もし仗助が3部にいたら?   作:しろた

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区切りが悪かったので2話連続投稿します。



頭の中に行こう!(物理)1

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ケバブ屋の店員もとい、スティーリー・ダンが一行に姿を現したこと、それにはちゃんとした理由がある。

 

スティーリー・ダンのスタンド『ラバーズ』はとても小さく、非力なスタンドだ。その能力は侵入した相手の脳みその極一部を牛耳るというもの。

脳細胞や神経を刺激することによって相手に擬似的なダメージを錯覚させるほか、どこをどう刺激すれば相手が苦しむか、脳内の状況を透視のように把握でき、脳みそから自身の複製を作りだして「人手」ならぬ「スタンド手」を増やすこともできる。

 

しかし唯一の攻撃手段にも「本体が受けたダメージ」を数倍にして返すという制約があり、自由勝手に痛みを与える事はできないし、実際に肉体が損傷するわけでもない。

 

苦痛に対する耐性は人それぞれ。数々の戦いを潜り抜けてきたジョセフたちがどれだけの痛みに耐えることができるのか。

自分が再起不能になるような重傷を受けなければ殺せないなど堪ったものではない。

 

そこで、確実に殺すために肉の芽を使う。ただしそれにも問題があった。

 

ジョセフは波紋によって吸血鬼の細胞たる肉の芽を塵にすることができる。

彼は肉の芽を思い通りに操作する上で、天敵である波紋についての知識も授けられていた。

ジョセフが他人の頭に巣くう肉の芽までをも殺せるか、そこまでの情報を得られなかったスティーリー・ダンには分からない。が、寄生されていたはずの花京院とポルナレフがいつの間にか肉の芽から解放されているのだ。対処できる可能性が高い。

 

一切姿を見せずにこっそりと肉の芽を育んだとしても、ジョセフたちはついさっきエンヤ婆が肉の芽に食い殺されている姿を見ている。頭の中で成長する肉の芽の放つ違和感に気付かれ、早々に波紋で対処されてしまうのがオチだろう。

 

波紋を使えばそれを感知したスタンドが本体にその旨を伝え、本体がわざとダメージを負うことでスタンドを介して敵へ痛みをフィードバックさせる。

彼に重傷を負う気など毛頭なかったが、ブラフとして自分の能力の片りんを見せつつ、ジョセフに波紋を使わせないようけん制し、肉の芽が成長しきるまで騙しきることが出来れば。

脳内深く入り込んだ肉の芽を駆逐する人材はいなくなり、あとは肉の芽が成長するのを待つだけで片がつく。

 

 

スティーリー・ダンはジョセフを過大評価している。

 

人体に寄生した肉の芽は、宿主から切り離されない限り太陽光に照らされようと消滅することはない。したがって、それに対処する波紋のパワーは相当強力でなければならない。

 

波紋とは特殊な呼吸法によって体内にエネルギーを練り上げるものだ。つまり外部に放出するよりも、体内へ向ける方が強力、正確かつスピーディにその効果が及ぶ。

長年波紋の呼吸をせず、全盛期よりも体力の衰えたジョセフでは自身の体内はともかくとして、他人の頭の中にまで入り込んだ肉の芽を防衛機能が働く前に瞬時にせん滅することなど出来はしないのだが・・・。

 

 

彼の計画通り、スティーリー・ダンはエンヤ婆が死ぬ直前、ジョセフの耳から脳内へ、肉の芽と共にスタンドを送り込むことに成功した。

その旨をジョセフたちに告げ、近くに居た子供に駄賃を渡してデモンストレーションを行う。

 

多くを語る前に存外手の早かった承太郎に殴られるという想定の範囲外の事態も発生したが、お陰でジョセフに能力を使おうとした仗助のスタンドの力量が知れた。

どうやら擬似ダメージには能力が効かないようだということが。

 

(エンヤ婆といい、ジョセフといい、この小僧の能力は『傷を癒す』ものか?ふん、それなら都合が良い。この小僧は最後まで生かし、肉の芽が脳みそを喰い破る直前で助けてやるとでも言って、これから負わねばならないかもしれないわたしの傷を治させてから殺すとするかな。)

 

おそらく、ジョセフが苦痛によって命を落とすことはない。承太郎たちにもそれはわかっているが、それでも、万が一にでもその可能性があるならば、と強硬手段を取ることができない。

彼らに対して存分にブラフが効いていることを感じ取ったスティーリー・ダンが、先ほどのお返しだと承太郎を石で殴りつける。そして、承太郎に負けず劣らずキレる一歩手前のような表情を浮かべている仗助と目があった。

 

「なんだぁその目はぁ~?そ・・・」

 

バチーンと勢いよく仗助の耳を両手でふさぐ花京院。

 

「キミだけは、絶対に奴の声の届くところにいてはダメだッ!」

「えっ?はぁ?」

「一緒に来るんだッ!承太郎ッ!!ヤツの足を止めていてくれッ!!」

 

運よく事前に察知した花京院のファインプレーで、スティーリー・ダンの挑発を仗助が認識することはなかった。

こんなときに敵が彼の髪型を貶す言葉が仗助の耳に入ってしまえば、プッツンした仗助がどんな行動を取るか分かりきっている。無理やり仗助の顔ごと体の向きを変えさせて、承太郎を除く4名は一目散に遠くへと逃亡を計る。

 

 

スティーリー・ダンの姿が見えなくなってもまだ走り続けるジョセフたちが、電気屋の前で立ち止まった。

 

「おいジョースターさん、花京院!逃げたって奴の射程距離がわからなけりゃ・・・」

「やみくもに逃げ回っていたんじゃあありませんよ。」

「これからこのテレビでわしの頭の中を念写する。お前たちにはスタンドを小さくして脳

 内で奴と戦ってもらうぞ。」

「小さく?んなことできんのかよぉ~。」

 

精神のヴィジョンたるスタンドなら、本体のイメージを反映して大きさを変えることができるはずだ、と語る花京院。

スタンドをひも状に変えられる花京院と、スタンドの一部を取り外し可能なポルナレフが「スタンドの形を変える」イメージを手がかりにして手早くスタンドを縮めていく。

一方、スタンドの形を変えた事など無い仗助は中々イメージを掴めずに手こずっていた。

 

こうしている時間も勿体ない、こんな道端でドタバタしていたらどんな邪魔が入るか、と仗助のスタンバイを待つ間にテレビを購入し、人気の無い場所へ移動する4人。

その間に、自分にも出来る、現に目の前の2人はやってのけたではないかと無理やり自身に思い込ませ、なんとか仗助もクレイジーダイヤモンドの縮小化を成功させた。

 

ジョセフがテレビに茨を絡ませ、自身の脳内を念写する。

ギューン、とめまぐるしく脳内の様々な個所を映し出すテレビのモニターが、ノミを思わせる姿をしたスタンド、ラバーズの姿をとらえた。今もなお、ジョセフの脳神経と思われる細い管をはさみ状の手でつかんでいる。

 

「ほ、ほんとうに居やがった・・・。」

「あーやってじじいの感覚をいじくってんのか。うげぇ~。」

「時間が無い、早く行くぞッ!!」

 

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