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ホテルの一室で、アヴドゥルがこれまでの経緯を話しだす。
ジョセフたちと分かれた後、当初の予定通り身分を偽り、まんまと潜水艦を調達することに成功。
簡単な手ほどきを受けた上で、手に入れた潜水艦をマニュアル片手に四苦八苦しながら動かし、どうにかアラビア半島西側沖に位置する無人島に到着したのが5日前のこと。
「そこで、私は敵スタンド使いの襲撃を受けました。」
「なにぃッ!?」
潜水艦を岩陰に隠し、島に上陸したアヴドゥルは、アラビアン・ナイトに登場するランプの魔人のようなスタンド『審判』と、本体であるカメオに遭遇した。
「亀男っつー名前がいやぁな響きっスねぇ。」
「最初は相手も、私のことは偶然帰って来た元島の住民だと思っていたようです。色々と
変装していましたからね。島で待ち伏せをするのに邪魔になる者を排除しようとしたん
でしょう。こちらを舐めきった態度で挑んできたので、返り討ちにしてやりましたよ。」
敵は親切にも自分の知っている情報を洗いざらい教えてくれ、アラビア半島までの海を渡るための船まで出してくれた。もっとも相手は親切心からでも計略のためでもなく、全身丸焦げになり、恐怖でガクガクになっていたが。
お礼にアラビア半島に到着したあとで、何故か意識不明になった敵をそっと病院の前に寝かせておいてやった、と語るアヴドゥルは、とても良い笑顔をしていた。
「問題は、敵スタンド使いが何故先回りしていたか、という点です。」
「ジョースターの血をひくわしらの行動なら、ある程度DIOに読まれても不思議ではない。
じゃが、わしらと離れ離れになっていたアヴドゥルにまで敵の手が及んだとすると・・・。」
「そういう能力を持つスタンド使いが、DIOの配下に居るってことか。」
「・・・で、その亀男はなんつってたんですか?」
生じたある「予感」を胸に、話の先を促す仗助。
亀男、いやカメオは元々イエメン辺りを縄張りにする小悪党だった。一億ドルという大金に釣られ、どうやってジョセフたちを始末しようかと根城の一つで考えあぐねているところに、1人の男が訪ねて来たというのだ。
DIOからの使いと名乗った男は、他の刺客が失敗すれば、ジョセフたちはあと数日のうちにアラビア半島に到達することをカメオへ告げた。加えて、彼らは紅海にある無人島に立ち寄ることになるだろう、と予言めいた言葉を残し、それで用は済んだと足早に去っていった。
メッセンジャーの男は肌の色や顔つきからおそらく30代くらいの東洋人。くたびれ切った様子で、何か大切なものを失くしてしまったようにうつろな目をしていたそうだ。
「その話じゃあ、その男がわしらの行動を掴んでいるのかまでは断言できんな。」
「本当にメッセンジャーというだけかもしれん。だが東洋人か。」
「虹村の親父さん・・・なのか?日本で姿をくらませて、そんなところにいたのかよ。」
日本からすぐその足でイエメンまで飛んだとすれば、ギリギリ日数的にはつじつまが合う。が、男はカメオに言伝をした後何処に行ったのか。エジプトか、それとも・・・。
虹村の父親の行方は気になるところではあるが、差し迫った問題は敵にどこまで彼らの行動が把握されているかだ。
「カメオは私が生きていることも、潜水艦のことも知りませんでした。懇切丁寧に腹を割
って話しをしたので、偽証はありえません。」
潜水艦はともかく、ジョセフたちの死を望む刺客たちが、アヴドゥルの生存を知っていて、わざと伝えなかったとは考えにくい。したがって、敵側に幾分かの情報が伝わっていたとしても、その内容はかなり断片的なものにすぎないのだろう。
時期的に東洋人の男がカメオの元へ来訪したのは、ジョセフたちがインドかパキスタンあたりに居た頃だ。ジョセフたちの後をつけてくるか、近郊に網を張っていれば、ある程度彼らの進路を推測することはできる。
だがまだアラビア半島からもほど遠い場所に居る彼らが、紅海のある島に立ち寄ることになるなどどうしてわかる。カルカッタの病室で話を出した時も、ジョセフと仗助が事前に部屋に盗聴器や敵の耳が無いか入念にチェックしていた。
「先を読まれておるようで不気味じゃが、わしらはエジプトまで行かなければならん。
潜水艦について知られていないなら重畳。合流した以上アヴドゥルの生存を隠しておく
必要もない。予定通り明日は6人でセスナに乗るとしよう。」
故障していたセスナは「客だけで5人乗れる」のだから、パイロットをジョセフが務めればアヴドゥルが増えても支障はない。
課題を残したまま話し合いを終え、ジョセフとアヴドゥルは部屋へ戻っていく。
寝支度もせずベッドに腰掛けたままの仗助に、承太郎が言う。
「・・・仗助、お前DIOを殺すまでに虹村が見つからなかったらどうするつもりだ。」
「・・・今、それを考えてました。そうなったとしても俺はDIOを殺すことを止めたり
はしねぇっスから、安心して下さい。逆にそれまでに絶対ぇとっ捕まえてやるって闘志
が沸いてきたところだぜ。」
「なら、いい・・・。」
次の日の早朝。
昨夜のうちに話がついた操縦士の男がジョセフにキーを渡していた。ジョセフと承太郎、仗助がこれから搭乗するセスナのチェックを行う。
チェックと言っても通常の航行前の機体整備だけではない。
軽飛行機のどこかにスタンドが紛れこんでいないか、手分けしてスタンドをすり抜けさせることによって確認するのだ。傍目には、ペタペタと男3人がセスナを触っているようにしか見えないが。
こういう作業に向いていないスタンドを持つアヴドゥルは、花京院とポルナレフを起こしにいっている。
ほどなくしてホテルの一室からポルナレフの絶叫が聞こえた気がするが、気のせいだろう、多分。
このセスナに何かが仕掛けられていることはないと確認した3人に、村人とおぼしき男女が近付いてきた。女の方は赤子の入ったかごを両腕に抱えている。
女が執拗に、熱を出した赤ん坊を町まで連れて行ってくれないかとジョセフに頼んできた。
「だから!そういうことを言われても困るんじゃ!昨日村に着陸したセスナがあったじゃ
ろう、あれに乗せてもらえばいいじゃあないか。」
「それができんから、あんたらに頼んでいるんだよ。」
女性と共に現れた、村の顔役を名乗る老人が事情を話す。
詰め所で当直をしていた彼の同僚によると、なんでも明け方近くに酷く慌てた様子で操縦士の男が詰め所に現れたそうだ。
どうしても行かなければならない所があると言って鍵をひっつかみ、男は止める間もなくセスナを発進させていずこかへ飛び去ってしまったらしい。
無線で呼びかけを行うもなしのつぶて。彼が何処に行き、いつ帰ってくるかも分からない状態なのだと老人は語った。
騒動の最中にようやく支度を整えたポルナレフ達が合流してくる。
「なんだなんだぁ~?こっちゃあ朝っぱらからあった幽霊騒動で、もめごとは腹いっぱい
だってのに。」
「どうかしましたか、ジョースターさん。なにかトラブルが?」
「・・・あの犬・・・死体・・・赤ん坊・・・?。」
晴れやかな朝に似つかわしくない物騒な台詞を呟いている花京院。その間にもジョセフと村人とで口論は続いている。
「では貴方がたはこの赤ん坊を見殺しにすると言うの?」
「このセスナは6人乗りだが、赤ん坊一人くらいなら少し荷を減らせば乗せられるだろ。」
「う・・・うぅ~む。しかし・・・。」
ここでポルナレフが赤子を連れて行くのに賛意を表する。どうせジョセフたちは、無関係な赤子の命を見殺しにするほど非常にはなりきれないのだから、このまま押し問答を続けたとしても時間の無駄、既に結論は出ている。
セスナ機に乗せられる赤ん坊が、口から牙をのぞかせてニヤリとほくそ笑むのを、花京院だけがじっと見つめていた。
>何故か意識不明になった敵
まぁ犯人はアヴドゥルしかいないんですけどね。