もし仗助が3部にいたら?   作:しろた

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お年寄りを労わ・・・

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あまりにも遅すぎた仗助の告白に、ポルナレフがあきれ返った。

 

「はぁ~~ッ!?、おま、そういうこたぁもっと早く思い出せよッ!!」

「知ってた、というと『向こう』で会ってたのかい?」

「そうじゃなくて、俺も写真でちらっとしか・・・」

 

これまで仗助がエンヤ婆に直接会ったことはない。

彼は『弓と矢』を捜索する中で、SPW財団から提供された資料を読む承太郎の横からぼんやりとそれを見ていた。

そこにあった老婆の写真が、随分と印象的だったため記憶の片隅に残っていただけだ。

 

魔女エンヤ婆。彼女こそがDIOに『弓と矢』を提供した人物。

彼女のもたらした『弓と矢』によってDIOはスタンド能力を身につけ、スタンド使いを量産することができたのではないか、と『向こう』の承太郎は推測していた。

仗助の話に加えてホル・ホースと老婆との会話中に出て来た「雇った」という単語から、この老婆が単なる「DIOの刺客」という枠より外れた存在であったことがうかがい知れる。

 

「ではこの老婆はこれから襲ってくるだろうスタンド使いの人数や能力、DIOの居場所、

 だけでなくDIOのスタンド能力までも知っているはず・・・。」

「いくら口が固くとも、わしのハーミットパープルならテレビにこのバアさんの考えを映

 し出すこともできるじゃろう。」

「じゃあ結局、隣の町でテレビを手に入れるまでは連れて行くしかねぇのかよ。うう、

 ぞっとしねぇなぁ。」

 

老婆、エンヤ婆の処遇が決まったところで、仗助が彼女に治療を施そうとするのをジョセフが最低限にするようたしなめる。

酷いようだが、これから危険人物と狭い車中に乗り合わせなければならないのだ。

再起不能一歩手前程度の状態は、スタンドを出させないためにも維持していた方がよい。

 

 

意識の戻らないエンヤ婆を後部座席後ろの荷室に乗せ、ランドクルーザーがパキスタン国内を南下する。

途中見かけた町に小さな電気屋はあったものの、あいにくとジョセフの念写に使えそうなものは置いていなかった。

電気屋の店主に、どこかでテレビを入手できないかと相談してはみたのだが、普段は主に販売よりも修理の方でほそぼそと稼いでいるらしく、テレビのような高級品は注文があった時に仕入れるシステムのようだ。

この辺りにある小さな町や村でも品ぞろえは似たり寄ったり。

それなら少し遠いがカラチまで行った方が早いし確実だろう、自分達もそこで仕入れをしているのだ。と、チップと呼ぶにはいささか高額な臨時収入でほくほく顔の店主は懇切丁寧に教えてくれた。

 

エンヤ婆を連れている関係で、彼らが町のホテルに宿泊することはできない。

やむなくポルナレフとジョセフが交代で運転をし、車内で仮眠をとりつつ夜通し車を走らせる。

 

 

 

翌日の昼過ぎには目的地、パキスタン最大の商業都市カラチへと到着する一行。

電気屋を探す前にまずは腹ごしらえをしようと、ジョセフは町の入り口近くにあったドネルケバブ屋の前に車を停めて降りた。

 

若干不慣れな様子の店員から商品を受け取ったところで、ランドクルーザーから他の4人が一斉に飛び出してきた。

 

「どうしたッ!何があった!?」

「わ、わかりません・・・。急に老婆の顔中から触手のようなものが伸びて来て・・・。」

「うぉ、こっちくんなッ!シルバーチャリオッツッ!!」

 

開け放たれた車のドアから、花京院の言う触手が広がり出る。

肉色をした巨大なミミズのようなそれは、シルバーチャリオッツによって切り刻まれ、太陽の光で塵と化した。

 

「太陽光で消えた?これは肉の芽かッ!」

「くっそッ!ばあさんッ!!」

「待つんじゃ仗助、うかつに近寄るんじゃあないッ!お前まで寄生されるぞッ!!」

 

車に駆け寄ろうとする仗助をジョセフが制止する。

 

エンヤ婆のことを思い出して以降、仗助は彼女に一つ聞きたいことがあった。

それは、もうすでに『吉良』という男に『弓と矢』を売ってしまったのか否か。

1999年時点で33歳だった吉良吉影が21歳の時に父親が死んでいるのだから、普通に考えれば1987年より以前に吉良の父親の手に『弓と矢』は渡っていたことになる。

しかし一度聞いただけの細かな時系列などうろ覚えもいいところだったため、まだ間に合うかもしれない、と仗助は考えていたのだ。

現状DIOのことで手一杯なSPW財団に、スタンド使いかもわからない殺人鬼へまわす余裕があるはずもなく。

虹村の父親の件もDIOに関係があるからこそ話が通ったにすぎないことは、彼にもわかっていた。

 

 

 

車内を所狭しと動き回る肉の芽を警戒し、老婆に近づくことすらできない一同。

エンヤ婆が車から出てきてくれればまだやりようはあるのだが、全身ボロボロの上縛られたまま後部座席のトランクに居る老婆が元気に飛び出して来てくれるわけがない。

車内から、老婆の悲痛な叫び声が聞こえてくる。

今もなお脳みそを肉の芽によってかき回されているのだろう、ほとんど意味を為さない絶叫の中で、幾つかの単語だけがはっきりと一同の耳に届いた。

 

「肉の芽」「どうして」「いつ」「DIO様は」

 

こう着状態は長くは続かなかった。

ひときわ大きく肉の芽が蠢くと同時にランドクルーザーの窓が老婆の血で赤く染まり、老婆の断末魔が途絶える。

エンヤ婆の命の灯に呼応するかのように、肉の芽がくたりと動きを鈍らせた。

 

ポルナレフが車に駆け寄ってトランクを開け、残っている触手を寸断しながらエンヤ婆を車外へ連れ出す。

引っぱりだされた老婆をすかさず仗助が「治す」も、肉体ではない大切な何かがぷつりと切れてしまったのか、弱々しい反応しか返さない。

 

「ばあさんッ!あんたはDIOの近くで肉の芽に操られる人間をみてきたはずじゃ。

 ならもうわかっているじゃろう、その肉の芽があんたの中にあったということは、

 どんなにあんたがDIOという男を信頼していたとしても、それは偽りの感情に

 すぎんッ!!頼む、DIOのスタンドの能力を教えてくれッ!!」

 

必死にDIOの秘密を喋るよう呼び掛けるジョセフに対し、微かに老婆の口が動いた。

どんな言葉も聞き逃すまいと老婆の口元へ耳を近づけるジョセフ。

 

「・・・偽りではない・・・。DIO様とわしは・・・信頼しあっていた・・・。

 きさまらの思い通りには・・・させぬ・・・この身が朽ちたとて・・・バラす

 ものか・・・。」

 

老婆は、自分がジョセフたちに生かされた意味を正確に理解していた。

自分からDIOの秘密を漏らすようなことは決してないと断言できる。

しかし、いくら拒絶したとしてもジョセフの念写によって情報を引き出されでもすれば抵抗は無意味。更に彼女にとって都合の悪い事に、傷を治す能力を持つ仗助まで同行している。隙を見て自害するのも難しい。

 

なれば、これはある意味チャンスなのだ。

 

仗助の能力を持ってしても、大量出血をした老人の衰弱しきった体力までは治せない。

その上、当の本人は生きる意志を失っている。

 

ほどなくして、エンヤ婆の自発呼吸が止まった。

最期までDIOへの忠誠を誓い、情報を漏らすことなく死んでいった老婆。

それはわずかに脳内に残留していた肉の芽の影響だったのか。それとも・・・。

 

 

エンヤ婆から情報を引き出した後、彼女の身柄をどうするか彼らが決めていたわけではない。

仗助とポルナレフに至っては直接殺されかけた相手だ。彼らの行動がエンヤ婆の死因に寄与する部分もあったろう。

だが、これまでDIOに尽くしてきただろう老婆の死にざまがこれではあんまりではないか。

 

 

「全く、哀れな女だな。最後までDIO様に利用されていたことに気付かないとは。

 まぁその分、当の本人は幸せだったのかもしれないが。」

 

ジョセフたちが振り返ると、先ほどのケバブ屋の店員がフードとサングラスを外し、優雅にお茶を飲んでいた。

 

「DIO様、じゃと?その名前を知っているということは。」

「新手のスタンド使いッ!!てめぇがエンヤ婆を殺ったのかッ!」

 

エンヤ婆の体内で急成長を遂げた肉の芽。

肉の芽から本体たるDIOへ宿主の状態が逐次伝わり、植えつけた肉の芽を任意で暴走させることができるなら、今頃花京院とポルナレフはとっくに墓の下に入っている。

彼らがまだ生きてジョセフたちの旅に同行している以上、DIOの意思とは異なる、別の力が作用してエンヤ婆を死に至らしめたはずだ。

 

「何故わざわざ名乗り出る?」

 

承太郎が店員の前に一歩踏み出す。エンヤ婆の死に際に彼も思うところがあったのか、その目は怒りの炎を灯していた。

 

「くっくっくっ、既にわたしは攻撃を終えている。もう君たちがわたしに触れることは指

 一本たりとてできはしないのだよ。姿を隠す必要もないさ。」

 




DIO「あ、ごめん思ってたよりジョセフたちそっちに早く着くわ」
ダン「ちょ――っ!!まだ準備がぁああッ!!」
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