次回更新までかなりお時間いただくことになりそうなので、できたとこまで。
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二度あることは三度ある。三度目の正直。
同じことが立て続けに三回も起こるのは少ないとはいえ、可能性として十分にあり得るが故、相反する意味を持つことわざも生まれる。
だが、すでに三度発生した事柄が、四回目にまた起こる確率はどの程度のものか。
その事柄というのが「飛行機の墜落」という、ひとたび発生すればニュースに取り上げられるほどの頻度のものであれば、まさに天文学的な数字になるに違いない。
何を語っているのかといえば、つまりはまたやってしまったのだ。これまでの人生で三回も飛行機事故に遭遇し、持ち前の強運で生き延びてきた男、ジョセフ・ジョースターが。
まぁ過去三回の墜落に関しては仕方の無い部分が多々あった。
ただし四回目である今回はジョセフも悪い。
きっかけは狭い機内で眠っていた花京院が突然暴れ出したこと。ジョセフが操縦している後ろから花京院に蹴られ、その拍子に操縦桿が倒されてしまった。
錐もみ状に落ちそうになる機体を、なんとか一度はスタンドを用いて地面にぶつかる寸前で体勢を立て直したのだが、パイロットであるジョセフがどんなもんだとよそ見をしたせいで、ヤシの木に突っ込んだのだから。
木にぶつかり翼をもがれたセスナを仗助がクレイジーダイヤモンドで「治す」が、機体の大きさと、スタンドの射程距離の都合で瞬時に全てを元の状態に戻すことはできなかった。
また、例え完璧に治せたとしても、地面すれすれでかろうじて平衡を取り戻したところに再度大きくバランスを崩したセスナの運命は変わらなかっただろう。
「セスナは治したっスが、燃料がほとんどこぼれちまってるみたいっスね。」
「赤ん坊を乗せるために、予備の燃料は持って来れなかったからな。」
セスナの燃料タンクは翼内にある。ヤシの木で片翼が切り離され、それに続く墜落の際に、あらかたの燃料は失われていた。幾ら乗り物が傷一つない状態でそこにあろうが、エネルギーが無ければただの模型と同じ。
赤ん坊の熱は下がったものの、大人と違い赤子の体調は急変しやすい。DIOの刺客が嬉々として駆けつけてくるかもしれないが、仕方なくアブドゥルへ無線機で救助隊を呼ぶよう頼むジョセフ。
「おい花京院!運よく死なんですんだが、いきなり暴れ出すなんて一体どうしたんだッ!」
「わ・・・わからない・・・。酷く恐ろしい夢を見ていた気もするが、なんで暴れたりし
たのか・・・。」
「きっと疲れておるんじゃろう、無理もない。日本を出てからずっと敵の襲撃を受け続け
て来たんじゃからな。」
「・・・。」
SOSを打つアヴドゥルの横で、仗助は諦めきれない様子でセスナを眺めている。
石油大国であるサウジアラビアのど真ん中にいるとはいえ、その辺を掘れば石油が沸きだしてくるほど世の中甘くない。某財団の創始者とは違うのだ彼らは。
ずっと見ていても燃料が現れるわけでもないかと見切りをつけ、一仕事終えたアヴドゥルと共に焚火を囲む円座に加わる。時刻は既に夜と呼べる時間帯になっている。
「花京院、左腕から血が出ているぞ。墜落したときに切ったのか?」
「・・・?おかしいな、服はなんともなっていないのに。」
「ちゃっちゃと治しちまうんで、腕まくってくださいよ。」
「あぁ、すまない。」
花京院の反対側に座ったアヴドゥルが、花京院の左袖が赤黒く変色しているのを指摘した。仗助に言われるまま花京院が袖をまくりあげる。
「な、なんだこれは!?腕の傷が文字になっている!」
「えーっと、『BABY STAND』?」
「これは君が自分でつけたのか・・・?」
ジョセフたちも花京院の傷を覗き込む。
「いや、まるで覚えがない・・・。傷の大きさからして、僕のナイフで切ったような感じ
だが、ナイフには曇り一つありません。一体何処で・・・。」
「直訳すれば『赤子が立つ』だが、俺たちにとっちゃあ別の意味にも取れるな。」
BABY STAND、赤ん坊 スタンド、赤ん坊のスタンド。
「はぁーーッ!?赤ん坊のスタンドだぁ?とうとうイカレちまったのかよ花京院!スタン
ドがおしめにウンコするかぁ?」
「だから話を聞けポルナレフッ!僕だってこの傷がいつ出来たのか分からないんだ!」
「赤ん坊がスタンド使い、という意味にもとれますね。」
アヴドゥルの推測を、ジョセフが即座に考えられないと否定する。しかしそれを更に仗助が否定した。
「いやいやいや、流石に赤ん坊のスタンド使いなんているわけが・・・。」
「え、いるっスよ?」
「えっ、マジでいるの?マジ?」
(えっなんだこの展開。)
『向こう』でジョセフとバスを待っているときに拾った赤子。ストレスを感じると無差別に自分含め周囲を透明にしてしまう能力を持っていた。仗助とジョセフは殺人鬼を探すかたわら、赤子の親も探していたが、『向こう』にいる間には見つからなかった。
その話を聞き、花京院とジョセフが嫌そうに顔をゆがめる。
「・・・とても、とてもえげつない想像をしてしまったんですが・・・。」
「わしもじゃ。とりあえず言ってみい。」
「まず大量の赤ん坊を集めます。唾棄すべきことですが、金で子供を売る親もいるでしょう。
そうして集めた赤ん坊に手当たり次第、例の『矢』を刺し、スタンド使いにする。」
彼らは知らないことだが、「弓と矢」はスタンドの才能を持つものを選ぶ。よって実際にそのようなことをする場合には、矢が反応した赤ん坊のみを射抜けばよい。
「適性が無かったり、あっても暴走して死んじまうのがほとんどでしょうけどね。」
「透明になるというスタンドを発現させた赤ん坊もいるのだから、運悪く生き残ってしま
う子供が居ても不思議ではありません。そこで、自我もおぼろな赤ん坊が自分の能力を
コントロールできるものでしょうか。」
ポルナレフとアヴドゥルがごくりと唾を飲む。
「つまりそれって・・・。」
「どんな能力かもわからない、スタンドのコントロールもできない赤ん坊を相手に送りつければ・・・。」
承太郎が結論を簡潔に述べる。
「人間爆弾ならぬ、スタンド爆弾の出来あがり、といったところか。」
(なにそれ怖い。)
さらにアヴドゥルがあることを思い出した。
「その子供、高熱を出していましたよね?ホリィさんと同様、スタンドが暴走していたが
ため、とは考えられませんか?」
ホリィの名前を出され、娘の容体を案じたのかジョセフが渋い顔をする。
「熱が下がったのは、暴走が止まったからだと?」
「意外に本能に忠実な赤ん坊の方が、スタンドの制御に成功するもんかもしんないっスね。」
赤子は大人に比べて本能で生きている分、動物に近いとも考えられる。オランウータンやネズミだってスタンド制御には成功しているのだ。
「じゃが仮にその赤ん坊がスタンド使いだとして、どんな能力かわからなければ対処の
しようがないわい。」
流石に疑わしいだけでいたいけな赤ん坊を再起不能にするのはためらわれる。それに想像が当たっていた場合、この赤子は完璧なDIOの被害者だ。承太郎が花京院に尋ねる。
「花京院、その傷がいつ付いたのか、何か心当たりはないか。」
「本当に覚えがないんだ。セスナに乗る前には確かに傷なんてついていなかった。機内で
眠っているうちにセスナが墜落して・・・。みんなに起こされたときには腕に痛みがあ
った気もするが。」
墜落時に負傷したと片づけるには、あまりに不自然な傷。あと残るタイミングは花京院が眠っている間ということになるが、その間赤子はポルナレフにおしめを替えられていて、機内にスタンドの姿はなかった。
「あぁそうだ、眠っている間、とても恐ろしい夢を見たという印象は残っている。」
「あ、俺もセスナん中で怖い夢を見たな。あんまりジョースターさんの運転が心配なもんで、夢にまで見ちまったかと気にしてなかったが・・・。」
ざっ、と一斉に赤ん坊へ目を向けるジョセフたちに、反射的に顔をそらしてしまう赤ん坊。
「今、その赤ん坊、見られて顔をそらしました、よね?」
「我々の話を理解しているのか・・・?」
しまったと思ってももう遅い。赤ん坊の態度に疑念が深まる。
「そういや俺のダチに本体の姿を変えられるスタンド?使いが居るなぁー。本人曰くスタ
ンドじゃなく宇宙人の特殊能力らしいんですけど、サイコロみてぇに小さいもんにも化
けられました。変な感じにはなるものの、一応別人の姿にもなれたはずっス。」
「どうなってんだよ杜王町、スタンド使いの見本市か?」
「赤子に姿を変えて近付き、我々が寝静まった頃にナイフで一突き・・・。」
(さっきからなんなんだよこいつら!発想がいちいち怖ぇよ!)
真綿で首を絞めるかのような口撃に、もういっそ殺してくれと赤ん坊が本気で涙目になった頃、急にジョセフたちが笑いだした。
「なぁ~んてな!ぎゃははは、くっだらねぇ~!」
「こんな赤ん坊がDIOの刺客ぅ?考えすぎっスよねぇ~!」
「冗談がすぎますな。」
「きっと傷は疲れ過ぎて夢と現実の区別ができず、無意識のうちに自分でつけてしまった
のかもしれません。お騒がせしてすみませんでした。」
「やれやれだぜ。」
「あーあほらし。さっさと寝ようぜ。」
(えっ?えっ?)
念のため、救難信号を受信した誰かがやってきてもいいようにと交代で見張りを立てることにし、先発のアブドゥルとジョセフ以外の4人がシュラフの中に収まる。
しばらくのち、辺りはぱちぱちと焚火の爆ぜる音と、ジョセフがベビーフードをかき交ぜる音しかしなくなった。
さて、この赤ん坊は今更語るまでもなくDIOの刺客、『死神』の暗示を持つスタンド使いだ。生後11カ月であるにもかかわらず、大人以上の知識を持った天才児。
彼はあそこまで疑っておいてあっけなく寝てしまうとはどういうことかと考察し、すぐに無駄なことだと考えるのをやめた。
眠り、または気を失うという状態において、人の精神は最も無防備となる。その無防備な精神エネルギーを包み込み、支配し、自身のテリトリーたる夢の世界に引きずりこむのが赤ん坊のスタンド、デスサーティーンの能力。
スタンド使いを切り刻むことだけはデスサーティーンの手で行わなければならないという制限を除けば、夢の世界は彼の思うまま、道徳や理屈など一切通用しない。
彼の能力の凶悪なところは、眠る前からスタンドを出していない限り、夢の中で対象のスタンドが出せなくなる点だろう。
簡単なようでこれは無理難題だ。某ネコドラくんの主人公のような特技を持っていない普通の人が眠りにつく場合、次第次第に意識レベルが低下し、ゆっくりと睡眠状態に入る。
本体の意識と状態に左右されるタイプのスタンドビジョンはその過程のどこかで消えてしまう。
逆にずっとスタンドを出していようと集中していれば、いつまで経っても睡魔は訪れない。
すなわち、数瞬のうちに意識が無くなりでもしない限り、夢の中にスタンドを持ち込むことなど出来はしないのだ。
ジョセフとアヴドゥルに視界が遮られ、直接確認は出来ないが、音から判断するに、何事もなく他の4人は眠ったようだ。それなら、みすみすこのチャンスを逃す手はない。
「おいちぃでちゅよー」と赤ちゃん言葉を使いながらニコニコと自分にベビーフードを与えるジョセフに、「もういらない」と態度で示し、籠の中に戻してもらってから、ゆっくりと彼は夢の世界に意識を向けた。
「ラリーィ・・・ホ・・・?」
「よう、待ってたぜ。」
「安心しな、ちょいと怖い夢でも見てもらうだけだぜ。幼児虐待はマズいからよぉ~?」
「みみずのソフトクリーム、メルシー・ボークー。」
「お仕置きの時間だよ、ベイビー。」
「ギニャーッ!!ナンデ!スタンドナンデッ!?」
夢の中で何が起こったのか詳細は省く。
ただ一つだけ。可哀想な赤ん坊は、一夜の悪夢のトラウマから、二度と夢を見ることはありませんでしたとさ。チャンチャン。
なんで仗助たちがスタンドを持ち込んでいるのか、
詳細は本文で書くとクドくなったので、活動報告に載せときます。