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初出動が終了して4日が過ぎました。
色々と問題点は山積みですが、結果としてレリックは無事に確保。あれだけイレギュラーがあったにも関わらず出撃メンバーに大きな怪我も無し。成果としては上々との判断が下されたみたいです。
機動六課の内部でもそれは同じ。初出動で結果を示した前線メンバーに、スタッフメンバーは次々に称賛の声をかけてくれます。
でもみんなは素直にそれを受け入れる事ができずにいます。
上層部もスタッフメンバーも悪気があるのではないと思います。みんな本心だと思う。だから無碍にもできません。
実際に現場に出ていたみんな。それに状況を知るロングアーチのみんなからすれば、今回レリックが無事に確保できたのも、前線メンバーが無事に帰ってこれたのも運が良かったという結果論だと思っているみたい。
それに心配なのはディアーチェ達。かく言う私もショックなんですけどね。なんでこんな事になっちゃったのかなぁ……。これから先どうなっちゃうんでしょう。はぁ……。気が重いです
~ ユーリ・エーベルヴァインの日記より一部抜粋~
「うおりゃああ!」
「ひいいいいッ!」
六課訓練場に響く気合いの入った声と、脅える悲鳴。
訓練内容が個別に切り替わった事で、フォワード達にはそれぞれ指導員が付いた。先に聞こえた悲鳴はスバルが上げたものだ。彼女の防御力アップの為、ヴィータがグラーフアイゼンで叩く。それをスバルがプロテクションで受けるという文字通り、叩いて鍛え上げる訓練を行っているが故にである。
「オラオラどしたーっ!! そんなへっぴり腰じゃあ何時まで経ってもあたしのアイゼンを止める事はできねーぞ!!」
「は、はいっ!!」
「良いかスバル。よーく聞け。初出動の記録を見させてもらったけどな、お前まっ先に攻撃くらって吹っ飛んでたじゃねーか。いーか? あたし達フロントアタッカーはそれじゃ駄目なんだよ。チームの最前線であたし達がどれだけ踏ん張れるかで、状況は全然違う物になる。この意味分かるよな?」
「はい! 前線の生存率が高まれば、その分後衛のサポートに頼る事も少なくなり攻撃時間も長く取る事ができますっ!」
「そうだっ!! その為には3種類の防御魔法を使いこなす事! そしてポンポン吹っ飛ばされないように下半身の踏ん張りとマッハキャリバーの使い方を体に叩き込め! おら! 次行くぞっ!」
「はいっ!!」
実はヴィータが思っていた以上にスバルの防御は硬い。だからこそヴィータの教導にも熱が入る。
こいつは叩けば伸びる。そう確信し、ヴィータはグラーフアイゼンを今日も振りかぶる。
その光景をレンは呆気を取られながら見ていた。叩いて鍛えるのは分かるが、熱が入り過ぎてスバルを壊さないかと心の中ではらはらしながら。
視線を違う所に向ければティアナがなのはとシュテルから受ける訓練が見える。シュテルの魔法弾を撃ち落とすティアナの姿は必死そのもの。なのはの指示通りできるだけその場から動かず、正確に撃ち落とす為には広い視野が必要だ。そして状況にマッチングした弾丸をセレクトし、確実に当てる判断力と命中精度が求められる。誰よりも早く中・長距離を制する。それがセンタガードの役割。それをティアナもまたスバル同様体に叩き込まれていた。
とは言え魔法弾を撃ち出すシュテルに容赦は無く、時折エグい位置に魔法弾を移動させてはティアナの肝を冷やしている。彼女らしい。思わずレンは苦笑してしまった。
そしてレンが担当するはずだったエリオはキャロと共にフェイトから回避の基礎抗議を受けている。まずはフェイトが手本とばかりにゆっくりとガジェットボールの攻撃を避ける。ティアナとは逆に一箇所に留まらず、常に移動し、徐々にそのスピードは増す。そして始まる一斉照射。それを土煙を上げ、高速で回避したフェイトが2人の背後に回っていた。恐らく2人にはフェイトの姿は捉えられなかっただろう。
証拠に背後から話しかけられ、ビクリと体を震わせている。
どんな位置からも攻撃と援護を行う事を求められるガードウィングのエリオ。そして素早く味方の援護に向かう事が必要なフルバックのキャロ。確かに安全な回避と、素早い移動は2人の生命線だろう。
そして何よりも全員から感じられるのは、訓練に対する意気込みだ。
余程初出動の事がショックだったのだろう。結果的には成功でも、彼女達にしてみれば悔しかったに違いない。元から真面目に訓練を受けていたが、意気込みはまるで違う。
(とは言えスバルが悲鳴上げるのは仕方ないよな。アイゼンを正面から受けるのは俺だって嫌だし)
<レン~。現実逃避はそろそろお終いにしておいた方が良いよ>
「逃避してたつもりは無いんだ。ちょっと今この現実から目を逸らしたかっただけなんだ」
<人、それを現実逃避と言う。なんちゃって>
レヴィと一緒に見ていたアニメの影響だろうか。実に良い声で真似をするキリエに、レンは肩を竦めながら振り返る。
そこにはレヴァンティンを構えるシグナムと、へたり込んだディアーチェとユーリの姿があった。逆にレヴィはボロボロになりながらも、けらけら笑っている。
そんな彼女達にシグナムは問題点を伝えていった。最後に必ず「精進しろ」を添えて。
ディアーチェは何か文句を言いたそうに唸っているが、正論を並べられてはぐぅの音も出ない。ユーリは反論する気も起きないくらいに疲れているのか、どこか上の空だ。
「どうしたユーリ。昔のお前はもっと強かっただろうに」
「し、仕方ないのですよシグナム。今の私はディアーチェのユニゾンデバイスなんですから。あの時とは魔力量が違うんです~」
「む? そうだったか。それは実に惜しいな」
涙目で必死に訴えるユーリにシグナムは心底残念そうだ。だがそれも仕方ないだろう。かつてのユーリはシグナム達が束になって漸く活動を停止させる事ができた程の力の持ち主だった。しかしユーリの言う通り、今更ながら今の彼女はディアーチェのユニゾンデバイス。エルトリアからミッドへの転移の際、いかなる理由かユーリの体が再構成されてしまったのだ。それに伴い、ユーリの魔力量はかつての半分にも満たない程に減少してしまう。元々穏やかな性格のユーリだからそれでも良いと思っていたようだが。
「あはは~♪ さっすがブシドーだね。ブシドーとの模擬戦ボクだーい好き!」
「そうだな。お前と相手をするのはこちらとしても心が躍る。純粋に近接戦をできる魔導士は限られているしな」
そしてレヴィの笑い声。シグナムも本当に楽しそうだ。
そんな様子にレンはやれやれと溜息をつく。
そもそも何故シグナムがディアーチェ達と模擬戦をしているのか。それはエリオとキャロにはフェイトが付いている為、彼女の代わりに2人を教導するはずだったレン達が手持無沙汰になってしまったからだ。
かと言って訓練をしない訳にもいかない。では久々に軽く実戦形式をやろうかと話をしていた矢先。どこから聞きつけたのかシグナムが彼らの相手を買って出たのである。
結果はご覧の有様。ディアーチェとユーリは自慢の防御を突破されて圧倒された。レヴィは純粋に楽しんでいた様だが、そこはシグナムが経験で押し切ったようだ。
そして残るはレンとキリエなのだが。
「あ~、シグナム姐さん。ちょいと休憩挟んだ方が良いんじゃないですか?」
『そうそう。連戦で疲れてるでしょ?』
「心配いらん。むしろ高揚していてな。絶好調なくらいだ」
「『ですよねー』」
レン自身、シグナムとの模擬戦が嫌いなのではない。繰り返す。決してシグナムとの模擬戦が嫌いなのではない。剣を使う身として。実力が上であるシグナムからは学ぶ事は非常に多いのだ。
しかし如何せん疲れる。全身全霊でかかってくるシグナムを相手にするには、それ相応の覚悟を以って挑まねばならない。それが非常に疲れる。精神的疲労感が半端ない。まるで任務に出てきた時の様にどっと疲れが押し寄せる。それこそ、その後何もしたくなくなる程に。
(本当は訓練の後に調べ物したかったんだけどなー)
そんな事を胸の内でぼやきながら、チラリとシグナムを見る。
実に良い顔をしていた。清々しいまでに良い顔で素振りしている。
逃げ場は無さそうだ。
なれば腹を括るしかない。調べ物はキャンセルしよう。
彼の意図を読み取ったキリエの溜息が聞こえるが、同時に「しょーがないよね」とも聞こえる。
どうやら彼女も腹を括ってくれたようだ。
付き合ってくれるキリエに感謝しつつレンは瞳を閉じる。気持ちを落ちつけ、全てをこの模擬戦に向けて集中力を高める。それは言うなればスイッチの様な物だ。一切の感情を押し殺し、この一戦に全神経の全てを集中させる。頭の中がクリアになり、感覚が鋭くなる。
完全に思考が戦闘モードに切り替わった。
「漸くやる気になったか。だがそれで良い。……かつての仲間が敵として出てきた事に迷いを感じているのは理解する。だがなアマミヤ。今はこの一戦に集中してみろ。その先に何か見えるかもしれん」
「ご忠告痛み要ります」
頭を切り替えたレンはなんの抑揚も無い声で返す。そして目を細めると、フェンサーモードのヴァリアントザッパーを逆手に持ち替え前傾姿勢を取った。
左手は前へ。右手は後ろへ。いつでも前へ飛び出せる様にレンの体は深く沈み、重心を前へ持ってくる。
シグナムもレヴァンティンを腰溜めの位置に置き、同じく前傾姿勢。
無言のまま、お互いの出方を窺う。太陽が雲に隠れ、影が2人を覆う。
そしてその太陽が雲から顔を出した瞬間、2人は地面を蹴った。
小細工なしの正面激突。レンは右手のヴァリアントザッパーを振り降ろし、シグナムは腰溜めのレヴァンティンを。体の捻り。腰から胸へ。胸から肩へ。肩から肘へ。肘から刃へ。
捻りは体を伝わり、力となる。
ガキィィンと金属音が激しく鳴り響く。弾かれ後退するも、2人は止まらない。踏ん張る足をバネにして地面を蹴りあげる。
再び響く金属音。今度は何度も何度も響き渡る。
レンは迷いを吐きだすかの様に。
シグナムはその迷いを受け止めるかの様に。
2人の剣舞は果てる事無く続く。
機動六課が属する地上部隊は実に多くの部隊を保有している。実働部隊は当然として、後方支援部隊から災害救助とその内容は実に多彩。そしてそれを統括するミッドチルダ地上本部。
ミッドの中心部。ミッドチルダの象徴とも言うべき超高層タワーと共にそれはあった。
「ふん。初出動にしてはまぁまぁか。レリックが確保できた点だけは評価してやろう」
「相変わらず厳しい事で」
「当たり前だ。だれが出資していると思っている? そうでなくとも地上に余裕は無いのだ。あの部隊に金を回すなら他の部隊に分配したい所だ。厳しくなって当然だろう」
「ご意見はごもっとも。ですが、貴方だって分かっているはずだ。地上本部に関わらず管理局全体にある問題に彼女達が立ち向かっていることをね」
「……無論理解している。大きな組織故に小回りが利かず、事件に対して後手に回るというのだろう? それについては否定せん。上層部はどいつもこいつも己が利権を優先し、責任のなすり合い。部隊の出動1つ取ってもやれ手続きだなんだと言ってさっぱりだ。……それを打破したくてお前の誘いに乗ったのだよ」
夕日が差しこむ大きな部屋。そこでマークと対峙する壮年の男性が大きな溜息をついた。
2人の他には誰も居ない。故に彼の溜息は普通よりも部屋に響き渡る。
「そうですね。そのおかげでホント、無茶ばかりやらされましたよ。でもこれで指揮系統からある程度独立した部隊の有用性が証明されたんだから、骨を折った甲斐があるってもんです」
「違いない」
マークは苦笑しながらコーヒーを一口含む。
男性も恰幅の良い体を揺らし、くくっと笑いながら同じ様にコーヒーに口を付ける。
「第一段階としてお前達が独立行動権の有用性を示す。第二段階はそれを大規模な部隊で試験運用する。既に有用性は示されているからな。あの馬鹿な奴らも下手に口出しできなかったさ。見せたかったぞ。あ奴らがぐうの音も出ずに顔をしかめる様子をな」
「それは是非拝見したかったですね」
「しかしだな」
笑みを浮かべるマーク。だが男性は頭を抱える仕草をする。
「よりにもよって部隊長にあの八神はやてを推してくるとはな。闇の書事件の中心人物に部隊の指揮を任せる事になるとは、思いもよらんかったぞ」
「まだ言ってるんですか? まぁ確かに資料を拝見しましたよ。管理局も随分と手を焼いた事件だったそうで。でも彼女がいなければ事件は終わらなかった。彼女は中心人物であり、功労者だと前も言ったでしょう。禍根はあるにせよ。清濁両方飲み込めるのもまた人です。試されているんですよ。その中心人物に部隊を任せる貴方の懐の深さが」
「飲み込んだ物が毒薬にならなければ良いがな」
「またそう言う。悪い癖ですよ? 機動六課が成果を収めれば、それは即ち貴方の功績だ。過去の罪に囚われず優秀な指揮官を選抜したという貴方の眼力のね。そして地上本部には今後六課の様な部隊を正式に作る事ができる。これも前に言った筈ですが?」
「お前は楽観的なのかどうなのか未だに掴めん。失敗すれば逆に糾弾を受ける事になる、とも言った筈だ」
「結果として最後に成功だと言えれば良いんですよ」
「まるで今回、六課の出撃結果の様にな。……まぁ良い。精々テストケースとして利用させてもらうさ」
「ええ。どうぞご自由に」
肩を竦め、おどけて見せたマーク。皮肉のつもりが全く動じる素振りにないマークに男性は一瞬厳しい視線を向けた。しかしそれもすぐに和らぎ、すっかり温くなったコーヒーに再び手を伸ばす。そしてそれ以上この話題に触れる事は無かった。
代わりに話す事と言えば、六課の様子や地上本部の動きと言った情報交換。そして雑談。先ほどの重苦しい雰囲気から一転。2人は笑い声を上げながら談笑を楽しんでいた。
気付けばすっかり外は暗くなり、部屋に明かりが灯る。2人がそれに気付いたのはマークに六課から緊急招集の連絡が来た時だ。
「……ああ、了解だ。すぐにそっちに戻る」
「事件か?」
「いいえ。うちの敏腕執務管がガジェットから気になる痕跡を発見したとの事で。隊長陣を集めて緊急会議を行いたいから帰って来てくれとの連絡ですよ」
「成程な。それならさっさと行け。緊急だと言うのに遅れて行っては顔が立たんだろう」
「では失礼して。コーヒーご馳走様でした」
立ちあがり一礼する。そして部屋を出ようとした時だ。男性がマークを呼びとめる。早く行けと言われた矢先に呼び止められ、マークは首を傾げながら振り返った。そこには可愛らしいリボンが巻かれた箱を突き出されている。箱にはミッドでも有名な菓子店の名前が描かれていた。恐らくはケーキだろう。
思わず呆気を取られる。対して男性は少し照れくさそうに鼻の頭を掻いていた。
「土産だ。こんな時間から会議だと頭が回らんだろう。甘い物でも食べてキリキリ頭を回せ」
「りょ、了解です……。……ふっ、ククク……。また随分と可愛らしい箱だことで……」
「し、仕方あるまい! 儂が買いに行く訳にもいかんだろう。頼んだらこんな外装だったのだ! ええい! つべこべ言わずさっさと持って行け!」
「はいはい。では遠慮なく受け取らせて頂きます、レジアス中将」
「……うむ」
よほど照れくさかったのか、むっつりとした顔で座りこむ地上本部首都防衛代表レジアス・ゲイズ中将。
マークは笑いを必死に抑えつつ、受け取ったケーキを大事に抱えながら退出するのだった。
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「ジェイル・スカリエッティ?」
「そ。次元世界広域に指名手配されてる次元犯罪者。なんでも生命操作や生体改造、精密機器に通じた科学者で、フェイトが長年追ってる奴なんだと」
「それで? なんでそんな奴が話題に上がるんスか?」
「察しが悪いぞ。この前のガジェットの検分をやった時にな、そいつの名前が刻印されたプレートが見つかったらしいんだ。これがどういう意味か分かるだろ?」
「あー、そういう事ッスか。ガジェットの作者がそのスカリエッティって奴で、キール達はそいつと何らかの関係があると」
「ついでに言えば、ガジェットが何でモビルスーツの形になったのもな」
向かい合うレンとマーク。マークは椅子に座り、レンはせわしなく作業を続けている。
ここは六課の食堂。ぐつぐつと煮えるデミグラスソースを一度すくい、小皿によそうとレンはそれを一舐め。ゆっくりと味を確かめる。
「うん。美味い」
「いや、美味いじゃねーよ! 俺の話聞いてたか? なに暢気に料理しちゃってるわけ? 料理できる男をそんなにアピールしたいのかお前は!」
「意味分かんねーッスよ。それにちゃんと話は聞いてましたって。でもマークさん。キール達がそいつと手を組んでるって保障はないんでしょ? まぁ限りなく妖しい線ではありますけど、何か理由があるのかもしれませんし。っていうか、模倣犯の可能性だってあるんでしょ。慌てるのはそこがはっきりしてからでも良いでしょうに。ちなみに俺が料理を覚えたのは主に貴方の責任です。俺がどんだけ料理当番したと思ってるんですか」
思わずマークが唸った。反論できない。正論故に。
ミッドに来てから共同生活をしていた時に起きた問題点。それはマークとレンが料理を全くできなかったという事だ。幸い料理が得意なキリエが一緒におり、家事スキルの高いメンバーも近くに居た事もあり問題は無かった。だが当時レンはこれといった趣味というものが無く、興味本位から見様見真似で作ってみたのがきっかけ。それが思いのほか上手くいき、気を良くしたレンが台所に立つ機会が増えた。そしてマークはこれ幸いとばかりに台所をレン達に任せてしまったのである。
結局、今では料理がレンの大事な趣味の1つにまでなっている。
そう考えると状況が悪いのはやはり自分だ。
マークは惚けるように視線をレンが煮込んでいたデミグラスソースに向けた。丁度レンはそれをすくい、保存器具へ流し込んでいる。
「ん? 食うんじゃないのか?」
「食いますよ。でも今じゃないです。聞いてないですか? はやて達が地球に出張任務に行くって話」
ああ、そう言えばシャマルがそんな話をしていたっけ。地球でロストロギアが見つかったとかなんとか。
マークは恋人が楽しそうに話をしていたのを思い出し手を叩いた。自分は待機任務の為、すっかり頭から抜け落ちていたのだ。しかし、それがこのデミグラスソースとどう繋がるのか分からない。
「久しぶりに俺の煮込みハンバーグが食べたいって、はやてに頼まれたんですよ。それも現地でスバル達にも食べさせてあげたいんですって。それなら何時でも作るって言ったのに、聞かないんスよ。どうも緑の多い所らしく、その中で食べるから美味いんだそーです」
「至極面倒そうに言ってるが、口元ニヤついてんぞ。後、それってお前に付いてこいって言ってるのと同じじゃないか?」
「それが今日は俺も外せない用事があるんですよ。何日も前から休暇申請出してたんですし、今更キャンセルしませんて。それに地球で見つかったロストロギアって言っても危険度は低いらしいですし、俺らが行く必要ないでしょ」
保存器具にデミグラスソースを流し終え、レンは漸く一息ついた。
まだソースは熱を持っている。こうして少し時間をおいて、熱を冷まさなければいけない。その間に他の器具を洗い始めたレンにマークは違いないと肩を竦める。
しかし出張先がよりにもよって『地球』だ。更に言えば、行き先は地球の『日本』。レンの出身国と同じ名前の国。
勿論それは彼らが守った地球とは違うものだ。そもそも自分達の地球はジェネレーションシステムが生み出した地球だ。全くの別物だと分かっていても、2人の胸になんとも言えないもやもやが残る。未だ帰る手段の見つからぬ故郷が懐かしい。いつしか会話は途切れてしまっていた。
「……ハンバーグはどうすんだ?」
「ハンバーグ自体は現地で作ってくれれば良いから、俺はこのソースだけを持たせるって事で手を打ったんですよ。後はこれで煮込んでくれれば良いし。本当はオーブンでローフ形にできれば良いんですけどね」
「お前が作る時って必ずローフ形だよな。何か理由あんのか?」
「……母さんが作る時、うちでは必ずローフ形だったんです。いわゆるお袋の味の再現って奴ですよ」
しまったと思った。話題を変えるつもりで料理に話題を持っていったのに、まさかの悪手だ。
それ以上何と言って良いか分からず、マークは頭を掻く。レンも無言で器具を洗っている。
カチャカチャと器具を洗う音だけが響く。また会話が途切れてしまった。
「男2人が何をそんなに暗くなっているのですか?」
「ん~♪ いいにお~い♪」
突然声がかけられた。2人が顔を上げると私服姿シュテルとキリエが呆れた顔でこちらを見ている。
察しがついた。というか正直助かった。マークはニヤリと笑みを浮かべ、レンを見る。一方のレンは露骨に目を逸らし、絶対にマークに視線を向けようとしない。多少強引だが、これで重苦しい空気から解放されると踏んだマークはここで一気に畳みかける。
「成程成程。こいつは確かに絶対外せない用事だわ」
「あ! 勘違いしないで下さいよ!? えっと、無限書庫に行くのに付き合ってもらうんですから! 本当ですよ!?」
「今更お前が何言ったって遅ぇよ。ま、何かあったら呼びだしてやる。たまにはこうやって羽を伸ばすのも悪くないさ。あっはっはっ! がんばれよ、若者よ!」
「だからそんなんじゃないんですって! 2人ともちょっと待ってって。今着替えてくるから!」
ギャーギャー言いながら部屋を後にしていく2人。入って来た時とはまるで違う態度にシュテルとキリエは顔を見合わせては首を傾げるのだった。
そしてレン、シュテル、キリエの3人は出張メンバーを見送った後、東部12区パークロードへ足を運ぶ。
いつぞやも訪れた事のあるカフェで、シュテルとキリエは相変わらず特大パフェを食べては幸せそうな顔を浮かべていた。対してレンはどっと疲れたと言わんばかりの顔だ。
結局出張メンバーからもなんやかんやと言われたのだ。口々にはやし立てるメンバーを早々に送り出して漸くここまで来れた。正直、勘弁してほしい。まだ出かけた直後だというのにどっと疲れた。 とりあえず一息つく為に注文したコーヒーを飲む。口いっぱいに香ばしい苦みが広がった。
「あ~、コーヒーが美味ぇ」
「オヤジくさいですねぇ。……さっきの事を気にしているのなら、気にするなと言う他ありません。良いじゃないですか。息抜きは必要ですよ」
「そうそう。レンってば最近難しい顔してばっかりじゃない。たまにはこういうのも良いんじゃない?」
「色々考えてたしねぇ……」
思い浮かぶのはやはりキール達の事だ。シグナムとの模擬戦で幾分か楽になったものの、考えてしまうものは仕方ない。加えてさっきのマークの件も頭をよぎる。ああは言ったが確たる証拠が無い以上、彼らが次元犯罪者と繋がっている線を消す事はできないのだ。だとすれば、少なからず自分はまたキール達と……。
「……ひぎゃ!?」
急に情けない声が響いた。声を上げたのレン。いつの間にか横にいたシュテルが彼の両頬を引っ張っているのだ。じーっとレンの目を至近距離から見つめられ、彼は目線だけを必死に逸らす。
頬がじんじんする。痛みがレンを現実に引き戻す。だが戻ってみても目の前にはシュテルの顔。
蒼い瞳に頬を引っ張られた情けないレンの顔が映っている。
「また難しい顔をしています。少しは笑ったらどうですか? 周りを見て下さい。そんな顔をしているのはレンだけですよ」
「そうかな?」
「そうです。それにですね……。レンがそんな顔をしていては折角休暇を合わせた意味が無くなってしまうではないですか。レンが笑ってくれないと、私も……笑えません」
最後は消え入りそうな声だった。流石に自分でも恥ずかしくなったのかシュテルは頬が紅潮している。
多分同じくらい紅潮しているであろう自覚がレンにもある。普段が普段なだけに、そんな事を言われたら色々と堪らない。心臓が高鳴る。問答無用で抱きしめたい。力一杯抱きしめたい。
しかし彼は自制してしまった。ここは天下の往来だ。本能よりも理性を優先する。人目の多い所で抱き締めるなど、恥ずかしくてできやしない。周りに迷惑だ。
なんてもっともらしい言い訳をしているが、要はヘタレなのだ。単純に一線を越えるのが怖いだけの臆病者。
抱き締めても受け入れてくれるかもしれない。でも拒否されるかもしれない。
彼女の気持ちに自信が持てない。
だからもっともらしい言い訳をして、一線を越えない。越えようとしない。なのに、独占欲だけは人一倍ある。なんとも情けない。そしてずるい。
そんな自分に自己嫌悪とウザさとめんどくささを覚えつつ、彼は薄っぺらな笑みを浮かべる。
それでも漸く見せたレンの笑顔にシュテルも笑って見せた。引っ張ったレンの頬を優しく撫でてから自分の席に戻って行く。
ただ一言。振り向いた時に残念そうな顔で小さく、誰にも聞こえないように「意気地無し」と呟いて。
しかしそれも席に戻るまでの間。椅子に座ればいつもの調子に戻っていた。
「さて、師匠との約束までまだ時間はあります。レン、キリエと私の買い物に付き合ってもらいますよ?」
「あいよ。でもお手柔らかに頼むよ。流石に荷物持ちにも限界があるんで」
「さぁ? それはどうでしょうね。貴方もそう思うでしょう? キリエ……?」
歯切れの悪い問いかけだった。それもその筈。どこか遠くを見ているキリエ。2人の会話をまるで聞いていないかの如く、彼女は明後日の方向へ視線を向けている。その表情は険しい。まるで先ほどのレンが今度は彼女に移ったかのようだ。不審に思った2人が呼びかける事数回。やっと彼女が気付く。
一体何事かと問いかける2人に、キリエは笑ってなんでもないと誤魔化すばかり。
あからさまに惚けるキリエに、今度はレンとシュテルが顔を見合わせて首を傾げるのだった。
「それでそんな両手に荷物を持っているのかい?」
「ほんと容赦ねー。限界だっつってんのにまだ買おうとしやがる」
「夏物が出始めてるからね。女の子としては買いたくなるものじゃないかな」
「そういうもんかね?」
「多分。自信は無いけれど」
あの後キリエはすぐに普段の彼女に戻った。そして始まる買い物の嵐。増える買い物袋。宣言通り塞がっていくレンの両手。気付けば約束の時間まで後僅か。結局レンは大量の袋を抱えたまま、ここへと足を運ぶ羽目になってしまった。
そんなレンの様子に苦笑しているのはユーノ・スクライア。ここ、無限書庫の司書長である。
彼に会う事こそが今日のレンの最大の目的だ。
「それで? 僕に調べて欲しい事っていうのは何だい?」
「フォーミュラエルトリアについて」
無重力空間で向かい合う男2人。そして告げられたユーノは首を傾げる。それはレンが使う魔法運用技術。ミッド式でもベルカ式でもない魔法形態の1つだ。それを調べて欲しいとはどういう事だろう。
ミッドチルダに来てからの4年間。レン達は時空管理局に入隊後、そのデータベースを使ってすぐにジェネレーションシステムのある世界を見つけられるだろうと思っていた。しかし、無常にも検索結果に引っ掛かる世界は無い。検索の方法を変えてみても結果はゼロ。これにはレン達も肩を落とした。
だがよくよく考えてみれば当たり前なのだ。ジェネレーションシステム程の大規模なシステムを有する世界を管理局が見逃す筈が無い。未開世界の調査結果にも目を通し、何か繋がる物がないかと思ったがこれも空振り。もしかして高度なセキュリティがかけられているかと思い、それなりのコネを使って調べてみても出てこない。それでも諦めず、任務の合間を縫ってコツコツ調べ、気付けばもう4年も経ってしまっていた。
「うん。君達の努力は認めるよ。実際僕も無限書庫を使って調べていたんだしね。それでも君達の世界。その根幹を成す世界は見つけられなかった。そうだったよね?」
「だから、今度は調べ方を変えてみようと思うんだ」
「それでフォーミュラエルトリアの事を?」
「正確には闇の書が滅ぼした世界と、フォーミュラエルトリアという運用技術の関連……かな」
それは一種閃きの様な物だった。
きっかけは状況の再整理を行っていた時だ。そもそも何故自分達の世界は作られた? 闇の書が暴走し、その世界を滅ぼしたからじゃないのか? そしてジェネレーションシステムでアプロディアから聞いた言葉を思い出す。
フォーミュラエルトリアは失われた世界の術式だと。
なんだこれは。ヒントはここにあるじゃないか。それもすぐ自分の目の前に。
何故こんな事に今まで気付かなかったのか。灯台下暗しとはよく言ったものだ。と言うか、そんな事に気付かなかった自分に腹が立つ。だが、それ以上にやっと見つけたヒントにレンの胸は高鳴りつつも、頭を高速回転させる。
既に失われた世界。失われた魔法技術。恐らく管理局のデータベースでは足りない。もっと詳細な記録でなければ。そう考えたレンは急遽ユーノに連絡を取った。とは言え、その時は興奮していたので結局こうして会うという所までしか話をする事ができなかったのだが……。
そして今の状況がある。レンの求める情報が無限書庫にあるという希望と共に。
ユーノもまた苦い顔をした。レンの言う通り何故こんな事に気付かなかったのか。確かに筋は通っている。闇の書に滅ぼされた世界にあった魔法運用技術。それがマッチングすれば、それはレン達の世界である可能性が高い。そして無限書庫にそれを求めるのは、ある意味必然だと。
「でも待って。それならなんでアプロディアは何も言わないんだい? そもそも彼女は一度ミッドとその世界を繋いだんでしょ? 彼女ならその世界の名前くらい知っていて当然じゃないの?」
「俺もそう思いましたよ。でも彼女の言う世界の検索をしても出てこなかった。ミッドと繋いだのだってジェネレーションシステムの演算能力があってこそ。今の状態では不可能だってね」
「まぁ現地で呼ばれている名前と、伝わっている名前が違うっていうのは稀にある話だけど……」
話が出来過ぎている。
見ればレンも頷いていた。ユーノと同じ疑問を彼も感じているらしい。だがこれで合点がいった。要はこの調査はレンの独断なのだ。最も真実に近い場所に居る筈のアプロディアには頼れない。ならば独自に動くしかないというレンの判断。それはきっと間違っていないだろう。
「何もレンの独断ってわけではないですよ師匠」
「私達もレンの意見には賛成だものねー」
見上げればふわふわとゆっくり下降してくるシュテルとキリエの姿がある。
「そもそもねー、今思うとフォーミュラエルトリアって名前も妖しいのよね。ジェネレーションシステムで構成された世界だもの。術式は同じでも名前を変える事はできるんじゃないかと思うのよ」
「つまり何かい? 君達は闇の書に滅ぼされた世界から、フォーミュラエルトリアと似た失伝魔法を探せって言うのかい?」
「有体に言えばそうなります。そもそも闇の書が1つの世界を滅ぼす事例はそんなに多くなかったと記憶していますが?」
しれっと答えるシュテルにユーノは頭を抱え、肩を落とす。
そもそも闇の書に滅ぼされた世界は無数あるが、シュテルの言う通り多い方では無い。その大半が古代ベルカに集中しており、所有者を飲み込むというケースがほとんどだからだ。
だが問題は世界1つまるごと消し去る程の大規模な発動だと言う事は、資料すら消し去っている可能性の方が高い。それらをピックアップし、そこからフォーミュラエルトリアと似た術式を探せなど、雲を掴むような話だ。
だがしかし。
だからこそ。
面白いと思ってしまった。
それは発掘を生業とするスクライア一族としての本能か。少ない資料と情報。それを手がかりに探しだすのは発掘作業に通じる物がある。だからこそ、やりがいがあり、面白い。
「良いよ。その話乗った。きっと君達の世界に繋がる資料を探し出してみせるよ」
顔を上げたユーノの目は、先ほどとは見違えるほど輝いていた。久しぶりに骨のある仕事だ。というか、彼自身も興味がある。失われた世界と失われた魔法。まだ見ぬ未知に彼の胸は高まりを押さえられない。
その姿を見てレン達は喜びの声を上げると同時に、3人でハイタッチを交わした。
夕焼けが眩しい。明日はきっと晴天に違いない。
そしてその下を歩く男女3人もまた、非常に晴れ晴れとした顔をしている。
初夏の風が優しく頬を撫で、キリエはうーんと大きく伸びをした。
「んー、良い風♪ いっぱい買い物もできたしー、ユーノ君も協力してくれるって言うしー、今日は良い休日だったなー。ね、レンもそう思うでしょ?」
「そうだねぇ。なんかこういうのホント久しぶりだわー」
クルリと振り返り満面の笑顔を向ける彼女に、レンも頷く。
確かに良い休日だったと思う。最初はどうなる事かと思ったが、蓋を開けてみれば杞憂だったようだ。
ここ最近の事を考えれば、心身共に充実していたと思う。
……この両手の荷物さえ無ければ。
「そういや、出張してったみんなうまくやれてんのかねぇ……」
「問題無いでしょう。むしろ羽を伸ばしているのではないですか? もしかすると文化の違いに戸惑っているかもしれませんが些末な事です。あちらも良い息抜きになっているでしょう」
「言えてるー。あ、後エリオが大変かもね。周り女の子ばっかりだし」
「それ、いつもと変わらないよな? でもま、あいつの事だ。何かしらおいしいハプニングに巻き込まれてるに違いない」
「否定できませんね。そしてそのまま流されるのがエリオクオリティ」
「……ほんと、おいしい奴め」
なんにせよ頑張れエリオ。俺も荷物持ちがんばってるぞ。
恐らくきっと。いや多分確実に何かしら巻き込まれているであろうエリオ少年にレンは心から同情すると共に、帰ってきたらその辺りをじっくり問いただしてやろうという決心を固める。
すると左手から荷物が取られた。見るとキリエがその荷物を持って、ふふんと鼻を鳴らしている。
「レン~? おいしいのはエリオだけじゃないでしょ? レンだって今十分においしい状況だって分かってる?」
「……さて。どういう事かな?」
「またすーぐそうやって惚けるんだから~」
そう言ってキリエは開いたレンの左腕に自分の腕をからませる。左に感じる柔らかい温もりに慌てるレンだが、彼女は離れようとしない。むしろそれが面白いかの様に彼の肩に頭を乗せてご満悦だ。結局苦笑しながらもレンはそれを許した。
後ろでシュテルが不穏な空気を出しているのを敢えて見ないようにして。
「……」
むすっとした顔でそれを眺めるシュテル。不意にキリエが彼女を向いた。睨みつけてやったが、キリエは片目を瞑り、後ろ手からちょいちょいとレンの右手を指さしている。
こっちが空いてるよと言わんばかりに。
「……レン。その荷物を私に下さい」
「え? いや、でもさ……」
「いいから下さい」
「んじゃあ、重いから気を付けて」
キリエの意図を察したのか、シュテルが強引に右手の荷物を受け取る。そしてそれを右手に持つと、残った左手を差し出す。
「……これで右手が空いたでしょう? だから、その……。手を、繋いでくれませんか?」
視線は合わせず、声も消えそうなくらいに小さい。
顔を真っ赤にしてぷいと横を向きながらも、差し出された手。もじもじと所在無さげにしている姿は、どこか小動物を連想させる。
「……分かった。手、繋いで帰ろうか」
「はいっ!」
差し出された左手が握り返された。照れくさそうに笑っているレンを見て、彼女は目を逸らす。
いつかは握れなかったその右手。今度はしっかりと握りしめている。手の平から伝わる温かさにシュテルの頬が赤く染まる。
やっと繋いだ手。後押しもあったが、それでもやっと自然に繋いだ愛しい手。
いつかはもっと自然に手を繋いで見せよう。今度は何時までも手を繋いでいられるように。
そう。いつかきっと……。
右にはシュテル。左にキリエ。少女2人に挟まれ、レンの心臓は早鐘の様に高鳴っている。
昼間は自分の不甲斐なさにほとほと呆れた。それでも2人はこうして一緒に居てくれる。
それが嬉しくもあり、同時に怖くもなる。
相変わらずそういう所がヘタレなんだよなと、自分に苦笑してしまった。
でもいつか。いつかきっと決める時が来る。いつかきっと……。
レンの左ではキリエがその様子を見てくすくす笑っていた。
シュテルの乙女さと、レンの迷いを彼女は理解している。
彼女はレンが好きだ。でも同じくらいシュテルも好きだ。
だがキリエはレンのデバイス。その管制人格だ。今はこうして実体化しているが、2人の様に本物の、生身の体ではない。
だがそれでも良いと思う。レンが自分を使ってくれる限り、自分はこうして大好きな人と一緒にいられる。シュテルが許してくれる限り、彼女の傍にもいられる。いつまでも一緒にいられると信じている。
でもきっといつか打ち明けよう。正直な自分の気持ちを。いつかきっと……。
(((いつか、きっと……)))
三者三様のいつか、きっと。
夕日の伸びた影は寄り添い、1つの大きな影になっていた。