1
「ディード! しっかりしてディード!」
銃声が響く中にティアナの嗚咽が混じっていた。彼女は血だらけになって倒れているディードを抱き起こしながら名前を何度も呼びかけているのである。
ティアナを狙った銃弾。それを庇ったディード。身を呈した彼女を無数の銃弾が貫き、その命は風前の灯と言っても言い。そして防衛の一角を崩されたチンクとスバルもじりじりと後退を余儀なくされている。
だが彼女は。ティアナは何度もディードの名前を呼び続けていた。
しかしディードはそんなティアナの頬をそっと撫でて、不思議だと言わんばかりに首を傾げる。
「……泣かずとも良いではないですか。ティアナ・ランスター……」
「でも!」
「私はアバター……。この世界での死は、現実の死ではないのですよ?」
「そんなの関係ない! そんなの関係ないじゃない!!」
確かにディードはスカリエッティの組んだアバタープログラム。この世界での死はミッドチルダにある本体の死に直結はしない。しかしティアナにとってはどうでも良い事だ。彼女が出会ったのは“この世界”のディードなのだ。そのディードが、こうして目の前で抱き上げている体から失せていく温もりこそがティアナにとっての現実なのだ。やっと向き合う決心をして、これから彼女の事を知ろうとしていた矢先だったのに。しかもそれが自分を庇っての結果。悔しくて、悔しくてティアナの目から大粒の涙がディードの頬に落ちる。
「……分かりません。本当に死ぬのではないのに、何故悲しむのですか?」
「だからそんなの関係ないのよ! 目の前で誰かが傷つけば、今にもいなくなりそうだったら悲しんで当然でしょ!? 理屈じゃなくて、心があんたに消えて欲しくないって言ってんのよ!!」
「心、ですか」
ふっとディードが笑った。
「そうですね……。欲を言えば、私も消えたくありません。ここでの生活は楽しかった。レン様のお世話をする事になって……、この基地に来て……。毎日が新鮮でした。できる事ならもう少し続けていたかったのですが……、駄目ですね。そろそろ時間です」
「そんなっ!! あんたは生きるの!」
「また会えますよ。今度はミッドで……。だから約束です。もしも私と戦う事になったら……、本気で私と……」
言葉は最後まで続かなかった。
彼女が何を言おうとしていたのか。彼女が何をティアナと約束しようとしていたのか。時間はそれを全て語る事を許さなかった。
代わりにティアナの腕から重みが消える。全身の力が抜け、何かが抜け出て行くのを確かにティアナは感じた。これが命の重みというものなのか。ティアナとディードのやり取りを背中で聞いていたチンクとスバルもぐっと唇を噛み締める。
そして銃声よりも、外の爆音よりも、何よりも響くティアナの慟哭が一帯を包んだ瞬間、それは『動きだした』。
ヴゥゥゥゥン……。
低い重い起動音。腹の底から響いてくる様なその音に銃声は止み、誰もがその音の発生源に目を向ける。
スバルも、チンクも、連邦兵も。そして涙を流すティアナも。
誰もがそれに目を奪われる。
「……遅いのよ。どんだけ待たせるのよ……。あんたが来るのを待ってた人がいるってのに、その人はもう帰っちゃったわよ……」
<ごめん……。本当にごめん>
声が聞こえた。いつも彼が謝る時の情けないあの声だ。しかしそれでもまたあの声が聞けた。
だからティアナは涙を拭き、キッとそれを見上げ、腹の底から声を張り上げる。
「だったら早く目ぇ覚ましてなんとかしなさいよ!! レン・アマミヤ―――ッ!!」
<応よっ!!>
一気に溢れた蒼の炎が瞬く間にドックを埋め尽くす。
それは奔流。生命の炎。
ティアナ達が守っていたのはMSN-001X ガンダムデルタカイ。
ジェネレーションシステムで失われたはずのレン専用機体だ。そして蒼の炎はナイトロ起動の証。しかしそれは今までとは違う現象を見せていた。そもそもナイトロはパイロットの脳内を書き換え、システムに最適化した強化人間を作りだすもので蒼炎はその副産物と言われている。それは同時に脳に刺激を与える事と同義。そして彼はサポートがあったとは言え、それを使いこなしたパイロット。言ってみればそこに状況を打破する光明があった。
勿論、キリシマが危惧した通り危険な賭けであったとも言える。下手をすれば完全にシステムに飲み込まれ、元の人格を破壊される恐れもあったのだから。しかし当の本人には一つの確信があった。戦闘中に浮かび上がるもう一つの意識。妙に冷静になるあの感覚。あれはきっとナイトロによって生み出された強化人間としての自分。今までそれを制御してきたのだ。今回だって耐えられるとの自信。それ故の最大稼働。だがこれまでの炎は前例がない。埋め尽くす蒼の炎はその結果なのか。デルタカイに生まれた蒼の炎が爆発的にドックを走り回る。
「あっ!」
その炎の中でディードの体が消えていく。蒼炎の中に溶けるように、粒子となってその姿を消していく。
それは火葬のようで。蒼の炎が鎮魂の送り火であるかのようで。
そしてティアナは見た。蒼炎が飛びまわる不死鳥の姿になる瞬間を。デルタカイの肩に乗り、愛おしそうに微笑む二人の少女を。
「そっか。あんた達もレンさんの事心配して来てたんだ。……敵わないなぁ」
見上げ、ぽつりと呟く。全くあんたらどんだけあの人にハマってんのよと言いたくなる。
その間にもデルタカイの炎は強さを増していく。更には自身を固定したハンガーを無理矢理力づくで引き剥がそうとしている。獣が鎖から放たれようとしている光景に連邦兵は我先にと逃げ出して行った。
彼女達がそれを追う事はない。それよりも目の前で起こっている現象の方が重要だ。
確かに周りは蒼の炎で埋め尽くされている。しかしそこに不安も恐怖も感じない。
むしろ優しく包み込むような安心感を覚えるくらいである。
『みんなが戦ってくれている姿、ちゃんと俺には見えてたよ』
外部スピーカーからレンの声が聞こえた。
『廃人みたいになった俺とは別に俺の意識はあった。つっても運良く外に出れたのはスバルを助けた一回きりだったけどね』
あっとスバルが声を上げる。ノーヴェと相対したあの時だ。やっぱりあれは幻聴なんかじゃない。
レンが助けてくれたから、あの時戦えた。
スバルはそっと胸の前で手を組み、瞳を閉じる。
『だからみんなが俺の為にどんなに頑張ってくれたか知ってる。ドデカ……。いやディードの事も……。ごめん。何を言っても言い訳にしかならないよね』
デルタカイの拘束が一つ、また一つと外れていく。そしてゆっくり一歩一歩、その機体は歩みを進め、最後にデルタカイは残された三人を見て片膝をつく。コックピットハッチが開いた。
「さぁ乗って! 狭いだろうけどまぁなんとかなるだろ。ここを脱出するぞ!」
ティアナ達が急いでレンの下へ駆け寄る。スバルがウィングロードで道を作り、一人ずつデルタカイのコックピットへ。スバルが、チンクが乗り込み、最後にティアナ。そのティアナが乗り込もうとした時、レンは手を差し出した。一瞬迷って、ティアナはおずおずとその手を掴む。するとレンはぐいとティアナの体を引き、力いっぱいその体を抱きしめた。
「頑張ったな。辛かったな。不甲斐ない先輩でごめんな」
自分を抱きしめる腕が痛い。不意打ちに抱きしめられてもがく事すらできない。それにそんな事言わないでほしい。我慢ができなくなる。
「ふっ……うぐっ……。本当、帰って来るのが遅いのよ。この、バカ……」
「ごめん」
「謝ってばっか……」
「ごめん」
「また謝った。もぅ、情けないわね。状況分かってる?」
「言ったろ? 全部見てたって」
ここでやっと。でも名残惜しそうにティアナはレンから離れる。そしてティアナの肩に手を置き、瞳を真っ直ぐ見て、レンは一言言い放った。
「後は俺に任せろ!」
◆
(使えない)
大佐は目の前の現状にほとほと呆れ果てていた。
ミネルバのタンホイザーは優勢に見えた強硬派の勢いを完全に削ぐ物になった。
ただの一撃。本当にただの一撃だ。虎の子のシャンブロは沈黙し、そのとばっちりを受けて何隻かが沈んでいる。モビルスーツ部隊もたかだか数機のモビルスーツに押されるという始末。これが四年前に大戦を生き抜いた連邦の現状なのか? だとしたらなんと嘆かわしい事か。四年だぞ? まだ四年しか経っていないのだぞ? 平和に溺れでもしたか? あの血と硝煙と火薬の臭いを忘れてしまったというのか?
忌々し気に大佐はマイクを取った。繋げるのは勿論シャンブロ。沈黙したままの改革者気取りに一言言わねば気が済まない。
「あ~、あ~、マフティー君、聞こえていますか? 聞こえていたらとっとと起きやがれなのですが。それともこれしきの事でくたばってしまったのですか? ………………。いい加減起きやがれ!! このクソガキが!!」
『うるさいなぁ。キャラ変わってますよ大佐殿。それともそれが貴方の素って訳ですか?』
怒鳴りつけると飄々とした声が返って来た。大佐の剣幕に隣にいた艦長も震えあがっていたというのに、当の本人はいつもの通り。さして驚きもしていないようだ。
その声を聞き、鬼の形相を見せていた大佐の顔にも仮面の笑顔が戻る。
「いえいえ。寝た子を起こすにはこれが一番効果的なものでしてね。それよりマフティー君。分かっていると思いますけど、この失態。どう責任を取るつもりですか?」
『失態も何も流石にタンホイザーは予想外。そもそもミネルバは動かないって前提で動いてた作戦だからね。いやはや完全に裏をかかれましたねぇ~。はっは~♪』
笑いごとじゃねぇよ。だからその落とし前をどうつけるのかって聞いてんだよこのクソガキが。
聞こえてくる笑い声に流石の仮面にも青スジが立っている。
つまりニューロ・レンはこう言いたいのだ。作戦の前提がおかしかったのを認めようよ。ま、その前提はあんたの情報だけどね、と。
軽く深呼吸する。ここでキレたらクソガキの思う壺だ。大佐は軍帽を目深に被ると、仮面をつけ直して肩を竦めた。
「そうですねぇ~。確かに前提条件を間違えたと認めないといけませんね。でもね、だからと言ってここですごすごと負けを認める事はできないですよねぇ」
『当然。ただ、厄介な状況になったのは確かですよ。ほら。アイツが帰ってきた』
「……は?」
なんだアレは。
正直な感想である。
それは大佐も見た事がない現象。蒼い炎の尾を引いて何かが自軍モビルスーツ部隊を次々と迎撃していく姿。
まさかこの土壇場で?
つ……と大佐の頬を冷たい汗が流れた。
大佐が言葉を失ったのと同時期。ニューロ・レンは蒼い流星を見上げつつ、シャンブロの再起動を完了させていた。幸いまだ戦える。そして都合良くアイツが帰って来た。心が奮い立つ。セリカと戦った時よりも何倍もの高揚感が自分を占めていくのが分かる。
ああ、流石オリジナルだ。正直、あんたの底力には脱帽してしまうよ。あの蛇の呪縛を破って、その機体に乗って。またこうして自分の目の前に現れる。
貴方はなんて眩しいんだ。その眩しさに目が潰されてしまいそうだよ。
だからこそ。だからこそ……。
反吐が出る。
「レン・アマミヤァァァァァァッ!!」
『ニューロ・レェェェェェェェン!!』
二人の叫びが空に木霊した。
再起動したシャンブロの大型クローが今や全体を蒼炎で包んだウェイブライダーに伸びる。しかしレンは器用に機体を操作して大型クローを掻い潜ると、メガマシンキャノンで応戦。しかし大きさが違う。通常のモビルスーツならそれで風穴を開けられても、シャンブロ程になればそこまでには至らない。
「はははっ!! そんな豆鉄砲効かないね!!」
残った左肩から拡散メガ粒子砲が放たれる。リフレクタービットは使わない拡散ビームの雨。しかしレンはその中をウェイブライダーで突き進む。旋回し、ビームの間を掻い潜り、一気に射程距離へ。そこでレンは即座に機体をモビルスーツへと可変し、ビームキャノンとロングメガバスター。そしてハイメガキャノンの一斉発射で応戦。
ビームがシャンブロの装甲で爆発を起こす。それを見たレンに浮かぶ確信の笑み。
タンホイザーが効いている。今のシャンブロにIフィールドを張る余力は残されていない。
ならば畳みかけるのは今だ。滑るように移動した海面から飛沫と共にデルタカイをモビルスーツからウェイブライダーへと変形させたレンは再び空を舞った。
ここぞとばかりにビームキャノンとハイメガキャノンを発射し、少しずつでもその装甲を削いでいく。
時には空中で変形し、ロングメガバスターも混ぜて、ヒットアンドウェイを繰り返してシャンブロに攻撃の的を絞らせない。
「ちょこまかと小賢しいですね!」
ニューロ・レンに苛立ちが募ってきた。モビルアーマーが得意とするのはその圧倒的火力による殲滅及び制圧戦。もっと言えば多対一。やられる前にやる。それこそが巨大モビルアーマーの真髄。
だが目の前を飛ぶデルタカイにはそれが通じない。火力で封殺しようにも当たらなければ意味がない。
セリカとエリスには防衛戦という枷があった。しかしデルタカイはどうだ。防衛を考えず、自分を落とす事に集中され、的確にシャンブロの死角を突いてくる。これで苛立たない方がおかしい。じわじわと削られるのは精神的にとてもよろしくないのだ。そして苛立ちは次第に焦りへと変わっていく。
業を煮やしたニューロ・レンがリフレクタービットを飛ばす。拡散するビームに反射という要素が加わった。しかしデルタカイは、ウェイブライダーは止まらない。無秩序に跳ねるビームですらもレンの操る機体はギリギリの所で避けている。何故だ。何故当たらない。より一層の苛立ちと、焦りの色がニューロ・レンの顔に浮かんできた。
だが実の所、この状況に一番驚いているのはレン自身だったりする。
一度相対してニューロ・レンの実力は分かっている。まして相手は巨大モビルアーマーだ。多少の被弾も覚悟の内だったのだ。しかしいざ相対してみたらこれ。ビームの飛んでくる位置とその隙間。どこに何があって、どこに飛べば良いのか。今機体がどんな動きで、どんな状態なのかまで瞬時にして理解できる。
感覚が研ぎ澄まされている? 慣れ親しんだ機体だから? いやいやそんなレベルではない。
まるで自分がデルタカイで、デルタカイが自分の様な、そんな形容し難い一体感。
「おおおおおおおっ!!」
シャンブロの上空で変形したデルタカイ。レンの咆哮と共に機体を包む蒼炎が更に燃え上がった。
そしてシールドに収納された二本のビームサーベルが勢いよく天へと延びる。
ぐんぐんと、ぐんぐんと。明らかにスペック以上の出力で。
「な、何だそれは!! 知らない……。僕はそんなの知らない!!」
シャンブロの口が大きく開かれた。大口径メガ粒子砲に光が集まる。しかし蒼の火球は構わず飛び出した。サブシートに座ったスバルとチンクが悲鳴を上げ、膝の上にいるティアナがぎゅっとレンにしがみつくが全く気にしない。イケる! それしか今のレンの頭の中には無い!
「来るな……。来るなぁぁぁぁぁっ!!」
ニューロ・レンの悲鳴と共に大口径メガ粒子砲が火を拭いた。むずがる子供が気に入らない物を払いのける様に。ただひたすらレン・アマミヤという存在の恐怖から逃げ出す為に、シャンブロが持てる力の限りを尽くしたフルパワーの砲撃だ。
それは天を裂くかとも思えた。膨大なエネルギーの奔流が瞬く間に蒼の火球を飲み込む。
消えろ。消えて。消えてくれ。消えやがれ。消えちまえ。
あらん限りの呪詛を込め、ニューロ・レンは力を放つ。
しかし。
「しゃ・ら・く・せぇぇぇぇぇぇっ!!」
光が弾けた。信じられなかった。何故消えない。何故無傷。何故……。
「何で生きてるんだよアンタはぁぁぁぁっ!!」
デルタカイはそこにいた。大出力のビームサーベルを振り抜き、大口径メガ粒子砲を弾き飛ばしたのだ。
逆流したエネルギーでシャンブロの顔面が爆発。顔の半分を吹き飛ばし、隠れていた大口径メガ粒子砲が露わになる。最後の抵抗とばかりに放たれる拡散メガ粒子砲。しかし如何なる現象か、迫るデルタカイを包む蒼炎がビームを弾いているではないか。恐怖に歪むニューロ・レンの目前。デルタカイの双眸が一際輝き、今や天を貫く光の大剣を振り上げる。
ザンッッッ!!
「そんな……。こんなの知らない……。知らないんだ……」
「……俺だって知らねーよ」
海面をホバリングするデルタカイ。その目の前で残った左アームが海に落ちると水飛沫と共にシャンブロが爆発を起こした。海面に浮いている力も失くしたのか、その巨体が海へと沈んでいく。そしてデルタカイの蒼炎も収束。通常稼働レベルに落ち着いていった。
「な……な……」
海に沈んでいくシャンブロの姿に大佐の頭は困惑の極みにあった。
何だ。一体何が起こった。
疑問は次から次へと湧いてくる。だが考えをまとめている時間は無い。
「艦長! 敵鑑が速度を上げてこちらに突っ込んで来ます!!」
「何っ!? 即座に回避行動!」
はぁっ!?
その報告に大佐が声にならない声を上げる。見ればリーンホースJr.が前方のビームシールドを展開し、こちらへまっしぐら。後方からはミネルバの援護射撃を受け、自身もまたビームシールドで防御しながら突き進んでくる。
こと回避、小回りという事に関して言えば大気圏脱出用ブースターを装備した両鑑の能力は落ちていると言っても良い。しかし直進はどうだろうか。ブースターで加速。回避を考えず、真っ直ぐに進むという点では逆に能力が上がっていると言っても良い。
そしてリーンホースJr.の正面展開されたビームシールド。傘の様に開いたそれが閉じていく様を見た時、大佐の不安は現実の物になる。
先端が集束し、リーンホースJr.が巨大な戦槍へと変わる。突貫兵器ビームラム。リーンホースJr.の最大兵装だ。あんなのをまともに受けたらこんな鑑などひとたまりもない。艦長が回避行動を指示したのはある意味的確な判断だった。間に合うかどうかは別にして。
結論から言えば、大佐の乗った鑑は間に合った。前方に配置された鑑を薙ぎ払い、突き進むリーンホースJr.の槍を間一髪。ギリギリのラインで避ける事に成功したのである。だが低空飛行によって生まれた荒波だけはどうしようもない。海上に浮かんでいる以上、彼らに抗う術は無い。
大きくグラつく鑑にしがみつき、大佐はその屈辱に何度も机を叩いた。丁度船体が横になった事で通り過ぎたリーンホースJr.の姿が見えたのだ。自分達を悠々と押しのけたその鑑はそのまま加速を維持。低空飛行から浮き上がると、そのまま遥か上空へと進んでいく。
二重の意味でしてやられた。
大気圏脱出用ブースターでの加速とビームラム。それは全てこの為の布石。
狙いはそのまま宇宙へ脱出する事だったのだ。
「い、急いで全軍に伝達! 奴らの目的は脱出です! 次はミネルバが動きますよ! 残った鑑も全兵装をミネルバに集中! それだけは全力で阻止しなさい!」
「駄目です! 波で船体のバランスが取れません!! 他鑑もバランスを取るのに必死です!」
「だからそれを早く立て直して! 出来次第やるんです!」
「はっ!!」
無茶が何だ。そんなのは百も承知。それよりもミネルバの足を止める方が先決だと大佐は有らん限りの声を張り上げる。見れば既にミネルバも加速準備に入っているのが見えた。大佐の指示通りに自軍のモビルスーツ部隊が動く。しかしそれをエイブラムの部隊が阻止しているのも見えた。
「くそっ!! エイブラム! 自分の部隊を盾にしてでもミネルバを宇宙へ上げるつもりか! えぇい! マフティーとは連絡がつかないのか!? さっさとあいつと通信を繋げろ!!」
「そんな無茶な!!」
「無茶でもやるんだよ!!」
なりふり構っていられない。大佐の鉄面皮は既に崩れ去っていた。
◆
リーンホースJr.は宇宙へと上がった。残るはミネルバとデルタカイ。
既にミネルバは動き始めている。レンも急いでミネルバに戻らなければならないというのに、大佐の檄を受けた敵モビルスーツによって思う様に進む事ができないでいた。
「くそ! 出力が上手く上がらねぇ。やっぱさっきので無理しちまったのか?」
「どうすんのよ! 間に合わなくなるの!?」
「な、なんとかする! なんとかするから暴れるな!」
胸倉を掴んでくるティアナをなんとかなだめつつ、レンは必死にデルタカイのシステムを調整する。
最早先ほどのような一体感は感じない。あれが一体何であったのか考えたい所だが、そんな時間も無い。
とにかく敵の攻撃を掻い潜り、ミネルバまで辿り着かなければ意味がない。
だと言うのにさっきからデルタカイの出力が安定しないのだ。辛うじて飛ぶ事はできている。しかし戦闘を行うレベルまでは到達していない。攻撃を掻い潜るので精一杯だ。
考えられるのはやはり先ほどの異常なまでの出力上昇。一時的なオーバーブーストであると考えれば、今の出力ダウンも頷ける。要は機体が限界を越えてしまったのだ。
「ちょ、ちょっとマズイかなこれは」
「マズイかな? じゃないでしょーっ!! 誰よ! 後は俺に任せろなんて言ったのはーっ!!」
「俺です!!」
「だったら最後まで責任取れーッ!!」
「イエスマム!!」
なんて言い合いをするくらいの余裕を絞り出さないとやってられない。
本気で洒落にならないのだ。後少しがとんでもなく遠い。もうミネルバは見えているというのに、デルタカイを受け入れる為の後部ハッチに近づけない。前方からも後方からもビームと弾丸とミサイルの雨に降られ思う様に進めない。
「レンさん! あれ!!」
「あぁ!? ……ってマジかよ!!」
ティアナの声にレンも思わず声が上がる。
海に沈んだはずのシャンブロが海水を滴らせ、巨体を起こしていたのだ。しかも半壊した顔に見える大口径メガ粒子砲にエネルギーが集まっている。凄まじいまでのプレッシャー。それは最早執念だった。屈辱を与えられ、無様な醜態を晒されたニューロ・レンの執念そこに集約されていく。
感応力などなくても伝わるそれにレンだけでなく全員の背筋が震えあがった。
これは避けられない。誰もがそう考えた時である。
『行けっ!! レン・アマミヤ!! 行ってお前の成すべき事を成して来い!』
突如横殴りの爆発がシャンブロを襲った。それと同時に放たれた大口径メガ粒子砲。極太の閃光が空に向かって放たれ、今度こそシャンブロが海に沈んでいく。それは巨竜が上げる最後の咆哮。悔しさと無念を込めた断末魔。暴走した光の奔流が味方も構わず飲み込み、空に次々と爆発が起こる。
「エイブラム艦長!」
ティアナが通信主の名を呼ぶ。先の爆発はサラブレッドから放たれた攻撃が間一髪シャンブロの攻撃からレン達を守ったのだ。そして今もレン達を送り出す為にサラブレッドと彼の部隊がレン達を敵機に攻撃を仕掛け退路を確保しようとしてくれている。ミネルバとデルタカイを宇宙へ送り出す為だけに、自らの退路を断ってまで視力を尽くしてくれている。
「エイブラム艦長! 逃げて下さい! このままじゃ艦長達が!
『そう言うなティアナ君。誰かが殿をせねばならんのだ。中将もニキ艦長もセリカ君もこうなる事は分かっていてこの作戦を実行したのだ。しかし我々は連邦の未来を守る為にするべき事を選択したに過ぎんよ。後悔なぞ無い』
「でも!」
「黙ってろティアナ!」
レンの言葉が納得できなくて。何故そんな事を言うのか理解できなくて。
ティアナはレンを睨みつけた。しかし彼もまた耐えていた。
唇を噛み、そこから血を流し、それでも彼は前を見続けている姿を見ると何も言えなくなってしまう。
『ふっ……。流石に君は分かっているようだなレン。本音を言えば君とは一度じっくり話してみたかったがそうも言ってられんようだ』
「馬鹿な事言わないで下さいよ。艦長にはまだ生きてもらわないと困ります。このでか過ぎる御恩は返させて頂かないといけませんからね」
『ならば次に会う時はミッドチルダとやらで一番の酒を用意して来い。俺も自慢の一本を用意してやるから飲み比べといこうじゃないか』
「良いですねぇ、是非とも。その時はとびきりのツマミを作りますよ」
『ティアナ君。チンク君。それにスバル君。その時は君達とも飲める事を願っているよ。特にティアナ君、今度はちゃんとビールの味を覚えてくることだね』
「はいっ……。はいっ!」
ティアナが鼻声になっている。スバルとチンクもぐっと拳を握りしめている。
レンも操縦桿を痛いほど握りしめていた。ペダルはさっきから踏みっ放し。それでもまだこれでもかと踏みつける。サラブレッドが、エイブラムが間に入る事で前方への攻撃が止んだ。みるみるミネルバが近づいてくる。これならイケる!
『あちらの世界でディード君によろし……』
ザーッ……。
通信が途切れた。ティアナ達が振り返るとサラブレッドから爆発が起こっている。攻撃の間に入った事でサラブレッドに火線が集中し、それで通信が途切れたのだ。
艦体側面から煙を上げて、サラブレッドが浮力を失っていく。しかし尚もサラブレッドは、エイブラムの部隊達は攻撃を止めない。進むティアナ達の目の前で一機、また一機と落ちていく。遂に一際大きな爆発がサラブレッドから起こった。
「見るなっ! 見るのは前だけにしろ!!」
身を乗り出そうとしたティアナ達にレンの一喝が響く。
「艦長なら絶対に大丈夫だから! だから前だけ見るんだ!」
これしか無かった。これしかここを脱出する方法が無かった。
頭では分かっている。理解している。自分が言った言葉も根拠の無いただの気休めだなんて事もレン自身が一番分かっている。けれども振り返らない。振り向いてはいけない。エイブラムの言葉を信じて大丈夫だと言い聞かせるしかない。
ハッチが目前に迫った。そこで逆噴射をかけてのブレーキ。それでも殺しきれなかった勢いは張られたネットで受け止め、レン達はミネルバに着艦。それと同時にミネルバのブースターが最大点火する。ぐんぐん速度を増すミネルバに強硬派のモビルスーツはもう追いつけない。
そしてミネルバもまたリーンホースJr.の後を追う様にして空の彼方に飛んでいくのであった。
2
「……んっ……」
「やぁ、お目覚めかい? 眠り姫は随分とお寝坊さんだ」
「でも目を覚ましてくれて良かった! 早速で悪いのですが手伝って下さい!」
「こ、これは……?」
「みんな眠り姫を起こすキスがしたくて群がって来たのさ!」
シュテルが意識を取り戻すとそこは戦場の真っ最中。軽口を言いながら魔法を放つロッサと、ヴィンデルシャフトを振りかざすシャッハがガジェットの群れと対峙している最中だった。
いつの間にかハルファスベーゼは消え去り、シュテルは地面に寝そべったまま。しかし寝ぼけてはいられない。すぐに思考を回復するとルシフェリオンとヴァリアントザッパーを起動。左手に銃槍、右手に銃を持ち、シュテルはヴェロッサとシャッハの間に立つ。
「あれからどれほど時間が経ちましたか?」
「三十分と言った所でしょうか。シュテルがモビルスーツに乗り込んでからガジェットが現れるまで約十分。機体が消えてから五分と経っていません」
「なるほど。やはりハルファスベーゼの起動を悟られたと見て良いでしょうね」
「しかしこれで一つの確信を持つに至ったと見ても良いでしょう」
「はい。スカリエッティのアジトは近い。ガジェットがここまでに到達する時間から考えれば、範囲をより絞れたと考えて良いと思います」
シャッハと言葉を交わしつつの状況分析。結果的にハルファスベーゼの起動はガジェットをおびき寄せる餌になった訳だ。シュテルは魔力を蒼炎に変え、銃槍の先端に込めて僅かに笑みを浮かべた。
「貴方達は運が良い。今の私は非常に機嫌が良いのです。あの人に会う事ができた。例え少しの時間でもあの人の温もりを感じる事ができた。一人占めできなかったのは少々残念ですが、まぁ良いでしょう。ドクター・スカリエッティ。もしも聞こえているのなら、しかと貴方の脳裏に今から言う私の言葉を刻みつけなさい」
小さな火球が次々と先端に集束する。その集まり方にヴェロッサとシャッハが慌てて退避する程だ。その間にもシュテルは更に火球を集め、ぐんぐんと火球は成長していく。
「恋する女を刺激すると火傷では済みませんよ?」
蒼炎の火球が放たれた!
火球はそのままガジェットの群れの中に飛び込み、そのタイミングでシュテルが火球に向けてヴァリアントザッパーの引き金を引く。今にも臨界を迎えようとした所に外からの刺激。結果起こるのは溜まりに溜まったエネルギーの解放。更にシュテルは火球を作る際に一手間加えていた。彼女はただ火球を集めていたのではない。小さな火球達を更に大きな火球で包み込んでいたのだ。要はヴァリアヴルシュートの応用で炸裂弾を作ったのである。
だがその威力は推して然るべし。シュテル程の魔導士ともなればそれは炸裂弾どころか、広域爆弾並の威力を持つに至るのだ。
「ちょっ!! シュテル、いくらなんでも強力過ぎます!!」
「何を言うのですかシャッハ。さ、今の内に撤退です。無駄に派手な魔法を使ったのではないのですよ?」
「確かにそうなんですけどねぇ……」
やる事が過激過ぎでしょうという言葉を飲み込み、シャッハはちらりとガジェット達を一瞥した。
高速で飛び散った小火球がガジェット達を貫いている。あれではAMFを張る時間も無かっただろう。
恐ろしいのは威力ではない。あれだけの魔法、使うには相当緻密な魔力コントロールが必要になる。
それをこの少女はさして苦もなくやってのけたのだ。
彼女が敵でなくて良かった。逃げながらそう思うシャッハであった。
◆
開いた口が塞がらない、とはこの事を言うのだろう。
モニターを見ていたスカリエッティが正にその状態だった。
コーヒーカップを片手に持って、あんぐりと口を開けている。世にも珍しいスカリエッティの驚き顔である。
「……あいつでもああいう顔をするのだな」
「私も初めて見ました。かなりレアな光景ですね。……写真を撮っておきましょう」
傍らで見ていたアメリアスとウーノが言うくらいだ。彼の驚きは並大抵の事ではないようである。
どこから取りだしたのか携帯カメラでそんなスカリエッティを写真に収めるウーノも大概だが。
しかしそこは世紀のマッドサイエンティスト。すぐに再起動したかと思うと高らかに笑い声を上げ始める。遂に気でも触れたかと思ったが、アメリアスはそれをすぐに自己否定した。
この男がおかしいのは以前からである。この程度、驚く程でもない。
それにしてもシュテル……。以前と炎の色が違う上に理由は分からないがハルファスベーゼまであった。
まさかとは思うが、やってやれない話ではないとアメリアスは思う。
スカリエッティ、お前は何か気付いたか?
「いや~、参った参った! そうかそうか、恋する女を刺激すると火傷では済まないか! 良い勉強になった!」
ガクッと力が抜ける。そっちかと全力で突っ込みたい所である。
「是非解析してみたいものだ。恋する少女の想いが身体、魔力に与える影響。これが解析できれば私はもっと強力な兵器を作れそうな気がする! どうだろう二人共。良いアイディアだとは思わないかい?」
「う、うむ……」
「分かっていませんねドクター。恋する女の心は複雑怪奇な上に千差万別。その様は渦巻く荒海の如し。解析などとてもとても。パラメータ化できたとしても波が大きすぎて使い物になどなりませんよ」
「む……? そういうものなのかな?」
「そういうものなのです。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ、なのです」
「そうか……。女は女同士通じる物があるという事かな。男の私には分からない領分らしい」
「でしたら、これからお教え致しますが? 女の本気というもの。一晩かけてじぃっっっっくりと」
「……遠慮しておこう」
もうヤダ。なんなのこいつら。
ウーノのうっとりした目が逆に怖い。ほら、スカリエッティが引いてるじゃないか。
二人の会話にさして興味の無いアメリアスは全く話の進まないこの状況では蚊帳の外。
とは言え、スカリエッティが引いている以上に彼女も引いている。
「……もう良い。我は疲れた……ここらで暇させてもらうぞ」
「あ、アメリアス。その前に二つ程良いかい?」
「なんだ……。我は今すごく疲れている、手短に頼むぞ」
部屋を出ようとしたアメリアスをスカリエッティが呼びとめた。気だるそうに振り向いたアメリアスにスカリエッティはソファーに座ったまま、肩越しに振り返る。
「シュテル君の炎の色が変わった理由は僕にも分からない。けれどハルファスベーゼが出てきた理由は分かるよ。彼女、いやこの場合彼女達と言った方が良いかな。まぁいいや。ともかく彼女達は繋いだんだよ。この地とかの地をね。勿論、一瞬の出来事さ。だから時空震も起こらない。ま、膨大なエネルギーが必要だろうし、色々と制約もあるだろうからからおいそれとは出来ないだろうけど。君も気付いていたんだろ?」
別の意味でアメリアスはぎょっとした。スカリエッティは目を細め、ふふんと鼻を鳴らしている。
「私が気付いたんだ。君が気付かないはずはないよね」
「……ああ。お前の言う通り、一瞬だがシステムへの扉が開いたと見て間違いないだろう。だが意図が分からん。何故このタイミングでシステムと繋ぐ必要があったのだ?」
「さぁ。それこそ、馬に蹴られて死んでしまえ、じゃないかな?」
「意味が分からん。それで? 二つ目の用事は何だ」
「私の友人達の姿が見えないんだよね。知らないかい?」
「……知らんな」
「そう。なら私の話は終わりだ。二、三日で計画を進めるからそのつもりでいてくれたまえ」
「分かった」
早足で部屋を出て行くアメリアスの姿を肩越しに追った後、スカリエッティはくすくすと忍び笑いを上げ始めた。愉快で、滑稽で、我慢できないと言わんばかりの笑い。そんな彼にウーノは呆れ気味に肩を竦める。
「意地が悪いですよドクター」
「そう言わないでくれ。いやいやしかし、彼女は嘘が下手だね。あれじゃあ知っていると言っている物じゃないか」
「ではキール達は……」
「決め付けは良くないと言いたい所だけれど、十中八九アメリアスに何かされているね。用心しておきなさい」
「アメリアスがキール達と共に敵になる……と?」
「かと言って時空管理局の味方にもなるまいよ。お互い利用価値がある内は裏切ることもないだろう。しかしお互いの目的が達成した後は分からない。その為の準備をアメリアスもしているのだろうさ」
スカリエッティの顔は愉悦に歪んでいた。文字通り状況を楽しんでいる。アメリアスの行動も彼の想定内の出来事。出し抜こうとするならば、その先を読めば良いのだ。スカリエッティはそんな『読む』という行為が大好きだ。配置を考え、駒が次に何をしようとしているのかを考えるのが大好きだ。例えそれが彼の想定内の事であれば、やっぱりそう来たかと容赦なく叩き潰し、想定外の事であればそうか、そんな手もあるのかと素直に相手を称える。前者であれば自身の思考の証明。後者であれば新たな思考の模索。
どちらにせよ彼の知識、思考の刺激になるのは間違いない。リスクが高ければ高いほどその刺激は強い。
「刺激を求めるのは結構ですが、リスクはリスク。敢えてそれを放置し、結果を窺うのはドクターの悪い癖ですね」
「それで私の計画が崩れるようであれば、私はその程度だったという事だよ。しかし私にはこの先に何があるのかを見たいという欲望がある。だったら障害など読み切れば良いだけの話。そんな事で私の欲望は止まらんよ」
「無限の欲望ですか……。ならば私もドクターと同じ物を見たいという欲があります。微力ではありますが、尽力させて頂きましょう」
「期待しているよウーノ」
頭を下げ、その場から去るウーノ。尽力すると言った以上。いや言わなくても初めから手を抜くつもりはない。ひとまずは逃げた三人の追跡と、ここの警備強化から手をつけようか。
「それに帰って来たあの子のケアもしなければね。あの子の変わり様にクアットロが悶絶してなきゃ良いけど……」
あの子、自分の想定外に弱いから。ドクターとは真逆よね。
廊下を歩きながら、ウーノの頭の中では「き―――ッ!!」と金切り声を上げるクアットロの姿がありありと浮かび上がっていた。
そして残されたスカリエッティは手に持ったコーヒーを飲み干すと、空間モニターを一斉に開く。
その数、十や二十では足りない。しかし彼はそれらを並べてもなお不敵な笑みは崩さぬまま。
「既にジェネレーションシステムは私の手の中。残っているのは完全なるリンクだが、それも時間の問題だろう。期待しているよレン・アマミヤ。全ての鍵は君にあるのだからね」
空間モニターの一つ。そこに映し出される映像に、スカリエッティの金色の瞳は釘付けになっていた。