ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
やっと週末がやってきました(歓喜!)
ただ週末にも予定が割りと詰まってるので、果たしてどこまで投稿ができるやらです(^^

さて、今回のエピソードは……基本的に閑話的な感じです。
ただ、今までにないくらい甘いかもしれません。
甘いものが苦手な皆様は珈琲の準備を(笑)



追伸:ふと目が覚めて読み直したらちょっと物足らなかったので加筆しました。


第017話 ”古びた教会で囁かれたその言葉は間違っていないと信じたい”

 

 

 

西暦2025年某月某日、とある世界の東京……その片隅にて

 

 

 

「どうやら無事に旅立ってくれたようだ」

 

男は満足げに小さく笑い、

 

「酷い旅立ち……いいえ。見送りもあったものね」

 

女は苦笑をもって応えた。

 

「いいじゃないか。少なくとも彼らの生きるべく世界は、”終焉が確定した世界(ここ)”よりは希望もある」

 

「それが例え神々を名乗る者達の退屈しのぎの玩具(オモチャ)になるとしても?」

 

それは契約。神々は古来より人と契約するものだ。

無論、決して公平なものではない。

刹那の刻に生きる人は、悠久の時を生きる神々にとり公平性を重んじるような存在ではない。

公平性とは元来、同等の存在相手に意識されるものなのだから。

 

「例えオモチャになるとしても、さ。少なくとも核の焔に焼かれるよりはマシな未来な筈だろ?」

 

男の端末には既に最初の核弾頭が発射されたことを示すメッセージが浮かんでいた。

 

「希望的観測だと思うわ。きっと全ての”転生者(フォリナー)”が『死ぬより生きてるほうがマシ』と思える人生をおくれるわけはではないのだから……」

 

それは暗に『この世界と共に死んだほうがマシなのかもしれない』と告げていた。

 

「だとしてもだ。生きていれば希望と絶望は織り成すはずだ。絶望があるなら、その対極の希望もあるだろう。だが死ぬのは、絶望でも希望でもない。一切の変化のない、ただ『無』への回帰するだけだ」

 

「貴方はけっこうロマンチストなのね? 知らなかったわ」

 

「君はけっこうペシミストなんだな? 知らなかったよ」」

 

男と女はクスッと微笑み合う。

 

「最後の最後にお互いの知らない姿を見れたことは、喜ぶべきことかな?」

 

「さあ。でも今は貴方と一杯飲みたい気分だわ」

 

「乾杯しようか?」

 

「何に?」

 

男は二つ並んだワイングラスに、いつか来るはずだった彼女との記念日に用意していたとっておきのワインを注ぐ。

 

「彼らの旅立ちに幸多からんことを。彼らの行く末に”神々”の祝福あれ(Gods bless the new World)

 

「それ、もしかして皮肉?」

 

「『誰に対する』という情報を明言しないのが君らしいよ」

 

女はとても楽しそうに微笑んでいた。

それは胸が締め付けられるほど……全てを受け入れた者が出来る儚くも優しい笑みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************************************

 

 

 

 

 

それはきっと、人々の記憶から忘れられた教会に伝わる小さな優しい御伽噺(リトル・フェアリーテール)

傷ついた黒い少年剣士とのんびり妖精が織り成すような物語……

 

騎士とお姫様の物語(ロマンティック・サーガ)のような華やかさはないかもしれないけど、きっと幸せなお話だろう。

 

 

 

***

 

 

 

せっかくキリトの膝の上に座っているのに、いつまでもブーたれてるのはもったいないと思ったのか、ヘスティアの機嫌はほどなく直ったようだ。

 

(まあ、それにキー君もそこまで想い入れあるわけでもないみたいだしね~♪)

 

「くふふ。ヴァレン某、きっと君にはキー君の膝の座り心地なんてわからないだろうさ。この先ずっと」

 

「いきなり何を言い出すんだか」

 

そう苦笑するキリトであったが、今気になるのは膝の上の女神様より鞘から抜き放った漆黒の長剣”ΕΛΥΣΙΟΝ(エリュシオン)”の方らしい。

 

「ヴァレン某のことは置いておくとしてもさ……その剣、そんなに気に入ったの?」

 

「ああ。気に入ったよ」

 

”ヒュン”

 

キリトは片手で軽く振るい、小さな剣風を呼ぶ。

 

「とてもよく手に馴染むし、次第に”俺自身”にも馴染んでくるらしいからさ」

 

「ふ~ん……ボクに言わせれば妖しげな事この上ない特性に聞こえるんだけど」

 

「そうか? 俺が強くなればなるだけ”俺に合わせて最適化(オプティミニエーション)”されるなんて、いかにも鍛え甲斐があるじゃん」

 

「そんなもんなの?」

 

「そんなもんさ」

 

”パチン”

 

とキリトは後ろから抱きかかえるようにしているヘスティアの眼前で、鍔鳴りをさせて剣を鞘に収める。

 

「でもちょっと悔しいかも」

 

「何が?」

 

ちょっと拗ねたようにヘスティアはそっぽを向いて、

 

「こうなったら言っちゃうけどさ……実はさボク、キー君のために武器を用立てようと思ってたんだよ。昔の伝手を頼ってね。そのためのプランも色々考えてたんだけど、さ」

 

”ぽむ”

 

キリトは優しく黒髪のてっぺんに手を置いてそっと撫で始めた。

 

「バカだなぁ。ヘスティアはそんなことに気を回さなくたっていいよ」

 

「だって! ボクだって少しは神様みたいなことをしたい! キー君に養われてるだけじゃ、おんぶに抱っこされてるだけじゃ嫌なんだよ……ボクだって、キー君のために何かをしたいんだよぉ……」

 

自分に対する情けなさからか最後は涙声になってしまう。

その言葉は、オラリオに降り立った『退屈を殺すために人間を巻き込む』という傲慢を是とする神らしい神々としてはあまりに善良すぎた。

 

深い親愛と友愛が胸を打つ。

キリトのささくれ立った心の奥底を癒すような、まるで春の霧雨のように優しく柔らかい気持ちは、きっと恋愛感情とは別の何かだろう。

 

その気持ちを上手く表す言葉をキリトはもっていなかった。

だけど名前を知らぬその気持ちを無理やり押さえ込めるほど、大人でもなかった。

 

「莫迦だなぁ。本当に莫迦だよ。ヘスティアは……」

 

「そんなに何度もバカバカ言うこと無いじゃないか! ボクだってたまには真剣に……」

 

”ぎゅ”

 

「へぅ!?」

 

それは抱擁……キリトはさっきまでの子供を抱きかかえるようなそれではなく、気が付いたら『自分の意思』でヘスティアを痛がらせないぎりぎりの力で、彼女の小さな肢体(からだ)を抱きしめていた……

 

 

 

***

 

 

 

「もう十分だよ。十分なんだよ。ヘスティア、お前がいてくれるだけで」

 

「キー……君……?」

 

「お前が居てくれたから、俺はまだ『この世界も悪くない』って思える。爺ちゃんと死別して、俺はただ漂流するように生きてきた。ただ流れるままに斬って殺す日々だった……」

 

それはキリトが滅多に見せることの無い、恥ずかしいぐらいに素直な心の吐露……

 

 

「それが気に入らなかったと言えば嘘になる。命のやり取りをする日々はスリル満点で心底楽しかった。愛した女だってそれなりにいたよ。自分なりに真剣に精一杯に生きていた実感だってある……でもさ、」

 

キリトの声はかすれていた。

あえてその表情を語るのは、無粋というものであろう。

 

「根無し草として生きるはずだった俺を拾ってくれたのはヘスティアだったんだ。知ってるか? 俺は本当は誰かの眷属(ファミリア)になんてなる気はなかった。オラリオに立ち寄ったのだって、かつて遣り残したこと……”後始末”をするだけの予定だったんだ……」

 

 

 

「知ってたよ。君は初めて見た時、目に見えないけど傷痕(きずあと)だらけだったから……空を見上げる瞳が、なんだかとても寂しそうに見えたから……」

 

思い出すのは在り来たりの街の風景。

変哲の無い公園の階段に座り、ただ虚空を仰ぎ見ていた少年の姿……

 

(だからボクは、キー君をほうっておくことなんてできなかった)

 

伝承によれば、ヘスティアは全ての孤児の守護者なのだという。

ならきっと、その出会いには意味はあった。

 

最初は、女神としてほうっておくことなんてできなかった。

 

(でも、昨日も今日も明日も自分には関係ないって目をしてたから……)

 

 

 

***

 

 

 

『ねぇ、ボクと契約して眷属(ファミリア)になってよ』

 

気が付いたら声をかけていた。

それは、ほんの半月ほど前の話なのに……

 

(これが人間(きみ)達の思う『懐かしい』って気持ちなのかな……)

 

「ヘスティア、お前が俺にもう一度”戻りたい場所(ファミリア)”をくれた。死にかけようと手足がもげようと、這ってでも帰りたいと思える居場所をくれた。それだけで俺は、短い人間の生では返しきれないほどのものをお前からもらってる」

 

「そこが例えこんなに朽ちた教会でも……?」

 

キリトは大きく頷く。

全てを肯定するように。

 

「ああ。問題ない。お前が居てくれれば十分だ」

 

「ボクはマイナーな上にへっぽこぷーな神様だよ? 地上(ここ)では一人じゃ何もできないんだよ?」

 

「かまわない。だから二人いるんだろ? お前が俺の居場所を守り、俺がお前のために外で剣を振るう。ヘスティアをそもそも家庭の守り神だ。ほら、とてもらしい役割だろ?」

 

「今だってファミリアには人が全然集まらないよ。いつもキー君にばかり負担をかけてしまう」

 

「いいさ。俺は別に負担だなんて感じたことはないから。それに二人きりだからこそこうして好きなだけいちゃいちゃできる」

 

「バカ……バカバカバカ! キー君の方こそ本当にバカだよ。こんな駄目駄目な神様にそこまで入れ込むなんてさ……」

 

「バカで結構。それでヘスティアの側に居られるなら安いもんだ」

 

 

 

”ポロ……ポロポロ”

 

ヘスティアの瑠璃色(ラピスラズリ)の瞳から、透明な煌く雫がいくつも零れ落ちる……

 

「君は本当にひどい人間(ひと)だよ……えぐっ……神様のボクをこんな風に泣かせるなんて」

 

「その通りだ。俺は言語道断の人でなしだから。その自覚は十分にあるさ」

 

ヘスティアは泣いていた。

でもきっとそれは哀しい涙なんかじゃない。

だって彼女は泣きながら、こんなにも嬉しそうに微笑んでいるのだから……

 

「好きには色んな種類があるけどさ……でも、これだけは胸を張って言える」

 

それはきっと、小さな物語には相応しいシンプルだけど大事な言葉……

 

 

 

「大好きだよ。ヘスティア」

 

「ボクもキー君が大好き……どうしようもないくらい大好きだよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
冒頭は茅場夫婦(?)の滅び行く者たちのほろ苦い甘さを、残りはド直球な甘さを表現したかったのですが、如何だったでしょうか?

最近、私生活にまったく精神的糖分が皆無で、辛さと苦さばかりにヘキヘキしていた反動でこんな作風になってしまいましたが楽しんでいただけましたか?
一応、タグにラブコメと入れてるわけだし、たまにはこんなエピソードもいいかなぁ~と作者的には思ってたりして(^^
ヘスティアの原作のベル君との絆と、『ダンキリ』のキリトとの絆は似て非なるものだったりしますし。

さて、次回はいよいよ気になるキリトのステータスが公表!となればいいなぁ~と(笑)

それではまた次回にてお会いしましょう。
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