ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
なんか妙に筆が乗ってしまい、自分でも驚くほどのスピードで1話完成してしまいました。もしかして、これなんらかのバッドエンド・フラグ?(汗)

それはともかく……このエピソードからいよいよ新章突入です。
そしていきなり、世界の根幹に迫ります(^^

では、混沌が深くなる新しい章の始まりをお楽しみください♪



追伸:ちょっと一部の表現を変更し、加筆修正してみました。


第003章:この素晴らしきロクでもない世界は間違っているのだろうか
第021話 ”章のプロローグからいきなり世界の謎の根幹に触れるのは間違っているだろうか”


 

 

 

さて、時には昔の……少しキー君”たち”の話をしよっか?

 

キー君たちは【フォリナー(Foreigner)】って呼ばれている。

本来の意味は「(国籍を問わない)外国人、外人」って意味らしいけど、ボク達の世界は国って概念が希薄だから今一つピンと来ない。

確かに国家系ファミリアってのもあるけど、オラリオの住人の多くがこれと言ったイメージが無いのかもしれない。

強いて言うなら、『いつもオラリオに勝負を吹っかけてきて負けて帰る連中』くらいかな?

そもそも国家系ファミリアの住人を【フォリナー】なんて呼ばないし、外国人なんて意識もしないだろう。

 

それにフォリナーって単語には、外国人っていう直接的な意味に加えて「見慣れない、異質なもの。自分達とは生まれが違う者。アウトサイダー」ってニュアンスも含まれているらしい。

これもボク達には、あまり馴染みがないニュアンスだ。

『生まれが違う異質なもの』の代表格がダンジョンで生まれるモンスターだろうけど、あれらは間違ってもフォリナーなんて呼ばれないだろうし。

 

では、何故こんな言葉が世界にあるのだろう?

 

答えは簡単だ。

キー君たちがいたからこそ、この【フォリナー】って単語は生まれたんだ。

 

 

 

***

 

 

 

フォリナー……

『生まれが違う者たち。生き方が違っていた者たち』の意味。

だから、ボク達はフォリナーをこういう風に位置づけた。

 

異世界者(フォリナー)】、【転生者(フォリナー)】そして【受肉せし者(フォリナー)】……

 

 

 

神とは古来より人と契約するものだ。

数々の神話体系(ミトス)でも、”Αποκαλυψισ(アポカリプス)”……『終焉の日(apocalypsis)』と同じくらいその記述が出てくる。

内容はともかく、神は太古より人に崇拝されると同時に人と契約を結ぶものだし、神もそれを望む。

無論、自分が絶対的な有利者というスタンスは崩さずに。

 

だから多くの神が地上に居る間に本来の神聖にして神性を持つ天上の神々は、実に神らしく人間達と『相変わらず無責任な』契約を交わした。

神代の時代より、いつものことと言えばいつものことだ。

ただ、それが『別の世界の人間』だったというだけで。

 

滅んでしまった旧世界(オールド・ワールド)”……それが、キー君たちが『純粋な人間として生まれ、生き、そして死んでゆく』世界だった。

キー君はこんなことを言ってたっけ?

 

『そんないい世界(モン)じゃないぞ? 神々の多くは人々の心から駆逐され、大地との(えにし)は断絶さ。豊穣の大地はいつしか地下に眠る鉱物資源を巡る欲望の土地となりはて、人々は豊かさと引き換えに欲望の赴くまま地を空を海を汚していた』

 

そんな世界だったらしい。

 

『だからさ、俺はたまに思うのさ。今回の一件が無くたってそう遠くない未来に俺達は絶滅していた。惑星(ほし)から生まれたのにその環境に順応できず、エゴに忠実に徒に汚染だけを広げた。己が出した(けが)れに飲まれて滅ぶなんて、いかにも似合いの最後だ』

 

その時のキー君の瞳は、何故か忘れられない。

断じて絶望しただけの瞳じゃない。哀しいわけじゃない。

 

『だから、この世界に”転生した者(フォリナー)”たちは、どうしようもない現実(リアル)よりも仮想現実(ヴァーチャル)のほうがよほど人らしく……自分らしく生きられると思ったのかもしれない』

 

ただ、寂しそうだった。

でも、それでもキー君たちが住んでいた日本という国は比較的平和だったらしい。

 

だけど……それもある日突然、崩れ去った。

 

 

 

***

 

 

 

「ヘスティア、これは厳密には俺が経験したことでも体験したことでもない。『それ』が起きたことを知ったのは、ゲーム……SAOにダイブし、”始まりの広場”で【クソヤローの遺言(ラスト・メッセージ)】を聞いたときだ。それを差し引いて判断してくれ」

 

そう前置きしてからキー君がはじめた話は、女神の一柱であるボクでも驚くべきものだった。

 

一部を除く神々を自分達の精神(ココロ)から追い出し、魔法の代わりに上限の見えない”科学”という恐るべき力を手にした人間が最後に行き着いたのは……

 

「自らの手で”神々の黄昏(ラグナレク)”を起こすことだった」

 

皮肉だと素直に思った。

あるときは信じる人すらを異端者、背教者、背信者として神々を追放した人間が、もっとも神話的な最後を選んだのだから。

 

キー君の話が難し過ぎて、ボクもどこまで理解できてるかわからないけど……

人間は科学を進めた結果、地上でヘリオス(Ηλιοσ)……太陽を生み出す技術を身につけた。

それを大規模殲滅魔法のように地上で炸裂させることにより、街ごと大地と大気を焼き払うらしい。

しかもその人工の太陽(ヘリオス)は甚だ不完全で、炸裂と同時に大量の毒を撒き散らすみたいだ。

しかもその毒、例え毒を浴びた本人が生き延びても人の根幹(たしか”でぃーえぬえー”とか言ってたかな?)まで入り込み、次の世代の命まで蝕む凶悪なものだったらしい。

解毒薬は未だ開発されてなかった。

 

人工の太陽に焼かれなくても、じわじわと毒に殺される……あんまりに惨めな最後だと思う。

そして、この二つで殺されなくても、毒は空と海と陸を汚して作物の育たない土地にしたり、作物やに毒が入ったり、雲の中に漂い毒の雨が降り注いで飲めない水ばかりになる……

 

どんな邪神でも考え付かないだろう悲惨で凄惨な惨禍……人は自ら”それ”を生み出し、”それ”が人の意思で人を襲った。

 

 

 

***

 

 

 

しかし、その人と世界の悲惨な結末を予想した預言者であり賢者であり学士だった人物がいた。

その名は【カヤーバ】。

キー君に言わせると発音が違うらしいけど、ボク的にはこっちのほうがしっくり来る。

 

カヤーバは持てる全ての叡智と技術と神秘を用いて、『ボク達』に接触(コンタクト)してきた。

そう”この世界”の天上にいる神々に、だ。

 

カヤーバの願いはシンプルだった。

 

『この世界は直に滅ぶ。だから、そちらの世界でも生きていけそうな者たちを魂と記憶にして贈る』

 

だけど、ボクが言えた義理じゃないけど神々は常に傲慢だ。

 

「我々にお前の滅びる世界を、滅び行く人間を救済する理由は無い」

 

最初の答えはこれだった。だけど、カヤーバは諦めなかった。

 

『だが、永久にして永劫、変化なき無限の時を生きる神々よ。君達は”今の在り方”で満足かね? 25万を超える[世界の枠組みにとらわれない新たな可能性]は、本当に時を無味乾燥に持て余す君達にとって不要か?』

 

ボクはカヤーバに会ったことはないけど、良くも悪くもきっと頭が良くてズルい男なんだと思う。

カヤーバは知っていた。いや、例え知ってなくても見抜いていた。

 

天上に残る神としての力と矜持を守る神々が、実は神たる力も誇りを失いながらも引き換えに得た変化と刺激に満ちた日々を羨んでいた事に。

だから神々は問い返す。

 

「ほう。貴様は25万人の魂を、供物として差し出すというのか? ただ退屈を紛らわすための傀儡(くぐつ)となると判っていてもなお、それでも我らに捧げるというのか?」

 

『委細承知。神々よ、これは契約だ。我が望むのは、25万の魂が君達の世界で安住の地を得て受肉するまでだ。再び大地に人として生れ落ちるその時までだ。ならば、その対価がなんであろうと我の関知するところではない』

 

「ハッハッハッ!! 言うではないか、人間! 神をも恐れぬというのはこのことぞ。我らは傲慢である。いや傲慢になくば神に非ず。しかし、貴様は我らに匹敵するほどに傲慢だ!!」

 

『ふん。もはや世界が滅び、我が同胞(みんぞく)もそれに巻き込まれ滅亡の瀬戸際に立たされている最中、それを僅かであっても覆そうというのだ……傲慢にもなるさ。我らには既に神を畏れる余力すらも潰えた』

 

「気に入ったぞ人間! 栄華を極めながらも滅びを回避できぬ矮小なる者よ!! いいだろう。神にかぶき、我らを楽しませた褒美に貴様の願いを叶えてやろう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************************************

 

 

 

 

 

こうして天上の神々は、転生者(フォリナー)を受け入れた。

ただ忘れてはいけないのは、神々は善意で受け入れたわけではないということ。

 

多くの神々が地上に降りてしまった為に死者の魂の処理や輪廻転生をデスマーチ感覚で行なっていた彼らには、暇は無くても退屈で代わり映えの無い日常に彩を加える為の刺激、退屈凌ぎが必要だった。

まったくロクデナシの神様ばかりだ。無論、当時天上にいたボクを含めても。

 

だから、天上に残る自分達の娯楽とするべく、神々は『死した”この世界の住人”の魂』になら、決してやってはいけない”細工(カラクリ)”をフォリナーたちに施した。

 

まずは自分達の目となり耳となる機能。

彼らが見たもの聞いたものを、自分達の感覚として取り込めるようにした。

キー君に言わせれば、『なるほど。俺達は生まれながらに神々の情報収集端末というわけか』とのこと。

 

神通力(アルカナム)”を使えば目や耳どころか心の声や思考を読み込んだり、あるいは本当に使い魔(アガシオン)、もしくは操り人形にすることもできた。

でも、それは神々はあえてしなかった。

神としての良心からじゃない。

そっちの方がずっと「面白い」からだ。

人間を操るなんてナンセンス。神々が見たかったのは、神々の時間に比べれば刹那の刻と言っていい寿命しかない人間が、いかに過酷なことが当たり前の運命に抗い、どんなに惨めでも足掻き生き抜いてゆくかだ。

脆い命が健気に生き、あるいは死んでゆく姿こそ、愉悦でなのだ。

それは人が自らの意思で判断し生きない限り、決して見ることのできない戯曲(ドラマ)だ。

 

そして神々は、もう一つの”悪戯(トリック)”を仕掛けた。

そのトリックは……

 

「SAOのプレイヤーの”実年齢に合わせた順番”で受肉させること」

 

 

 

***

 

 

 

キー君に言わせると、SAOに没頭(ダイブ)していたプレイヤーは実に千差万別、年齢層も様々で上は40歳代から10歳くらいの幼い女の子までいたらしい。

 

神々は転生に順列をつけた。

そう、魂を励起状態で保存してもっとも年長のプレイヤーを皮切りに、その年齢の順番に合わせて受肉させていったのだ。

 

つまり、最初の受肉者(フォリナー)が現れたのが50年近く前で、最後のフォリナーが現れたのは約10年前……

 

そう、もう気付いたよね?

なぜキー君たちがいた世界が、”滅んだ旧世界”だなんて呼ばれているのか……

そう、キー君たちの世界の終焉……【滅亡戦争(ハルマゲドン)】は、もう相対時間で半世紀前の出来事なんだよ。

 

 

 

そして今年、

 

「全てのフォリナーがSAOプレイ当時の年齢に達する」

 

天上にいる神々は『素晴らしい記念イベント』を考えてると噂されている。

もし事実なら、きっとそれはロクでもないイベントに違いない。

 

そう、人間でなく神々(ロクデナシ)を喜ばせるためのイベントなのだから……

 

ねぇ、キー君……こんなイカレた世界に転生してしまったけど、

 

 

 

「君は今、幸せかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。

グランド・プロローグ以来久しぶりのヘスティア様のモノローグはご堪能いただけたでしょうか?

裏話にはなってしまいますが、このフォリナーに関する設定は、物語を書き出す時にはすでにフォーマットとして決定していて、今回ようやく発表できた次第です。

端的に言えば「SAOの中にあった年齢差を、オラリオでどう表現するか?」を考えた末に出来たものですね(^^
この世界観を読者の皆様に受け入れていただけるか一抹の不安はありますが……
とりあえず神々相手に一歩も引かなかったカヤーバさんは『漢』だったなと(笑)

先は長いし亀進行ですが、次話&新章も楽しんでいただければ幸いです。



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