もし仗助が3部にいたら?   作:しろた

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害虫退治をしよう!

6.5

 

とある暗闇に包まれた館の中。

薄暗い部屋には数多の調度品が置かれ、その館の持ち主が裕福であることを示している。

しかし、この館の主は単なる金持ちではないのだろう。何故なら調度品に紛れつつも、血の気を失った女性の死体がぐったりと横たわっているのだから。

 

静寂の中、カチ、コチ・・・と柱時計が時を刻む音が淡々と響いていたが、その静寂は突然、何らかの機械を殴ったような音により破られた。

さらに続けて、ジーッという機械から紙をはきだす音もする。

 

音を立てていた張本人は、手に持ったポラロイド写真をじっと見つめている。

じんわりと印画紙に浮かび上がってくる画像は、たった今この場で撮影したとすればありえない、飛行機に乗ったある3人の男の姿を映し出していた。

 

暗闇の中でつぶさにうかがい知ることはできないが、写真を手に持ったその人物はどうやら若い男のようだ。

その男は黄金色の頭髪に、極上の芸術品を思わせる肉体を持ち、存在自体からなにやら怪しい色気さえ放っている。

 

写真をみつめたまま、男がぽつりとつぶやいた。

 

「くるか・・・ジョセフ、承太郎。・・・そしてもう一人のジョースターの血統よ。」

 

柱時計の音が、止まった。

 

 

 

 

 

 

ジョースター一行は、SPW財団の手配した一般旅客機に乗り込んでいた。

いかにSPW財団であってもエジプトまでのチャーター便を短時間で用意することは、航空関係の法規制もありできなかったようである。

それにもし、DIOの手下が自分たちを襲うにしても、このような一般客が大勢同乗し、目撃者にこと欠かないような状況で手出しをしてくるとは考えにくい。

空の上というのは、襲われる方はもちろんのこと襲う方にとっても逃げ道がないのだ。

 

搭乗してから2時間余り。内心に焦燥を抱えながら、ジョセフは静かに目を閉じていた。

しかし突然何かを感じ取ったかのように目を見開く。両隣りに座っていた承太郎、仗助もジョセフの挙動と同時に顔を上げていた。

 

「・・・今、誰かに見られた気が・・・?」

「あぁ、間違いない。DIOがどうやらこちらの動きに感づいたようじゃな。」

「・・・・・・チッ。」

 

無言のまま舌打ちをし、承太郎は静かに立ち上がり辺りを見回した。

前の席に座っていた花京院とアヴドゥルもこちらの異常に気付いたか、すっと警戒体制を取る。

 

「気を付けろ、DIOの刺客がこの機に乗っているかもしれん。」

 

ジョセフはそう一同に呼び掛けるが、周囲には寝静まった乗客の放つ静かな吐息と、自分たちの会話しか聞こえない。

 

いや、何処か遠くにブーン、という小さな虫が飛びまわる音が聞こえる。

ちらりと姿を現したその音の主を、承太郎のスタンド、スタープラチナは正確に知覚した。

 

「あれは・・・クワガタ虫か・・・?何やら羽におかしな模様があったようだが。」

 

だが遠くに見えた虫は、一瞬後には座席の影に入り、視界から消えてしまった。

ジョセフがアヴドゥルに、虫型のスタンドを持つスタンド使いは居るのかと尋ねる。

アヴドゥルは答えた。人の舌を好んで食いちぎる虫型スタンドを持ち、事故に見せかけて大量殺戮を繰り返すスタンド使いの噂を聞いたことがある、と。

 

「・・・ッ!大量殺戮って!それじゃあ、もしそいつがこの機内にいたら、目撃者もろ

 とも俺らを皆殺しにするってぇーことじゃあねーっスか!!」

 

思わず大声をだした仗助の横に、黒い影がよぎった。

 

「!!仗助ッ!!お前の横に居るぞ!!」

 

花京院の声に反応し、自分の横に視線を向けた仗助だったが一歩遅かった。

普通のクワガタ虫にくらべて異常な大きさを持つ「それ」は、一瞬のちに仗助めがけて口内から棘の生えた塔のような舌を伸ばす。

 

「スタープラチナ!」

 

舌が仗助の顔に到達する前に、スタープラチナが間に入り、その虫の目的達成を阻む。

伸ばされた塔状の舌がスタープラチナの掌を深々と貫いた。

 

動きを止められてもなお着々とスタープラチナの顔面に迫る塔に、承太郎がラッシュを浴びせる。

 

「オラオラオラオラァアアーーーッ!!」

 

スタープラチナのラッシュにより、伸ばされていた塔は粉々に砕け散った。

しかし、自身の不利を悟ったのか、スタープラチナとの接続が断たれたくわがた虫はまたもや姿を消す。

 

「スタープラチナのスピードでも、捉えられないだと・・・?なんてスピードだ・・・」

 

呆然としながらアヴドゥルが呟く。

一方、スタープラチナによって事なきを得た仗助は、まだバクバクとなりやまない胸に手を当て、息をついた。

 

(これが・・・殺し合い、なのか・・・。吉良の野郎に対峙した時にも感じたが、これから襲ってくる相手はマジに俺らを殺しにかかってくる。こりゃあのんきしてる場合じゃあねーぜ・・・)

 

仗助が再び顔を上げると、目の前にはスタープラチナが負傷したことにより手と口から血を流す承太郎が居た。

いまだスタープラチナの掌には、あの忌々しい塔のカケラが残っている。

 

(・・・カケラ・・・?あの糞野郎のスタンドの断片が、まだ俺らの手の中にある?)

 

仗助の脳裏にある考えがひらめいた。そして、仗助は承太郎と花京院に声をかけ、これから行う計画を話す。

仗助の意図を知った2人は無言のままうなずき、それぞれのなすべき行動にうつった。

 

3人がさりげなく、かつ速やかに行動している間にも、事態は悪化していく。

何を思ったか、虫型スタンド『タワーオブグレー』はその塔の舌を伸ばしながら機内の後方に現れ、今まさに座席ごと乗客を貫こうとしている。

 

「マズイッ!!」

 

ジョセフが乗客をかばおうと自身の持つ茨のような形状のスタンド、ハーミットパープルを繰り出そうとしたとき、突如としてタワーオブグレーの動きが変わった。

まるで何かに引っ張られるかのように軌道を変えたタワーオブグレーの進む先、そこには承太郎から渡された塔の舌の破片にコブシを添わせたクレイジーダイヤモンドと、仗助の姿があった。

 

「捕まえらんねーほど素早いならよぉーーー!向こうからこっちに来てもらえばいい

 じゃあねぇーか!!」

 

『なッ、なんだこれはッ!!身体が引っ張られるッ!!へっ、だがそれがどうした、更にスピードを加速させ、このままお前を串刺しにしてやるぅーッ!!』

 

大きく口を開け、更に勢いをつけた状態で仗助に迫りくるタワーオブグレー。

だがしかし、次の瞬間にはその目の前に緑色の切っ先が広がり、そのままスタンド全体を刺し貫かれた。

 

「通過する場所が分かっているならば、いくら早かろうとあらかじめ罠をはっておけば

 勝手に突っ込んでくるだろう!そして!」

 

「フン、ようやく動きを止めたな。これで心おきなくテメェをぶちのめせるぜ。」

 

ボキボキ、と、いつの間にか掌の傷が治っている承太郎が両手の関節を鳴らしながらタワーオブグレーに近づいた。

 

「オラァッ!!!」

 

たった一発のパンチであったが、満身の力を込めたその一撃は、たやすくタワーオブグレーを粉砕した。

それと同時に、座席の一角から悲鳴と血しぶきがあがる。そこには全身から血を滴らせ、苦悶の表情を浮かべた一人の老人が座っていた。

 

「どうやらその爺さんがこのスタンドの主だったようだな。」

 

帽子の位置をなおしながら、承太郎がつぶやいた。

もはや全身複雑骨折に等しい重体を負った老人に、抵抗する術はないだろう。

 

ほっと一息をついた一同だったが、ふいにその足元が大きく揺れた。

 

「今のは・・・まさかッ!!」

 

慌ててジョセフがコックピットのある機内前方に走っていく。

乗客の侵入を注意しようとするキャビンアテンダントを押しのけ、コックピットに辿り着いた一同が目にしたのは、無残にも舌を引きぬかれた状態で息絶えた操縦士たちと、めちゃくちゃに破壊された制御装置だった。

 

「これはッ!!仗助くんッ!!」

「おぉ!!」

 

仗助が操縦士と制御装置を「治す」も、時既に遅し。

殺害されてから時間が経っていたのだろう操縦士たちが息を吹き返すことはなかった。

 

操縦士を押しのけ、ジョセフが操縦桿を握る。

 

「おいジジイ!テメェ、旅客機の操縦ができるのか?」

「うぅ~む。プロペラ機なら経験はあるんじゃが・・・自動操縦装置もどうすれば作動

 させられるのか分からん。だがなんとかして見せるぞッ!!」

 

一気に不安に駆られる一同に、更に追い打ちをかけるようにジョセフが言った。

 

「しかし、これで3度目じゃぞ。人生で3度も墜落するなんて、そうあるもんかね。」

「・・・二度と、二度とテメェとは一緒に飛行機には乗らねえ・・・。」

「グレート・・・。」

 

 




DIO「クソッ!この手前側に座っている男の珍妙な髪型のせいで、ジョースター達の姿が見えん!」
仗助「なんか今遠くで貶された気がする」
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