど。

日の光が霧に遮断されているからか、これまでの道中に比べ辺りはひんやりとしている。

深い霧の中に居るにもかかわらず、さほど肌にまとわりつくようなジメジメした湿気は感じない。

 

「こんな町、地図には載っていなかったんだが・・・。」

「霧で目測が狂ったんじゃねぇの?んなことよりホテルだホテル!」

 

一行が降り立った町はそこそこの規模があり、それなりに人通りもある。

それなのに、人の生活する場所特有の活気というものがない。

道行く人は皆無言で、ヒタヒタという足音が聞こえるだけ。

何とも言えないおぞけが走るのは不気味な町の様子のせいか、外界との温度差のせいか・・・。

 

ジョセフがホテルの場所をたずねようとレストランの前に居た男に話しかけるが、にべもなく断られる。

それじゃあ今度はそこで暇そうに座っているやつだ、と霧の中に浮かぶシルエットに近づいたポルナレフが見たのは、恐怖で顔をゆがませたまま絶命した男だった。

 

男の手には拳銃が握られており、銃口からはまだほのかに煙が上がっている。

死体を見分した結果、旅行者らしい男の身体には杭を刺したかのような穴が随所に開けられていたことが分かった。

にもかかわらず死体周辺には一滴の血もこぼれてはいない。

 

奇妙な死体と、不自然なまでに死体や一行に無関心な住民たちに危機感を覚えたジョセフが町を出ようと提案する。

しかし何故かランドクルーザーとは逆方向に走っていき、建物の壁に頭突きをし出す。

それを見た仗助は場違いにも、こんときにゃあもうボケはじめてたのかよ、などと考えていた。

 

ジョセフに若干の憐れみを込めた視線を送りつつ、ランドクルーザーに乗り込もうとする一行の背後から、1人の老婆が声をかけて来た。

町の中で会った人々とは違って、普通にあいさつを交わし、普通に会話が成り立つ様に、ようやくまともな人間が現れたと安堵する。

 

この霧の中町を出るのは危険だと語る老婆は、自身の経営するホテルへ一同をいざなった。

 

(んー?このばーさんどっかで・・・。)

「なぁ、あんたどっかで俺に会った事ないか?」

 

杖をつき、腰を曲げてのそのそと歩く老婆を何処かで見た事があったように感じた仗助が、老婆に問いかけた。

 

「さぁ?何をおっしゃるやら。わたしゃずーっとこの街におりますですが、お客さんの

 ような方はとんと覚えがありませぬな。これでも客商売なもんで、としの割に記憶力は

 良い方なんですよぅ。」

「としぃ?こんな若い子にもナンパされちゃってんだ、まだまだイケてるって自信持って

 いいぜ!」

 

ナンパ男の常套句のような仗助の言葉をポルナレフがすかさず茶化す。

老婆もからかわないでくださいよと言いながら楽しげに笑っている。

 

「ナンパじゃあねーッ!!ん?包帯なんかしてばーさん怪我してんのか?片手が使えな

 きゃあ大変だ。見せてみなよ。思ったよりも軽い怪我でもうほとんど治ってるかもしん

 ねーぜ。」

 

軽い親切心で、さりげなく怪我の治療をしてやろうかという仗助の思惑など知るはずもない老婆が、いっそ過剰ともいえる態度で拒絶を表す。

 

「いやいやいや!お気遣いは結構ですじゃ。利き手は使えますし、人様にお見せできる

 ようなもんではごじゃいませんよってに。本当に気にせんでくだしゃれ。」

 

周囲の視線から隠すようにバッと左手をそでに隠す老婆。

ごまかすように殊更明るく朗らかに続けた。

 

「ほぅら、ジョースター様もお疲れでしょう。小さくとも部屋は余っておりますんで、

 個室をご用意いたしましょう。」

 

 

 

案内された3階の客室に荷物を下ろし、承太郎と花京院がジョセフの部屋に集まる。

好き勝手に椅子やベッドに腰掛ける彼らに対し、真剣な面持ちでジョセフが切り出した。

 

「どうも臭いな、あのおかみ。」

「あぁ。あの婆さんさっきジジイを『ジョースター様』と呼んでいたぜ。誰も口にしちゃ

 あいねぇのによ。」

「あの老婆が新手のスタンド使いなのでしょうか。男の死体やこの異様に深い霧とも何か

 関係が?」

 

承太郎たちも老婆に不信感を抱いていたようで、矢継ぎ早に疑問点を述べていく。

しかし仮に霧がスタンド能力の一環だとしても、霧でどうやって男の体に穴を開けるのか。

解答を出すには現時点では情報が足りなすぎる。

一つはっきりしているのは、敵スタンド使いであれば必ず何かをしかけてくる、ということだ。

それも恐らく今晩中にでも。

 

「おい、ポルナレフと仗助はどうしたんじゃ?」

「ポルナレフはここに来る前にカミがどうのっつってロビーに行ってたぜ。仗助も一緒だ。」

「カミ・・・?こんな時に何をのんきなこと言っとるんじゃ全く。・・・まぁちと気になる

 が、二人一緒なら大丈夫じゃろう。遅くなるようならわしらも様子を見に行くとするか。」

 

二人が老婆の居るだろうロビーに行ったと聞いても、あまりジョセフに焦りはなかった。

敵スタンド使いが近くに居るのなら、到着早々、しかも男の死体を見て警戒しているところを襲うよりも、もっと相手を油断させてから、自分の有利な状況で事が運ぶようその機会を待つはずだ。

誰だってそうする。

そう、よほど想定から外れたことでも起こらない限りは。

 

 

「カミだよカミッ!」

「髪がなんだってんだよぉ~?ワックスならじじいに頼んで返したじゃあねーっスか。」

「その髪じゃあねぇって!このホテルのトイレもやっぱりフィンガーウォシュレットだっ

 たんだよッ!もう我慢ならねェ!おかみさんに言って要らねぇ紙でももらうッ!」

 

このフランス人は図太いのか繊細なのか。

どうでもよい事に悩む仗助だったが、彼自身にとっても異国のトイレ事情は割と切実な問題であった。

それに、老婆ともう一度会話をしてみたかったのも事実。

老婆は知らないと言ったが、どうしても奥歯に物が挟まったように、ふとした拍子に気になってしまう。

 

各国のトイレ談義を熱く展開する2人の進行方向で、ガタガタと重いものを動かすような音がした。

 




何故銃声が聞こえなかったのか?

大体霧のせい。あと時間がずれて史実よりも遠くに居たから。
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