ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
現在、執筆暴走中のボストークです(^^

何を暴走してるかというと……投稿日時を見てほしいのですが、深夜1時台に001話を投稿してからこのエピソードで本日3本目の投稿になります。
1話あたりの文字数が短いとはいえ、1日の投稿本数としては別名で活動していた最盛期(自宅警備員時代)に匹敵してたりします(苦笑)

さて今回のエピソードでは……そろそろキリトとミノ助の二人(正確には一人と一匹)きりの時間が終わりそうです。


第003話 ”ナイフでミノタウロスと対峙するのは間違っているだろうか?”

 

 

 

俺はオラリオ名物の地下迷宮(ダンジョン)で、ミノタウロスと対峙する羽目になっていた。

第11階層以上に出没するはずのモンスターが、なぜ第05階層なんて浅い階層にわざわざ出張してきたのか理由はわからない。

エンカウトした時から激怒してたから、おそらく本来の住処がどこかの強豪パーティーに襲撃されて慌てて逃げ出したってところか?

 

まあ、そんな事情はどうでもいい。考えてもわからないだろうし。

激怒した相手から逃げられないと踏んだ俺は、装備に不安はあったがエンカウント・バトルを決意。

我ながら悪くない戦いだったと思うけど……

 

(ミノ公は全身傷だらけでも致命傷は無し……さすがに動きは鈍くなってるけど)

 

今度は自分の剣を見て、

 

(こっちは掠り傷だけど、剣はボロボロの屑鉄一歩手前か……)

 

なら長期戦は不利なだけだ。

スタミナはまだまだ持つけど、ミノタウロスと体力勝負するほど俺は阿呆じゃない。

 

本来、俺の戦い方は片手剣だ。

利き腕の右手に長剣を握り、あえて左手をフリーにして戦術的オプションを多く取れるようにしてある。

両手剣に比べるとパワー不足は否めないし、鍔迫り合いで押し負けるリスクも高い。

だけど、俺はそのリスクを数少ない俺の剣術の長所である”見切り”と太刀筋の速さと単純な力に頼らない”重さ”でなんとかフォローするのがスタイルだった。

 

(ならこの一撃に全てをかける……!!)

 

だけど、俺はそのスタイルをあえて捨てる。

小手先の技や搦め手は一切無い。

俺はこの戦いで初めて”両手”で剣の柄を握る。

 

「いざ尋常に……勝負!!」

 

 

 

***

 

 

 

俺は地面を踏みしめ、思い切り蹴る!

 

「セイヤッ!」

 

それは今のところ俺の剣技としては掛け値なしに最も威力のある一太刀、『両手平突き』のモーションだった。

 

”ビュオン!”

 

自分の間合いに入るなりミノタウロスは、丸太のような巨大な腕を横薙ぎに振り回してきた。

 

「!」

 

だが甘い! そんな大振りモーションのテレフォン・フックなんてそうそう当たるものじゃない。

体勢を沈めて回避、ミノタウロスの右腕は数瞬前まで俺の頭があった場所を通過する。

左腕は攻撃態勢に入っておらず、どんなに急いでも俺が懐に飛び込む前に拳が放たれることはないだろう。

俺は加速を緩めぬように体勢の崩れを最低限に抑制して更に踏み込み再加速、一撃を入れる前にトップスピードに乗せるっ!

 

「もらったっ!」

 

体重と加速度の全てを相乗させた渾身の突き……イメージ通りなら魔物の心臓、”魔石”を貫けるはずだったけど……

 

”パッキィィィーーーン!”

 

どこかガラスの破砕音を思わせる硬く乾いた音を立てて折れたのは……俺の剣の方だった。

 

 

 

***

 

 

 

「しまった!」

 

どうやら俺は明確なミスをしてしまったようだ。

ミノタウロスの武器を強靭な腕や蹄ばかりだと見誤っていた。

いや、むしろ”それ”を『ミノタウロスの識別点』と認識するあまり、実は”それ”こそがミノタウロスの身体部位で最も硬く、そして場合により最強の武器となりうることを失念していた。

つまり、

 

「”角”かっ!?」

 

そう俺の剣を圧し折ったのはミノタウロスの特徴、頭部にある鋼よりも硬くいかなる雄牛よりも巨大な”対の角”だ

 

ミノタウロスは剣の切っ先が胸部を捉える寸前に驚くべき反射速度で頭を下げ、刀身に頭突きをするように角を押し当ててきた。

剣と角は交差し火花を立てたが均衡を保てたのは僅かな時間に過ぎず、俺が蹄をいなしてきたように今度は俺の切っ先が逸らされ、突き刺さったのは魔石がある胸部ではなく腹部だった。

 

おまけにミノタウロスはそのまま地面に頭を叩きつける勢いで押し込んできたために元々限界がきていた愛剣”ブラックバーン”は、その負荷に耐え切れず根本からポッキリと折れた。

 

「チッ!」

 

主力武器を失ったとはいえいつまでもこの場にいれば即座にミンチだ。

幸いミノタウロスも大きく体勢が崩れている。

 

「クソッ……」

 

俺はまた地面を蹴るが、今度は退避し間合いを空けるための”引き”の跳躍だった。

 

 

 

(どうする……?)

 

俺はダンジョン内部で目立たないよう漆黒に染めたコートのような上着をまさぐり、その内側に吊るした革製のシース(鞘)から二本一対の片刃の短剣(ダガー)を取り出す。

左右の手に持つそれは本当なら武器ではなく野営道具、言わばキャンピング・ナイフとして持ち歩いているものだ。

それでも普通に鋭く刃もそれなりに分厚くて頑丈なので人間相手だったら十分に張り合えるだけの使い勝手のよさがある。だけど、相手がモンスター……特にミノタウロスなんて大物相手じゃいかにも非力だ。

 

「かといって泣き喚いたって何か変わるわけじゃないしな」

 

絶体絶命ってのはきっとこういうシチュエーションを言うのだろう。

ミノタウロス相手にナイフ二本なんて無理ゲー通り越してマゾゲーだ。

 

(俺は絶対に諦めない……!)

 

最低でも妹の、直葉の元気な姿を見るまでは死なないと心に決めている!

 

「ナイフでも魔石に直接突き刺せばなんとか倒せるか……?」

 

長剣に比べてハードルが巨大化したが、とりあえず他に手はなさそうだ。

 

 

 

***

 

 

 

「ミノ公、悪いがもう一度相手してもらうぞ?」

 

俺は右手のダガーを順手に、左手のダガーを逆手にそれぞれ握った。

 

(やばいな……)

 

次のアタックは明らかにさっきより遥かにハイリスクだ。

腕と角を潜り抜け、互いの吐息がかかるほど接近しなければ勝利はない。

ぶっちゃけ生き残るより死ぬ確率の方がずっと高いだろう。

だけど、

 

(おかしい。ヤバい筈なのに不思議と口元に笑みが浮かんでくる……)

 

「俺に狂戦士(バーサーカー)属性は無い筈なんだけどな」

 

内心苦笑すると同時に、思考がまた別の方向に流れる。

 

(やっぱり盾とかいるかもな……)

 

こんな時なのに”この世界”に紛れ込んだ俺みたいな闖入者を育ててくれた、風変わりな爺ちゃんを思い出してしまう。

 

(爺ちゃん、盾の重要性をよく語ってたっけ……持久戦が想定されるなら攻撃力よりも防御力を重視すべしとかさ)

 

俺ももしかしたら盾を持つべきなのかな?

資金に余裕が出来たら考えてみるかな……”リズ”あたりに相談するか。

 

(まあ余計な考えはこのくらいにしておこう)

 

今持ってない装備に命は託せない。

俺が再び両足に力を入れようとした時、

 

「使って」

 

銀の鈴を鳴らしたような涼やかな声が聞こえた……

 

「!?」

 

声と同時にミノタウロスの脇をすり抜けるように飛んでくる光があった。

いやすぐにそれが光その物じゃないことがわかった。光を反射する”何か”……俺の横も通過しようとするそれを、俺は右手のナイフを捨て慌てて掴んだ。

それは妙に手に馴染む感触だった。

 

「剣!?」

 

 

 

握ったそれは、”逆転の希望”だったと今でも思う。

そしてそれが新たな出会いのきっかけだったなんて、その時の俺は考えもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
短いエピソードでしたが、楽しんでいただけたでしょうか?

最後にキリトに剣を投げたのは誰だろうなー?(棒)

流石に本日は時間切れ、これ以上の投稿はないと思いますが執筆意欲が続く限り早いアップを狙います。
それではまた次回でお会いしましょう♪

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