独自解釈の嵐です。
「お前がそう思うんならそうなんだろ、お前の中ではな!」
という広い心をもってお読みください。
32
小さくしたスタンドがジョセフの耳から血管を通り、脳幹へと辿り着く。
その過程で敵にスタンドの接近を察知されたのか、それともただの偶然か、ジョセフが奇声を発して念視が途切れかけたが、幸い人目の無い場所に移動していたため、周囲の人間の同情を買うことはなかった。
ジョセフの脳幹で彼らを出迎えたのは、無数に蠢く肉の芽の触手。
敵スタンドと共に耳から入ったなら、元は小さくなっている自分たちでも持ち運べるほどの大きさだったはず。それがどうだ。わずか数分のうちに持ち運ぶどころが自分たちを丸のみにできそうなほどにまで成長してしまっている。
10分もあればエンヤ婆と同じ末路になると述べたスティーリー・ダンの言葉は嘘ではなかったのだ。
一々相手をしていたらタイムリミットが来てしまう、と肉の芽をかいくぐり、更に奥に進む3人のスタンド。やがて肉の芽が根を張っているとおぼしき場所にまで到達した。
肉の芽の根元には、3人が体内に入り込む前に念写で確認したスタンド、ラバーズが居た。
先ほどとは違って、手のはさみは脳神経ではなく脳そのものををちょきちょきと細切れにしている。
「エメラルドスプラッシュッ!!」
花京院のハイエロファントグリーンがラバーズに向け破壊のビジョンを放つ。
はさみで防御するも、パワー負けしたのかあっけなく吹っ飛ばされ粉々に破壊されるラバーズ。
あまりにもあっけなさすぎる、といぶかしむ3人だが、さすがにこれで終わりとはいかなかった。
攻撃を受け散らばったはずのラバーズが、ぐじゅるぐじゅるとその身体の一部を核にして分裂を始め、あっという間に何体にも増えていく。
そう、今しがたハイエロファントグリーンが攻撃をしたのはスタンドではなく、脳細胞をこねて作られた精巧なダミーだったのだ。
「細胞を変形させてダミーにするとは。」
「ここんとこ姿を変えたり操ったりっつー奴が多いよなぁ。」
「ウサギとカメ」の童話に例え、自身の弱点を知っているからこそもっとも強いのだとご高説を垂れるラバーズを無視して、花京院とポルナレフがそれぞれの感想を述べる。
「なぁーに余裕ぶっこいてんだ貴様らッ!これならどれが本物か分かるまいッ!!」
ラバーズの言う通り、十数体にまで増殖した本物そっくりに動くダミー達に紛れ、見た目だけでは本物のスタンドを判別をすることができない。
「先ほどの攻撃は小手調べさ。僕らはただ、お前がジョースターさんに痛みを返さないよ
う見張ってるだけでいいんだから。」
「あぁ。怪しい動きをした奴から大根おろすようにすり削ってやるぜ。」
こいつらは何を言っているんだ。攻撃を受ければ受けるほどダミーは増えていくのだから、いずれ見張りの目のいきとどかない数になる。しかも自分が暴れなくとも、あと数分もしないうちに肉の芽が仲間の命を奪うというのに。
スタンドに眉毛があったならひそめていただろうラバーズに、仗助が種明かしをする。
「どうやって動かしてんのかはしんねーが、ダミーはてめぇのスタンドじゃあ無くて、元々
はじじいの細胞なんだろ?なら・・・。」
片っぱしから元に戻していきゃあ、そのうち本物にあたるよなぁ?
「・・・え?怪我を癒す能力だったんじゃ・・・。」
「誰がいつそういったよ。それに怪我なら癒してるじゃあねぇか。じじいの脳みそを。」
まずは一体、クレイジーダイヤモンドが近くに居たラバーズもどきをぶん殴る。
一発でいともたやすく形を失ったダミーは、そのまま崩れ落ちることなく、先刻までラバーズもどきが脳みそをこねくり回していた場所へと戻っていった。
「ほぉ。分裂するためには『2つ以上にバラされる』必要が、新しくダミーを作るために
は『脳みそを切り取る』必要があるようだな。あ、仗助、あそこも治してみてくれないか。」
「待っ・・・」
あそこ、とはダミーが生えて来たところのこと。なにもされていない脳細胞にくらべ、幾分へこんでぐちゃっとしているので、その差は明らかだ。
「俺が高速バスと競争するハメになったのも、貯金残高が3ケタになったのも、てめぇの
せいだったのかーーーッ!!!」
別にジョセフが呆けたのはラバーズのせいとは限らない。特に前半はともかくとして後半に至っては明らかに逆恨みといえる。
全く身に覚えの無い糾弾を受けるラバーズをよそに、折角拵えたダミー人形たちが次々に脳細胞へ戻っていく。
残されたのは肉の芽に隠れる様にして様子をうかがっていた一体のみ。
ヒイィ!と慌てて逃げようとするラバーズの背後から、クレイジーダイヤモンドが容赦なく右ストレートをぶち込む。軽々と吹き飛ばされていくラバーズは血管の壁に打ち付けられるが、衝突の勢いさえ利用してそのまま血管に潜り込んでいった。
「チッ、浅かったか。血管に入りこんで逃げ出すぞ!」
「すんません、スタンドを小さく、っつーのがいまいち慣れねぇせいでミスっちまった。
だけど、これで婆さんと爺さんの借りは返したぜ。」
それでも彼らは逃げ行くラバーズを追おうとはしない。何故ならそれも計画のうちなのだから。
「ただ見張ってるだけなわけがないじゃあないか。あいつは自分を知っていると言ってい
たが、敵を知らなすぎた。」
ジョセフの手は現在進行形で念視のためふさがっている。
念視をする必要があったのは言わずもがな、ラバーズの行動を監視し、脳神経にアクションさせないためだ。
最善がとっととラバーズを行動不能にする、次善でラバーズをジョセフの脳内から追いだす。それさえ為せばテレビから手を離し、念視が途切れても相手の反応を考えず安全に波紋を使用することができる。
仗助がラバーズダミーや脳細胞を治している間、花京院はハイエロファントグリーンを網の目のように張り巡らせ、一体一体の足に結んでいた。
相手の逃げ足が速く、慣れないスタンド操作で全体的に動きが鈍っていたため捕縛には至らなかったが、逃げた本物のラバーズの行方は分かっている。
どうせ起死回生を狙って承太郎か、人質にとれそうな無関係な人間にでも再度取りつくつもりなのだろう。
ラバーズが脳内から居なくなったことを触脚で感じ取った花京院が合図をし、ジョセフが自分の頭に手を当てて波紋疾走で肉の芽を焼き滅ぼす。脳内に肉の芽がなくなったことを確認した3人は、傷ついた血管や細胞をなおしながら帰路を辿る。
「む、ラバーズの動きが止まったな。また懲りずに誰かの脳に入ったか。ハイエロファン
トグリーン、ヤツの身体に巻き付けッ!」
外界に出て、元の大きさにもどったハイエロファントグリーンに、今度こそ捕縛を命じる花京院。ほどなくして承太郎がスティーリー・ダンを再起不能にしたようで、触脚で縛りあげられていたラバーズの感触が消えた。
「さぁて、承太郎を迎えに行くとするか。」
次の展開が全然思いつかないので、次回投稿は間が空くと思います。