ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。

さて、今回のエピソードは……楽しみにしていただいた皆様、お待たせしました。
いよいよキリトの謎スキルの全貌(?)が明らかになります。

果たしてそれはいかなるものか?
楽しんでいただけたら幸いです。


追伸:修正と同時にソードスキルのちょっとした解説を追加してみました。


第019話 ”キリトのスキルが色々な意味で斜め上なのは間違っているだろうか”

 

 

 

†††

 

冒険者Lv:Lv.1

 

基本アビリティ

力 :704(B) → 740(B)

耐久:513(D) → 518(D)

器用:801(A) → 833(A)

敏捷:847(A) → 891(A)

魔力:598(D) → 613(C)

 

魔法

防人神の慧眼(アイ・オブ・ヘイムダル)

罪深き幻惑(スプリガン・ギルティ)

 

スキル

呪詛の黒騎士(ダーク・デュラハン)

【=/=/=/=/=(←何か書き潰されたような痕跡)】

 

†††

 

 

 

以上が羊皮紙にヘスティアが転写したキリト・ノワールのアビリティ一覧である。

 

キリトは約半月前にオラリオでヘスティアに拾われ(キリト談)て冒険者になる前は、通商隊の護衛(キャラバン・エスコート)盗賊討伐(シーフ・レイダー)怪物狩り(モンスター・ハント)などなど色々と戦闘系職業をやってきたようだ。

無論、前世と呼べる”旧世界”での経験……β版SAOをはじめとする数々のゲームだけでなく、実戦剣術を核とする古式武術『永全不動八門』の修行や、”この世界”で引き取り育ててくれた祖父とプチハーレムを形成していた女達/少女達から受けた戦闘を含む『生き抜くための様々な訓練』の成果もあるだろうが……このような様々な要素が絡み合い、今のキリトを形作っているのだろう。

 

それがあったからこそ、キリトはヘスティアより【神の恩恵(ファルナ)】を授けられ、冒険者としての一歩を踏み出したときに中々に異例な数字を叩き出したと推測できる。

それを数値化したのが、オールアビリティE(400)オーバー、敏捷と器用さに至ってはD(500)オーバーという数字だ。

 

オマケに魔法を二つも身につけていた。

間違っても強力な広域殲滅魔法とかではないが、燃費が悪く汎用性も高くないため今はまだ大々的に使うことは憚れるが、いざ使いこなせるようになれば意外と応用が効きそうな幻影魔法【スプリガン・ギルティ】に、逆に燃費が良く中々に使い勝手のよいマルチモードの視覚情報強化魔法【アイ・オブ・ヘイムダル】という悪くはない組み合わせだった。

 

 

 

しかし、問題がないわけではない。

いや、そもそもそれが問題と言えるのか不明だが……

 

「「どう見ても呪いか、悪役のスキルだよな~(だよねー)」」

 

そうベッドの上で膝をつき合わせたキリトとヘスティアが正直すぎる感想を漏らしたのは、ファルナを得ることにより顕現したキリトのスキル、

 

呪詛の黒騎士(ダーク・デュラハン)

 

を見た時だった。

 

 

 

***

 

 

 

†††

 

スキル【呪詛の黒騎士(ダーク・デュラハン)

 

・黒色系の武器/防具/装備との相性が種類を問わず”最高”に固定される。また銀色系のものは半減するが同じ効果が得られる。

 

・基礎アビリティから算出される最終攻撃力/防御力/回避率/クリティカル率が、隠しパラメータ【実戦剣術(ソードアート)】ならび隠しパラメータ【実戦格闘術(マーシャルアート)】、隠しパラメータ【複合体術(グランドアート)】の補正を受ける。

 

・一度の戦闘で敵を倒すたびに基礎アビリティ数値が加算される(1体倒すごとにランダムで基礎アビリティ数値のいずれかが1上昇)。ただし戦闘終了後、数値はリセットされる。

 

・首が弱点や急所にならない。

 

・冒険者Lvの上昇に伴い、スキル内容が変化する可能性がある。

 

†††

 

 

 

……とりあえず、ツッコミどころ満載だった。

 

「ま、まず言えるとすれば、このスキルが呪いだとしたら間違いなく俺自身にかけられた呪いだな。うん」

 

キリトの頬が微妙に引きつった。

 

「う、うん。ごめんキー君。神の恩恵(ファルナ)を与えたボクが言えた義理じゃないけど……その言葉を否定できないや」

 

見るのは初めてじゃないはずなのに、同様にヘスティアの頬もまた引きつっていた。

そして二人は同時に思い切り息を吸い……

 

「というか基本、武器も防具も装備も黒か銀しか色選択できないってなんだよっ!? いや、まあどっちも好きな色だけどさ」

 

「それに主神であるボクにまで隠されるパラメータってなんなんだいっ!? 最終攻撃力/防御力/回避率/クリティカル率とかって、いつの間に設定されてたの!?」

 

「だよな! つか斬れば斬るほど強くなるって、俺は狂戦士(バーサーカー)とか呪いの武器か何かかよっ!?」

 

「首が急所じゃないって何っ!? 下手なモンスターより普通に怖いよ、それっ!!」

 

「これ以上、何が変わるって? 次は”首無しの馬”でも召還できるようになるのかよっ!? ツッコミどころまだ増やす気かよっ!!」

 

 

 

と思う存分にツッコミを入れてから二人は息を整え、

 

「スキル見るたびに毎度毎度のことだけど……ヘスティア、付き合ってくれてありがとう」

 

「いいんだよ。ボクだってツッコミたいのは、一緒だから」

 

するとキリトは奇妙な笑みを浮かべて、

 

「フフフ……これだけ珍妙なスキルを持っているのは、きっと世界で俺だけに違いない。これがホントの【唯一無二の(ユニーク)・スキル】ってヤツだな」

 

「確かにボクも他で聞いたことないよ。独特(ユニーク)って意味では、もうこれ以上ないくらいユニークだよね? 多分だけど」

 

 

 

***

 

 

 

呪詛の黒騎士(ダーク・デュラハン)】の能力を解説する前に、その原型たるデュラハン(Dullahan)の存在をおさらいしておこう。

 

デュラハンはアイルランドの伝承に伝わる妖精であり、本来はコシュタ・バワー(Coiste-bodhar)という首無し馬が引く馬車に乗り、片手で手綱を持ちもう一方の手には自分の首をぶら下げているという描写がされている。

そしてバンシーと同じく『人の死を予言する存在』という定義がなされていた。

 

しかし、いつの頃から伝承は微妙に変化し、この姿に加えて『漆黒の甲冑に身を包んだ首なしの騎士』+『首無しの馬(コシュタ・バワー)に乗るアンデッド』という姿が広まり、またただ死を予言する者ではなく『人の魂を狩り取る』という属性が追加され、妖精と言うよりむしろ死神に近い描写に切り替わっていた。

 

ダーク・デュラハンのモデルになったのは、もちろん後者の首無しの騎士(デュラハン)の方だ。

 

 

 

「まあ、冷静に考えればかなり使えるスキルなんだよな……ツッコミどころ満載だけど」

 

「そうだね。キー君、魔法自体には直接戦闘力はないから、ちょうどいい戦闘力増強要素だと思うよ? ツッコミどころ満載だけどさ……」

 

二人の表情はどこか疲れているように見えるのは、気のせいだろうか?

 

「最初の黒と銀については、あえてツッコまないけどさ……そういえばキー君、前々から聞きたかったんだけど、”ソードスキル”と”ソードアート”ってどう違うの?」

 

「けっこう混同されてるけど……ソードスキルっていうのは”実戦剣技”のことで、一つの一つの技だよ。対してソードアートは、複数の技を有機的にリンクさせ戦術として完成させたもの、つまりは”実戦剣術”ってことさ。まあ、これもSAOって仮想現実遊戯(VRMMO)のマニュアルの受け売りだけどね」

 

追記するならばソードスキルもソードアートも、異世界転生の際SAOにアクセスしていた25万人以上のプレーヤー全てに『記憶として焼き付けた(インストールした)知識』であったのだが、無論、記憶として持っていてもそれを全員が『現実の技術として再現』できたわけではない。

そもそも、このソードスキル自体が単純なゲーム用モーションではなく、元々SAOの売り文句が『ゲームであっても、遊びではない』というだけあり、”建前として”は集められる限りあらゆる古今東西の実戦剣術の技を解析し、その中から最も効果的な動きを抽出し完成させた『リアルな剣技』がソードスキルとして公表されていた。

 

今にして思えば、それは『過酷な異世界で生き抜くための最低限の知識』として転生者達に贈られた、茅場なりの選別のつもりだったのかもしれない。

 

 

 

「その”ぶいあーるえむえむおー”っていうのも、実はよくわからないんだけどね」

 

するとキリトはぽんぽんとヘスティアの頭を軽く叩くように撫で、

 

「何人もの人間の精神(こころ)を繋げて、オラリオやダンジョンを幻術で作り出してそこで遊ぶようなもんさ。悪い。俺も上手く説明でそうにないや」

 

ちょっと困った顔をする。

自分が”この世界”に来るきっかけ……というよりむしろ原因となったゲームだが、もともとβ版しかプレイせず、本物を堪能する前に”始まりの街”からこの世界に飛ばされたために経験や知識を体験として語れるほどの知識はなかったし、何より『この世界の住人』として生きてきた15年近い歳月が、旧世界の多くの記憶を朧げで不確かなものに変えつつあった。

 

「あっ、ごめん。キー君を困らせるつもりはないんだよ。じゃあ最終攻撃力/防御力/回避率/クリティカル率の補正っていうのは?」

 

どうやらヘスティアは、この際だからよくわからないものは聞いてしまおうと思ってるらしい。

確かに異世界者(フォリナー)が持ち込んだ知識や概念は、女神である彼女の叡智をもってしても理解に苦しむものが多々ある。

キリトは腕を組んで、

 

「これは体感的な憶測だけど、かまわない?」

 

「うん」

 

「攻撃力/防御力/回避率/クリティカル率の四要素は、冒険者LVと五つの基礎アビリティを基本に武器や防具や装備、敵との相性や地形効果なんかの様々な要素を受けて算出されるんだけど、最終的に導き出された数値に三つの隠しパラメータに応じて10%とか15%とか変動上昇あるいは下降するって意味だと思う。”旧世界”の遊戯(ゲーム)にも、そんなシステムはあったしさ」

 

もっとも神の恩恵(ファルナ)を受けスキルが発動してから、心持ち上記の四要素が上昇してる気がするので、例え三つの隠しパラメータが低くても補正がかからないだけで下降はないのでは?とキリトは考えていた。

 

 

 

「そんなわかりにくい意地悪な数字に比べれば、『一度の戦闘で敵を倒すたびに基礎アビリティ数値が加算される』はまだわかりやすいね♪」

 

「まあ、そうかな? その分、融通は利かないけど」

 

『一度の戦闘で敵を倒すたびに基礎アビリティ数値が加算される』のより詳しい解釈は、『同一の戦闘で敵を1体倒すごとに、ランダムで基礎アビリティ数値のいずれかが1上昇』ということになる。

つまり任意のアビリティが上がるわけではない。100体のモンスターを倒した場合、合計上昇値が100になるだけで必ずしも均等割り振りにはならず、下手をすれば防御だけが100伸びるというような偏った上昇もありうるのだ。

 

「ついでに言えば数値が背中にある以上、自分じゃ確認できないから感覚で把握するしかなしさい。戦ってる最中なら尚更だな……上昇するのはありがたいけど、不安定と言えば不安定かもしれない」

 

 

 

***

 

 

 

「首が弱点や急所にならないって能力は……キー君的にはどうなの?」

 

「またコメントし辛い質問だなぁ。まず言えるのは首が弱点や急所にならないってのは、逆に言えば他の弱点や急所は健在ってことさ。少なくとも今のスキルじゃ、頭が潰されたり心臓を貫かれたりしたら普通に死ぬだろうし」

 

そして一旦言葉を区切り首の辺りをなぞるように触れながら、

 

「実際にどんな効果が起きるのかは……流石に試したくはないな」

 

「当たり前だいっ! キー君の首に刃が当たるなんて、想像しただけで顔が青くなりそうだよ!!」

 

心配性の主神にキリトは柔らかく微笑み、

 

「せいぜい万が一のときの”使い勝手の悪い保険”くらいに考えておくよ。むしろ不安なのは最後の一つ……四つ目の効果『冒険者Lvの上昇に伴い、スキル内容が変化する可能性がある』ってヤツかな? ホント、どんな変化するのやら」

 

「う~ん……基本的に【ダーク・デュラハン】って名前から、さほど縁遠いものにはならないと思うけど? 名前はスキルその物の本質を現すわけだし。でもスキル自体が斜め上だもんね」

 

「どうなるかは、実際にLv.2になってみないとわからない、か」

 

そして二人は顔を見合わせて、

 

「どっちにしても前例や類似例が無さ過ぎるから、くれぐれもスキルを過信したりしないようにね?」

 

「安心しろ、ヘスティア。ユニークすぎて逆に発動するのが怖いくらいだ」

 

 

 

「ところでさ、ヘスティア……」

 

「なにかな?」

 

「この掻き消されたような”隠しスキル”は、一体なんなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、ご愛読ありがとうございました。

存分にツッコんでいただけましたでしょうか?(笑)
いや~、我ながら無茶苦茶なスキルになってしまいました。
チートかと言われれば、これまた微妙な感じですが(^^

さて、次回は『隠されたスキル』がいよいよ明らかに……なるかは謎だったりします(えっ?)
全てはヘスティア様次第だったりして。

それでは皆様、また次回でお会いしましょう。

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