ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
ようやく待望の週末、昨日の帰宅から書き始めたエピソードがどうにか午前中に完成しました。
いや、まあアップしたらしたで、いつも通り何度も加筆修正するとは思いますが(^^

さて今回のエピソードは……朝食とサブタイ通りに伏線回収?





第022話 ”とある伏線がそろそろ回収されるのは間違っているだろうか”

 

 

 

ねぇ、キー君……こんなイカレた世界に転生してしまったけど、

 

 

 

「むにゃむにゃ……君は今……幸せかい?」

 

「ああ。勿論だ」

 

窓からそっと下弦の月の優しい光が注ぐ、夜より朝に近い時……キリトは未だまどろみの中にいる敬愛する女神様(ヘスティア)の髪をそっと撫でた。

 

「お前に会えたんだ……幸せに決まってるだろ?」

 

まるでその言葉を聞いてるかのように、ふにゃっと子供のようにあどけなく微笑むヘスティア……

今度はそのぷにぷにのほっぺたを突っつきながら、

 

「でも大変なんだぞ? こんなすぐ近くにお前の眷属(ファミリア)って建前を保ったままいるのはさ……」

 

キリトは無防備過ぎるヘスティアの寝姿に苦笑する。

 

「女神って看板を外せば、お前ほど可愛い女の子は中々いないんだからな? そこのところわかってんのかなぁ……」

 

そして頭を掻きながら、

 

「なあ、ヘスティア……お前の抱き枕にされるのって結構辛いんだぜ? 俺の理性とか自制心的に、さ」

 

彼は脳内で賢者の精神になれる架空物質【ケンジャニウム】を想像し、それの分泌をイメージしながら再び眠りに浸るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

じゅうじゅうとベーコンとグリーンピースの焼ける音……

コトコトと煮込まれるポタージュの甘い匂い……

 

”ぽふっ”

 

まだ醒め切れないまどろみの感覚のままに枕に顔を埋めると、

 

(キー君の匂いだぁ……)

 

鼻腔をくすぐるのは、できあがりつつある朝食よりも魅惑的な大好きな匂い。

この世で一番安心できる匂い……

 

「幸せ……」

 

ボクは心の底からそう呟いた。

 

「おーい。ヘスティア、朝飯ができるぞーい。そろそろ起きろー」

 

「うにゅ……もうしばらくキー君分の補充(チャージ)を……」

 

「チャージなどさせん!」

 

”スコーン!”

 

「あう!? キー君、いきなり”フライ返し投げ(メイオウ攻撃)”なんてひどいよーっ!」

 

少し涙目になりながら抗議するボク。ところでなんで「チャージなどさせん!」の後に放たれる攻撃は、すべからくメイオウ攻撃になるんだろ?

キー君によれば冥界神(ハデス)が関係してるみたいだけど……

 

「さっさと起きないネボスケ女神が悪い」

 

「キー君はもうちょっとボクにいたわりの心と情欲を持つべきだと思うよ?」

 

「前者はともかく後者は却下だ。俺は今のところ、衣服と一緒にヘスティアの神性をひん剥く気はないよ」

 

いつもつれないんだから~。

 

「……いつかその気にさせて剥かせてやるぅ!」

 

「お手柔らかにな」

 

 

 

***

 

 

 

「「いただきま~す♪」」

 

ベーコンの味付けは、キー君好みに少しスパイシー。でも美味しい。スパイシーな分、グリーンピースの甘さが映えるなー。

 

「サラダのドレッシングは自家製かな?」

 

「いや、売ってたよ。この味付け……作り主はおそらく転生者(フォリナー)と見た」

 

食べなれない味だけど、胡麻(セサミ)を磨り潰したペーストの濃厚な感じが、予想以上に野菜に合うよ。

 

パンにバターとジャムは定番。ボクはイチゴかブルーベリーだけど、キー君はいつも甘さ控えめのお手製のマーマレード。

 

「マーマレード・ボーイ……」

 

ボクの何気なくひらめいた呟きに、

 

「誰が遊だ? まあ、六反田呼ばわりされないだけマシだけどさ」

 

イマイチ意味はわからないけど、でもキー君はいつも律儀に返してくれる。

何気ない、でも間違いなく嬉しい時間。

 

 

 

〆のポタージュを堪能して、ボクは身支度を整える。

ツインテールはいつもどおりきまってると思うけど、前髪の辺りが少し気になって鏡の前で直す。

歯磨きはキー君と一緒にしたし、支度はバッチリ。

 

「じゃあキー君、いってきまーす!」

 

”Chu”

 

「ああ。いって来い!」

 

そして「いってらっしゃい/いってきます」の互いの頬へのキス。

頬へのキスは親愛の証と言うけれど、

 

(でも、やっぱりキスは”マウス・トゥ・マウス”が基本だよね?)

 

それは今後の課題だね♪

キー君が笑顔で小さく手を振って送り出してくれる。

きっとボクは、地上で一番幸せな女神なのかもしれない。

 

 

 

虹は訪れ彩を投げかけ

花は心を惹きつけて

月は静かに微笑んで

仰ぐ空には太陽が輝き

煌々しくも穢れなく

太陽と月の輪舞のように

命は巡りまた生まれ

悠久の時を刻みゆく

 

キー君、君に出会ってボクは本当に気付いたんだ。

この世はこんなにも輝きに満ちていたんだって!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***************************************

 

 

 

 

 

「聞いてくれ。”リズ”……どうしよう。ウチの女神様が可愛すぎて生きるのが辛いんだ」

 

「人の店に来るなりいきなりそれかいっ!? イッペン・死・ン・デ・ミ・ル?」

 

ここは迷宮都市オラリオの北西のメインストリート……から郊外に抜けたちょっと先の小川の岸に建つこじんまりとした水車小屋付の鍛冶工房(アトリエ)、重なる丸盾(タージュ)鎚矛(メイス)のエンブレムが掲げられた【矛盾(パラドクス)武具店】である。

 

さてこの店の名物と言えば唯一つ……というかただ一人。

この店唯一の鍛冶師兼店主兼店員兼看板娘の”リズベット”だ。

 

くせの強い赤とピンクの中間色の髪を肩にかかるくらいの長さにそろえ、豊かな胸を包む白い布地とリボンタイがいいアクセントになってるちょっとメイド服っぽい赤い仕事着(ワンピース)と真っ白なショートエプロン……

その鮮やかな衣に包んだ肢体は健康的な色気に満ちていて、足元をかためるナチュラル・ブラウンのロングブーツは中々にお洒落だ。

 

顔は美人というより可愛い系で、同じ可愛い系でもヘスティアがおっとり系なのに対し、リズベット……いや、ここは親愛をこめてリズと呼ぼう。

リズはアクティブさと良い意味での気の強さがうかがい知れる快活な感じだ。

そばかすだってこの娘にとってはチャームポイントだろう。

 

 

 

「ホント、アンタはいつもいつもそのお約束ね? いい加減、飽きないの?」

 

「バカを言うなよ。可愛いは正義だと偉い人も言っている。そういう意味ならリズも立派に正義だが」

 

「……ばか」

 

ちょっと頬を染めながらも満更ではないリズである。

しかし、平穏な時間はここまでのようだ。

 

 

 

「ところでさぁ……その正義のリズちゃんから、”我らが部隊長(アークマスター)”に質問があるんだけど?」

 

「俺に答えられることならなんなりと」

 

「わたしがプレゼントしたナイフ二本のうちの一本、どうしたのかなぁ~?」

 

「ぎっくうっ!」

 

ご主人様(アークマスター)は、ダンジョンにでも落としてきちゃったのかなぁ? まーさか他の女の子にあげちゃったとかはないわよねぇ~。ね?」

 

「サーセンでしたーーっ!!」

 

その時キリトが魅せたジャンピング土下座は、いかなる実戦剣技(ソードスキル)より鋭い技の冴えだったという。

 

 

 

***

 

 

 

「ふ~ん……【ΕΛΥΣΙΟΝ(エリュシオン)】だっけ? まとめるとキリトはその漆黒の長剣に目が眩んだってわけね?」

 

その中々味わいがある床の上では、両手を腰に当て仁王立ちのリズに、正座のキリトというかなりシュールな情景が展開されていた。

 

「これも哀しき剣士の気質(サガ)といいましょうか……そりゃツウ好みのゴブニュ・ファミリア謹製の大業物ともなれば、例え剣士じゃなくても食指が動くというものさ。俺なら尚更だ」

 

「まっ、いいわ。そういう理由だったら仕方ないから許してあげる♪」

 

ペロッと舌を出し、お茶目にウインク。

 

「へっ?」

 

「そりゃあアイズ・ヴァレンシュタインに目が眩んだっていうなら、多少は面白くないけどさ……よっと」

 

リズは正座したままのキリトの手を取ると軽い動作で引き起こし、

 

「でも剣を欲するは剣士の宿命(さだめ)。斬らない剣士に意味は無い……これでも、それが理解できないほど馬鹿な女じゃないつもりよ?」

 

”ぎゅむ”

 

そのまま歳のわりには大きく豊かな胸に抱きしめた……

 

「いい、キリト。アンタは確かに女神の眷属(ファミリア)になったのかもしれない。だけど、隣に立つのは”わたし達”なの。今は世界中に散ってるかもしれないけど、かつてもそうだったし、今だってそう。もしアンタが望むならこの先もずっとね」

 

「うん……わかってる」

 

「アンタは強くて弱いから……誰よりも強靭で誰よりも脆弱だから、だからアンタがアンタでいるためには、剣の鋼と女の柔肌が両方必要なの。それを忘れないでね?」

 

「忘れてないよ……」

 

その笑みは聖母の笑み……だけどリズの紅玉(ルビー)色の瞳の奥では、妖しい光が蠢いていた。

それはまるで強い雄を求める雌の本能のようにも見えた……

 

「だったら今は生まれたばかりの赤ちゃんみたいに無垢で弱いまま、女の柔肌を堪能しなさい。わたしはいつだって、そんなキリトを全部受け入れてあげるから」

 

 

***

 

 

 

「それにしてもさ、リズ」

 

胸に顔を埋めたまま、抵抗することなく髪を撫でられてるキリト……確かにこういう姿は少し珍しい。

 

「ん? なぁに?」

 

「やけに事情に詳しいな? というか、最初から事情をある程度わかってたっぽいしさ」

 

「あっ、バレちゃった?」

 

悪びれた様子も無くリズは笑う。

 

「どうしてだ?」

 

「少し長くなるから……そうね」

 

リズは抱きしめ軽く自慢の胸に押し付けていたキリトの頭を解放する。

ちょっと名残惜しそうな顔をするキリトを尻目に、リズはそそくさドアにかけていた真鍮製のプレートをひっくり返し【OPEN】を【CLOSED】にするとカーテンも閉めた。

 

少し薄暗くなった店内に置かれた、おそらくは接客用の応接セットのソファの端っこに座ると、

 

「キリト、ここに来て」

 

ぽんぽんと自分の太ももを叩いて促したのだった。

 

 

 

「キリト……わたしのフルネーム、まだ覚えてる?」

 

膝枕をするキリトに、リズはそう雪の街の駅前ベンチに座る少年に問いかけるように切り出した。

キリトは二時間も雪の中で待たされてもないし、リズの手には缶コーヒーは無いが。

 

「えっと……”リズベット・パラドクス”だっけ?」

 

「いや、それ入団のときに自分の武器をもじって洒落でつけたファミリーネームだから。あそこじゃ組織の性質上、実名は隠蔽だったでしょ?」

 

残念。正解は得られなかった。

ついでに言えば店の屋号もこの偽名(ダミー)からつけたようだ。

 

「じゃあ”裂海(れっかい)”?」

 

「それこそ【特務殲滅隊(けつめいきしだん)】時代の秘匿符牒(コールサイン)じゃない」

 

「となると……俺、リズのフルネーム知らないんだけど?」

 

「えっ?」

 

きょとんとして目をぱちくりさせるリズ。

この回答はどうやら想定外であったらしい。

 

「もしかして……わたしってば、キリトに本名教えてなかったっけ?」

 

「ああ。パラドクス姓が偽名なら、俺は知らないぞ」

 

「あちゃー。こりゃリズお姉さん、痛恨のミスだわ」

 

『しまったぁー』という顔をするリズだったが気を取り直して、

 

「今更だけど教えておくわね? 忘れちゃ嫌よ」

 

「忘れないさ。他ならぬリズの名なんだから」

 

「うん、合格♪」

 

キリトの素の返答にリズは満面の笑みを浮かべ、

 

「”この世界”での私の名前は、【リズベット・アームストロング】よ」

 

「ん? アームストロング? つい最近、どこかで聞いたような……?」

 

するとリズ、悪戯が成功したおてんば娘のようにくふふっ♪と笑い、

 

「そりゃそうよ。だってゴブニュ・ファミリアの副団長、”鉄槌担いだ合法ロリ(ハンマーロリ)”こと【ヴィータ・アームストロング】は、わたしのママだもん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。

ようやく第002章に張った伏線【ヴィータの娘】が判明しましたが、いかがだったでしょうか?
予想していた人がいらっしゃったとしたら、予想は当たりましたか?
作者的には、はねっかえりなとことか『この母にしてこの娘あり』って感じが出ていればと(^^
とにもかくにもリズ、この世界ではヴィータの娘であるリズベット・アームストロングがついに登場です!
ちょっと原作よりおっかない娘になっていそうですが(苦笑)

ヘスティア様とやたらストロベリーな雰囲気の朝食のシーンがやけにこってるのは、執筆中に空腹だったからってのは内緒です。

あと何気に入れた懐かしのネタ、チャージなどさせん!→メイオウ攻撃コンボとかマーマレード・ボーイとか雪のベンチと缶コーヒーとか、果たして何人の方が元ネタをご存知でしょうか?(汗)

それにしても……書いておいてなんですが、またしても謎ワードが出てきましたね?
【特務殲滅隊】と【けつめいきしだん】……”けつめいきしだん”は【血盟騎士団】のことだと思われますが……?
キリトとリズの間には、まだまだ開かされてない過去がありそうです。

それではまた次回、お会いしましょう!


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