魔法戦史リリカルジェネレーション   作:nanase

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第15話 平和な日々に響く警鐘

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 ピンボンパンポーン。

 

『隊員呼び出しです。スターズ分隊スバル・ナカジマ二等陸士。同ティアナ・ランスター二等陸士。ライトニング分隊エリオ・モンディアル三等陸士。同キャロ・ル・ルシエ三等陸士。10分後にロビーに集合して下さい』

『ちなみに遅れたら罰ゲーム♪ スバルとティアナは訓練校時代のあーんな写真やこーんな写真を一般公開。エリオ君とキャロちゃんはメイド服で1日ご奉仕ね~。勿論エリオ君は女装よん? それじゃ隊員呼び出し終了でーす。ちなみにもうカウントダウンは始まってるのであしからず♪』

 

 パンポンピンポーン。

 

「僕だけなんかおかしい!」

「エリオ! 文句言ってる場合じゃないわ! 急いで行くわよ!」

「今のリイン曹長とキリエだよね? ってか訓練校時代にそんな写真あったっけ?」

「知るかっ! 撮られた覚えもないけど、キリエならあり得る!」

「私は別にメイド服くらいなら良いんですけどね~」

「僕は絶対に嫌だ~!」

 

 バタバタとオフィスルームから駆けだして行く新人フォワード4人。鬼気迫る表情で一目散に出て行った。周りは何事かとその様子を唖然と見ていたが、次第に笑いが聞こえ始め、終いにオフィスルームは爆笑の渦に包まれた。

 

 

 機動六課運用開始から4日が経過していた。懸念されていた緊急出動も無く、概ね平和な日々が続いている。

 この部隊長室以外は。

 そこでは現在はやて、なのは、マリアの3人がソファーに腰掛けたまま、机に突っ伏していた。

 

「あンのド阿呆!! なんちゅー放送してんのやっ!!」

 

 3人の中で最も回復の早かったはやてが大声を上げる。ダンッと机の上に片足を乗せて立ちあがり、拳を握りしめる姿は怒り心頭。いきなりあんな放送をされたのでは、無理も無いか。

 

「は、はやてちゃん、一応レン君も居るんだし、ちょっと落ち着いて! その体勢だと見えちゃうよ?」

「見えるのがナンボのもんじゃい! これが落ち着いてられるかっちゅーんや! リインまで一緒になって悪ふざけしおってからに~!」

「多分、リインもいきなりで止められなかったんだと思うわよ?」

 

 冷静にマリアが返す。なのはもその点については同意だ。リインが自分からそんな事をする訳もないし、悪いがそんな度胸も無いだろう。きっとキリエが思いつきでやったに違いない。

 

「と言う訳でレン君? ちゃんとキリエの手綱握っておかないと駄目だよ? それに盗撮はいけないなぁ。れっきとした犯罪だよ?」

「俺は無実だ! そんなの見た事無いし! いくらなんでもそこは信じてくれても良いでしょ!!」

「ほぅ……。まだ白を切り通しますか。素直に白状すれば楽になれるというのに」

「俺どんだけ信用ないの!? だからやってないって! 盗撮ダメ! ゼッタイ!」

 

 なのはが視線を向けた先では、冷え切った目でシュテルがレンを折檻していた。

 ルベライトを全身に巻きつけ、床でもがくレンをパイロシューター(炎熱変化無し)で転がしている。何か文句を言っていても聞く耳無しの折檻が続けられる。

 

「そう言えば、リインとキリエがあの子達を呼び出した理由ってなんだっけ?」

「六課の施設案内と人員紹介やな。他の皆は初日にオリエンテーションやったけど、あの子達はずっと訓練だったし」

「そう言えばそうね。それで、高町教導官から見て新人達の手応えはどんな感じ?」

「4人とも良いね。かなり伸びるよ、あの子達」

 

 嬉しそうにマリアに返す。伸び代がある魔導士を見つけ、育てるのは楽しいものだ。

 よく伸び代のある人間を宝石の原石に例えるが、今のティアナ達はなのはにとってまさにそれ。

 ゆっくり丁寧に無駄な部分をカットし、その原石の最も輝ける場所を磨き上げる。それが磨けば眩いばかりに輝くと分かっている以上、楽しくない訳がない。

 

「取り急ぎ準備は終えたんだけど、伸ばしていく方向は大分見えてきた。私とシュテル。そしてマークさんの意見が一致したから間違いないと思うよ。シュテル~、そろそろ戻って来て~。はやてちゃんとマリアさんにティアナ達の今後についてお話するから~」

「む? そうですか。ならレンへの折檻はこれくらいにしておきましょう」

 

 何かやり切った感のある清々しい顔でシュテルが戻って来た。やっとルベライトの拘束から解放され、レンも若干涙目ながらソファーに戻る。

 

「高速機動と電気物質。突撃・殲滅型のガードウィングを目指せるエリオ」

「個人技能担当は時間がある時にはフェイトが。それ以外はレヴィ。補助としてレンを付けたいと思います。レヴィだと脱線しかねないので……」

「一撃必倒の爆発力に頑丈な防御性能。フロントアタッカーの理想型を目指していくスバル」

「彼女の担当はやはりヴィータでしょう。スタイルがピッタリ一致しますしね」

「二騎の竜召喚を切り札に支援中心の後方型魔導士の完成型を目指すフルバックのキャロ」

「彼女にはスタイルが似ているユーリに担当してもらいましょう。補助にはディアーチェを付けます。どちらからも後方からの物の見方を吸収してくれるとありがたいです」

「射撃と幻術を極めて味方を生かして戦う戦術型のエリートガンナーになっていくはずのティアナ」

「彼女にはやはりナノハが適任かと。補助には私が付きます。射撃と戦術。どちらでも彼女は上手く吸収してくれると思いますよ」

 

 1人1人の情報データを空間パネルに写しながらなのはが説明。シュテルがその補助を行う。

 なんだかんだで息の合ったコンビなのだろう。自然と2人の役割が明確になっている。

 説明が終わるとなのははうきうきとした子供の様な笑みを浮かべた。

 

「どこまで伸びるか楽しみでねー♪ 4人が完成したらきっと凄い事になるよ!」

「ある意味チームとしては理想的な形になるでしょうね」

「楽しみやー♪ そうなるとリーダーは誰になるんやろ?」

「この配置だとティアナで決まりじゃないかな。視野は広いし指示も的確。自然に他の3人を引っ張ってるしね」

「ただ、少し熱くなりすぎるのが欠点でしょうか。どうやらこの辺りは訓練校時代から変わっていないようです」

「そうだね。ああ、そう言えば……」

 

 一瞬、なのはの顔に影が差す。

 

「スターズの2人が揃ってすんごい突撃思考なんだよ。ここは厳しく教えていかないと……」

「何を今更。ナノハも昔はそうだったではないですか」

「うう……」

「せやなー。いつも真っ直ぐ全力全開。なのはちゃんの代名詞やったからな」

「ええっ!? はやてちゃんまで?」

 

 思わぬ突っ込みになのはが驚きの声を上げた。そして昔の自分を思い返し、なんとも言えない複雑な表情を見せている。思い当たる節は幾つもある。否定出来ない所が悲しい。

 

「後はライトニング。経験不足はまぁ置いておきましょう。欲を言えば、もう少し自己主張しても良いと思いますね」

「あの子達、典型的な『良い子』だものね。その辺りはやっぱりフェイトさんの教育の賜物なんだろうけど、前線に出るなら時に『我儘』も必要だわ」

「そこはレヴィから学んでくれるとありがたいかな。あの子のおかげで、ライトニングのコミュニケーションも取れてきてるっぽいし。あ、レヴィと言えば、よもやあの子があんなにお姉さんがハマるとは思わなかったね」

「基本的に面倒見が良いですからね。後、良くも悪くもあの子には裏表が無いですから。エリオとキャロには丁度良いでしょう」

 

 いつの間にか話が逸れている。まぁ必要な情報は聞けたし良いかと嘆息するはやて。

 盛り上がる3人をよそに、空間パネルを見て考え込んでいるレンにふと目が止まった。そそっとレンの隣に行って覗きこむと、そこには先ほどなのはも使っていた新人達のデータが再生されている。

 

「そういや、レンさんの意見を聞いてなかったな。レンさんはどう思うんや?」

「ん? いや、俺もなのはとシュテルの意見に同意見。ライトニングの性格についてもマリアさんと同じで、もう少し我儘になっても良いと思うよ。ただ、どっちの分隊もまだ1週間はフル出動を避けた方が良いかなって思って」

「その理由は?」

「危なっかしいんだよ。まだ連携も満足に取れてないし、戦術面でもまだ不安かな。正直、ティアナがまだエリオとキャロを扱いきれてないしね。ここが解消しなきゃ、怖くて送り出せない」

 

 へぇとはやては内心驚いた。普段は色々と馬鹿をやっている姿が目立つが、流石はSpiritsと言った所だろうか。現場での動きを考える辺り、やはり叩き上げ。それもミッドに来る以前、彼が味わった戦いの経験も生きているのだろう。普段とは一転して真面目な顔をするレンの横顔を見つめ、はやてはそんな思いを巡らせる。

 しかし、その為の隊長、副隊長の配置だ。そして更に保険としてレン達Spiritsも居る。1週間くらいの時間は問題ないと思うのだが。それを告げるとレンは首を横に降る。

 

「俺が懸念してるのは、それだけじゃない。ガジェットボールの形状。あの形が俺は気になって仕方ない」

「形?」

 

 首を傾げるはやてだが、レンはそれ以上何も言わなかった。

 マークとマリア。アプロディアも気付いているだろう。だがシュテル達は知らない筈だ。

『あの世界』で追体験した者しか、あの形状は見た事がないから。

 それが何を意味するのか。それがレンの目下の不安だった。

 

 

「シャーリー、一緒にお昼にするですよー」

「ディアーチェとユーリもお昼だよー」

 

 六課内デバイスメンテナンスルーム。そこに入って来るのはリインを肩に乗せたキリエだ。

 その声にシャーリーとディアーチェ。そしてユーリが振り返る。

 彼女達の目の前には液体の入ったポッドがあった。その中にゆらゆらと浮かんでいるのは4つのデバイス。生まれたばかり。まだ赤子の様なデバイス達がまだ見ぬ主との対面を今か今かと待っている。

 

「デバイス達の調整ですか?」

「はい。もう少しで完成ですよ。ディアーチェとユーリ。そして何よりアプロディアさんから協力が得られたのは大きかったですね」

<いえいえ。私はほんのお手伝いに過ぎません。基本理論の構築はシャーリーのもの。私達はその補助をしたに過ぎません>

 

 謙遜するようにユーリの掌でイヤリングが明滅した。しかし、シャーリーは慌てて頭を振る。

 

「何を仰いますか! アプロディアさんのおかげでスバルのウィングロードがこの子からでも発動できるようになったんですよ? それにディアーチェとユーリの効率的な容量圧縮のおかげで、当初の予定よりも容量を大分抑える事もできました。そうじゃなきゃ、あんな機能搭載できなかったんですから」

「その為の我らだからな。これで容量を作る事が出来なかったら、ここに来た意味が無くなる」

「正直なんとかなってホッとしてますよ」

 

 鼻を鳴らすディアーチェと本気で安堵しているユーリに、リインは満足げに笑うとポッドの前までふわっと飛んでいった。そして愛おしそうに液体の中に浮かぶ4つのデバイス達に話しかける。

 

「みんな、もうすぐ目覚めとマスターとの出会いですね。ちゃんと立派に完成してそれぞれのマスターと一緒に精一杯頑張るですよ。私も応援するです!」

 

 忘れがちだが、リインはデバイスだ。しかし人の形を成し、感情豊かな彼女は立派な1つの命だ。

 そして彼女の目の前にあるデバイス達も、形は違えど1つの命を持っている。

 リインにとってみれば、弟や妹。そんな感覚なのかもしれない。

 そしてそれはアプロディアにとっても同様だった。デバイスに命を吹き込む事は、かつて彼女がジェネレーションシステムを使ってレン達の祖先を生み出した時の感覚に似ている。

 デバイス達に話しかけるリインを見て、アプロディアは誰にも気付かれる事なく静かに微笑む。

 生まれてくる新しい命。それはいつ見ても素晴らしい物だから。

 

「そう言えばキリエ。あの放送。ティアナ達のデータというのは本当にあるのか?」

「もし本当なら今頃レンさんは……」

「ん~? そんなのある訳ないじゃな~い。いくらなんでもそこまでしないわよ~ん」

「「……」」

 

 けらけらと笑うキリエに、ディアーチェとユーリの脳裏に怒り狂うティアナの姿と、シュテルに折檻を受けるレンの姿がありありと浮かぶのだった。

 

 

 

 この一連の騒ぎから更に時間は流れ、新暦75年5月。

 今日も元気に新人フォワード達は早朝訓練。

 その締めとして、なのはの生み出したアクセルシューター10発を5分間避けきるか、彼女に一撃を入れるかの弾丸回避訓練が告げられる。しかも被弾し、失敗すればやり直しのペナルティ付きだ。

 

「レン。どう見ます?」

「ぶっちゃけ、5分間避けきるなんて無理だろ。となれば是が非でも一撃入れようとするだろうな」

 

 その早朝訓練に付き合っていたレンとシュテル。ティアナ達の状況からレンが分析する。

 でしょうねと彼女も頷いた。

 失敗を重ねればその分、成功の確率は倍々ゲームで下がっていく。となれば動ける内に最も確率の高い選択をするしかない。

 そして2人が見守る中、フォワード達が動きだす。

 当然迎撃態勢を取るなのは。レイジングハートを振り、アクセルシューターを飛ばす。高速で飛来する魔力弾を回避しながらフォワード達も四方へと散る。魔力弾がアスファルトを破壊し、土煙を濛々と派手に巻き上げた。視界が遮られる中、なのはの背後にスバルのウィングロードが出現する。

 疾走するスバルの対角線上、丁度なのはを挟み込む形でティアナが狙撃態勢に入る。瞬時に状況を理解したなのはが、光弾を操り迎撃態勢を取る。彼女の正確無比な射撃は、容易く2人を貫く。いきなり再スタートかと思われたが2人の姿が忽然と消え去った。

 

「流石ティアナ。良いフェイクだ」

「これで一瞬でもなのはの意識を逸らす事ができましたね」

 

 知らず知らずにレンとシュテルは小さく拳を握りしめた。

 シュテルの言う通り、ティアナの幻術魔法によってなのはの意識が一瞬逸れた。その瞬間を狙い、彼女の真上。垂直に伸びたウィングロードからスバルが駆け下りて来る。対してシールドを展開するなのは。

 リボルバーナックルがシールドを突破しようと唸りを上げる。その間になのはも魔力弾の向きを変更し、スバルを狙うも、体をねじり彼女も紙一重でこれを避ける。

 

「お、今のは良い反応だ」

「でもその後が問題ですね。勿体ない」

 

 レンが声を上げた。正直、彼の見立てではスバルはこれに当たり失格になると思ったのだ。それを身体能力でカバーした辺り彼女のポテンシャルの高さを感じる。

しかし、シュテルの言う通りその後が問題だ。

 実際幾重にも伸びたウィングロードの上をフェイントも混ぜず、馬鹿正直にも一直線に疾駆している。

 射撃型の魔道師相手に逃走経路が丸見えでは、当ててくれと言っているようなものだ。

 

「うわわわっ! ティア、援護援護!」

「馬鹿! 危ないでしょ! 待ってなさい!」

 

 ティアナはスバルの後をぴったりとマークする魔力弾に狙いをつける。威力射角共に十分な状態で引き金を引くが、魔力弾は発射されず、代わりにデバイスがパスッと気の抜けた音を立てた。

 見ていた2人も思わずがっくり肩の力が抜ける。

 

「ここでジャムんのかよ!」

「最悪のタイミングです」

 

 急ぎカードリッジを装填し再び狙撃体勢に入るティアナ。先ほどとは打って変わって狙いも威力も甘かったが、もう四の五言っていられない。そして放たれた魔力弾は3発。2発はスバルの援護。1発はなのはの牽制だ。

 そしてなのはの後方ではエリオとキャロが虎視眈々とチャンスを窺っている。

 

「キャロのブーストが間に合えば、チャンスだな」

「とは言え、ナノハも気付いているでしょうけどね」

 

 レンの目論見通りキャロのブーストが間に合い、エリオに魔力が漲る。ティアナの合図と共にエリオのストラーダが火を噴いた。振り返るなのはもそれを真正面から迎え撃つ。轟音が響き、弾かれたエリオが煙の中から飛び出した。対してなのはは魔法陣の上でしっかり立っている。

 

「防がれた?」

「いいえ。通っていますよ。エリオの攻撃はちゃんとバリアジャケットまで届いています」

 

 指さすシュテルの言葉の通りなのはの胸の辺り。白いバリアジャケットに付いた僅かながらの衝突痕。

 それを見てなのはが微笑むと同時に、レイジングハートが訓練の終了を告げた。

 

 

 

「さて、みんなも大分チーム戦に慣れてきたね。どう? レン君とシュテルから見てみんなは?」

 

 バリアジャケットを解除し、全員を集めたなのはが2人に尋ねる。

 

「いやいや、俺達に振るなよ。でもま、訓練を始めた頃と比較したら凄い上達だよ。正直ティアナのシルエットは俺も騙されたし。やっぱああいう搦め手って大事だよな。スバルの身体能力には目を見張る物があるし、エリオとキャロにしたってよく状況を見極めてる。最後のアレは俺でも防げたかどうかも分からんね」

「むぅ……。言いたい事を全部言いやがりましたね。では私からは注意点を。ティアナ。フェイクは良いのですが、1つの場所に居過ぎです。あれでは弾道から場所を特定しやすいですよ。スバル。貴方はウィングロードとリボルバーナックルに頼り過ぎ。いつもティアナの援護が間に合うとは限らないのですから、フェイントというのを覚えなさい。エリオも同様。真っ直ぐが悪いとは言いません。それならば、何が何でも貫く気概を持って下さい。それが貴方の一番の武器になります。キャロは少し援護に集中し過ぎですかね。ティアナのフォローは貴方の役目。フルバックとは言え、そこは臨機応変に……ですよ」

「手厳しいね。これは今後の課題……かな?」

「敢えて厳しい事を言わせてもらいました。それでもレンの言う通り、訓練初期に比べたら見事な成長ですよ。厳しい事を言ったのは、今後の期待を込めてです」

 

 女子2人が顔を見合わせて笑い合う。と、レンの鼻をつく何かが焦げた匂い。彼の頭の上に陣取ったフリードも顔を上げてキョロキョロ回りを見回している。

 原因は直ぐに判明した。スバルのローラーブーツが火花を上げていたのだ。慌ててブーツを脱ぎ、涙目になるスバル。フリードを頭に乗せたままレンが状況を確かめた。フリードがレンの頭にいる事にキャロも気付き、なんとか降ろさせようとしているが、フリードは余程居心地が良いのか降りてこようとしない。

 

「レン君、分かるの?」

「ん~まぁちょっとな。訓練校時代にこいつのメンテ手伝ってたし。ついでだ。ティアナもアンカーガン見せてみ。盛大にジャムってたしな」

「騙し騙しやってたんだけどね。やっぱりあたしじゃ限界があるみたい」

「ほいほい。修理屋レンさん久々の営業だねっと」

 

 その場で座り込み、ローラーブーツとアンカーガンを丁寧に確かめていく。

 横ではスバルとティアナ。そしてなのはが心配そうな顔で覗きこんでいた。

 

「修理屋レンさんって何ですか?」

「訓練校時代のあだ名ですよ。2人のデバイスメンテの他にも色々備品の修理とかをやっていたので。教官達からも重宝されていたのですよ。何せ、お金は取りませんでしたから。その分余計な出費も抑えられて経費が浮くという算段です」

「へぇ~。……それでキャロは何してるの?」

「フリードがレンさんの頭から降りてくれないの~」

 

 悲痛な声を上げるキャロにエリオが苦笑する。なんとか降ろさせようと頑張っているが、無理に引き剥がす事もできない。そんな主人の努力も知らずフリードは大きな欠伸をして丸くなる。懸命になっているキャロの姿が微笑ましく、エリオとシュテルは互いに苦笑していた。

 

「あ~、駄目だこりゃ。ブーツの方は駆動系がイカレちまってる。そっくり交換しなきゃ駄目だ。アンカーガンも魔力伝達経路が2本切れてやがる。まだ経路が残ってるが、そいつもいつ切れてもおかしくないくらい痛んでるな。いっそ、ブーツと一緒で新品にしなきゃ駄目だわ」

「「え~?」」

 

 またもや悲痛な声が上がった。こればかりは直しようがない。流石のレンでもお手上げだ。

 その様子になのはとシュテルは顔を見合わせる。

 

「みんな訓練にも慣れてきたし、そろそろ新デバイスに切り替えかなぁ」

「そうですね。頃会いかもしれません」

 

 フォワード全員が一斉に首を傾げた。

 

 

 六課隊舎内のシャワールームに水の流れる音が響く。

 フォワード女性陣とシュテルが早朝訓練の汗と汚れを流しているのだ。話題になるのはやはりデバイスの事。ふとしたキャロの疑問にティアナとスバルが答えていた。

 2人のデバイスは訓練校時代からずっと使っている物であること。自分専用のデバイスを持っているのは珍しく、それが縁で2人がコンビを組む事になった事。他にSpiritsの面々も専用デバイスだった事と、スバルが彼女らの知り合いということから、何かとつるむようになった事。

 

「思えば、その時からあたしとスバルの腐れ縁。そして苦悩が始まったのね」

「むしろ貴方のツンデレに磨きがかかって嬉しい限りです。さ、キャロ。髪を洗ってあげましょう」

「は~い」

 

 本気で顔をしかめるティアナをそのままに、シュテルはさっさとキャロの髪を洗い始めた。だが、ティアナは仕切り板に頭を乗せて何かを思いついたようにニヤリと笑う。

 恐らくシュテルをぎゃふんと言わせるには、この話題が一番だろうと。

 

「そういうアンタはどうなのよ。レンさんとずっと一緒に居たんでしょ? キリエが居たっていっても何かしら進展あったんじゃない?」

「あ。あたしも気になるー。ね、シュテル姉。レン兄とはどうなったの?」

 

 ピタリとキャロの髪を洗うシュテルの手が止まった。そして彼女の視線はどこか遠い所を見始める。

 予想外の行動にティアナとスバルは顔を見合わせた。

 そして再びキャロの髪を洗い始めながら、シュテルはポツリと呟く。

 

「……最近、レンが不能ではないかと思い始めてきました……」

「「ぶっ!」」

 

 思わず吹き出す。突然何を言い出すかと思えば、あまりに予想外。わっしゃわっしゃとキャロの髪を洗いつつもシュテルが明らかに肩を落としているのが分かる。

 

「え、え~とシュテル。それってどういう事なのかな?」

「……あんにゃろう、一度も手を出して来ないんです……。ええ、そうですとも。チャンスは幾らでもあったのですがね。昔はまだ私も幼かった故に、手を出して来ないのだと思っていました。ですが、よくよく考えてみれば、キリエにも手を出していない。まぁ出されたら出されたでアレですが、私だってそれなりに成長したのに何もしてこない。流石に女として自信を失くしますよ……」

「「……」」

 

 多分違うと2人は思う。手を出さないのではなく、手が出せないのではないだろうか。

 それ以上に疑問はあるし、話が飛躍しているように思えるのは気の所為ではないはずだ。

 

「あ~、うん。レンさんが不能かどうかは置いておくとして。シュテルはレンさんに気持ちを伝えたの?」

「そうだよシュテル姉。まずはそこからじゃない?」

 

 尤もな意見であろう。しかしシュテルはそれを聞くと、途端に顔を真っ赤にして俯いてしまった。キャロの髪を洗う手がスピードを上げる。

 やっぱりと2人が顔を見合わせる。普段を見る限り、シュテルなりにアプローチをかけているのは分かるが、口に出してはっきりと言っているかは疑問だ。理由を尋ねると、ますますシュテルは顔を赤くする。 

 同時にキャロの髪を洗うスピードも増して行く。

 

「……だって、恥ずかしいじゃないですか」

「「恥ずかしがる基準がおかしいよ!!」」

 

 シャワールームに盛大にハモッた声が響いた。

 そして何も言わずに聞いていたキャロは思う。

 

(不能って何だろう? 手を出すって何だろう? 後でエリオ君かフェイトさんに聞いてみようっと)

 

 後にキャロからこの事を尋ねられたエリオが首を傾げ、2人揃ってフェイトが尋ねられ、彼女も顔を赤くしてあたふたとしている姿が見られたという。

 

 

 

2

 

 

 

 その後、シャワールームから出てきた女性陣を出迎えたレンとエリオ。そして相変わらずレンの頭に乗っているフリード。しかしスバルとティアナはレンを見るなり、深い溜息。シュテルも顔を赤くして視線を逸らす。キャロが何かを尋ねようとしていたが、ティアナに抑えられもごもごともがいている。

 そんな女性陣に男2人と1匹は首を傾げるばかりだ。

 そして食堂で彼らを待っていたのは厨房に立つディアーチェとユーリ。そしてキリエだった。何時まで経っても帰って来ないレン達に痺れを切らし、彼女達自ら厨房で料理を作っていたのだという。食堂は24時間体制なのだが、この時間は基本作り置きだ。飯は出来る限り、出来たてを食えとはディアーチェの談である。ちなみにレヴィは現在フェイトと一緒に外回り中。マークは地上本部へ行っている。

 遅めの朝食を済ませたら、なのはの指示にあった通りデバイスメンテナンスルームへ。

 そこで彼女達を待っていたのはシャーリーとリイン。そしてスバル達に与えられる生まれたばかりの新デバイス達だった。

 机の上に鎮座している4つのデバイスに注目する。ペンダント、カード、腕時計、腕輪。それぞれの形のデバイスが淡い光を放っており、4人はそれに目を奪われる。

 

「気に入ってくれたようでなにより! 設計主任私! 協力、六課隊長なのはさん、フェイトさん。リイン曹長とレイジングハートさん! そしてスペシャルアドバイザーにSpiritsからディアーチェさん、ユーリさん、マリアさんのデバイス、アプロディアさんです!」

「ほぼフルメンバーじゃないですか!」

 

 ティアナの驚きも尤もだ。正に目の前のデバイスは六課の持てる英知の結晶と言っても差し支えない。

 しかもそれらは彼女達の能力特性に合わせて作られた代物で、世界にたった1つしか存在しない完全オーダーメイドだ。

 そんなものを本当に貰っても良いのだろうか。いや、良いと頭で分かってもどうしても恐縮してしまう反面、どんな性能を秘めているのか、期待もしてしまう。

 

「ストラーダとケリュケイオンは、変わってませんね」

「違いま~す。変化無しは外見だけですよ。2人のデバイスは、基礎フレームと最低限の機能だけを持った言うなれば急造試作品でした。急造だけあって、出力制御や耐久度に問題があったので、シャーリー達みんなが夜鍋して仕上げた完成形なんですよ~」

「あ、あれで最低限なんですか……」

 

 頭の上で得意げに語るリインにエリオは引き攣った笑みを浮かべる。確かにデバイスを使い始めて日が浅いエリオだが、ストラーダのピーキーさには何度肝を冷やされた事か。

 何を隠そうシャーリーは、長所を限界まで伸ばす主義だ。そしてそれはなのはとフェイト。平たく言ってしまえばレイジングハートの影響をとことんまで受けている。そして多分ディアーチェ達もその考えの持ち主。

 つまり平均型より特化型。綺麗な円形パラメータを描くより、鋭い鋭角を持つ多角形パラメータ。

 と言う事は、新しいストラーダはこれまで以上のピーキーさになっているという訳で……。

 自分の予想はきっと間違っていない。エリオの心中や、なんとも複雑なものだ。

 

「部隊の目的に合わせて。そして、4人の個性に合わせて作られた文句無しの最高の機体です。この子達は皆生まれたばかりですが、色んな人の思いや願いが込められていて、沢山の時間とお金をかけてようやく完成したのです。只の道具と思わないで大切に。でも、性能の限界まで全開まで使ってあげて欲しいです。きっとこの子達もそれを望んでいるのです」

 

 リインの言葉がまるで真実であるかの様に4つのデバイスが輝き、早く使ってくれとばかりにそれぞれの主の手に収まる。丁度その時だ。なのはが急いでこの部屋に入って来るのは。

 そして詳細な説明が始まる。

 デバイス達には段階に応じてリミッターがかけられている事。丁度、扱うティアナ達のレベルに合わせて、順次それを解除していく事が告げられた。

 そこでティアナがなのは達にもリミッターがかけられている事を口に出す。

 それは1つの部隊が保有できる戦力の限界値。優秀な魔導士の一極集中を避ける為にかけられる出力制限リミッターの事である。だが、ここで更にティアナは首を傾げた。

 

「そう言えばレンさん達は? レンさん達が入ったら保有制限オーバーするんじゃ……」

「レン君達はね、ちょっと特殊なの」

「特殊……ですか?」

「ティアナは“ライセンサー”って聞いた事ない?」

 

 あっとティアナが声を上げた。しかし理解したのはティアナだけで、スバルとエリオ。キャロの3人はポカンと口を開けている。「え? 何? それって凄いの?」と言わんばかりだ。

 そんな彼女達に説明をするのは例によってシュテルだ。軽く咳払いをすると彼女達の前に出る。

 

「ライセンサーとは私達の様な特殊任務に就く者達に与えられる免許の様な物です。それを持っていれば、どの部隊でも出力リミッターをかけられる事はありません。そして部隊の中でも独立行動権を得る事ができます。しかし強力な権限を持つ代わりに、誓約も非常に多いのです」

「まず第一に本来、情報は秘匿。誰がライセンサーなのかを他言してはならない。ま、今回は条件付きでこの部分は公開して良い了解を取っているから安心して良い。それでも六課でこの情報を公開できるのは六課後見人達と部隊長であるはやて。隊長のなのは、フェイト。ヴォルケンリッターとリイン。フェイトの補佐シャーリーとロングアーチのまとめ役グリフィス。そしてフォワード。つまりティアナ達だけだ。それ以上に知られた場合、全員に厳しい罰則が与えられる。ちなみに俺らは一発でライセンス剥奪。状況によっては最悪ブタ箱行きだな」

 

 多いように聞こえるけど、ここまで来るのにかなり苦労したんだぜ? とレンが笑う。

 一方で聞いているティアナ達はいきなりかけられた重圧に竦み上がっていた。うっかり口を滑らせ様ものなら六課全体のみならず、自分達にも。そして何よりレン達に絶大な被害を与える。レンは安心しろと言っているが全く安心できない。

 

「次に……」

「あ~! もう良い! もうそれだけでお腹いっぱい!」

 

 2番目を語ろうとした所でティアナがストップをかけた。本当にもう最初だけで十分だ。それだけでも重圧でおかしくなりそうなのに、これ以上余計な情報は増やしたくないという本音である。

 だが、面白いおもちゃを見つけたような笑いを浮かべ、レンは尚も語ろうとするのでシュテルから強烈な肘鉄を貰う。その瞬間だった。

 部屋中に響き渡る緊急警報。空気が一瞬で張り詰め、全員の肌を刺す。

 それは六課の目的であるロストロギア、レリックの発見を告げる報せだった。

 

 レリック発見の一報。それは聖王教会に足を運んでいたはやてとマリアの所にも届けられていた。

 2人と共にその報告を受ける金髪の女性。騎士カリム・グラシア。時空管理局では少将に当たる六課後見人の1人だ。

 そんな3人の前に展開された大型の空間モニター。映る映像は山岳地帯を疾走するリニアレール。だがそこにわらわらとへばりつくガジェットボールの群れ。

 

『マリア、回線繋がりました』

「ありがとうアプロディア。はやてさん! 六課に連絡がついたわ!」

「みんな、聞こえるか!?」

 

 立ちあがり開口一番、はやては声を張り上げた。丁度良く一カ所に集まっている。集める手間が省けたのは僥倖だ。隣にグリフィスの映るパネルも開いているので、状況は伝わっているだろう。

 

「グリフィス君から状況の説明があったと思うけど、もう一度簡単に確認するよ。教会騎士団が追っていたレリックらしきものが見つかった。場所はエーリム山岳丘陵地区。見ての通り対象はリニアレールで移動中や。ご丁寧にガジェットボールをわんさか連れてな」

『ってことは、十中八九リニアレールの制御は奪われていると思って良いな』

 

 別の空間モニターが映る。そこには地上本部に居た筈のマークが映っていた。彼だけでは無い。別のモニターにはフェイトとレヴィも映っている。

 これで六課の主力がほぼ揃った事になる。仲間の迅速な対応にはやてはニヤリと笑みが浮かんだ。

 

「マークさんの言う通り、現在リニアレールは制御を奪われ暴走超特急や。今のところ、ガジェットボールしか確認されてへんけど、新型が出てくる可能性もある。いきなりハードな出動やけど、なのはちゃん、フェイトちゃん。行けるか?」

『私はいつでも』

『私も』

「……マリア・オーエンス准空尉。いや、地上警備特別遊撃隊Spirits隊長マリア・オーエンス殿。機動六課部隊長八神はやてより、正式にSpiritsに協力を要請致します」

『はぁっ!?』

 

 空間パネルから一斉に声が上がった。勿論レン達以外の全員である。

 

『ちょ、ちょっとはやてちゃん! マリアさんがSpiritsの隊長って……マークさんじゃなかったの!?』

『おいおいなのは。何時俺が隊長だって言ったよ。前にも言ったよな? 実質まとめてるのはマリアだってさ。忘れたか?』

『い、いやいや待って待って。え? でもマリアさんってはやてちゃんの補佐だし、階級だってマークさんの方が上だよね!?』

「落ち着きなさい! なのはさん。その説明は後で行います。とにかく今は現場へ急いで下さい。はやてさん。Spirits隊長として、その申請を承認します。しかし、Spiritsは今回六課のサポート。フォワードや隊長2人でも対処できなくなった場合のみ、現場での戦闘に介入します。宜しいですか?」

 

 盛大に混乱するなのは達を一喝し、立ちあがったマリアは凛とした声で介入条件を告げる。

 

「了解。それで十分や。……みんな聞こえたな? 言いたい事、聞きたい事はたくさんあると思う。でも今は目の前の事に集中! ええな?」

『はいっ!』

「良いお返事や。ほんなら……機動六課フォワード部隊、出動!」

「続けてSpirits、出動!」

『はいっ!!』

 

 駆け足でなのはを先頭にフォワード陣が部屋を出て行く。ただ、マークのみがマリアと通信を繋いだままだ。大きく息を吐いたマリアに彼はねぎらいの言葉をかけるも、彼女は少し口を尖らせる。

 

「隊長だって言っても現場で直接指示が出せる訳でもないんだから、ねぎらいの言葉なんていらないわよ」

『だがそれでもSpiritsのリーダーはお前だ。これ以上の適任は居ないだろ?』

「おだてたって何も出ないわよ。それより、現場は任せたわよ。新型の情報もあるし、何か嫌な予感がするの。くれぐれも注意して。あと、介入のタイミングは任せるわ」

『了解だ』

 

 そしてマークの通信も切れた。そこで漸くマリアは一息ついて座りこむ。出動の号令をかけるだけではあったが、その顔には疲労が色濃く浮かんでいた。

 

『見事な指揮でしたよマリア』

「そうやな。アプロディアの言う通りや。誰もいきなりマリアさんがSpiritsの隊長や言われたらああなるて。それを一喝して引き締めたのはお見事や。でもな、まだお疲れには早いで。早い所、六課に戻らんと。私達の戦いはそこなんやからな」

「うん。分かってるわ。……ごめんね。もっと大々的に介入してなのはさん達のサポートに回れれば良いんだろうけど……」

「そんな事あらへんよ。Spiritsが後ろにいるだけで百人力や。それに最初からSpiritsに頼ってたんじゃ、新人達は何時までも成長せん。これは新人達が乗り越えなあかん最初の試練や」

 

 ふっと笑い合う2人。はやての手を取り立ちあがるマリア。はやての言う通り、彼女達の戦いの場は六課だ。例え現場でなくても、彼女達には彼女達の戦いがある。

 だからこそ、今は一刻でも早く六課に戻らねばならない。

 

「……はやて。マリアさん。宜しくお願いしますね」

「分かってる。心配せんといてやカリム。……お茶、美味しかったよ。ごちそうさまや」

「是非またご一緒したいものです。今度はゆっくりと。私もクッキー焼きますから」

 

 今までずっと険しい顔で一連の流れを見ていたカリムの顔に、漸く彼女らしい柔らかな微笑みが生まれる。はやてとマリアも同じく微笑む。それはこのミッションが必ず上手くいくと3人が信じているから。

 次も笑顔で会えるようにとの3人だけの約束。

 だからカリムはいつも通り。普段と何ら変わらぬ様子で2人を送り出すのだ。

 

「ええ。一番良いお茶を用意して待っていますわ。……では、行ってらっしゃい」

 

 肩越しにその声を聞き、はやてとマリアは部屋を出て行く。

 いざ、自分達の戦場へ。

 その足はいつしか、ゆっくりとした物から、駆け足に変わっていった。

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