ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか 作:ボストーク
昨日に続き今日も懲りずに『ダンキリ』のアップです(^^
まだ創作意欲が持続していて良かった~。
今回にエピソードは、ようやく”原作ヒロイン”とキリトさんの邂逅です。
どうもその出会い、ベル君の時とは大分様子が異なるような……?
俺ことキリト・ノワールは、ダンジョンの比較的浅い階層で普通は11階層以下にしか居ないはずのミノタウロスと対峙する羽目に陥ってた。
ちなみに俺の冒険者LVはLv.1、まごうことなき駆け出しだ。
ミノタウロスを倒すには本来Lv.2以上の冒険者レベルが必要とされているから、すでにこの時点で無理ゲー確定。
続いて戦いの途中、勝負の一撃を放ったが生憎とそれはミノタウロスの角カウンターの一撃に合わせられ、俺は愛剣”ブラックバーン”を圧し折られてしまう。
手元に残っている武器は、ガールフレンド(文字通りの意味だぞ?)の駆け出し鍛冶屋”リズベット”から貰った練習用に作ったらしいナイフ二本だけ。
うん。全くもって絶体絶命だ。
この時点で無理ゲーどころかマゾゲー確定だよな。
だけど……
「使って」
その涼しげな声と同時に飛んできたのは、起死回生になるかもしれないアイテム。
やけに手に馴染むそれは、
「剣!?」
***
俺が右手に握るのは、間違いなく両刃の長剣。
明らかにさっき圧し折られた”ブラックバーン”より格上のそれだった。
刀身が漆黒で柄はシンプルなデザイン、正直かなり格好いい。
”ヒュン!”
軽く振ってみると、
(……悪くない)
恐ろしいくらいに違和感のない感触だった。
「これならいける……!」
そう確信を持てるほどに。
調子がいいのは百も承知だけど、俺は切っ先をミノタウロスに突きつけるように構えなおし、
「待たせて悪かったな。仕切りなおしだ……いくぜミノ助っ!!」
さっきと同じ最短距離を最大加速で直線に走りぬける両手平突きの突進!
再びパンチというよりラリアット振り回されるミノタウロスの丸太のようなハンマー・アーム。
俺はまたそれを掻い潜り、
「ハッ!」
少なくともさっきと同等の威力と速度の突きを繰り出す!
”BuMoooooo------M!!”
しかしミノタウロスとて何も好き好んで刺されるわけはない。
またしてもホーン・ヘッドバットを合わせてこようとする。
そう確かにここまではさっきの焼き直しだ。
だが!
(誰が投げたか知らないが、)
「こちとら借り物の剣を傷物にするわけにはいかないんでねっ!!」
先ほどの殺り合いでミノタウロスのカウンター・タイミングは見切れた。
ならば!
「人間なめるなっ!」
刃と角がぶつかる刹那、俺は強引に踏み込み身体を回転させて太刀筋を変え、刀身を横に滑らす。
”ゴッ!”
唐突に角を当てる相手を見失ったミノタウロスは勢いあまって俺の狙い通りに地面にヘッドバットを喰らわせた。
(チャンス!)
そう、地面に頭を打ち付けたミノタウロスは無防備な首筋を『人間が無理なく斬れる位置』に晒していたのだ。
「これで終わりだァーーーッ!!」
”斬っ!!”
その一太刀は、あれだけ苦戦したミノタウロスの首を、なんの抵抗も感じさせないように切り落とした……
***
”ズズゥン……”
大きく重い首なしミノタウロスの体が音を立てて崩れ落ち、程なく巨大な体躯を灰へと還元させた。
こうして俺は勝ちを拾えたわけだけど……
「な、なんつー切れ味……」
俺は剣を掲げて黒い刀身をマジマジと見てしまう。
自分がミノタウロスなんて本来駆け出しの冒険者が倒しちゃいけないモンスターに打ち勝った現実よりも、この”漆黒の剣”の威力に改めて驚嘆していた。
なにせ厚い獣皮とさらに分厚い筋肉、人間と比べ物にならない太く頑強な骨をいとも容易く断ち切り、なおかつ刃毀れ一つしないなんて……
(出鱈目な業物じゃないか!!)
間違ってもミノタウロスの首を介錯できたのは俺の腕前ゆえじゃない。いくら俺でもそこまで驕っちゃいない。
明らかにこの”漆黒の長剣”の性能だ。
(ん……?)
俺は刀身に刻まれた刻印とおそらくはこの剣の”銘”に気付いた。
(嘘だろ……これ【ゴブニュ・ファミリア】謹製かよ)
【ゴブニュ・ファミリア】っていうのは鍛冶屋(スミス)系ファミリアで、規模こそ同業の【ヘファイストス・ファミリア】に劣るものの、技術や品質では伍するとされてる鍛冶系大メジャー・ファクトリーだ。
名品や業物を多く生み出しているが分値段も張るし俺みたいな田舎から着の身着のまま出てきたような駆け出し冒険者がまず手に握ることのない代物だった。
(噂どおりの腕前なら、確かにこの切れ味も納得できるな……)
むしろ噂以上というべきか?
(それにしても……)
「【
”パチパチパチ”
その時、唐突に小さな拍手が聞こえた。
「一太刀でミノタウロスの首を落とすなんて、見事ですね?」
それは聞き覚えのある声……鈴のように涼やかで透き通った声だった。
**************************************
「君は……?」
声と同時にミノタウロスの影から現れたのは、ある意味ミノタウロスより斜め上の存在だった。
(……俺はどんな顔をすればいいんだ?)
華奢な肢体を大胆なデザインのミニのワンピースと軽装備で包み、流れるような美しく長い金髪に声と同じく髪とおそろいの淡い金色に輝く涼しげな瞳……
うん。十人中十人が『美少女』と呼びそうな問答無用の美少女だった。
「【ロキ・ファミリア】所属の一級冒険者、”アイズ・ヴァレンシュタイン”」
声を裏切らぬ容姿あるいは容姿を裏切らぬ声で彼女は簡潔に告げた。
だが、俺の心に浮かんだのは歓喜ではなく……
(げっ……!)
『とんでもない人に借りをつくっちゃったなぁ~』という正直すぎる感想だった。
***
そう。さっき剣を投げて助けてくれたのが”アイズ・ヴァレンシュタイン”だというのは俺にとってかなりの衝撃だった。
オラリオでも屈指の最大手名門ファミリアである【ロキ・ファミリア】の中で、看板とも言うべきトップクラスの立ち位置に居る女幹部。
だが彼女が優れているのは容姿じゃない。むしろ容姿はおまけで彼女の真骨頂と言えるのが、
(”オラリオ有数の実力を持つ女剣士”……)
その圧倒的な実力、特に剣の腕前だった。
駆け出しの頃から彼女はその卓越した剣術が注目されていて、案の定ダンジョンを中心に多くの困難を自らの剣で切り払い、それまでの記録を大幅に縮めて最短時間でLv.1からLv.2に駆け上がり、未だそのレコードは破られてない。
かくゆう俺も『目標に定めるべき存在』と思っていた。
「驚いたな……噂の”剣姫”殿と、まさかこんな場所で鉢合わせるとは思わなかったよ」
冒険者はLv2になった時点で”
目の前の少女は、その美しい容姿と類稀な剣技から”剣姫(ソード・プリンセス)”と名づけられたらしい。
(もっとも口の悪い連中は、戦闘狂(バトル・ジャンキー)って意味を込めて”戦姫”って呼んでるらしいけど)
「噂?」
きょとんとした顔がどこか子供っぽさを醸し出してたけど、
「色々とね」
俺は適当にお茶を濁す。別に本人に聞かせるような話じゃないし。
「そう……それにしてもいい剣の腕ですね?」
う~ん。今をときめく今の俺には遥か彼方のLv.6の高みにおわします剣姫様にそう言われるとこそばゆいな。
「俺の腕じゃないさ。貴女が投げてくれたこの”漆黒の長剣”のおかげだ」
嘘でも謙遜でもない。実際、
「俺の長剣じゃミノタウロスに手傷は負わせても致命傷を食らわせることはできなかった。じゃなければ二つ名もない、所詮Lv.1の駆け出し冒険者風情にミノタウロスなんて大物が倒せるわけはない」
それだけこの【エリュシオン】が今の俺には出来すぎの剣ってことだな。
***
「馬鹿にしないでください」
「えっ?」
事実をありのまま告げた俺に、何故か彼女……アイズ・ヴァレンシュタインはその綺麗な顔を曇らせた。
端的に言うとムッとしていた。
(俺、なんか怒らせることしたっけ?)
「ミノタウロスは、武器が良くてもただの”駆け出し冒険者風情”に倒せるようなモンスターじゃありません」
そして、彼女は金色の双眸で俺を真っ直ぐに見た。
「それに私は貴方の戦いをみてました。確かに貴方の剣はまだ荒削りで荒々しいかもしれません……だけど、」
その瞳はまるで俺の全てを見透かすようであり、何故か俺はその淡い金色に吸い込まれそうな自分を感じていた……
「貴方の剣は間違いなく【ミノタウロスを一撃で屠れる】に相応しい鋭さと技術を持っていました」
そして彼女は告げる。
「貴方は一体、何者ですか?」
皆様、ご愛読ありがとうございました。
ようやくヴァレン某さんとキーくん(両方とも未だモノローグ以来未登場のヘスティア様談)の邂逅を書けて作者的にはホッとしてます(^^
ついでにリズの情報がチラッと出てきたり、あるいはアイズの投げた剣の銘が妙にフラグ臭かったりと色々仕込んでたりするのはご愛嬌。
それにしてもキリトの立ち位置がここってことは、原作主人公のベル君は今どこで何をしているのでしょうね?
まさか……【フレイヤ・ファミリア】、とか?(滝汗)
執筆速度がどこまで続くかわかりませんが、また次回もお付き合いいただければ幸いです。