咲-Saki-《風神録》   作:朝霞リョウマ

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 本日の更新はここまで。

 同時進行でにじファン未掲載の書き下ろし(?)シーンの執筆中。

 ……テストあるけどね。


日常編・南一局一本場『とある二人の麻雀技巧・後編』

 

 

 

 前回までのあらすじ。

 

南 加治木ゆみ 28600

西 風祭御人  17600

北 蒲原智美  22300

東 東横桃子  36500

 

 気が付いたら最下位でした。

 

(トップとの差は18900点。まだ東四局とはいえ、これ以上引き離されるのはマズイ)

 

 そろそろ、調子上げてかないとなぁ……。

 

 

 

咲-Saki-《風神録》

 日常編・南一局一本場 『とある二人の麻雀技巧(マージャンスキル)・後編』

 

 

 

《東四局一本場 親:東横桃子 ドラ:八筒》

 

 Side:津山睦月

 

 現在、麻雀部の部室では先輩の二人と後輩の二人が対局中だ。順位は、昨日入部したばかりの東横さんが一位、以下、加治木先輩、部長、これまた新入部員である風祭君と続く。

 

 私は対局から外れているため、四人の後ろを転々と歩きながら手牌を覗かせてもらっている。

 

・御人の手牌

 89七八八八九九壱弐参北北 7

 

 十四巡目でこの手配。私だったら……ここは八萬切りだな。ペンチャン待ちになるが、これば一盃口(イーペーコー)平和(ピンフ)にチャンタだ。ドラもあるし、リーチすればツモっても満貫だ。

 

「リーチ」

 

(――は?)

 

 今、風祭君がリーチをしたのはいい。けれど、彼は何を切った? 私の目間違いでなければ、彼が切ったのは……。

 

(ち、七萬……!?)

 

 私には理解できない。どうしてこの場面で九萬と北のシャボ待ちに? おまけに北は既に枯れており、九萬も残り一枚だ。

 

 しかも下家の部長から七萬が切られた。もし八萬を切っていれば一発だった。

 

「ロン、2900(ニック)3200(ザンニ)だ」

 

 しかし、運が良かったのか、最後の九萬は対面の東横さんから放銃された。ただ一発でもないので、点数は微々たるもの。

 

 果たして彼は何を考えているんだ……?

 

南 加治木ゆみ 28600

西 風祭御人  20800(+3200)

北 蒲原智美  22300

東 東横桃子  33300(-3200)

 

 Side:津山睦月 out

 

 

 

   †

 

 

 

 Side:加治木ゆみ

 

《南一局 親:加治木ゆみ ドラ:三筒》

 

 南場に入り親番が回ってきたが、何やら嫌な予感が漂ってくるな。その出所は、下家の御人。

 

 先ほどの御人の和了は不自然だった。

 

 あいつはリーチをかけた際、八萬ではなく七萬を切った。いくらペンチャン待ちとはいえ、あの状況ではシャボ待ちより出やすい牌には違いなかった。それなのにも関わらず、あいつはほとんど悩むそぶりも見せずに七萬を切ったのだ。

 

 思えば、こいつは昔からこういったことが度々あった。所謂、分の悪い賭けというものだ。

 

 例えるなら「九割の確立で当たるクジ」と「一割の確立で当たるクジ」を選べと言われたとする。普通の人間なら、当たりを望むのならば前者のクジを選ぶだろう。普段の御人ももちろんそちらを選ぶ。しかし、御人は唐突に何のためらいもなく後者を選ぶときがあるのだ。

 

 もちろん、疑問に思い、何度も尋ねたことがあった。

 

『どうして確立の低い方を選ぶんだ?』

 

 その質問に、御人はいつも笑いながら同じ文句で返すのだが……なんだったかな。

 

 っと、いかんいかん、今は対局(こちら)に集中せねば。

 

・ゆみの手配

 178ニ四(アカ)六弐参捌西發發 三

 

 ふむ、悪くはない。發を鳴いてもいいが、赤ドラもあることだ。ここはじっくりと腰を据えていこう。

 

 そして数巡後。

 

・ゆみの手配

 789ニ三四(アカ)六弐参捌發發 七

 

 よし、張ったぞ。役は無いが、裏ドラに期待、といったところか。

 

「リーチ」

 

 リーチ宣言と共に千点棒を出す。

 

 そのときだった。

 

 

 

「……んー、ゆみ姉もリーチか……じゃあ、俺もそろそろかな」

 

 

 

 その声に、手配を確認していた目線を上げる。

 

 聞こえてきた声の主、御人は、静かに笑っていた。

 

「んじゃ、リーチ」

 

(!?)

 

 そしてそのままツモした牌を切り出したと同時にそう宣言した。

 

(ツモ切りリーチ……!?)

 

 ざわりと鳥肌が立った。

 

 蒲原と東横はただツモ切りリーチを訝しげに思っていたようだが、それ以上は何も感じていないらしい。

 

 しかし、何かがある。

 

 本能的に一発を消さなければならないような気がした。しかし、リーチをかけてしまった私はロン以外で鳴くことはできない。

 

 幸い、ツモった牌は安牌だった。自分に一発が直撃することはなかった。

 

 そして、御人が牌に手を伸ばす。

 

 

 

「……ツモ」

 

 

 

 ――ああ、そうだ思い出した。

 

 

 

・御人の手配

 11122三三七八九南南南 三

 

「リーチ一発、ダブ南三暗刻……裏ドラは乗らなかったけど……3000・6000だ」

 

 

 

 ――御人がいつも言う言葉。

 

 

 

「よーやく、風が吹いてきたみたいだ」

 

 そう言いながら、御人は笑った。

 

 その笑みは、昔のなんら変わっていなかった。

 

東 加治木ゆみ 22600(-6000)

南 風祭御人  32800(+12000)

西 蒲原智美  19300(-3000)

北 東横桃子  30300(-3000)

 

 Side:加治木ゆみ out

 

 

 

   †

 

 

 

 対局終了。

 

 いやー、久しぶりに真面目に麻雀した気がするよ。久しぶりに『風』も読めたし。やっぱりまだまだ衰えていないってことだな。

 

……ん? 対局の結果?

 

 いやいや、いいじゃんじゃん別に。俺が跳萬和了って終わったってことで。

 

 ……聞くの? 聞いちゃうの?

 

 

 

 ……ハ コ り ま し た け ど 何 か ?

 

 

 

 自分の親番で調子に乗った結果、ゆみ姉の国士直撃しましたよ! 32000点だからギリ生き残ったかに思えたがその一巡前にリーチかけたおかげで200点足らずに飛びましたよ畜生!

 

「か、かける言葉が見つからない……」

 

「ワハハー、格好付けた割にはあっけなかったな」

 

「ふ、結局、従弟(オマエ)従姉(ワタシ)には勝てないってことさ」

 

「げ、元気出してくださいっす」

 

 モモの優しさが身に染みる……こ、今度こそ絶対カッテヤルー!!

 

 俺の魂の叫びが夕焼け空に響き渡り、画面がワイプしていくようなそんな錯覚に陥った高校生のとある春の出来事だったとさ。

 

終われ。

 

 

 

《南二局に続く》




 相変わらず対局シーンは苦手。

 誰か代わりに書いてくれないかしら。



   †



“風祭御人は称号『風見鶏』を手に入れました”
『風見鶏』
その場に流れる風を肌で感じ、理解する。
それはまるで風向きを知らせる風見鶏が如く。

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