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その後、仗助は自身に起きた奇妙な冒険を語った。
杜王町という町で母と祖父に育てられたこと。高校入学間もなく承太郎が杜王町に訪れ、仗助の出生の秘密を教えられたこと。
悪質なスタンド使いに襲われ、祖父が命を落としたこと。祖父の遺志をつぎ、街を守るため様々なスタンド使いと戦ったこと。
その中でも時を吹っ飛ばす能力を持つという「吉良 吉影」なるスタンド使いを追い詰めたものの、敵スタンドが自分に向かってきて、気がつけば無傷の状態で「こちら」の保健室にいたこと・・・。
「俺にも何が起きてんのかわかんねぇー部分はありますが、大体はこんなとこっスね。」
彼の話は長時間に及んだ。途中ホリィが飲み物と軽食をもってきたことにより中断はしたが、気付けば辺りは薄暗くなってきている。
「うぅむ。にわかには信じられない話ですな。」
「何か、未来から来た事を証明できるようなものは持っておらんのか?」
いっときの動揺を抑え、最後まで話をきいたジョセフが仗助に問いかけた。
「っつっても、サイフやゲームは鞄ん中にいれたまま『向こう』にあるしよぉ・・・。
俺の靴はブランド品なんで、まだ発売されていない新型のはずっスが、流石に10年
後のモデルなんて贋作扱いしかされねぇーっスよねぇ・・・。」
仗助は首を振る。身一つで飛ばされてきた彼に証拠品の提示を求めるのも酷な話ではあろう。
「おいジジイ。未来から来たという部分はともかく、こいつがテメェの息子かどうか確かめる方法はあるんじゃねぇのか。」
この時代、DNA鑑定による血縁の判定はまだあまり一般的ではない。
SPW財団に依頼すれば可能かもしれないが、仮に可能であったとしても結果がでるまでかなりの時間を要するだろう。
承太郎が意図する方法は、もっと簡単なものだ。
「仗助、ちょいと確かめてぇことがある。オマエの左肩を見せちゃあくれねぇか。」
「は?左肩っスか・・・?別に良いっスけど。」
そして仗助は上着を脱ぎ、シャツの襟首を伸ばし左肩を見せた。
果たしてそこには、ジョセフや承太郎が持つものとまったく同じ、星型の痣が存在していた。
「こッ!!これはッ!!この痣はッ!!」
「やれやれ・・・これで少なくともこいつがジョースターの血統だということは証明
されたわけだ。」
もっとも、この痣が偽物である可能性もある。
しかしそもそもこの痣の存在自体、あまり一般的に知られている情報ではないし、そのような情報を手に入れられる位置にいる人間が、「未来から来た」という荒唐無稽とも思われるような嘘をつくだろうか。
なにより、ジョセフには心当たりがあり、目の前に居る仗助はジョセフによく似ているのだ。
上着を着直した仗助が、ジョセフに向き直る。
「俺ァこれまでジョースターさん、あんたとほとんど関りはなかった。あんたが父親
だっていうのも最近知ったばかりだし、父親と言われてもピンとこねぇ。だが、それは
あんたも同じだろう。それでも、今はあんたに頼るしかねぇ。」
仗助は頭を下げた。
「お願いします!あんたの伝手をもって、『形兆』と『億泰』っつー兄弟がいる虹村家の
場所を探してくれッ!!東京のどっかに居るはずなんだッ!!・・・あ、あとついでに
しばらくどっか厄介になれるところを紹介してくれたら嬉しいなぁ、なんて・・・。」
突然の仗助の頼みに、一同は怪訝な顔をした。
後半の、身を寄せる場所を頼るのはわかる。しかし前半の、「虹村家を探してほしい」とはどういった意味なのだろうか。
先ほどの話の中で、たしかにちらりと「虹村」という人物はでてきていたが。
「俺のダチ、虹村 億泰の父親はDIOの手下のスタンド使いだったと聞いてます。」
「DIO」という単語に反応する一同。仗助は淡々と話を続けた。
「手下っつっても、そこの花京院さんと同じく肉の芽に寄生されていたらしいっス。
だがある日、突然肉の芽が暴走した・・・。」
暴走した肉の芽は虹村の細胞と一体化し、結果『死にたくとも死ねない』異形の怪物が出来あがった。
その話を聞き、複雑そうな顔をする花京院。
「さっきの花京院さんの様子と、承太郎さんが肉の芽を抜いたのを見てわかりました。
肉の芽っつっても寄生してすぐに宿主に一体化するわけじゃなく、暴走していなけ
れば取り去ることができる、あくまでも人間の身体とは別のパーツだってよ。」
今の状態であれば、クレイジーダイヤモンドの持つ「治す」能力により、肉の芽と人体とを分離させることが可能なのではないか。
かつては果たせなかった「父親を治すスタンド使いを探す」という形兆との約束を、今こそ果たすことができるかもしれない。
「それに虹村家を探すっつーのは、ジョースターさん達にとっても良い話のはずっス。」
「それはどういう意味じゃ?」
仗助は、おもむろに立ち上がり、座卓の上にあったメモ帳から紙を一枚破り取った。
「俺のスタンド、クレイジーダイヤモンドは色んなものを元の状態に戻すことができます。
そんじゃあ、離れている状態のものを『治そう』としたら、どうなると思いますか。」
手元の紙にクレイジーダイヤモンドが触れる。
すると、紙はまるで何かに引き寄せられるかのように座卓の上にあるメモ帳へ飛んでいき、初めから何も起きていなかったかのようにメモ帳の一番上のページに収まった。
当然破られたような跡もみえない。
そこでようやくジョセフ達は、仗助の言わんとしていることを理解した。
肉の芽はDIOの細胞の一部。もしこの能力を肉の芽に発動させた場合、本体に引かれる肉の芽を利用し、DIOの居場所が分かるかもしれないのだ。
もちろん上手く行く可能性は低いだろう。人体から切り離された肉の芽は太陽の光に弱い。また、仗助の能力が距離的に何処まで届くかも未知数である。
「まぁこれはあくまでも、もしかしたらっつー程度の話っスけど。それにもし上手く
行かなくても、虹村は今DIOの指示に従って動いているはずっス。肉の芽を取り
除いて、なんとか虹村から話を聞き出せれば、DIOの居場所だけじゃねぇ、
色んな情報を得ることができるんじゃあねーっスかね。」
ふむ、と考えるジョセフとアヴドゥル。
確かに彼らは以前からDIOの行方を探っていた。
その手掛かりとなるのであれば、虹村という男を探るのも良いかもしれない。
話によれば家族を持ち、一軒家に住んでいるというのだから、この戸籍と登記制度が厳格な日本ではDIOの行方を探るほど困難なことではないだろう。
「じゃがその前に、仗助・・・くん。キミは未来から来たと言ったが、DIOについて
何か聞いておらんのか?」
「あ~~・・・それが・・・。」
どうやら仗助は、DIOについてはごく限定的にしか情報を知らないようだ。
そもそも未来の承太郎から聞いた程度の内容しか知らないし、もう終わったことだと忘れてしまっているものも多い。
「俺が知ってんのは、弓と矢っつーのを使ってDIOがスタンド使いを量産している
ことと、ジョースターさん達がどうやったのかはしらねぇけどDIOに勝ったこと
くらいっス。」
「むぅ~。流石にここで全てが解決する、というわけにはいかんか。・・・よし!」
ポン、と手を膝に打ち付け、ジョセフが立ち上がる。
「今日はもう遅い。ホリィに言って食事を用意してもらおう。今日はそのままここに
泊ると良いじゃろう。花京院くん、キミもどうじゃ?」
「・・・そうですね。ではお言葉に甘えさせていただきましょう。私にもDIOとの
話は無関係とはいえない。何か協力できることがあれば手伝わせてもらいます。
あと、別にくん付けでなく呼び捨てで構いませんよ。ジョースターさん。」
こうして、仗助にとってとても長い一日が終わった。
この小説内では3部スタート1987年説を採用しています。