魔法戦史リリカルジェネレーション   作:nanase

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第14話 春の嵐②

1

 

 

 雪の様に降る魔力残滓の中、4人は真っ直ぐにガジェットボールに飛翔する。

 同時に彼らを敵と認識したガジェットボールもまた散開した。そこにはフォワード達を相手にした時の小馬鹿にした動きは無い。キビキビと統制の取れた動きで彼らを撃墜しようとする。

 だがいくら動きが良くなろうと、電光よりも速く動く事は出来ない。

 青白い電光が光を掻い潜る。

両手の籠手から伸びる刃は3本ずつ。彼女の手足たる電撃を纏い、スパークする。

 空気が弾ける音がした。光が明滅した。爆発が起こった。

 真っ赤な爆炎の中から再び電光が飛び出した。

 電光は笑う。無邪気に。ただただ無邪気に。歓喜に震える朱の瞳は、自らの敵を捕えて離さない。

 余談ではあるが、地球の青い大気と宇宙の暗黒の境を宇宙の渚と言う。そこに地球から宇宙へ向けて放たれる刹那の雷光。この捕えようとすればたちまち消えてしまう幻の如き輝きもまた、妖精。スプライトと呼ばれている。

 そして彼女が纏う襲撃服はかつてスプライトフォームと呼ばれていたものだ。背には愛機ビギニング30ガンダムと同じ妖精の翼。その身は電撃を纏い、自由に光輝く姿はまさに妖精。

 電光の妖精。

 その名はレヴィの為にある。

 

「レヴィ、まずはお主だ! 派手にぶちかませ!」

「言われなくても! みんな~! 強くて速くてカッコイイボクの魔法をちゃんと見ておくんだぞ~!」

 

 両籠手から薬莢が排出された。その籠手はバルニフィカスが変形した物だ。カートリッジの魔力増幅により、纏う電光が一層輝きを増し、レヴィの口角がつり上がる。

 

「幻影襲撃! ファントムダイブッ!!」

 

 密集したガジェットボールに上空から突っ込む。着弾の衝撃と共に全身の電撃を開放。眩いばかりの閃光と、耳を塞ぎたくなる程の轟音。荒れ狂う電撃がガジェットボールを貫き、次々と宙で爆散する。残ったのは陥没した地面と、満面の笑みでティアナ達にVサインを向けているレヴィ。

 

「やれやれ。少し緊張感を持たんか」

「派手にやれって言ったのは王様だよ!」

「確かに言ったが、緊張感を消すなとは言っておらん!」

 

 エルシニアクロイツから暗黒の魔力弾を連射しながら、ディアーチェがレヴィの周りを旋回する。

 大魔法から難を逃れたガジェットボールを牽制しながら言い合うも、レヴィに聞く耳は無いようだ。

 だがそれもいつものやり取り。彼女達にとっては日常会話の如く自然なもの。

 すぐにレヴィもディアーチェと背中合わせに浮かび上がり、牽制の魔力弾をまき散らす。

 

「では次は我が続くとしよう。ユーリ。構わんな?」

<いつでもOKですよ!>

「ならば、この紫天の盟主と砕け得ぬ闇の力。とくとご覧じろ!」

 

 大きく開かれる魄翼。足元に広がるベルカ式魔法陣。開かれた紫天の書。

 悠然とエルシニアクロイツを掲げるディアーチェ。

 闇が集束する。

 

「闇の深淵より生まれし、永遠の刃。その身に刻み込めぇ!」

<エターナルセイバー!!>

 

 降り抜かれるエルシニアクロイツから闇が放射状に広がった。

 闇は刃。ディアーチェとユーリを阻む者を屠る永遠の剣。

 ガジェットボール達がAMFを発生させるが、高圧縮された魔力の表面を削り取るに過ぎない。

 魔力量の桁が違うのだ。それはAMFで相殺できる規模を遥かに超えている。

 故にAMFもろとも、永遠の名を冠する闇の刃がガジェットボールを両断する。

 周りの廃ビルを巻き込んで、だが。

 

「うわわっ! 王様やり過ぎ! いくらティアナ達が見てるからって張り切り過ぎだって!」

「ふんっ。 我とユーリの実力を再確認させたのだ。これくらいどうという事もなかろう」

 

 崩れる廃ビルから逃げつつ、抗議の声を上げるレヴィに並んで飛ぶディアーチェが鼻を鳴らした。

 もうもうと煙る中、2人は言い合いを続けながら飛び続ける。その間にも迫るガジェットボールを破壊しながらだ。ちなみにユーリは止める事を諦めた。

 その刹那だった。

 彼女達の眼前から飛来する緋色の砲撃。遠くからでも肌にチリチリと熱が押し寄せる。

 レヴィとディアーチェは慌てて散開。2人の間をすり抜けるように砲撃が突き抜けて行った。

 そしてそれは彼女達の後方。追いかけてきたガジェットボールを巻き込んで爆発を起こす。

 

「ここここここらぁ! シュテル! 貴様何処を狙っておる! 後一歩遅ければ直撃だぞ!」

「そーだよシュテるん! あ~……、ホントビックリした……」

 

 実際冷や汗をかいたというレベルでは無いだろう。

 あれは明らかに2人を狙っていた。それは恐らくきっと。紛れも無く正しい。

 だが、ミッド式魔法陣の上で銃槍を向ける少女は表情1つ変えずにこう言い放つ。

 

「失礼。手元が狂いました」

「絶対嘘でしょ!」

「では、照準がずれました」

「『では』とは何だ! 『では』とは! そこ! 面倒そうな顔をするでない! ああ、いや、だからと言って首を傾げるでない! にゃーんもするでない! ……本当にお前は我を敬っておるのか?」

「勿論ですよ我が王。先の一撃とて王とレヴィなら避けると信じていたからこそです」

「認めたね!? 今、狙った事認めたよね!?」

 

 シュテルがやれやれと肩を竦めてみせる。レヴィとディアーチェは大きな溜息と共に、それっきり言う事を止めた。

 口でシュテルに敵う筈も無い。取りあえず言うだけ無駄なのだ。

 漸く分かってくれたかとシュテルも再び、銃槍を構える。その隣でやり取りを聞いていたレンはほとほと呆れながらも、ザッパーモードのヴァリアントザッパーから蒼炎の弾丸を連射し、ガジェットボールを貫いていた。

 レンにはティアナの様に多重弾殻を作る技量は無い。シュテルの様に強力な砲撃をすぐに撃てる訳でもない。

 ではどうするか。答えは一点突破。一度の連射でAMFを中和させ、後追いの魔力弾でガジェットボールを撃ち抜いている。

 

「ほんと、良い性格になったなぁ」

「性格だけではありませんよ。加えてイイ女になったでしょう?」

「そりゃもう。とびきりの女になってくれてレンさん涙が出ちゃうよ」

「……今後、後ろに気をつけて下さいねレン」

 

 おどけるレンにシュテルはむすっと口を尖らせながら、銃槍の先端に魔力を集中。カートリッジをリロードし、高まる魔力は炎を生み出す。

 

「バスターライ……もとい。ディザスターヒートッ!!」

 

 炎熱の魔砲を三連射。緋色の美しい砲撃が爆発を巻き起こす。ディアーチェ同様、そこにAMFの意味は無い。砲撃自体を逃れても灼熱の炎はその熱を以って、ガジェットボールを殲滅する。

 そして漆黒の不死鳥もその翼を広げた。

 フォーミュラプレートから飛び出し、ザッパーモードからフェンサーモードへ移行。ガジェットボールの群れに躍り出ると、まずは縦に一閃。すかさず身を翻し、横薙ぎに別のガジェットボールを裂く。更に身を屈め、アッパー気味に3体目を切り飛ばす。

 

「キリエ! モード、『ハーヴェスト』!」

<了解!>

 

 ヴァリアントザッパーが形状を変える。

 2挺銃のザッパー。2刀片手剣のフェンサー。それに続く第3の形態。従来ならば重剣のヘヴィエッジである。しかしレンの手に握られていたのは大鎌。黒刃に蒼白の魔力が走る漆黒の大鎌だった。

 そしてレンは気合い一閃。ハーヴェストモードと呼んだ大鎌を振り抜く。

 彼を中心に切り払われた刃は蒼白の弧を描き、次々とガジェットボールが爆散していった。

 

 

 圧倒的な殲滅。お互い軽口をかわしながらも、その攻撃には寸分の狂いも無い。

 それは固唾を飲んで見守るティアナ達だけに留まらず、なのは達もまた呆然としている。

 そして屋上から見ていたヴィータとシグナムも言葉を失う程だった。

 

「これが今のあいつらの実力かよ……。参ったな。逆に新人達が委縮しちまうんじゃねぇか?」

 

 柵に体を預けヴィータが眉をしかめる。確かにレン達の実力を見せつけるには十分過ぎるだろう。

 だが、新人達はこれを見てどう思うだろうか。

 特にティアナとスバル。訓練校の同期として、こうも実力の違いを見せつけられた彼女達の心境はきっと穏やかではないだろう。下手すれば、その心を折りかねないのではないか。

 そしてなのはも同じ事を考えているに違いない。見れば、ずっと険しい顔をしている。

 彼女の目指す物。その為のプランすらも破壊しかねない、危険な爆弾だ。

 

「これが“ライセンサー”の力って事か。ったく。扱いにくいモン寄越しやがって……」

「そう悲観する事もあるまい。確かに扱いは難しいかもしれんが、主が目指している物に彼らの力は必要不可欠だ。まして、この部隊を作るのに主や高町。テスタロッサには枷を付けられている。もしもの時。彼らが居ると居ないで大分状況は違うだろうからな」

 

 そんなヴィータにシグナムは微笑む。口を尖らせたままヴィータは傍らの騎士を見上げた。

 ヴィータだって理解している。理解しているが、納得するのは難しい。

 しかし、知らない仲では無い。その辺りはなんとか上手くやっていくしかないだろう。

 取り合えず、目下優先事項としては……。

 

「シグナム。口。ニヤケてんぞ」

「む? そうか? いかんいかん。つい我を忘れて興奮してしまったようだ。しかし体が疼いて仕方ないな。どうだヴィータ、この後……」

「断る。あたしも暇じゃねーんで」

「つれないな。将は悲しいぞ」

「知るか。その疼きとやらは自分1人で解消してくれ」

 

 この楽しそうな騎士が飛びださないように、しっかりと手綱を握っておく事だろうか。

 

 

 

2

 

 

 

 制圧時間7分ジャスト。

 新人達の倍以上の数と、ガジェットボールの性能を差し引いたととしも、その時間はティアナ達に衝撃を与えるには十分だった。

 なのははもう一度大きな溜息を漏らす。

 彼女は知らないがヴィータが言う通り、彼らの力は扱いを間違えれば、六課のバランスを崩しかねない危険な爆弾だ。故に勝手な行動は慎んでほしいのだが……、言うだけ無駄だろう。

 

「なんか先行きがもの凄く不安なんですけど……。マークさん。シュテル達をしっかり見ていて下さいね? そうじゃないと、今後に支障をきたしかねません」

「とは言ってもなぁ、あいつら基本フリーダムだし。ま、あいつらだって分かってるだろうさ。それに、俺が言わなくてもマリアの奴が上手くまとめてくれるさ」

「それってリーダーの言う台詞じゃないですよ」

「実質まとめてるのはマリアなんで。……もう少しあいつらを信用してやれって」

「信用してますよ。だから、不安なんです」

 

 空間パネルを操作しながら彼女が最後。ポツリと呟いた。

 それ以上マークは何も言わない。シャーリーも聞かなかった事にした。

 そして当の本人達。ガジェットを全て殲滅後、デバイスを解除しティアナ達の前に降り立つ。

 

「レン兄! シュテル姉!」

 

 素早く動いたのはスバルだった。レンとシュテルに飛び付き、その身を細かく震わす。2人も顔を見合わせると優しくその頭を撫でた。

 

「2人とも、すっごい心配したんだよっ!? 訓練校から急に居なくなっちゃうし、全然連絡は取れなくなるし、2年間も何やってたのっ!?」

「それについてはあたしも聞きたいわね。どうしてあんな事したのか、きっちり説明してもらおうじゃないの」

 

 スバルの意見にはティアナも同意する。腰に手を当てて、6人を睨みつけていた。

 

 

 2年前。

 何も言わずレン達はスバルとティアナの前から姿を消した。訓練校での生活も半年を過ぎた頃の話である。何も言わず、忽然と。元々誰も居なかったかのような部屋を見て、当時のスバルとティアナは呆然と立ち尽くすしかなかった。連絡も取れない。教官に聞いても、誰も詳細を教えてくれない。

 ただ一言「一身上の都合」とだけだ。

 勿論納得できる2人ではない。教官の制止も聞かずに学長に直談判を行った。

 第四陸士訓練校学長、ファーン・コーランド三佐は深い溜息と共に2人に語る。

 

「ごめんなさいね。こればかりは詳細を貴方達に語る事ができないの。言えるとすれば、彼らは訳あって、訓練プログラムを1年から半年に短縮したという事だけなのよ」

「それってつまり、あいつらはもう卒業したという事なんですか!?」

「名目上はね。でもね、彼らが貴方達に何も言わずにここを去ったのには理由がある。決して貴方達をないがしろにしていたのではないという事だけは忘れないで。彼らはここを去る最後まで貴方達2人を心配していたわ」

「そんなの……。一緒にこれからもやって行けるって思ってたのに……」

 

 今にも泣き崩れそうなスバルの肩をティアナが抱く。ティアナだってそう思っていた。

 それまでは頑なに心を閉ざし、パートナーになったスバルにすら壁を作っていた。そんな彼女の壁を少しずつ壊したのはスバルであり、レン達だ。それは乗り越えるべきライバルであり、共に切磋琢磨する仲間だと思っていた。

 だからこそ何か一言言って欲しかった。理由が何かは知らない。だがそれでも。それでもせめて自分とスバルにだけは何か言って欲しかった。最後まで心配してくれるなら、それくらいして欲しかった。

 そんな心境を読み取ったのだろう。ファーンは立ちあがり、2人をなだめるように抱き締める。

 

「今回の件、彼らは決して貴方達を裏切った訳じゃないわ。今は、そうするしかなかった理由があるという事で我慢して頂戴」

 

 そして彼女は2人の耳元で、他の誰にも聞こえないように告げる。

 

「そしてこれは彼らから貴方達宛に私が預かった伝言。たった一言だけど、貴方達ならこの意味が分かると思うわ」

 

『勝ち取れ』

 

 本当に短い一言。

 だがティアナとスバルはハッと顔を上げた。堪えていた涙が滲む。彼らが残した言葉の意味を理解し、受け止めた瞬間。抑えつけていた感情が一気に爆発した。

 ファーンは泣きじゃくる2人をまるで娘をあやす様に優しく、ずっと撫でていた。

 

 

 そして現在。

 漸くまた会えたかと思えば、訓練に乱入し、自分達を遥か後方へと置き去りにするかの様な圧倒的な殲滅力を見せつける。

 睨みつけたくなるのも無理は無い。

 

「そんなに睨むなよティアナ。美人が台無しだぞ?」

「うっさいです。こちとら鬱憤溜まりまくってんのよ。レンさんの軽口に付き合う余裕なんてないの。さぁ、洗い浚い白状してもらおうかしら。あの時何があったのか。何であんた達がここに居るのか。なんとなく検討はついてるけど、きっちりかっきりあんた達の口から語って貰おうじゃないの!」

 

 拒否権は無いとばかりにアンカーガンを向ける。

 思わず全員が両手を上げて降伏のポーズをしてしまう程の剣幕だ。

 

「はいはい。ティアナそこまで。デバイスを無闇に人に向けるものじゃないよ?」

 

 コツンとティアナの後頭部が小突かれた。振り返るとそこには呆れ顔のなのはが居る。いつの間にかマークとシャーリーを伴って、この廃ビルまでやってきていたのだ。

 彼女の指摘を受けて慌ててアンカーガンを仕舞うが、ティアナの不満は晴れない。それはなのはて同じだ。プログラムに仕掛けられたトラップ。突然の訓練乱入。本日のプランが狂いまくりなのだから。

 しかしそれをグッと飲み込み彼女はティアナを制する。

 確かにプランは狂いまくりだが、戦闘プログラムを弄られた訳ではない。そして彼らの実力をこの目で確認できた。決して悪い事ばかりでは無いのだ。故に本当ならティアナと一緒に問い詰めたい所を堪えて、なのははレン達を見据える。

 

「はいっ! 皆お疲れ様。どこかの誰かさんがプログラムを弄ってくれた挙句に、こ~んなサプライズを用意してくれたおかげで予定とは大ッ分! 違っちゃったけど、ガジェットボールの動きや特性については少しでも理解してくれたかな?」

 

 堪えているからと言っても、言葉の節々に棘があるのは否めない。苦笑するティアナ達に対し、レン達は素知らぬ顔を突き通す。

 

「でもこれでメンバーが揃ったね。ティアナとスバルは分かってると思うけど、エリオとキャロは初対面でしょ? 皆、自己紹介お願いね」

 

 それは展開についていけずにオロオロしていたエリオとキャロに対するなのはの配慮。

 漸くティアナとスバルもそれに気付いた。2人の頭を撫でつつ謝ると、はにかんだ笑みを返された。

 

「そんじゃ俺から。レン・アマミヤ。地上本部空曹。そんで俺のデバイス。ヴァリアントザッパーの管制人格。キリエ・フローリアン」

「よろしくね~」

「続けて私。シュテル・ザ・デストラクター。同じく地上本部空曹です。お見知りおきを」

「ロード・ディアーチェ。我は空曹長だ。ディアーチェと呼ぶが良い」

「ディアーチェのユニゾンデバイス、ユーリ・エーベルヴァインです。一応空曹になるのかな? 宜しくお願いしますねエリオさん、キャロさん」

「ん? レヴィ、お前はどうした?」

 

 レヴィだけが自己紹介をしない事を不審に思ったマークが視線を向けた。するとレヴィはエリオとキャロをじっと見つめ、何かを堪えている様子。周りも不思議に思う。エリオとキャロに至っては複雑な心境だ。何故なら彼女の容姿は自分達の親代わりになっているフェイトと瓜二つ。そんな彼女がじっと自分達を見つめている。何か気に障る事でもしてしまったのかと、気が気ではない。

 だが……。

 

「もー駄目! 我慢の限界! 君達がエリオとキャロだね? ボクはレヴィ。レヴィ・ザ・スラッシャー! 君達の事はオリジナル……じゃなかった。フェイトから聞いてるよ! もー、話を聞いてからずーっと、ずーっと会いたかったんだ!」

 

 ティアナ達とは別の意味で感情を爆発させたレヴィがエリオとキャロに抱きついた。

 何が何だか分からずに目を白黒させる2人。周りもレヴィの行動に唖然とする。

 

「話に聞いていたって、レヴィさんは僕達の事を知っているんですか?」

「もー、レヴィさんなんて堅ッ苦しいなぁ。ボクの事は『おねーちゃん』で良いんだよ?」

「レ、レヴィさん? 私達も突然で何が何だか……」

「君達はフェイトの子供みたいなモンなんでしょ? まだ叔母さんって呼ばれるにはボク若いもん! だからおねーちゃん! ハイ、言ってみよう!」

「「お、おねえちゃん……」」

「宜しい!」

 

 エリオとキャロが自分を「おねえちゃん」と呼んだ事が堪らなく嬉しいのか、レヴィは2人を強く抱きしめた。その胸に顔を埋められ、2人がバタバタともがいているがお構い無しにレヴィは尚も抱き締める。

 

「……どういう事? シュテル、説明お願いできる?」

「どうもこうも無いでしょう。レヴィはずっとあの2人に会う事を楽しみにしていたのです。フェイトから2人の事を聞いてからずっとね。漸く会えた事で我慢できなくなったのでしょう」

 

 今度は頬擦りを始めたレヴィ。確かにレヴィはフェイトの基にして生まれた。考えようによっては彼女はフェイトの妹と言っても差し支えないだろう。なればエリオとキャロにとっては叔母さん。だが、それを良しとしない彼女がおねえちゃんと呼ばせた。

 ああ、成程と納得するなのは。話を進めて良いかとマークが視線を送って来るので、レヴィは放っておいて彼女は頷く。

 

「任務で部隊挨拶には間に合わなかったが、これで地上本部特別遊撃隊『Spirits』。無事六課と合流だ」

「はい。高町なのは一等空尉。無事、現地にて確認しました。スバル、ティアナ。……エリオとキャロはそのままでいっか。え~っと、今後彼らには貴方達のバックアップを行ってもらいます」

 

 Spiritsの名にティアナは目を丸くした。隣でスバルが首を傾げているのは放っておいて、彼女の思考は瞬く間に以前聞いた事のある噂を思い出す。

 どうしても次元航行隊。通称「海」の部隊に比べ、地上は戦力的不足を否めない。そこで急遽設立されたライオットフォースがあると言う噂だ。しかしそれはあくまで噂だと思っていた。何故なら、彼らが出現する際には必ず人払いがされ、広域結界が張られるのだ。故にその実体は謎に包まれており、そんな部隊等存在せず、地上部隊が質量兵器の使用を隠す為に流したデマだという者も居る。しかし事実としてその広域結界が張られた後は、どんな場面でも鎮圧が完了し、それを行った者の姿は無い。その為、誰もSpiritsの存在を完全否定する事も、完全肯定する事もできない。そんな噂だ。

 

「あんた達がそのSpiritsだって言うの?」

「まぁな。まぁ、その、なんだ。あの時突然居なくなったのは申し訳なく思っている。だが、こういう事情なのでな。お前達にも言えんかったのよ」

 

 バツが悪そうに頭を掻くディアーチェ。蓋を開けてみればこういう事だ。トリックの分かったマジックのようにティアナの疑問が一気に晴れて行く。

 まぁ文句はまだある。しかし、それを言う気力も無くなってしまった。六課に合流したという事は、今後話す機会はいくらでもあるはず。その時に色々聞いても遅くは無い。

 今は素直に再会を喜ぶ事にしよう。

 

「良いわよディアーチェ。なんか言う気も無くなっちゃった。それにね、ちゃんとあんた達の残して言った伝言。受け取ったわよ。ちゃんと主席を『勝ち取って』やったわ」

「そうか。それなら良かった」

 

 笑い合う2人。その意味を分かる者は誰しも笑みを浮かべた。

 ちゃんと伝言が届いていたという安堵。それを実行してくれた友人。時は流れても、変わらぬ友人に各々は思いを馳せる。

 そしてその様子になのはとマークもまた顔を見合わせ、笑い合う。

 一時はどうなるかと思ったが、この様子なら無事にやっていけそうだ。多少の不安。主にレン達のフリーダムさは気になるが、重苦しいよりは良いだろう。コミュニケーションを円滑に進める事が部隊を良くしていく第一歩。その点では概ね順調なスタートではないだろうか。

 それでも、言うべき事は言っておかなければならないのではあるが。

 

「さて、話もまとまった所でフォワード達は訓練の続きね。そしてシュテル達は、ちょっと『お話』しようか?」

 

 ビクリッ!

 

 6人の体が震え上がる。顔はニコニコと笑っているが、その声で一気に体が竦み上がった。

 そして一斉に回り右。

 

「何で回れ右してるのかな?」

「ナノハ。私達はここに先ほど到着したばかりですよね?」

「うん。そうだね。それで?」

「まだ部隊長に挨拶をしていないのですよ。ほら、その辺りはきちんとやっておかないと」

「そうだね。でもはやてちゃんの場所まで分かる? なんなら一緒に行くよ?」

「ご心配には及びません。ナノハもティアナ達の訓練があるでしょう?」

「それこそ心配無用だよ。今は基礎訓練だし、内容はマークさんも分かってるから。『ちょっと』時間を空けるくらいなら問題ないよ。……ですよね? マークさん?」

 

 何故だろう。何故、俺の胃がこんなに痛くなるのだろう。

 なのはの言葉に無言で何度も頷くマークは思う。

 そしてその後、たっぷりとシュテルとなのはは無言で視線を交わした。

 

「……」

「……」

「…………」

「…………あっ! 逃げた! こらーっ! 待ちなさーいっ!」

 

 そのまま無言で6人はダッシュをかける。一目散になのはの所から隊舎に向けて全速力。

 なのはもそれを追いかける。そのスピードは6人に勝るとも劣らない。

 

「流石不屈のエースオブエース。並の脚力じゃないわ」

「ティア。多分それ間違ってる。エースオブエース関係ない」

「凄い。フェイトさんに勝るとも劣らぬスピードだ!」

「本当ですね。あっと言う間に見えなくなっちゃいました」

「うん。エリオとキャロも多分色々間違ってるから。……あれ? なんか担当おかしくない? あたしが突っ込みっておかしいよね? ティアが突っ込み担当でしょ? なんでそんな遠い目をしてるの!?」

 

 慣れない突っ込みにスバルの容量は限界だ。ともあれ、なのはが居なくなってしまったが訓練は続行。

 恐らくあの6人と『お話』するまでなのはは帰って来ないだろう。

 仕方ないのでマークがシャーリーと共に指示を出す。

 それを聞きながら、4人は心の中で合掌していた。

 

 

「ま~ち~な~さ~いッ!」

「この状況で待てと言われて待つ馬鹿がいますかっ!!」

「止まらないと撃つよ!」

「止めて下さい! 貴方さっき無闇にデバイスを人に向けるなとティアナに注意していたでしょう!」

「大丈夫! これは威嚇射撃だから! 全力全開の威嚇射撃だから!」

「意味が分かりませんよ! 何ですかその撃ち落とす気たっぷりの威嚇射撃はっ!」

「大丈夫だってシュテル! 痛くしないから、ねっ? さぁ狙い撃つよレイジングハート!」

<……All right, My master.>

「レイジングハートが諦めたっ!?」

 

 逃げる6人。追うなのは。

 機動六課初日は、こうして平和に幕を開けた。

 

 

 

 ちなみにこの後、6人と一緒になのはもはやてにお説教されたのは余談である。

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