ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか 作:ボストーク
皆様、こんばんわ。
明日がどうにも忙しく執筆時間が取れそうもないので、半ば意地で深夜アップを強行するボストークです(^^
さて、今回も原作には無いシーンや見覚えのないキャラが……
まあでもエイナさんは元気でヤロー共を書くのが楽しいエピソードでした(えっ?)
さてここはオラリオ、冒険者の街。
古今東西繁栄する街のご他聞に漏れず、ここでも成功や栄光で光輝く場所の影でどす黒く蠢く闇があり、神がいても人は心安らかにすごせるわけではない。
なぜなら”この地”に降臨せし神は、決して人を救済しようとなどしないからだ。
退屈という理由で天を飛び出し、地上で人間とともに不便と不自由を満喫しようとする神々など、所詮そんなものだろう。
人々の営みと幸福を見守るような神ならば、人の持つ『変化』という要素を羨んで下界へ降りたりしないだろう。
『God's in his heaven, All's right with the world. (天におわします我らが神よ、世はことにおいて他もなし)』
などということは断じてない。
欲望に忠実な人間とその亜種と、不変の存在であるが故に変化こそが最大の娯楽となる神の組み合わせが平和な世界を生むわけもない。
オラリオは、その最良のサンプルのような街だった……
***
大抵のファンタジー系の小説や漫画、RPGには【冒険者ギルド】というものが登場する。
大抵の冒険者はそこでアイテムの売買をしたりクエストを受けたりするものだが、オラリオにもその手の機関は存在する。しかも立派な”公共機関”としてだ。
またオラリオでは冒険者ギルドに”冒険者”という枕詞は付かない。
なぜなら、ことオラリオでは『ギルドはそもそも冒険者のために誕生したのが始まりなのだから』だ。
故にオラリオでは冒険者ギルドこそがギルドのオリジンであり、ギルドと言えば冒険者ギルドのことを指す。それが街全体の体質も現している。
そうオラリオは『冒険者に依存し、そうであるが故に冒険者を優遇する街』でもあった。
別におかしな話じゃない。
オラリオはそもそも神代の昔よりも遥か太古から
ダンジョンにはモンスターが付き物であり、モンスターとダンジョンが揃うならそれを生活の糧とする冒険者も集まってくるのもまた必然。
オラリオの始まりは、その冒険者相手の商人達が集うところから始まった。
神々の降臨と”塔”の破壊など様々な紆余曲折はあったが、ダンジョンとモンスターは健在でオラリオの繁栄は未だ翳りをみせていない。
つまり【ダンジョン/モンスター/冒険者】という
以上の様な理由から、街中でもっとも賑わいをみせる場所のひとつとしてあげられるのが、前出の【ギルド】である。
その一室では……
「いい、キリト君。
そうレクチャーするのは可愛いけど美人系のハーフ・エルフ、本人曰く真面目が売りのギルドの受付嬢”エイナ・チュール”だ。
「ええ、そうですね」
頷くのはエイナ曰く『無茶で無謀という言葉を人型に固めたような黒尽くめの少年』である”キリト・ノワール”だ。
議題は当然のように彼がテスター権をゲットした”漆黒の長剣”にまつわることなのだが、
「だから【ロキ・ファミリア】の選抜パーティーがダンジョンから帰ってきてないと意味がないんだけど……ちょっと待っててね」
エイナは立ち上がって少し席を外した後に程なく戻り、
「換金はしていたみたいだから……もう地上には帰ってきてるみたいね」
ダンジョンの”戦利品”を換金できる場所は、冒険者の街だけあって
公的機関だけあって高くも安くもない『基準となる値段』での買い取り価格だが、足元を見ない明朗会計であるだけに大半の冒険者はこの二ヶ所のどちらかを換金場所として利用していた。
ロキ・ファミリアは、どうやら込み合うことの多いバベルよりもギルドをよく利用しているようだ。
「むしろ私としては、15階層にいたパーティーより10階層に居た君が遅く帰ってきたことに、どんだけモンスターを斬ったのかと小一時間ほど問い詰めたい気分なんだけど?」
口元は笑っているが目は笑ってないエイナの発言にキリトは少し頬を引きつらせつつ、
「じゃあ、もう【ゴブニュ・ファミリア】に行ってもいいってことですよね?」
慌てて話題を戻す。冒険者としての経験は浅いが、その生い立ちから生存に関わる危機感知能力が極めて高いのもキリトの特徴と言えよう。
「帰ってきてからそんなに時間は経ってないから、まだ荷解きとか反省会かねた事後ミーティングしてるんじゃないかしら? 聞いた限りだとかなり大規模なパーティーだったみたいだしね」
「う~ん……じゃあ、どこで時間潰そうかな?」
「それ以前に拾った魔石やドロップアイテムを、まずは換金してきなさいって。今回のダンジョン攻略だってそこそこ装備を消耗したんでしょ?」
「そりゃそうだ」
無邪気に笑うキリトにつられて笑うエイナ。
こうして見ていると、二人とも顔立ちが整ってるだけあって仲の良い姉弟に見えるから不思議だ。
見ようによっては姉妹に見えなくともないが、そこはツッコまない方向で。
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さて懐も暖かくなったところでキリトはギルドを出て再び街へ。
エイナとの別れ際の挨拶は、「今度一緒に食事でもしよう」なのだが、生憎と今のところこの約束は果たされてない。
別に口約束ではあるのだがキリトは『日頃の感謝をこめて』という意味で、エイナも『やたらと手のかかる弟との食事も悪くないわね♪』という具合で二人そろって割と真面目にその約束を果たそうとしているのだが、どうにもタイミングが合わないらしい。
それはさておき、キリトが向かっているのはギルドと同じ北西のメインルートに立地する『
もっとも、その前に時間つぶしもかねて評判のいい道具屋の『リーテイル』に足を伸ばし、消耗品一式を買い揃えて店に預けてきていたのだが。
そして辿り着いたのは路地裏、なんとなく湿気がこもりそうな掛け値なしの裏通りだ。
そこに居を構える工房こそが、”
「御免。邪魔するよ」
キリトは良く言えば重厚で渋い、悪く言えば旧態依然とした『鍛冶師達の仕事場』に足を踏み入れた。
同じ鍛冶屋ながらウルトラ・メジャーな【ヘファイストス・ファミリア】とは大分趣が違うことにキリトは驚く。
あっちは北東のメインストリートの一等地に、ブティックも裸足で逃げ出すほどの豪奢で瀟洒な工房兼ショウルームを構えているのだが、
(このあたりがゴブニュ・ファミリアとヘファイストス・ファミリアのスタンスの違いなのかもな……)
識者の評判では、ゴブニュとヘファイストス両ファミリアの腕前は甲乙付けがたいとも言われている。
冒険者なら誰もが所有を望み憧れるヘファイストス・ファミリアの製品は確かに『至高』だろう。
それがブランド力であり、商売戦略ということだ。
対してゴブニュ・ファミリアは知名度や販売勢力は大きく劣る。
しかしそれは、
「華美や虚飾を一切捨て、ただ真摯に
キリトはまだ若い。あるいは青い。
彼は『古の鍛治房』と呼んでいいこの雰囲気を剣士としての本能……『良き武器を嗅ぎ付ける嗅覚と、良い武器を見極める目利き』から一目で気に入り、いつのまにか素直な気持ちを口から外側に出してることに気付いていなかった。
そしてその言霊が、いつの間にか『漢達の仕事場』から鎚の音を奪い、視線を釘付けにしていることに……
「故に愚直なまでに目指す先は、神々への奉納に足る”逸品”のみ……その姿、まさに『孤高』たらんや」
”ウオォォォーーーッ!!”
突如巻き起こった職人達の雄たけびに、正気に無理やり戻されたキリトは思わずびくりと身体を竦ませた。
もともと男としては線の細いキリトだったが、その仕草が妙に女性っぽい華奢な可憐さを醸し出していたせいか、
「姉ちゃん、よく言った!」
「お、俺は嬉しいぜ! 姉ちゃんみたいな別嬪さんが俺達の仕事を理解してくれるなんてようぅっ!」
「そうだ! 俺達に華はいらねえっ!!」
「見栄えしかわからねぇ阿呆どもの支持なんてものいらねぇ!」
「そんなモンはお綺麗が自慢のヘファイストスにでもくれてやれっ!!」
「例え男臭い汗にまみれても、”孤高”にいたれりゃ文句はねえっ!」
「「「「「ゴブニュ、万歳!!」」」」」
主にヤロー達が大はしゃぎである。
古今東西どころか異世界までも、男という生物は綺麗な女性に認められるというのは、無条件に嬉しいらしい。
それが例え性別を勘違いしていても、だ。
(ど、どうしよう……)
性別が誤認されてるのは大変面白くはないが……キリトは自分がある意味、ミノタウロス戦よりも危機的状況に陥ってることに気が付いていた。
自分の良い意味での失言(?)から、場は沸騰。正直、どう収拾つけていいかわからない。
しかし、その時救いの神が現れた!
「煩えっ! 黙れ落ち着け沈まりやがれっ!!」
怒声と呼ぶにはやや可愛らしい怒鳴り声が響いた。
「若造はともかく、いい歳したオッサンまでが思春期のガキみてぇにいちいちのぼせんじゃねぇっ!!」
よく聞けば、その声は随分と低いところから聞こえてくる。
具体的には男としてはさほど長身な部類ではない自分の胸辺りの高さだろうか?
キリトが音源に視線を向ければ、
「悪いな姉ちゃん。こいつら腕はいいが頭は悪くてな。ちょいと誉められるとぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ発情するクセがあるんだ」
柄の長い『
***
そう幼女である。
精々キリトの胸ほどまでしかない身長に、胸も尻も綺麗なまでのぺったんぺったんロリぺったん娘、もし人間なら年齢二桁に達してないような見た目だ。
ただし、いかにも気の強そうなツリ目気味の瑠璃色の瞳には、一廉ならぬ力があった。
仕事に邪魔だから縛っているのだろうが……左右に垂れ下がる太くて長い、鮮やかな赤色の三つ編みおさげが印象的だ。
格好は工房作業ゆえにTシャツのような貫頭衣にチェックのミニスカートを組み合わせるというラフなもので、そこになぜかモンスター系らしいウサギ(?)のアップリケを縫い付けた
無論、両手には火傷や怪我を防止する為の分厚い革製の
とはいえゴツイと評して良いハンマーもエプロンもグラブも、彼女の精悍さと同居する可愛らしさをスポイルすることはない。
無骨な装備が逆にミスマッチが、彼女の可愛らしさをより際立たせているような気もするから不思議だ。
以上のような情況から考えるに、幼女と言ってもどうやら『本当に幼い女の子』ではないようだ。
かなりの重さがある筈のスレッジハンマーを軽々という感じで肩に乗せてる姿もそうだが、その全身にまとう雰囲気が只者じゃなかった。
その格好からして間違いなくこの工房の鍛治職人であり、態度を見るとファミリアの中でもかなり上層な感じだ。
「でもよ、バカどもに便乗するわけじゃねーけどさ……アンタのさっきの一言、流石のオレもグッときたぜ!」
ハンマーを握る反対側、左手で見事なサムズアップを極めながらニカッとなんとなくガキ大将っぽく笑う幼女。
キリトはそのあまりのキュートさに思わずクラっときそうになるが、なんとか押さえ込んだ。
これも普段から今は亡きキリトの祖父が、『ドキッ☆ 女だらけの自宅のリビング』という情操教育を日頃から実践していた賜物だろう。
お陰でキリトには年齢に関わらず”旧世界”に居た頃とは比較にならない女性に対する免疫が、色々な意味でついていた。
そりゃもう本当に色々な意味で。
「君は?」
とにかく最重要なのはどうもこの場で一番偉いと思われる幼女の情報収集と判断したキリトがそう問いかけると、
「オレか? オレは”ヴィータ・アームストロング”。【ゴブニュ・ファミリア】の副団長を務めてるケチな女さ」
皆様、ご愛読ありがとうございました。
ついに出してしまったシリーズ初のオリキャラ(?)登場回、楽しんでいただけましたでしょうか?
”ヴィータ・アームストロング”、もちろん元ネタは『リリ☆なのAs』の鉄槌の騎士さんです(^^
いや~、前々から『ヴィータのグラーフ・アイゼンってウォーハンマーってよりスレッジ・ハンマーっぽいよな~』と思ってたんですが、気が付いたらこんなことに(笑)
ついでに言うとある意味、【ヘファイストス・ファミリア】涙目の展開かも?
それにはしゃぐヤロー共が書いてて妙に楽しかったなぁ~。
さて次回はキリトとエリュシオンのまつわるエピソードを書く予定です。楽しみにしていただけると嬉しいですよ~。
追伸:次回の後書きは、ヴィータの設定とか入れてみようかな?