魔法戦史リリカルジェネレーション   作:nanase

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第6話 不死鳥の名を冠する者達

1

 

 

 

 闇を幾筋もの閃光が切り裂く。

 その中を飛ぶミーティア・フリーダムとGNアーマータイプE。

 目の前に迫る超巨大ガンマ戦レーザー砲ジェネシスと、それを守るニューロモビルスーツの群れ。

 接近してきた2機を感知し、既にジェネシスはこちらを向いている。ご丁寧に尖塔一次ミラーカートリッジの換装も済んでいるようだ。時間が無い。なんとかあれを撃たせる前に決着をつけたい所だ。

 キールとアミタの駆るエクシアが前に出た。左右のアームに設置されたGNビームガンを発射しながらニューロモビルスーツの群れへ突っ込んでいく。

 しかし敵も数で押してくる。降り注ぐビームに対し、キールはGNフィールドを展開。機体が緑色の球体に包まれた。その輝きに守られ、エクシアは無傷。そのまま機体を旋回させ大型GNソードを薙ぎ払う。

 その刃は赤い火花を散らしながら一撃で3機のニューロモビルスーツを切り裂いた。

 更に旋回しながら大型GNキャノンにエネルギーを充填。照準をアミタに任せ、キールはバーニアペダルを一気に踏み込んだ。後方に迫るミサイルとビームの嵐から回避行動を取りつつ大きく旋回を繰り返す。

 進路に立ちふさがるニューロモビルスーツはエクシアのGNソードで切り裂く。

 その爆発に中から飛び出すと同時にGNアーマーの大型GNキャノンから二筋の砲撃が放たれた。射撃を得意とするアミタの寸分違わぬ砲撃。それは2機ずつ飲み込み見事命中する。

 刹那、ユーリの通信が入りエクシアが一次離脱。そして後方では自由と隕石の名を冠する固定砲台がフルバーストの準備を終えている。

 

『ディアーチェ!』

『おうよっ! くたばれ塵芥共ぉ!!』

 

 ミサイルハッチ、両手のウェポンアーム。そしてフリーダムの全火器が一斉に火を噴いた。

 ミーティアが隕石であるならば、そのフルバーストは流星群。一つの隕石から無数にばら撒かれた流星は一つ残らずニューロモビルスーツに貫き、辺りは桃色の爆発と閃光に包まれた。

 

「よし! 一気にジェネシスに接近するぞ!」

「待って下さいキール! 前方に高エネルギー反応! ジェネシスが動きだしました!」

 

 アミタの報告にキールは慌ててモニターをズームにする。そこには確かにジェネシスのミラーに光が収束してく様子が映し出されていた。

 やられた。

 収束する光を見つめ、キールが盛大に舌打ちをする。

 フルバーストで殲滅した所までは良かった。しかし、多くの敵を殲滅するという事はそれだけ多くの爆発が起こったという事だ。そして爆発に伴うもの。それは目も眩む閃光。それを隠れ蓑にしてニューロはジェネシスを起動させたのだ。

 それだけなら良い。それだけなら、十分に間に合うのだ。多少の遅れは出るだろうが、バリアフィールドの展開の方がまだ早い。

 問題なのは、フリーダムがフルバースト直後だと言う事。

 絶大な破壊力と殲滅力を誇るフルバーストだが、直後に若干のシステムラグがある。

 高威力な武装程、システムにかける負担は大きい。それだけ処理に割く割合が大きいからだ。故に一度システムを切り替えなければならない。その間、ほんの僅かな時間だけ機体は無防備になってしまう。

 それがフルバーストの代償、弱点だ。

 普段ならさほど影響の無いそれも、この状況下では致命的だ。例え数秒のタイムラグでも展開が間に合わなければ、バリアを持たないフリーダムはジェネシスの光に焼かれてしまうだろう。

 ならばどうするか。もしもの時の保険を使うしかない。

 エクシアが盾になり、その数秒を稼ぐしか方法がなかった。

 それでフリーダムのバリアフィールドが間に合えば良し。間に合わなかったら撃沈。

 後は並大抵のバリアよりは強度の高いGNフィールドに賭けるしかない。

 

「アミタ! ありったけのエネルギーをGNフィールドに回せ! 最悪GNアーマーが動かなくなっても良い! 今はとにかくなんとしても生き延びるぞ!」

「りょ、了解!」

 

 再び緑色の球体に包まれるエクシア。その光は先ほどとは比べ物にならない程強烈な閃光を発し、二機を包み込む。既にジェネシスは臨界点に入っている。キールはアミタと頷きあうと、フリーダムの前に飛び出した。

 瞬間、モニターが一気に閃光に包まれる。同時に襲いかかる強烈な衝撃。

 

「ぐうううううっ!!」

「くうぅぅぅぅっ!!」

 

 機体が激しく揺れる。一瞬で計器が全て危険領域を示す赤ランプに染まり、けたたましく警告音が鳴り響く。急激にコックピットの気温も上昇し、キールの体から汗が噴き出してきた。

 それとは別に右側から感じる大きな衝撃。GNフィールドでも完全に抑える事ができず、右側大型GNソードが誘爆を起こしたのだ。

 もうどれくらい経過したかも分からない。まだか? まだ終わらないのか?

 

 諦めかけたその時、不意に衝撃が和らいだ。計器がゆっくりとレッドゾーンから正常値に値を示し始め、幾分かコックピット内の気温も和らいでいく。モニターを見れば別のバリアがGNフィールドごと二機を包み込み、ジェネシスの光を弾いていた。

 どうやらバリアフィールドがギリギリ間に合ったらしい。

 最悪の事態はなんとか避けられた。安堵のため息をもらしたキールだが、まだ油断はできない。

 

「もうちょっとだ! ここが正念場だぞ!」

 

 それは自分に言ったのか、アミタに言ったのか。それともディアーチェとユーリにか。

 次第に光が落ち着いていく。残骸の中、緑と黄色の球体がそこに浮かんでいる。そしてその光も消えた中から姿を見せるのは、煙を上げたエクシア。大型GNソードは失ったが、まだその姿は健在だ。

 

『ディアーチェ!』

『分かっておる! 行くぞ! ここからは時間の勝負だ!』

 

 ユーリの掛け声にディアーチェが吠えた。ハイパーブースターを再度点火させ後方から飛び出していくミーティア。エクシアが全力で盾になった事で、影響を最小限に抑える事ができたものの、流石に無傷ではなかった。機体は超高熱にさらされ煙が上がっている。確かに万全ではない。しかしエクシアがその身を呈して作ったチャンスを無駄にする訳にいかないのだ。

 エクシアを後方に置き、隕石は宇宙を駆ける。ジェネシスの射線にいなかったニューロモビルスーツが向かってくるが、彼女達を止めるには役不足。

 

『『どけぇぇぇぇぇっ!!』』

 

 ディアーチェとユーリ。二人の声が重なりフリーダムは大きくウェポンアームを左右に開く。先端から伸びるビームソードが左右の敵を切り裂き、前方の敵にはフリーダムのパラエーナプラズマ収束砲とクスィフィアスレール砲で撃ち落とす。

 一度飛び出した隕石を止める術は無い。阻もうものなら、その身を砕かれ藻屑となるのが定め。

 ジェネシスはもう目前まで迫っていた。

 

 

「各部機関チェック急げ!」

「推力20%低下! ジェネシスの影響でエンジン動力に一時的なエラーが出ています!」

「復旧を急いで! ハイパーブースターとフォトンブラスターは!?」

「問題ありません! 行けます!」

「ならばエンジン動力のエラー復旧後、ハイパーブースターを再点火! 一気にジェネシスに接近します! 各モビルスーツ部隊は発進、道を切り開くと共にエクシアとフリーダムの援護に向かって下さい!」

「了解! 各モビルスーツは発進準備! 繰り返します。各モビルスーツが発進準備!」

 

 時を同じくしてディーヴァもまたジェネシスの砲撃を受けていた。バリアフィールドでなんとか耐えたものの、状況としてはエクシアと似た様なもの。

 ニキの指示により各部チェックが進められていく中、同時にモビルスーツ部隊も発進準備を進めていく。

 そしてその中、シュテルはコックピットで静かに出撃の時を待っていた。

 それは白い天使の羽を持つ青と白のガンダム。彼女の新しい機体。

 ウィングガンダムゼロカスタム。

 AGE-2から得られたデータから割り出された、シュテルの新しい機体。

 なんと皮肉めいた組み合わせだろうか。思わず口元には笑みさえ浮かぶ程に。

 堕天使の名を冠する自分の愛機ルシフェリオン。そして自分に与えられた機体はまるで天使ではないか。

 思い出すのは、自分と同じ顔のあの少女。確か彼女のバリアジャケットも青と白だったか。

 純白の翼は彼女にこそ相応しい。自分には似合わない。

 けれど……。

 

(ナノハ……。思えば魔法とは全く無関係な所まで来てしまいました。でも貴方は貴方の場所で今も夢を追い続けて空を飛んでいるのでしょうね。……もしも。もしもまた会える時が来るなら、今度はゆっくりと話がしたいです。そして二人で空が飛びたいものです)

 

 そうだ。彼女は彼女の戦場で飛んでいるだろう。ならば自分も自分の戦場を飛ぼう。そして今、ここが自分の戦場だ。

 

(だから今は、このゼロカスタムと共に私は宇宙を飛びます……)

「シュテル・ザ・デストラクター。ウィングガンダムゼロカスタム。行きます!!」

 

 天使の翼を広げ、羽を舞散らすかのようにゼロカスタムが宇宙を飛翔する。

 ジェネシスの前では既に戦闘が始まっていた。ニューロモビルスーツの群れにシュテルは迷うことなくゼロカスタムを躍らせる。まずは小手調べ。AGE-2のハイパードッズライフルよりも更に強力な砲撃が眼前のニューロモビルスーツを飲み込む。

 爆発する機体達の間をすり抜けるようにして進むシュテル。途中何度かビームライフルの攻撃を向けられたが、ゼロシステムと同調したルシフェリオンが未来を教えてくれる。流石にオリジナルのゼロシステムは危険が高い。故にデチューンされたゼロシステムだが、ルシフェリオンと同調させることで高い攻撃予測を得る事ができた。

 ゼロシステムとルシフェリオンから与えられる情報と、シュテルの判断。それが噛みあった今、ゼロカスタムを捕える事は並のニューロモビルスーツには不可能。

 

「邪魔をしないで下さい!!」

 

 今度は両手にバスターライフルを構えた。左右それぞれに向けたバスターライフルを発射し、その中心で機体を回転。極太のビームを薙ぎ払い、次々とニューロモビルスーツを撃破。彼女の新たな愛機、ゼロカスタムの初陣に爆炎という華を添える。

 閃光の中、一機佇むゼロカスタム。バスターライフルが放熱の為、大きな蒸気を吐きだした。

 

『絶好調みたいですねシュテル』

「はい。おかげさまで」

 

 ゼロカスタムの隣に来るのはゾディアックのハイゼンスレイⅡ・ラー。ロングブレードライフルで牽制をしながら2機は背中合わせで立つ。

 

『ここは僕達に任せて、シュテルはレンとキール達の所へ行ってくれませんか? 彼がフリーダムの盾になった事で一部戦闘不能になったようなのです。その為、フリーダムの距離が少し開いています』

「了解です! ……レン!」

『あいよ! 全開で行くからな、降り落とされんなよ!』

 

 彼の通信はレンにも入っていた。ウェイブライダーに変形しシュテルの下にやってくる。その一部を掴むとレンは一気に飛んでいった。

 行かせまいとニューロモビルスーツ達も方向転換をする。しかし、その内2機の頭部を掴む腕。ハイゼンスレイⅡ・ラーから伸びたウィンチユニットだ。同時にそこから放たれたビームが頭部を撃ち貫く。

 ウィンチが音を立てて、ワイヤーを巻き戻す中、ゾディアックは周りを囲むニューロモビルスーツを見る。敵はZGMF-1017F ジンハイマニューバとGAT-01 ストライクダガー。

 相手に不足は無い。これでもSpiritsのNo.3としてのプライドがある。

 再びウィンチユニットが伸びた。今度はアームへの変形は行わず、ビームを発射する。それだけでは終わらない。機体を大きく回転させてウィンチユニットもろとも、ビームを薙ぎ払った。

 ゆうに5体ものニューロが巻き込まれている。それを逃れたニューロはビームライフルと実弾をばら撒いてくる。しかし、ビームはi-フィールドが防ぎ、実弾もハイゼンスレイⅡ・ラーの堅牢な装甲を僅かに傷つけるだけだ。

 ゾディアックは不敵な笑みを浮かべると機体を発進させる。加速力ならフェニックスガンダムにも引けを取らないだろう。銃身に仕込まれた刃が赤熱する。ロングヒートブレード。その刃がジンハイマニューバとストライクダガーの体をいとも容易く切り裂いた。

 実力差は明白。それでも向かってくるニューロモビルスーツをゾディアックは次々と撃破する。

 ここが終われば自分もディーヴァの援護に行かなければ。しかし、事はそう簡単に進まない。

 突如の警告音の機体を向けた先。そこには高速でゾディアックに向かってくる不死鳥。両手にクロスバインダーソードを持ったマスターフェニックスだった。

 すかさずロングヒートブレードを交差させ一撃を受けるも、相手は加速した機体。ゾディアックは後方に弾かれてしまう。

 

「マスターフェニックス!」

『さぁ踊ろうか! 太陽神の名を冠する機体よ!』

 

 両者が持つは赤熱した2本の剣。今度は互いに加速をつけて正面から斬り結ぶ。その勢いに今度はお互い弾かれた。だが少し離れればその距離はゾディアックの物。確かにマスターフェニックスの武装は強力だが、ミドルレンジの攻撃は確認されていないからだ。狙うのはそこだ。

 彼はすかさずロングブレードライフルに持ち替え、無数のビームを連続で放つ。その光の雨の中、それを嫌がるかのようにマスターフェニックスは旋回を続ける。反撃の様子は無い。

 コードフェニックスもゾディアックの狙いには気付いていた。舌打ちをしながら近づこうとするが、なかなか近づかせてはくれない。別にそれを卑怯だとは思わない。相手の攻撃手段を封じるのは定石だ。

 だが正確に言えば、マスターフェニックスにもミドルレンジの攻撃手段が無い訳ではない。

 それは彼にとってみれば「とっておき」というヤツだ。

 マスターフェニックスの背部スラスターが出力を上げた。それによりマスターフェニックスの加速が一段と跳ね上がる。両手のクロスバインダーソードを連結させて一本の大剣にし、彼はゾディアックのハイゼンスレイⅡ・ラーに向けて一直線に向かってきた。

 高速で接近する物体。しかもジグザグに飛ぶ物に対し、正確に狙いをつけるのは至難の技だ。無論、いかに高い技量を持つゾディアックと言えどそれは当然の理。焦るが故に尚の事、照準は定まらない。

 

『さぁ……、これが俺のとっておき。ヒーローはそのとっておきって奴を必殺技って言うのさ!』

 

 最高速度に乗った瞬間、クロスバインダーソードの刀身から炎が噴き出した。特殊な液体金属を刀身に流し込み高エネルギー体へと変換させる。それがまるで炎の様に見える事から、この「とっておき」をコードフェニックスはこう呼んだ。

 

『バーニング……ソ―――ッド!!』

 

 小細工無し。ただ一撃の下に相手を叩き斬る灼熱の剣。

 防御すらも貫通するその剣にゾディアックは成す術がない。ギリギリ直撃だけは避けたものの、左手足が巻き込まれる。液体金属の高エネルギーで次第にそれは融解を起こし、マスターフェニックスが大剣を振り抜くと共にそれは爆発を巻き起こす。

 それでも機体そのものが誘爆しなかった事が幸いか。ゾディアックはノイズとあちこちショートしている画面でマスターフェニックスを睨みつける。

 

『終わりだよ。これ以上は本気で君の命を取らなくちゃならなくなる。それは俺の本意とする所じゃないんだよな』

「何を今更。貴方もニューロなのでしょう? 人間をあまり舐めないで欲しいですね」

 

 突きつけられる大剣と、送られてくる通信にゾディアックは口元を歪める。しかし返ってきたのは苦虫をかみつぶしたような苦しい声。

 

『馬鹿言わないでくれ。死んだらそれっきりなんだ。……君は残された者の事を考えた事があるのかい?』

「何を……」

『ゾディ!! 無事か!』

 

 何を言っている?と言おうとした刹那、通信に割り込む聞き慣れた声。そして飛び交うビームにマスターフェニックスが距離を取る。

 

『やぁマーク。会いたかったよ!』

『男に言われてもキモいんだよ!』

 

 交差する大剣と光の剣。マスターフェニックスとフェニックスガンダム。コードフェニックスとマーク・ギルダーが再び戦場で遭遇した。

 

『そう言わないでくれよ。同じ不死鳥の名を冠する者として俺は君には期待してるんだ』

『また意味不明な事言いやがって! 勿体ぶらずにちゃんと内容を言えってんだ!』

『それは俺に勝ったらだ!』

 

 フェニックスガンダムがビームライフルを連射する。そのビームを掻い潜り、マスターフェニックスもソードメガビームキャノンを発射。ビームライフルのビームを飲み込むその砲撃をフェニックスガンダムもまた旋回で避ける。そしてお返しとばかりに四門のメガビームキャノンを撃つ。

 渦巻く四本の砲撃の内、直撃コースの物だけ両手のクロスバインダーソードで受けてやり過ごしたマスターフェニックスの前に、ビームサーベルを構えたフェニックスガンダムが姿を現した。

 そのまま剣で受ける。炸裂したスパークが2機を煌々と照らしだす。

 そしてそのまま2機は旋回しながら、その宙域を抜けて行った。

 

『ゾディアック! 大丈夫?』

「レヴィですか。まぁなんとかといった所ですが……。ディーヴァは?」

 

 大破したハイゼンスレイを担ぐビギニング30ガンダム。レヴィの通信に笑みをこぼしたゾディアックが尋ねると彼女は機体でジェネシスを指さした。

 そこではジェネシスに向けてフォトンブラスターキャノンを放つディーヴァの姿がある。狙いはその表面に覆われたミラーだ。ジェネシスはその巨体故に完全破壊には相当な労力が必要だが、砲撃を撃てなくするという事に関して言えば方法はある。発射シークエンスに必要なミラーを破壊してしまえば良い。

 そしてそれを狙うは戦艦から放たれる必殺の一撃。爆発と共に次々とミラーが宇宙にばら撒かれて行く。

 

『ラナロウとブラッドって二人とも単機突破が得意だからね。ボクとマークでゾディアックを助けに来たんだけど……、マーク一人で行っちゃったね』

「いえ、懸命な判断です。僕らではまだあの戦いに介入する事はできませんよ。実際に戦ってみて分かりましたが小手先でどうにかなる次元ではありません。正直お手上げですね」

『ゾディアックがそう言うならそうなのかもしれないけど……。ぶーっ! なんか納得いかなーい!』

 

 レヴィが駄々をこねているが、正直ゾディアックも口調程穏やかな気持ちにはなれない。これでもマークと共にエースの一人としてやってきた誇りがある。だがそれでも届かない。それは屈辱以外の何者でもなかった。

 もっと強くならなくてはならない。親友と肩を並べ続ける為に。この戦場を生き残る為に。

 そして戦いは更に苛烈さを増していく。

 

 

 

2

 

 

 Q:手順さえ守れば子供でも人を殺せる道具とは何であろうか。

 A:銃。

 

 刀剣は駄目だ。人を殺す為にはそれなり重量が必要。そんなもの子供が持てる筈がない。

 そもそも意外と人間の骨と言うものは固い。そして存外刃物というのは刺さらないものである。

 ナイフも使い方次第では人を殺せる。背後に回って、左側から肋骨の隙間を縫って下から突き上げるように刺す。こうする事で刃は心臓に届いて相手を絶命たらしめる事ができるだろう。

 だが技術が必要だ。子供が狙ってできるものではない。

 そもそも子供には力が無い。人に突き刺す程の力が無い。

 その点銃は違う。安全装置を外して、指先にちょっと力を込めるだけで鉛の弾丸が一直線に相手を狙う。

 まぁ多少技術は欲しいし、反動に子供が耐えられるかと言えばそこは疑問として残るが、刀剣よりはマシだ。そんなに難しい事ではない。

 

 ま、本来子供にそんな事をさせた時点で大人失格なんだろうけど。

 

 瞳を閉じ、一人静かにマークは考える。

 その両手には一挺ずつ。計二挺の銃。その先から出るのは鉛ではなく、魔力が圧縮された弾丸。

そう。ただ弾丸が鉛から魔力に変わっただけで、銃の本質は変わらない。

 銃は銃だ。銃身から放たれた弾丸が、まっすぐ獲物を狙うという事に関しては全く変わらない。

 

「んじゃ、行きますか!」

 

 自身に気合いを入れ、マークは瞳を開く。広い地面の上。周りには一般的な時空管理局のバリアジャケットと杖を装備した局員の姿が10人。マークを完全に包囲している。

 マークはまず目の前の1人に照準を合わせてトリガーを引く。紅の弾丸が銃の先に生まれた。それは高速で飛び出し、局員を撃ち抜く。まずは1人。すかさず両腕を左右に広げてまた2人撃ち抜く。

 残った局員が杖を構え魔力弾を撃ち出した。しかしマークは身を屈めてそれを避けると、その相手に向けて更にトリガーを引く。そして体を反転させて更にもう1人。

 倒した局員の隙間から包囲網を脱出。しかし彼を追いかける誘導弾が6発。ある程度距離を稼いだ所でマークは振り向き、誘導弾に狙いを付けた。まるでホーミングレーザーの様な軌跡を見せるそれ。闇雲に狙ったのでは、回避されてしまうだろう。ならばとギリギリまで引き付け、2発撃ち落とす。

 続けて飛んで来た2発は当たる瞬間で避ける。そして最後に向かってくるものを2発の内、1発を撃ち落とす。

 先に避けた誘導弾が旋回してきた。前からもまだ1発。そこでマークが選択したのは前に出る事。身を屈め、誘導弾の下に滑りこむようにしてこれを避ける。これで誘導弾3発が全てマークの後方に集中した。  

 すかさずトリガーを引き、これを全て撃ち落とす。

 だが魔力の集中を感じた。残った3人が砲撃の準備をしている。

 砲撃は威力もあるが、隙も大きい。そして直線的だ。射線の見極めさえできれば、避ける要領はモビルスーツも肉弾戦もあまり変わらない。地面を蹴り、素早く射線から抜ける。あと一瞬判断が遅れていれば、マークは砲撃に飲み込まれていただろう。だが当たらなければどうという事はない。

 

「チェックメイトだ」

 

 マークは砲撃が終わる前に3発撃ち込んだ。

 しかしこれで全て終了とはならなかった。

 背筋がゾワリとする。振り返るとレヴァンテインを構えたシグナムが迫っていた。

 すでにそこはシグナムの間合い。マークは一挺を変形させ魔力刃を発生。サーベルよりは短く、ダガーよりは長い。フェニックスガンダムの時にも使っていたビームサーベルにも似たそれでレヴァンテインを受けつつも、勢いを殺さずに体を回転。シグナムの一撃を見事いなす事に成功する。そして追い打ちにもう一挺のトリガーを引くが、シグナムは横に跳び、射線から外れる。

 すぐにもう一挺も銃に戻し、弾丸を放つ。シグナムも走りまわって狙いを付けさせない。彼女の後方、走り去った後の地面に魔力弾が着弾し、いくつも小爆発が上がるのも構わずシグナムが駆ける。

 またしてもシグナムの有効射程距離。レヴァンテインが二度三度光の軌跡を描く。空を切り裂く音が鋭い。ステップを踏んで避けるが、その剣閃の鋭さにマークの額から冷たい汗が流れる。

 一瞬で切り替わる攻防。それは終わるのも一瞬だった。

 振りあげられたレヴァンテイン。回転して避けるマーク。シグナムも勢いのままに回転する。

 次の瞬間、銃身はシグナムの額に。レヴァンテインはマークの首筋に。

 互いの腕を交差させるようにして二人はそこに立っていた。

 

「……シグナム。心臓に悪いんだが?」

「許せ。お前の銃捌きを見ていたら、どうにも我慢できなくてな」

 

 2人はそこでようやく笑みを浮かべた。見れば局員の姿はどこにも無い。景色も無機質なドームに変わって行った。

 時空管理局地上本部訓練室。

 まさにそこでマークは訓練中だったのだ。2人は互いの獲物を仕舞い、握手を交わす。

 

「まったく。剣の騎士がいきなり乱入してきた時は我も焦ったぞ。もう少しなんとかならんかったのか?」

「だから許せと言っている。そう怒るなディアーチェ」

 

 そこに駆け寄って来るのは私服姿のディアーチェ。先の局員は彼女が生み出した幻影。できるだけ現実に近く再現された高度な幻影だ。

 

「そうそう。なかなか動きがリアルになってきたなディアーチェ。正直危なかったぞ?」

「フン! 我にかかればあの程度大した事でもないわ。が、それでもマークに1発も入れる事ができないのはそれなりに悔しいな」

「当然。なんてったってモビルスーツ以外にも叩き込まれてるからな」

 

 さも当然の如く言い切った。ディアーチェは首を傾げる。彼女はマークの過去を知らない。シグナムも興味を持ったが「昔の事だ」とマークはそれ以上を語ろうとしない。

 

「それよりシグナム。いきなり乱入してきたんだ。お詫びに一杯付き合えよ?」

「ふ……。良かろう。相応の礼はさせてもらうさ」

 

 柔らかい笑みを浮かべた彼女はこれを了承する。やれやれと肩を竦めるディアーチェ。

 

「3人ともお疲れ様。少し休憩にしましょうか」

「シャマル。そっちは良いのか?」

「シグナム聞いてよ。2人共飲み込みが尋常じゃないの。正直もう殆ど教える事がないくらいだわ」

 

 そう言って少し困った顔をしたシャマルがやってきた。その後ろではシャマルの言葉に機嫌の良くなったマリアとユーリがハイタッチを交わしている。

 マリアの才能は主に補助、結界方面に現れた。そしてユーリもディアーチェのサポートをするべくマリアと共に訓練をしていたのだが、その評価は先のシャマルの言葉の通りだろう。

 

「それはそれで良い事じゃないか。……で、あいつらは何をやっているのだ?」

「ああ、なんでもレンの奴がショートレンジを鍛えたいとかでザフィーラに実戦形式で相手してもらってる。んでシュテルはそんなレンに同調して、レヴィ相手にショートレンジを鍛えてるって所」

 

 シグナムが指さし尋ねる先では、レンが双剣型のヴァリアントザッパーでザフィーラを相手にしていた。 同様にシュテルもレヴィを相手にショートレンジで挑んでいる。

 レンはマークとは違い、まだまだ生身の戦いに慣れていない。しかしここ最近で漸く形になってきたようだ。その姿にマークは満足げに顎を撫でる。

 後輩の成長が嬉しいのか、マークは終始笑顔だ。そんな様子にシグナムとシャマルは呆れて物が言えない。マークとマリア。そしてレンが魔法に触れて早や3ヶ月。中でもマークとマリアは来週には訓練校の3ヶ月コースに行く事が決定している。

 この成長速度もまた異常。それはかつてのなのはの様だと、以前フェイトが2人に漏らしていた程だ。

 マークは元々身体能力が高い。生身での実戦経験と魔法の組み合わせの順応度会いが桁外れに高い。

 マリアもまた才能が開花した他に、元から士官として働いていた事もあってか素早く時空管理局の法律を覚えていく。

 だからと言ってレンが劣っているという訳でもない。彼が3ヶ月コースに行かなかった理由は、今の訓練にある。つまりはまだスタイルが完成していないから。ただその一点のみである。

 

<これは我々の方こそうかうかしていられないな>

<ええ、本当に>

 

 念話を飛ばしつつ、シグナムとシャマルは顔を見合わせる。

 季節は夏を過ぎて、秋の足音が聞こえていた。

 

 

 その夜、八神はやて宅。

 リビングではマーク、マリア、シグナム、シャマル、ザフィーラの5人が卓を囲んでいた。

 ちなみにはやてとヴィータ。そしてリインの三人はまだ帰らない。後でなのはとフェイトと合流し、こちらに向かうという。

 レン達は早々に借りたマンションに帰って行った。フェイトが気を利かせてお隣さん同士。はやての家からも近い優良物件である。相当疲れていたようなので、現在午後9:30を過ぎた辺りだがぐっすり眠っている事だろう。

 

「ま、ここからは大人の時間というヤツだ。な?ザフィーラ?」

「まぁな。こうしてゆっくりと酒を飲むのも悪くは無い」

 

 マークに肩を叩かれ、いつもなら仏頂面のザフィーラだが今はうっすらと笑みを浮かべて缶ビールを飲んでいる。

 

「そうねぇ。はやてちゃん達まだお酒飲めないから、こうしてゆっくりお酒を飲む機会なんてそうそうないし~。良い機会よねシグナム?」

「そうだな。……む? マリア。手酌で飲む奴がいるか」

「あ、す、すみません」

 

 シグナムから瓶ビールを注がれ、マリアのコップに琥珀色の液体が満ちて行く。お返しとばかりにマリアもシグナムのコップに返杯している。

 

「それはそうと、昼間も言ったがギルダーは銃の扱いが上手いな。モビルスーツ乗りというのは皆あんな芸当ができるのか?」

 

 シグナムとしては非常に興味をそそられる所である。彼女の目から見ても昼間のマークの動きは素晴らしいものだったと思えるのだ。昼間ははぐらかされたが是非詳しく聞いてみたい。それ故の質問。

 対してマークは困った顔で一度マリアを見る。ちびちびとビールを飲みつつ、マリアは「良いんじゃない?」と一言。彼は一度溜息を吐いた後、シグナムの方を見た。

 

「いんや。あんなのモビルスーツ乗りみんなできる訳じゃないさ。あれは俺だから出来る芸当だ」

「ほぅ?なら相当訓練したのだろうな」

「まぁな。それこそ必死だよ。なぁマリア?」

「私に振らないでよ。マークがちゃんと答えなさい」

 

 顔を見合わせ首を傾げるシグナムとシャマル。マークはあからさまに顔をしかめてみせたが、マリアはそれ以上何も言わない。ウィスキーを口に含むと彼は仕方なくといった感じで口を開いた。

 

「俺はさ、ちょいと特殊な訓練をしてたんだ。それこそ物心ついた時には既に引き金を引いていた。体捌きもそれで覚えた。……それこそ血反吐吐きながら体に染み込ませたよ。面白くもなんともない。そんな過去の話さ」

 

 出てきた言葉は短いが意外に重い。口元を歪めるマークにシグナムもばつが悪そうに頭を掻いていた。

 

「……気にする事は無い。例えお前がどんな過去を持っていようとも、俺達は今のお前しか知り得ん。それにそんな事を言うなら我らとて同じだ。大事なのは今だ。違うか?」

 

 重くなってしまった空気を変えたのはザフィーラだった。目を閉じ、いつの間にか手に持っていたウィスキーを飲みつつ告げた言葉にマークは敵わないとばかりに肩を竦める。

 

「ほらね。第一マークは気にし過ぎなの。実際それで助けられた命は多いのだし、Spiritsでも誰も気にしなかったでしょ?」

「つっても、結構ヘビーな話題なんだよ。ったく、相変わらず可愛げの無い女だな」

「お生憎様。私の可愛げの無さはあんたが一番知ってるでしょ?」

「あらあら?二人ってもしかして、そういう関係なの?」

「「はぁ?」」

 

 突然のシャマルの問いに二人が声を上げる。そしてお互いに眉をしかめて若干距離を取ってしまった。

 逆にシャマル達が驚いてしまうほどだ。

 

「冗談言わないでよシャマル。マークとはただの幼馴染。残念ながら貴方が思っているような関係じゃないわ。あ、でもキズモノにされたわね~」

「おい! 変なこと言うな! ほれ見ろ。ドン引きされちまったじゃねぇか!」

 

 マリアの発言にシャマルとシグナムも苦笑し、若干距離を取っていた。必死に弁明するも首を横に振るザフィーラに肩を叩かれ、諦めたように冷えたウィスキーをヤケ飲みするマークだった。

 

 

 マーク・ギルダー。現在22歳。独身。彼女無し。地球連邦での階級は大尉。

 彼は幼少より英才教育を受けてきた。だが、些かその教育方針はねじ曲がっていたと言わざるを得ない。

確かにマークの技術は年齢とは不相応。加えて無口で無愛想な少年だった。しかしそんな彼を変えるきっかけになったのは、幼馴染のマリアを襲った事故である。それはニューロが地上を攻めてきた時に起こった。流れ弾が避難民のシェルター付近に着弾したのだ。偶然にもそのシェルターに避難していたマリアを含め、多くの一般人が大怪我を負ってしまった。無愛想な自分を慕ってくれていた幼馴染が血まみれで倒れている。そこで彼は漸く自分の境遇に疑問というものに覚える。

 一体自分は何をしていたのだろうと。

 病院で意識を取り戻したマリアが最初に見たのは、顔をぐしゃぐしゃにして謝るマークだった。

 それ以来、マリアもまた軍に入る決意をする。そしてマークも少しずつ生来の明るさを取り戻し、トップエースへと駆けあがっていくのである。

 

「思えば皮肉なもんだよ。それまでの俺はただ機械的に戦ってただけなんだからな」

「ならマリアちゃんには感謝しないといけないわね」

「まぁな。……実際感謝してるけど。言えば絶対変な顔するぞ? あいつ」

 

 苦笑いするマークを見て、隣でシャマルは微笑んだ。

 ちなみにリビングは酔いつぶれた三人が死屍累々と転がっている。二つあるソファーにはそれぞれシグナムとマリア。床ではザフィーラが大の字で寝ていた。

 残ったのは酒に強いマークとシャマル。ベランダで酔い覚ましも兼ねつつ飲み直し。初秋の風が火照った顔に心地よい。シャマルも酒をウィスキーに変え、二人はグラスを軽く当てる。

 グラスと中の氷がカランと乾いた音を立てた。

 

「それに悪い事ばかりという訳でもない」

 

 一口それを飲んだ後、ポツリと呟くマーク。シャマルも一口飲み、首を傾げる。

 

「それでSpiritsに入る事ができた。生意気な後輩にも会えたし、越えたい相手にも出会えた。そいつが言うには俺も不死鳥の名を冠する者らしい。どうせ身に付けた力だ。俺はこっちの世界で奴の言う不死鳥の名に恥じない事をしなけりゃ、あいつにまた会った時にぶっ飛ばされかねないよ。……そうだな。そう言えばもう一つ。良い事があったな」

「へぇ、どんな事?」

 

 グラスをシャマルに向ける。そして器用に人差し指を彼女へ向け、マーク当然のようにこう告げる。

 

「シャマルみたいな良い女に出会えた」

「……あら。ちなみに、どうしたらそうなるのかしら。教えてくれる?」

 

 マークはベランダにコトリとグラスを置く。そして慣れた手つきでシャマルの腰に手を伸ばし抱き寄せては、その大きな瞳を覗きこんだ。シャマルもグラスを置くと、嫌がる素振りを見せずにマークの頬を両手で包み込む。

 

「訓練のおかげで俺は生き延びる事ができた。結果、俺はここに居る。ここに来れたからこそシャマルに出会えた。どうだい? 理由には十分過ぎるだろ?」

「もう、強引な理由ね。でも、嫌いじゃないわ。そういう強引さ」

「だろ?」

 

 マークの右手もシャマルの頬に当てられ、親指がシャマルの柔らかな唇をなぞる。次にその手は彼女の頬を滑りシャマルの顎へ。軽く彼女の顔を上げさせた。

 暫くそのまま無言で見つめ合う。そしてどちらからでもなく軽く微笑むと、ゆっくりと互いの唇が近づき……。

 

「でも、お預けね」

 

 マークの唇を止めるシャマルの人差し指。

 

「どうして?」

「私、誰かに見られながらキスをする趣味は無いの」

「……あん?」

 

 彼女が指と視線が示す先。見れば、リビングのドアからこちらを覗きこんでいる影五つ。

 全員がどうして良いか分からず、顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。その姿にマークは「成程ね」と口元を歪める。

 

「ま、誰かに見られながらっていうのも刺激的かもしれないぞ?」

「偶には良いかもしれないわね。でもあっちには少し刺激が強すぎるみたい。強すぎる刺激はかえって毒になるわ」

「ごもっとも」

 

 マークが名残惜しそうにシャマルを開放する。そしてシャマルもまた、マークの体温を一秒でも長く感じていたいかのように、ゆっくりと彼から離れた。

 

「やれやれ、シンデレラの魔法が解ける時間って訳か」

「ならまた魔法をかけてくれればいいわ。不死鳥の魔法使いさん」

「了解だ。湖のシンデレラ」

 

 そう言ったマークに片目を瞑り、シャマルは中に入って行く。ドアの影から見ていたはやて達に何か言われているが、彼女はいつもの笑顔で少し散らかったテーブルを片づけている。

 それを眺めながら、すっかり薄くなってしまったウィスキーを飲んでいると着替えたヴィータがやってきた。その顔はまだ赤い。先ほどの場面の火照りがまだ抜けないのだろうか。

 

「ったく、人の家で何やってんだよお前は」

「おやおや、お子様には刺激が強かったか?」

「……アイゼンの錆にしてやっか?」

「おお、怖い怖い」

 

 ギロリと睨みつけられるが、マークはどこ吹く風。全く気にしていない。そんな彼の様子に諦めたのか、ヴィータは盛大に溜息を吐きだした。

 

「別に人様のそういうのに口出すつもりはねぇけどよ……。遊びでシャマルに手ぇ出すなら容赦しねぇぞ」

「安心しろ。遊びも本気でかかるのが俺だ」

「テメェ……やっぱり」

「遊びから始まる本気もあるって事だよ」

 

 いきり立つヴィータの頭に手を乗せ、マークは中に入って行く。呆気を取られてそこに取り残されるヴィータ。口をへの字に曲げてその背を見送っている。

 

「……は? おいマーク! それは一体どういうこった!!」

 

 喚きながら中に入って行くが、はやてにたしなめられてヴィータはそれっきり大人しくなった。

 そして明日は全員が久しぶりに揃って休みだと言う事で、眠っているメンバーはそのままに静かな二次会が幕を開けたのだった。

 

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