ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。

今回のエピソードはいよいよ明らかになるキリトのアビリティと……前回のオチ?


追伸:とある読者様から登場魔法に対するご考察をいただき、それを参考に一部解釈を変更しました。


第018話 ”キリトが意外と魔力値が高いのは間違っているのだろうか”

 

 

 

それはきっと、小さな物語には相応しいシンプルだけど大事な言葉……

 

「大好きだよ。ヘスティア」

 

「ボクもキー君が大好き……どうしようもないくらい大好きだよぉ」

 

 

 

***

 

 

 

「ねぇ、キー君……」

 

「ん?」

 

「今夜はボクを寝かさないで欲しいな……ボクをその、食べて欲しい」

 

しかしキリトはヘスティアを抱きしめたままにっこり微笑み、

 

「うん。だが断る」

 

笑顔ですっぱり、この上なく鋭く切り捨てた。

 

 

 

「ちょ! キー君! 君はどうしていつもいつも、最後の一線を越えようとするといきなりシャットアウトするのさっ!?」

 

「好きには色々な種類があるって言ったろ? 俺がヘスティアに対するのはどちらかと言えば”無償の愛(アガペー(αγαπη))”とか”家族愛(ストルゲー(στοργε))”の類で、間違っても”性愛(エロス(ερωσ))”じゃないの」

 

ちなみにこの世界で言う【神の恩恵(ファルナ)】の語源と思われる”フィリア(φιλια)”というギリシャ語があるが、その意味は【友愛】である。

これを順当な意味に捉えるかそれとも皮肉に捉えるかは、きっと意見の分かれるところであろう。

 

「むー。例え端くれでも、ギリシャ神話の一柱に数えられる身としては反論しづらいけど……すっごく納得できない!」

 

「そうむくれるなって。大好きって言葉に嘘偽りないんだし」

 

するとヘスティアは女神にあるまじきジト目で、

 

「キー君……君は一体、いくつの大好きや好きをもってるのさ?」

 

「それを聞くのか? ヘスティア……お前は地上に降りてから食べたパンの個数を覚えているのか?」

 

「キー君のちょーうーわーきーものぉーーー!!」

 

”げしげしげし!”

 

「脛を蹴るなって。地味に痛い」

 

「全然痛そうに見えないのが余計にむーかーつーくー!!」

 

 

 

***

 

 

 

「もういい! わかった……キー君、なら服を脱いでベッドに横になって」

 

「いや、だからさ」

 

するとヘスティアは自慢のツインテールを振りながらビシッとキリトを指差し、

 

「そうじゃないよ! キー君の意見は尊重しよう。眷属(こども)の頼みを聞くのも神様のたしなみなんだし。ならボクは……」

 

瞳をキランと輝かせ、

 

「神様でいいよ……なら神様らしいやりかたで、キー君をぞっこんにさせてやるんだから!」

 

キリトが思わず『それは一体どこの白い悪魔(9歳児ver)だ?』とツッコミそうになったのは誰にも責められまい。

 

「というわけでステータスの更新とスキルのチェックするよ♪ まっ、キー君がボクの眷属(ファミリア)である以上、これだけはヴァレン某だろうがどこかの鍛冶屋やってる複合混血(ハイブリット)・ドワーフ娘だろうが情報屋のネズミ系獣人女(ソウリスロープ)だろうが真似できないんだし」

 

「ヘスティアさん、やけにご指摘が具体的なのは気のせいでせうか?」

 

「さーてね。まあキー君の場合、あと数倍はいそうな予感がするんだけどな~」

 

「ぎくっ」

 

 

 

***

 

 

 

「ウフフ♪ ねぇ、キー君……」

 

うつ伏せにベッドに寝転んだキリトの腰の辺りにヘスティアは馬乗りになり、

 

「血の一滴じゃなくて背中じゅうに血を塗りたくって、ボクの匂いが二度ととれないくらい染み付け(マーキング)たいって思うのは、間違っているのかな?」

 

ハイライトに消えた瞳でのたもうた。

 

「そのヤンデレ的な発想は自重してくれると助かります。というか、それって一体どこの邪神信仰の儀式(ニャルラトホテプ・イニシエーション)だよ?」

 

いや、キリト……お前の想像した邪神『這い寄る混沌』は、絶対に別のものだ。

きっと、”うー”で”にゃー”な人(?)だろう。

 

そしてヘスティアの血液を垂らすことにより浮かび上がったキリトの背中に刺青のように刻まれた現状の総合能力値(ステイタス)は……

 

 

†††

 

冒険者Lv:Lv.1

 

基本アビリティ

力 :704(B) → 740(B)

耐久:513(D) → 518(D)

器用:801(A) → 833(A)

敏捷:847(A) → 891(A)

魔力:598(D) → 613(C)

 

魔法

防人神の慧眼(アイ・オブ・ヘイムダル)

罪深き幻惑(スプリガン・ギルティ)

 

スキル

呪詛の黒騎士(ダーク・デュラハン)

【=/=/=/=/=(←何か書き潰されたような痕跡)】

 

†††

 

 

「ほ~う。悪くないじゃん。合計経験値(エクセリア)上昇132……今までの新記録だ。第10層まで潜った甲斐はあったかな?」

 

羊皮紙に転写された自分のステイタスを見てキリトはまずそう感想をもらした。

 

「やっぱりミノタウロスとの一戦とか二桁階層の到達が大きかったと思うよ? 元々、キー君の資質的に伸び易い敏捷/器用がよく伸びてるのは勿論だけど、力の上昇幅まで大きいのはその剣、【エリュシオン】のせいかな?」

 

いくら天然でもヘスティアだって神様。見るべきところはよく見ていた。

 

「感覚的には羽根のように軽いんだけどな」

 

「それは剣の付与能力、”使い手への適合(フィッティング)”や”使い手に合わせた最適化(オプティミニエーション)”のお陰だよ。実際にはちゃんと重さがかかってるから、それがフィードバックされてるんじゃないのかな? えっと……」

 

試しにヘスティアは鞘に収まったままのエリュシオンの柄を両手にとってみると……

 

”ずしんっ♪”

 

「んぎぎぎぎぎっ!」

 

「ヘスティアさんヘスティアさん、何をやってらっしゃるので?」

 

本気で疑問の表情を浮かべるキリトだったが、ヘスティアは力みすぎたせいか涙目でぽつりと一言、

 

「……持ち上がらにゃい」

 

確かにヘスティアは非力だ。非力だが……

 

「ぐはっ!?」

 

違う意味での『こうかはばつぐんだ』ったようだ。

 

 

 

***

 

 

 

「コ、コホン! えっとボクの見立てではエリュシオンは、どんなに軽く見積もってもキー君が使ってたブラックバーンの倍以上の重さがありそうだからね。きっとそれが作用したんだと思う」

 

「なるほど。まにわに忍法の”足軽”と違って実際に重さを打ち消すんじゃなく、あくまで感じないだけでを筋力増強を促す類の肉体への負荷は本物ってことか。もしかして乳酸の分泌を抑制するとかプロテイン合成なんかの効果もあるのか? しかし、剣を振るのがアイソトニック運動の過負荷として考えるなら、超回復に必要な休息時間が必要なはずなんだけど……まさか、それもキャンセルできる筋肉性疲労に対する回復力(キュア)に関して、なんらかの追加効果とかあるのかな?」

 

何事も無かったかのように進行するヘスティアにキリトも空気を読んだのか、はたまたいつものことと割り切ったのかそれに乗っかるようだ。

どうでもいいが、元インドア・ゲーマーと思いきや、意外や意外、キリトはトレーニングや運動生理学に関してきっちりと学んでるようだ。

考えてみれば”旧世界”に居た頃から何やら”永全不動八門”なる古式の実戦剣術(あるいは複合武術か?)を齧ってたようだし、存外体育会(アスリート)系なのかもしれない。

 

「……ボクは、たまにキー君が何を言っているのかわからなくなるよ」

 

「気にするな。多分、もうあんまり意味をなさないだろう知識だから」

 

キリトは適当にお茶を濁して答えてから、

 

「でも流石に攻撃を喰らわないと耐久値は伸びないなぁ……ここは敏捷性と相殺か」

 

「むしろボクは魔力値がコンスタントに伸びてることに驚いてるよ。まあそれを言うなら、キー君は元々眷属になったときの初期パラメータも異常だったけどさ。オールアビリティがE(400)オーバーで、敏捷と器用さに至ってはD(500)オーバーだなんてあんまり聞いたことないよ。しかも初めて会ったときから魔法も使えたし」

 

「魔力に関しては先天的な【種族的特性(レーシャル・プロパティ)】ってヤツだよ。見た目はまんま人間だけど、実際には色々と他亜人種の血が混じってるようだしさ」

 

どうやらキリトは純血種の人間というわけではないようだ。

例えば、自己展開(いつわる)型ではなく幻像投射(だます)型の幻術魔法の一つである【スプリガン・ギルティ】は名前の通りスプリガンの種族固有魔法(インヒューレント・マギカ)として知られている。

 

「初期パラメータにしても魔法にしても、『職業的に必然があったから』としか言いようがないな。ヘスティアに出会う直前まで、ガチの人斬りやってたわけだしな~」

 

必要な戦術技能だったということだろうか?

キリト自身まだ若いどころか人によっては幼いと言われかねない”この世界の年齢”の少年ではあるが、冒険者になる前は通商隊の護衛(キャラバン・エスコート)盗賊討伐(シーフ・レイダー)怪物狩り(モンスター・ハント)と色々やってきたようだし。

 

 

 

「そっか。キー君、オラリオに来る前ってかなりハードな人生おくってきたもんね」

 

姿を変え形を変え戦い続けてきたからこそ、それが反映され魔法だけでなく最初から基礎アビリティも高かったのであろう。

 

「とはいえ、せっかくの【スプリガン・ギルティ(Spriggan Guilty)】も実戦で使いこなすにはまだ魔力値が少し物足りないな。とにかく自分に投影して相手に情報を誤認させる自己展開型に比べて、相手の精神(スピリタス)に幻影を飛ばして見せ付ける幻像投射型は燃費が悪いからな……今の精神力(マインド)だと少し心許無いかなあ」

 

「【アイ・オブ・ヘイムダル(Eye of Heimdall)】の方はどう?」

 

こっちはキリトのもっとも付き合いの古い魔法で、討伐した盗賊が隠し持っていた魔導書(グリモア)を奪い読んだときに顕現した力だった。

 

「今のところ使えるのは”暗視”(スターライト)”遠視”(テレズーム)”速視”(ラピッドフレーム)くらいかな? 定義的には残る『慧眼』はあと六つ。先はまだ長そうだ」

 

 

 

***

 

 

 

この魔法を説明するには、北欧神話(エッダ)に登場するヘイムダルという神の説明が必要だろう。

ヘイムダルガルドという伝承によれば「9人の母の子、9人姉妹の息子」とされている。

この神の最も有名なエピソードとしては、鋭い視覚と聴覚を持ち故に”アース神族の国(アースガルズ)”の防人役、敵対者に対する見張り番を務めていた。

 

だがやがて、その平穏は打ち破られる時がきた。

いわゆる”神々の黄昏(ラグナレク)”の始まりである。

アースガルドの終末を告げる角笛ギャラルホルンを鳴らし、忌まわしき敵の到来を報せたのがヘイムダルだった。

他にも魔剣ホフドを持ち、それを使い悪神ロキとの因縁が深い神でもあるのだが……それはいずれ別の機会にでも。

 

さて、肝心の魔法の説明であるが……

伝承に「夜でも昼と同じく100マイル先を見ることができ、草の伸びるわずかな音でさえも聞き取る鋭い耳を持っていた」と描写されるほどの鋭敏な感覚の持ち主で、その伝承を魔法術式化したのが、この【アイ・オブ・ヘイムダル】だった。

視覚に作用する非常に珍しい魔法ではあるが、これまでまったく術者が居なかったわけではない。

また、「9人の母の子、9人姉妹の息子」という伝承を元にし、理論上は『九つの慧眼』が発現されるとされている。

ただし、現状ではキリトも使える光学増幅によりどんな暗闇でも昼のように見える”暗視”(スターライト)、千里眼の一種である”遠視”(テレズーム)、動体視力強化の”速視”(ラピッドフレーム)の比較的早い段階で発動されると統計される三つ以外に、幻術を見破る”破幻視”(イマジンブレイク)、音を視覚化できる”音響視”(ヴィジソナー)、可視光領域以外も視覚として捉える”彩光視”(スペクトラル)、相手の急所や弱点を見破る”死直視”(ハデスセンス)などの計七つの慧眼だけが確認されている。

 

残る二つに至った術者はいないとされているが、一説によるとヘイムダルはアース神族の一員でありながらヴァン神族と同じように未来がわかる神だとされていることから、”未来視”(ファンタズマゴリア)の顕現が予測されている。

 

直接的な攻撃力はないが、戦闘用ではなく生活魔法としても使い勝手がよく、また熟練度が上がれば現状で顕現している六つ全ての慧眼が無詠唱化できることが確認されていた。

 

また、この魔法の優れている点は慧眼全てを重複化し、有機的に連動させ同時使用できる点にある。つまりキリトは暗視/遠視/速視を重ね掛けすることができる。

無論、その分魔力の根源となる精神力(マインド)の消耗は激しくなるが、この手の自己作用型で物理エネルギー的効果を伴わない魔法は精神力の消耗が比較的に少ないので今のキリトの魔力値や精神力でもどうにかなるようだ。

 

それともう一つ……この【防人神の慧眼(アイ・オブ・ヘイムダル)】は本来、人間以外のいくつかの種族が持つ先天的魔法が、原典(オリジナル)となっている。

キリトが魔導書(グリモア)を読んだ際にこの魔法を発現させたのは、そのオリジナルの存在をよく知っており、魔法生成の際にそれを原型にしたかららしい。

先天と後天の違いも有り、厳密には完全に同じ魔法じゃないかもしれないが、今のところ明確な差はないため故に便宜上同じ魔法としているようだ。

 

 

 

「それにしてもいっそ潔いくらい攻撃力のある魔法がないねー」

 

ヘスティアはおかしな感心の仕方をするが、

 

「要するに攻撃は、剣とかの物理だけでなんとかしろってことだろう。どうやら俺は脳筋キャラとしてやってくしかないようだよ」

 

とキリトは苦笑した。

 

 

 

***

 

 

 

「魔法については問題ないけど……見るたびにキー君の【スキル】だけは首を捻りたくなるよ」

 

「だよな」

 

二人がベッドの上で膝をあわせて見る羊皮紙に書かれた文字、それは……

 

呪詛の黒騎士(ダーク・デュラハン)

 

「「どう見ても呪いか、悪役のスキルだよな~(だよねー)」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
明らかになったキリトのスペックと前回のオチ(?)は楽しんでいただけたでしょうか?

まるで悪役もしくは呪いのような名前のスキル(笑)は次回に持ち越しです(^^

最初、キリトの魔法はどうしようかと思ってましたが、悩んだ末にこんなんなりましたが如何でしょう?
やっぱりキリトは攻撃はブレオン・メインのほうがらしいかなぁ~と。
なので魔法は、ベル君と違って物理攻撃力のないサポート系メインになりました。
チートかどうかは、正直微妙な能力な気もしますが(苦笑)

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう。

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