ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
このエピソードからいよいよ原作1巻第1章…の筈ですが、タイトル通りのっけから原作にないシーンから始まってたりします(^^

そして後半はオラトリア風味にロキ・ファミリアなんかもちらほらと。

表現がアレな部分が多かったのでちょい修正してみました。


第001章:その少年が鍛治神より剣を賜るのは間違っているだろうか
第010話 ”章のプロローグなのに原作に無いシーンから始まるのは間違ってるだろうか”


 

 

 

さて、本来ある筈だった歴史ではミノタウロスの返り血で汚れたどこか白い兎を思わせる健気な主人公が、オラリオの街を突っ切りギルドへ向かうシーンから始まる筈だった。

 

しかし、残念ながらこのシリーズの主人公は”強くて可愛い兎さん”ではない。

どちらかと言えばアイズ・ヴァレンシュタインの言うとおり、下手に手を出せば即座に喉笛を食い千切りかねない”獰猛な猫科の肉食獣”であろう。

 

故に【新たなる牙(エリュシオン)】を得た主人公……キリト・ノワールはダンジョンの深部を目指した。

 

「私の刃は凶暴です……あれ、このフレーズどこかで聞いたことあるような?」

 

君はフロスト兄弟の兄のほうか?とツッコミたいところだが、ここはあえて『凶暴なのはむしろお前の方だよ! 特にダンジョンのモンスターたちにとってはなぁ!!』とツッコミを入れておこう。

いやマジで凶暴を通り越して凶悪だ。

なにしろ……

 

 

 

***

 

 

 

ダンジョン第7層

 

「ハァッ!」

 

”ザスッ!”

 

俺は実戦剣術(ソードアート)の技、”アーマースラッシュ”で右後ろのニ脚をまとめて関節の継ぎ目から両断し、キラーアントを転倒させる。

アーマースラッシュはアーマーピアースの応用技で、後者が元々は短剣技(ダガー・スキル)で『鎧の隙間を切っ先で貫く技』であるのに対し、前者は『鎧の継ぎ目に刃を走らせ生身を切り裂く技』だ。

根っこは一緒で”見切り”と集中力で相手の弱点を見極め、最良のタイミングで力を狭所に一点に集中させ攻めるというもの。

技の違いは、大雑把に言えば突くか斬るかの違いくらいだ。

これは単体の技ではあるけど”貫き技”を体系化した剣技というのもある。

一応、俺もそのモドキ的なテクニックは使ってはいるけど、

 

(それを”(かん)”と呼ぶには俺の技はまだ未熟だな)

 

その体系、俺がいつか習得したいと思ってる”貫”は、その名の通り相手の防御を”貫き通す”ことを目的とした体系で、これを習得できたら相手は『自分の防御を俺の剣がすり抜けた』ように感じると思う。

もっともこれは対人用に特化したと言ってもいい技で、人体工学や運動生理学等の解剖学、人間の死角の把握や戦闘状態における心理まで計算して”貫く”ことを実現させるのでかなりハードルは高いだろう。

 

 

 

もっと派手な斬撃技や打突技もあるにはあるけど、俺は本来はこういう使い勝手のいい……溜めやモーションのいらない、地味だけど実戦的な技の方を好む。

この手の地味技は基本技や基本技の延長の範疇として捉えられおろそかにする輩も多いが、ちゃんと突き詰めてタイミングを選べば、絶大な威力を発揮する。

それに慣れれば普通の斬撃や剣撃にも相乗させられ、威力の引き上げや付与効果を持たせられる”効果的な追撃要素(エクストラ・ダメージ・スキル)”にもなる。

 

(まさか甲冑や鎧を着た相手との戦闘を想定した技が、モンスター相手にここまで有効だとは思わなかったよ)

 

キラーアントは甲虫類のように硬い甲殻をもつ。その防御力はゴブリンなんかの本当の雑魚と比べるなら雲泥の差だ。

しかし、

 

(流石に『動かさなくてはならない』関節までは硬くはできない)

 

ΕΛΥΣΙΟΝ(エリュシオン)】のスペックを考えたらキラーアントの甲殻くらい野菜を切るより簡単に切断できそうだけど、

 

(弱点を狙えるのに狙わないのは俺の流儀に反してるしな)

 

惰弱と罵られようと俺は勝負の理想は『可能な限り楽に勝つ』だと思ってる。

決闘みたいに”後先考えなくていい一戦”ならその限りじゃないけど、人間相手の複数が入り乱れるような乱戦やモンスターがぽこぽこ生まれてくるダンジョンじゃ、戦いが予想外に長引くことや、戦闘が終わったと油断した瞬間に始まる予想外の戦いが当たり前のようにおこる。

そんな”不測の事態”にいち早く対処するために余力は可能な限り残しておくべきだ。

楽して勝つのは、その余力を作り出すために必要な定石だろう。

 

疲労ってのは戦闘が長期化すればするほど、戦場が混沌とすればするほど恐ろしい代物に変わってくる。

体力の欠落は、集中力を奪い思考のスピードを奪い正常な判断力を奪い、身体を鉛を巻きつけたように鈍くさせる。

万全な状態なら簡単に避けられた攻撃も、余力が無く疲れ切った状態でなら容易く喰らう。

 

(そして人間の中には洞察力と悪知恵に長けて、そんな瞬間を手薬煉引いて待ってる連中も多い)

 

今にして思えば、俺が切り伏せてきた連中は多かれ少なかれそんな手合いばかりだった気がするなぁ……

 

「おっと」

 

思考を深化させる前にすかさず返す刀で倒れたキラーアントの頭部を突き刺した。

キラーアントは瀕死になると特殊なフェロモンを出して仲間を呼び寄せる習性がある。

モンスターのクセに姿だけでなくそんなとこまで虫っぽいな、こいつら。

 

(キラーアントだけ呼び寄せたいならともかく、)

 

「俺はさっさと下の階層に行きたいだけだからな」

 

トドメを躊躇う理由は無い。

それにしても……

 

「本当に手に馴染む剣だなぁ~」

 

逆手片手突き(アイスピック・グリップ)でアーマーピアースを相乗させた一撃で頭を串刺しにしたエリュシオンだったが、毛ほどの刃毀れ一つ起こしてない切っ先を見て、剣の出来をある程度はわかっていたとはいえやっぱり驚く。

 

(もしかしたら”不壊属性(デュランダル)”を付与されてるのかもな)

 

他にも俺の手にやけに馴染んだり、あるいは俺が羽根のようにこの漆黒の剣を軽く感じるというのもおそらく同じく何らかの細工だろう。

 

(特に軽いってのは曲者かもな……)

 

どこぞの”まにわに”の忍法のように本当に重さを消してるわけじゃない。

斬撃の威力や手応えから判断する限り、その長さや分厚さに見合った物理的な重さは実際にはあるようだ。

ただ俺の感覚や、本当なら重さに見合ったフィードバックがあるはずの筋肉疲労や肉体の負荷がどうにも感じられない。

 

(今は深く考えるのはよそう)

 

『自分が思う存分に振るっても壊れない剣』があるだけで満足すべきだ。

俺は足元から円を描くように散らばるキラーアントやその他の第7階層に巣食うモンスターを見据え、剣を背負った鞘にしまう。

 

「さて、とりあえず10層あたりまで潜ってみるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

さて、舞台は変わりここはダンジョン15階層。

新種の芋虫型モンスターとの遭遇(エンカウント)により負傷者を出すと同時に多くの装備を失った【ロキ・ファミリア】のダンジョン攻略選抜パーティーは、51階層から撤退していた。

 

そんな彼らがミノタウロスの群れに襲撃されたのが第17階層。

いくら装備の大半を失っていて負傷者を抱えてると言っても、オラリオ最大手ファミリアの実力は伊達ではなく、”たかがミノタウロス”など何匹束になって襲ってこようが物の数ではない。

何せついさっきまで強力な51階層の新旧モンスターと戦い、17層に戻るまでミノタウロスより強力なフレイムロックやスパルトイを退けてきたのだから、それも当然といえよう。

 

とはいえそれなりに強力な階層主(モンスターレックス)のうろついてる階層にいつまでもいる意味はないと判断し、現在は15階層で小休止をとっていた。

どちらかと言えば、襲い掛かってきたのに情況不利と見るや一斉に上層に向けて逃げ出したミノタウロスの群れを追いかけ、それを捕捉して一匹を除いて殲滅したのがこの15階層だった。

その戦いの後、なし崩し的に休息を取ってるという形だろう。

 

【ロキ・ファミリア】の団長でパーティーのリーダーも勤めている経験豊かな冒険者、小人族(パルゥム)の”フィン・ディムナ”にとっても今回のダンジョン攻略は異常事態(イレギュラー)なことばかりだった。

51層の階層主を殺すほどの強力な新種モンスターの登場に始まり、攻撃本能旺盛なミノタウロスが組織立った集団逃走を図るなど聞いたことも無い。

 

(まだまだ僕も経験不足ということか)

 

思わず自分に苦笑してしまう。

 

(それにしても……今回はアイズに大きな負担をかけてしまった)

 

51階層の新たな階層主になったかもしれない新種のボスモンスターとのソロバトルに加え、逃げおおせたミノタウロスの追撃も任せてしまった。

無論、自分の判断が間違っていたとは思ってない。

上級冒険者の集まりである自分のパーティーであるならば、ミノタウロス程度なら今のような満身創痍(ズタボロ)状態でも大した問題ではない。

だが下級冒険者、とりわけLv.1の新米冒険者(かけだし)などが当たったらひとたまりのもないだろう。

ミノタウロスがよりにもよって集団で逃げ出したのは上層、当然確率的に下級冒険者の比率が高い。

だから自分達もある程度の消耗や疲労を無視してパーティー全体で追撃し、逃がした一匹でさえも慎重をきしてアイズに追跡させた。

 

(アイズには何か特別な褒賞を用意したほうがいいかな?)

 

フィンがそんなことを考えてる間にタイミングよく、

 

「おかえり。アイズ、それにベート」

 

目当ての二人が帰ってきたようだ。

にこやかにアイズ・ヴァレンシュタインと狼系獣人(ウェアウルフ)であるベート・ローガの二人の帰還を迎えるフィン。

追跡を命じたのはアイズだけだったが、ベートが素直さを著しく欠いた台詞を吐きながら彼女の尻を追いかけるのはいつものことなので、特に気にはしていない。

それが後にまたベートが”アマゾネス姉妹の妹の方(ティオナ・ヒリュテ)”にからかわれるネタになるかもしれないが、フィンにとってはそれも『微笑ましい日常』の一部だ。

 

「ただいま。フィン」

 

「……おう」

 

(あれ?)

 

アイズは平常運転のようだが、ベートの様子がどうもおかしい。

不機嫌そう……なのはいつもの事だが、いつもは鉄火肌系の苛立ちのような感じなのだが、今はなんというか覇気が無い。いつもはピンと張った尻尾も微妙に垂れてる気がした。

 

「ベート……何かあったのかい?」

 

「どーせまたアイズにさらっと袖にされたんじゃないの~?」

 

ケタケタと笑いながら早速からかいにきたのは胸が薄……もとい。先ほど出たアマゾネス姉妹の妹の方、褐色の肌と高い戦闘力はアマゾネスっぽいけど胸には種族的特長があらわれてないショートカットの黒髪がよく似合う”ティオナ・ヒリュテ”だったが、

 

「うっせ」

 

ベートはいつものように文字通り噛み付くような返答ではなく、ただ面倒くさそうにそう返しただけだった。

そのベートらしかぬリアクションに釈然としないパーティー一同であるが、フィンにはその前に確認しなくてはならないことがあった。

 

「アイズ、ミノタウロスは倒せた?」

 

そう、それが今は一番の懸念だ。例え一匹でも駆け出し冒険者にとっては危険すぎる相手なのだから。

 

「うん。でも倒したのは私じゃない」

 

「えっ?」

 

「じゃあ、誰が?」

 

「キリト」

 

その時、フィンだけでなくその返答が聞こえたパーティー全員が同じことを思った。

曰く、

 

(((((誰?)))))

 

その空気を悟ったアイズは腕を組んで、小首をかしげながら考える。

どんな風に答えれば彼の情報が伝わるか。

 

(『Lv.1の冒険者』……違う。Lv.1の冒険者はいっぱい居る)

 

15階層にもどってくる途中、楽しそうにモンスターを斬ってるキリトの姿を見かけたが、邪魔したら悪いので挨拶せずにそのまま戻ってきた。

その時、ベートが小さく舌打ちしたけどアイズには意味はわからなかったようだ。

 

(しまった。どこのファミリアにいるのか聞くのを忘れた)

 

自分がキリトのことで知ってるのはキリト・ノワールという名前とLv.1の冒険者だけどとても強くて、真っ黒な衣装や装備で身を固めていたことくらい。

 

「キリトっていうのは、その……何者なんだい?」

 

リーダーらしく代表質問するフィンに、ある程度結論に至ったアイズは答えた。

 

「強くて獰猛な……黒豹さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。

いつもより少し長めのエピソードは楽しんでいただけたでしょうか?
このエピソードから原作の始まりなんですが……キリト、ギルドに向かわずそのままダンジョンに潜ってましたね~(^^
このシリーズのキリトは、どんだけバトルマニアックなんだか。

そしてアイズ、このシリーズで彼女がエンカウントしたのは白兎でなく黒豹だったみたいです(笑)

それではまた次回にてお会いしましょう。
これからもよろしくお願いします!

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