ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。

今回は前回に引き続けちょっとだけシリアスです。
というより、今回のエピソード主役は……人物でなく血盟騎士団?






第025話 ”血盟騎士団がその誕生から存在の定義を変えるのは間違っているのだろうか”

 

 

 

『死を以て転生者(フォリナー)の魂を神々の玩具(オモチャ)より解放する』

 

その大義名分のもと組織的に、そして無軌道までに殺戮を繰り広げた組織があった。

その名は【笑う棺桶(ラフィン・コフィン)】……

 

 

 

かつて存在した邪神を名乗る神々の過激派ファミリアの集合体である【闇派閥(イヴィルス)】。

ギルドや有志ファミリア同盟により行なわれた討伐戦においてイヴィルスが崩壊した後、それらのファミリアに所属していたフォリナー達が神々に反旗を翻し離反、そしてより過激に凄惨になるべく立ち上げたの組織が、殺人結社(ギルド)【ラフィン・コフィン】であった。

今から約6年前の話である。

 

最盛期には600人を数える構成員が居たとされるラフィン・コフィンが組織として活動していた4年間の間、彼らに殺害された存在は判明しているだけで2000人を超えるとされ、そのうち1037人がフォリナーだった。

 

 

 

***

 

 

 

オラリオのある”この世界”の総人口は、純粋な人間(ヒューマン)だけでなくエルフやドワーフなど亜人(デミヒューマン)を加えた知的生命体として総数、”広義な意味での人類”は概算でざっと3億人ほどもいる。

なのに犠牲者の比率の半分が20万人程度しかいないはずのフォリナーだというあたり、ラフィン・コフィンの組織的な本質を表していた。

掲げる『フォリナーの神々からの解放』は、彼らの理屈からすればあながち的外れではないのだろう。

 

だが、ラフィン・コフィンに犯され殺されるだけの存在だけでいるほど、フォリナーは弱くも脆くもなかった

そもそもが彼らは『魔法を無視して剣技(ソードスキル)だけで浮遊城(アインクラッド)に犇くモンスター共と戦う』なんてバリバリの硬派(ストロング)スタイルなゲームにフルダイブし、全感覚で楽しもうとしていたゲーム脳的な意味での猛者の集まりなのだ。

言い方を変えるなら、例えVRゲームでも『半ば闘争が拒絶された法治国家に棲みながら、仮想空間に潜ってまで可能な限り実戦に近い真剣勝負(セメント)を求めた者たち』なのだ。

当然、戦うという事象が選択肢にない一般市民より、よほど戦意も闘争心も高く強い。

 

いやそんな集団だからこそ、その手の意識がエゴや絶望や狂気と交じり合い異常肥大し、殺人衝動を全肯定するような……故にカルト殺人集団に分類されるラフィン・コフィンのような組織も生まれる原因になたのだろう。

 

これは仮説ではあるが……

もし、ラフィン・コフィンがフォリナーという総体に生まれた、あるべき姿から変質し異物となった悪性新生物(ガン細胞)や病原性ウイルスのようなものだとするならば、それらに対抗する免疫反応のようなものが生まれても不思議ではない。いや、むしろ自然と言えるだろう。

 

悪性新生物(ラフィン・コフィン)の存在が確認されてから遅れること1年……

フォリナーの被害者が三桁の大台を記録する頃に”その抗体(アンチボディ)”は極秘裏に産声をあげた。

その抗体の名こそ、

 

血盟騎士団(シバレース・デ・クラン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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血盟騎士団(Chevaliers de Clan)

 

略称は”CdC”。

その母体になったのは、【血盟修道会(Orden de Clan)】と言われている。

血盟修道会は修道会と名乗る以上は”旧世界”の教会を参考にした弱者救済を主目的とした各種慈善事業(例えば炊き出しや孤児の保護)を細々と行なってはいたが……それは本質を世間から隠す隠れ蓑であり、また当然のように全知全能の一神教の神を崇める集団ではなかった。

修道会の実態は、『種族やファミリアの枠組みを超えたフォリナーの連絡協議会ならびに商工会』という代物だったのだ。

 

その組織の性質ゆえにいち早く【ラフィン・コフィン】の存在を見抜き、またその実像に迫ることが出来たらしい。

そこまでいけば答えは簡単だった。

ラフィン・コフィンの尻尾を掴んだのなら、次はみすみす殺されないために対抗組織を作り上げるのは、むしろ当然と言えるだろう。

 

こうして生まれたのが【血盟騎士団】であるのだが……だが、世間に大きく誤解されている(あるいは意図的に大きく誤解させている)事情がある。

【血盟修道会】が大きな組織であるために巨大戦闘集団と思われがちな血盟騎士団ではあるが……その実態は、他のいかなる組織に所属していない純然たる固有戦力、つまり”血盟騎士(クラン・シュバリエ)”として抱えてる戦力はラフィン・コフィンと比べて極めて小さい(数十人~せいぜい百名程度と言われている)。

そうであるが故に組織の主戦力と言えるのは、騎士団構想に賛同した他のファミリア/戦闘系ギルド/パーティーから抽出した人員と、更には足りない戦力を補うために契約した傭兵までいたとされる寄り合い所帯だった。

 

例えば、その騎士団長(とうもく)と目されていた”導師(グル)エギル”は、前出の血盟修道会(オルデン・デ・クラン)の代表で、同時に酒場や冒険者向けの道具屋を経営する資産家だ。

噂では冒険者(オラリオ)・ギルドと強い繋がり(コネクション)を持っていたとされていて、だからこそ血盟騎士団を立ち上げられたと信じられている。

また有力幹部であった”ディアベル・カンクネン”はオラリオ外の冒険者ギルド【ドラゴン・ナイツ・ブリゲード(意味は”竜騎士旅団”。略称は”DKB”)】のリーダーであり、同じく有力幹部の”シンカー・マルソー”は、広域情報系ギルド【MTD】のリーダーである。

実力で言うならこの二者より小規模ながらも、有力戦闘系ギルド【風林火山】とその頭領”クライン・フォート”の存在も忘れてはならないだろう。

加えて戦闘力に重点を置くなら……人員規模はギルドというよりパーティーだが、その戦闘力はそこいらのギルドを軽く凌駕すると言わしめた少数精鋭の純戦闘系パーティー、”ラン・コンクェスト”率いる【眠らない騎士団(スリープレス・ナイツ)】も特筆すべき存在だった。

 

また、パーティーというくくりで見るなら”グリセルダ・グレイワース”率いる【黄金林檎(Golden Apple)】や”ケイタ・クラウディ”率いる【月夜の黒猫団(Moonlit Black Cats)】などはパーティー丸ごと血盟騎士団に参加していたようだ。

 

 

あえて平行世界の視点から見るならば、血盟騎士団の読み方が英語の”Knights of blood (KoB)”ではなく仏語の”Chevaliers de Clan (CdC)”と大きく違いがあるのは、そのまま組織の質の違いを表しているともいえる。

全くの余談だが……英語でCDCと言えば”Combat Direction Center (戦闘指揮所)”や”Centers for Disease Control and Prevention (疾病管理予防センター)”という意味の略になる。

なんとなく的を射ているような……?

 

 

 

このような組織結成の背景から、血盟騎士団はラフィン・コフィンさえも驚く速度で戦力を整え、対抗組織に成長したいったのであった。

その戦力の最大動員時は3000名を下らない……実にラフィン・コフィンの5倍を誇る兵力ほ動員可能であり、たしかに戦闘技量の平均値で比べるならラフィン・コフィンに劣るかもしれないが、正面戦力比なら技量差などの戦力倍加要素ではどうにもならない差ができていた。

数とはそこまで戦いにおいて重要なのだ。

 

さて、このようなごった煮状態の寄り合い所帯ならばこそ、短期間に多くの人員が導入できたものの同時に派閥間抗争など急造の組織にはありがちな問題も噴出した。

 

その中でも特に重要な案件とされたのが、精鋭のはずの血盟騎士の1人”クラディール・ザカー”が実はラフィン・コフィンの間者だった一件や、妻殺害を条件にラフィン・コフィンに情報を流していた”グリムロック・グレイワース”などの裏切り者、また野心と勢力拡大のための資金目当てに謀反を起こして粛清、仲間共々懲罰部隊送りの憂き目を見た”キバオウ・ピアッジ”の叛乱などがあった。

 

だが、この激動の中にあってこそ決して無視できない【超精鋭部隊】が存在していたらしい。

10名にも満たない小さな部隊(パーティー)ではあったが、一人当たりのラフコフ討伐数なら他のいかなるパーティーの追従も許さぬとされた血塗られた集団……

 

それこそが【特務殲滅隊】だった。

 

 

 

***

 

 

 

厳密に言うならば……【特務殲滅隊】という部隊が、発足した当初から活動を休眠させた現在に至るまで血盟騎士団に存在したという証拠は無いし、導師(グル)エギルこと”エギル・カーマイン”も『巷で噂されるような名称を持つ部隊は血盟騎士団にはない』公式に否定している。

現在となっては『都市伝説の一種』と断ずる歴史編纂者もいるようだが……

しかしながら名称こそ定かではないが、その手の”血腥い殲滅任務(ヌレシゴト)”を専門に行なっていた人員ないし部隊はあったと、未だ(まこと)しやかに囁かれているのも事実だ。

 

市中に流れる噂をかき集めると、その特殊部隊じみ活躍をした部隊は【テンプル・ナイツ】と呼ばれていたとか、【閃光】と呼ばれていたとか、あるいは【オラリオ・メタル・シティ】と呼ばれていたとか諸説あるが、もっとも有力視されているのが【幻影の夜(Mirage Night)】という名だった。

 

この名称の出所は、ごく稀に当時の血盟騎士団の本部や支部で『正体不明の騎士』が見られたことに端を発する。

 

 

 

雄山羊(ゴウト)を象った燻し銀のマスクで顔半分を隠し、【剣と盾と十字架】をモチーフにした血盟騎士団を示す赤い紋章が浮かぶフード付の純白のマントで全身を覆う謎の存在』

 

非常に目立つ姿をしてるのに目深に被ったフードとマスクで顔をマントで全身を隠した彼らもしくは彼女らは、大人なのか子供なのか、男なのか女なのかも判然としない存在だった。

一説にはマスクには声の波長を変化させる魔法がかけられた一種のマジック・アイテムであり、また正体(からだ)を隠すため前をきっちり合わされたマントは滅多に開かれることはなく、閉じてる限り裏地に縫いこまれた浅い認識阻害効果のある幻術紋様(ルーン)が発動しているとも噂されていた。

 

彼らが複数人数存在することは、目撃情報やマントに刺繍されたナンバーで確認できたのだがのだが……ただ、中の人がいつの間にか入れ替わっていても気付かれない可能性が高いため、本当に常に同じ人物だったかは不明であり、持ち回りで複数の人間が中身を演じていたという説まである。

 

ただ、その服装のデザインは”旧世界”にあった漫画【F.S.S】に登場する”幻影騎士団(Mirage Knights)”をイメージモチーフにしているのは明白(おそらく部隊創出の主導的な役割をした人物が同作のファンだったと推測されている)であり、故にそれをもじって読みがほぼ同じな【幻影の夜(ミラージュ・ナイト)】という名称が広がったようだ。

 

無論、これも俗説に過ぎない。公的に存在が認められてない部隊に公式名称なんてあるはずもないのだから当然だろう。

 

ただ、後に必要に迫られ各ナンバーに該当する秘匿符牒(コールサイン)の一部だけ、血盟騎士団内部のごく限られた人間に公表された時は、

 

No.Ⅰ:”打斬者(バッシュ)

No.Ⅱ:”裂海(れっかい)

No.Ⅲ:”迷槍(めいそう)

No.Ⅳ:”珪竜姫(クーン)

No.Ⅴ:”絶懐剣(カイエン)

 

と記されていたらしい。

無論、これは部隊の存在を認めたのではなく、『仮面とマントの特定不能人物を名無しのままでは不都合』という意味合いでの公表だったとされている。

その証拠にナンバーが確認されているNo.Ⅵ以降のコールサインが確認できる資料は、今のところ発見されてない。

おそらくだが……Ⅰ、Ⅳ、Ⅴは前出のF.S.Sの中から読み方を取った(Ⅰについてはバッシュ・ザ・スタンピート説もある)と思われ、Ⅱは使う必殺技から、Ⅲは使う武器からとされている。

 

無論、このコールサインは本来の名前から全く無関係の読みや字から決められたと思われ、この呼び方から正体を察するのは難しい。

もともと血盟騎士団は本名の公開を禁じており、全員が偽名を使っていた(例えばリズは本来のアームストロング姓ではなく使用武器から取ったパラドクス姓を名乗っていた)ために余計に特定は困難だっただろう。

 

おまけに通称【幻影の夜】のメンバーは純粋な血盟騎士から選ばれたのではなく、騎士団とは無関係の傭兵から構成されていたとか、任務中に死亡もしくは行方不明で登録を抹消された元団員から構成されているとか諸説あり、未だその正体については不明とされている。

 

 

 

***

 

 

 

名称不明な上にこれだけ妖しい部隊(?)だったにも関わらず、その存在が(特に血盟騎士団内部で)確実視されていたのは、いくつもの物的あるいは状況証拠があるからだ。

 

例えば、前出の血盟騎士団の裏切り者、”クラディール・ザカー”が無残な斬殺体として転がった後の調査で、彼が秘密裏に探っていたのが【幻想の夜】の正体だったことが明らかになった。

また、ラフィン・コフィンの拠点を襲撃した際、苦労して防衛網を突破してみたら既に拠点が壊滅しており構成員が皆殺しにあっていた……なんて事例も少なからずあったようだ。

 

 

 

【特務殲滅隊】、あるいは【幻影の夜(ミラージュ・ナイト)】……その詳細を知るのは『導師エギルの私兵説/粛清部隊説』がある通り、今も昔もエギルと本人達だけなのかもしれない。

少なくとも一般市民にまで真実が知られることは当面は無いだろうし、その暗闇に光を照らすのはこの時代の人間ではなく、遠い未来の歴史家の仕事なのかもしれない……

 

断片的に伝わる『彼ら/彼女らがやった行為』だけでも、それは凄惨であり壮絶だとわかる。決して楽しい青春時代の思い出を語るようなものでないのは確かだ。

 

だが、そんな血腥く薄暗い世界にも今はキリト・ノワールを名乗る少年はいて、今は本当の名であるリズベット・アームストロングに戻った少女がいた。

 

リズを右腕だとするならば左腕と呼べる槍使いの少女が居て、二人のとんでもない力を持つ妹分が居た……

 

その時代は語られることはないかもしれない。

しかし……その時代が、その戦場が今のキリト達を形作っているのもまた確かなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。

原作と大幅に異なる血盟騎士団の誕生秘話は楽しんでいただけたでしょうか?
何やら聞き覚えのある名前がチラホラと出て来ましたが(笑)

なんか今回は血盟騎士団と特務殲滅隊の話を書いてたら、いつの間にかエピソード・エンドに辿り着いていたって感じです(^^

何やら原作では消えてしまった人々も多々居るようですが……いずれ物語に関わってくるのでしょうか?

次回からは従来どおりの路線に戻ると思います。
それではまた次回にてお会いしましょう!

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