ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
お盆休みを終えて如何お過ごしでしょう?
やはり休みじゃないとまとまった執筆時間は取れませんね~。

さて今回のエピソードは、感想を下さった皆様からあった『キリトのキャラ改変』の根幹、タイトル通りに”この世界”の彼の過去が語られます。

H27.8.21、わりと加筆しました(^^


第005話 ”キリトがダンジョンで過去を振り返るのは間違っているだろうか?”

 

 

 

ここはオラリオ名物、世界に一つしかない超巨大【地下迷宮(ダンジョン)】の第五層。

ここで俺はイレギュラー・エンカウントを二回も経験する。

 

一回目は本来は第15階層より深くにしか存在しない冒険者Lv.2相当のモンスター”ミノタウロス”。

二回目は……

 

「驚いたな……噂の”剣姫”殿と、まさかこんな場所で鉢合わせるとは思わなかったよ」

 

オラリオでも最大手ファミリアの【ロキ・ファミリア】の中核、Lv.5の上級冒険者である”アイズ・ヴァレンシュタイン”だった。

 

愛剣”ブラックバーン”をミノタウロスのカウンターで圧し折られた俺は窮地に陥ったが、その時「使って」の一声とともに一振りの剣が投げ込まれた。

そいつは名門鍛冶屋系ファミリア【ゴブニュ・ファミリア】謹製の規格外の業物で、銘を【ΕΛΥΣΙΟΝ(エリュシオン)(ELYSION)】というらしい。

 

その惚れ惚れする”漆黒の長剣”を投げ入れ俺を救ってくれたのが、アイズ・ヴァレンシュタインだったってわけ。

 

だけど今、俺と彼女の間には微妙な空気が流れていた。

 

 

 

「馬鹿にしないでください」

 

それが『ミノタウロスを倒せたのは、俺の剣の腕じゃなくて君が投げてくれた剣の性能のお陰』って純然たる事実を告げたときの彼女の返答だった。

 

「ミノタウロスは、武器が良くてもただの”駆け出し冒険者風情”に倒せるようなモンスターじゃありません」

 

「それに私は貴方の戦いをみてました。確かに貴方の剣はまだ荒削りで荒々しいかもしれません……だけど、」

 

「貴方の剣は間違いなく【ミノタウロスを一撃で屠れる】に相応しい鋭さと技術を持っていました」

 

買いかぶりすぎだと思うけど、彼女に言わせればそういうことらしい。

 

しかし次の台詞を聞いたとき、俺はどう応えるべきか迷ってしまう。

 

「貴方は一体、何者ですか?」

 

と……

 

 

 

***

 

 

 

(何者か、かぁ……)

 

困った質問だ。

オラリオのギルド的な言い方をするなら、俺は半月前に冒険者になったばかりのLv.1の駆け出し過ぎない。

 

(彼女が聞きたいのは、そういう意味じゃないだろうしな……)

 

おそらくだけど、俺は警戒されてると思う。

まあ駆け出し冒険者がミノタウロスの首を一刀で落とすっていうのは、確かに自分で言うのもなんだけどインパクトあるし。

 

(さて、どう言ったら納得してくれるかな?)

 

「駆け出し冒険者ってのは間違ってないんだけどね。実際、オラリオにやってきて冒険者としてギルドに登録したのも、とある”神様”のファミリアになったのも大体半月前だし」

 

うん。嘘はついてないぞ。

色々と話せない事情はるけど。『語らないこと(事実の隠蔽)』と『嘘をつく(事実の改竄)』は意味が違うと爺ちゃんも言ってたし。

 

「ただ、冒険者になる前に俺は俺で色々やってきてさ。だから斬る事は慣れてるんだ」

 

俺はアイズ・ヴァレンシュタインの瞳を見つめ返し、

 

「モンスターも、人もさ」

 

「???」

 

どうも要領を得ない顔で見つめ返されてしまった。

これは”色々”をちゃんと言葉にした方がいいかな?

 

 

 

***

 

 

 

『坊主、男を最も成長させるのはなんだと思う?』

 

『さぁ、勉強と修行かな?』

 

『阿呆、それは土台をつくるだけだ。土台だけじゃあ”(おとこ)”って城は建てられねぇな』

 

『どこの男塾だよ……じゃあ何だ?』

 

『それはな……』

 

 

 

「『女と戦い……それが男を一番成長させ、男を漢にするのさ』……それが爺ちゃんの教育方針でさ」

 

『坊主、男は漢として生まれてくるんじゃねえよ。男は己を磨いて鍛えて成長して漢になるのさ』

 

だっけ?

今にして思えば、俺もとんでもなく破天荒な爺様に育てられたもんだ。

『生まれてすぐ吸った乳母の乳首以来、女に困ったことはない』なんて豪語していたがどうもノン・フィクションくさい。

実際、”老いてなお盛ん”を体現したような爺様で、俺が”この世界”で受肉……いやそれとも赤ん坊にまで戻ったから生まれ変わりか?をして物心ついた(記憶が上手く復元された)ときには爺さんの家には入れ替わり立ち代りで女性、それも美女/美少女達が入り浸っていた。

それは爺ちゃんが死んだ日まで同じだった。

 

(アレも一種のハーレムだったんだろうな~)

 

おかげで俺は『俺の母親役』が誰だったのか未だ判然としない。

妙な言い方をしてるように聞こえるかもしれないけど、爺ちゃんによると俺は捨て子だったらしい。

14年前のある冬の朝に爺ちゃんの家の前に毛布に包まれバスケットの中に入れられ、玄関先に置かれていたそうだ。

だから俺は両親を知らないし、正直言えば”前世の記憶”がある俺としては今更、両親がいないからと言って寂しいと感じることはなかった。

 

(両親が居ないのは、これで二度目だしな……)

 

むしろ風変わりだったけど、酔狂なことに縁もない俺を引き取り育ててくれたことには本当に感謝しているし……改めて言うと照れくさいけど、家族として慕っていたんだと思う。

それに極端に女癖が悪い爺ちゃんのせいで、比喩でなく日替わりで女性達がいる家だったから騒がしさは一入(ひとしお)だった。『女三人寄れば(かしま)しい』とはよく言ったものだけど、三人どころその二乗がいることも珍しくは無かった家だから、その賑やかさはお察しくださいというところ。

 

けど人間というのは恐ろしいもので、そんな爛れた環境もすぐ慣れるものだ。

むしろ慣れなかったのは、俺の教育方針etcetcを巡って時には流血沙汰になる、揃いも揃って変なとこで血の気の多い『母さん達&姉さん達』のキャットファイトとかだろうか?

 

そんな歪ではあったけどユニークな環境で育った俺は、気が付くと爺ちゃんや母さんズ&姉さんズに戦い方の手ほどきを受けていた。

 

『動物としてまず自分の身を守れなかったら生き抜くことはできやしねえ。それが出来るようになったら、次は雄として雌を守れるようにならねぇとな』

 

それが爺ちゃんの口癖だった気がする。

そして10歳のときに……

 

「俺は一応、剣の腕を認められて初めて通商隊(キャラバン)の護衛にデビューしたんだ」

 

 

 

***

 

 

 

迷宮(ここ)と比べて外の世界のモンスターは比較にならないほど弱い」

 

俺は苦笑を浮かべてアイズ・ヴァレンシュタインを見る。

 

「ならば最強の敵はなんだと思う?」

 

唐突な質問に彼女はきょとんとして、

 

「……わからないです」

 

もしかしたら俺が思うよりずっとこの娘は世間知らずなのかもしれない。

 

「人間だよ。広い意味で言うなら、この街で”冒険者”と称される全ての二足歩行して道具を使いこなし、良くも悪くも知恵の回るモンスター以外の生物さ」

 

そう彼ら/彼女ははとても手強かった。

 

「単体の力はモンスターには及ばないのかもしれない。だけど徒党を組み、奸智に長け、目的の為には手段を選ばず搦め手も汚い手も良心の呵責なく平然と使ってくる人間が一番怖い。知恵があるってことは、その分だけ残酷にも冷酷にもなれるって意味だしね」

 

そう。俺は最初のキャラバンの護衛任務……積荷を狙う盗賊たちとの戦いでその一端を垣間見ることになった。

積荷を奪われればキャラバンが食い詰める。積荷を奪わなくては盗賊が飢える。

当たり前のこの情況で、一切の綺麗ごとは通じなかった。

俺はその意味も理解できないままにいまよりずっと小さい剣を振るい、

 

「俺は初めて人を斬り殺した」

 

 

 

正確に言うなら”串刺しにした”だけどさ。

子供の力で斬るのは流石に難しい。

俺がやったのはプレートメイルの継ぎ目を狙って短剣で貫く”鎧徹(アーマーピアース)”って技で、刃が刺さった場所がたまたま急所の一つだったから呆気ないくらいに簡単に”殺せ”た。

 

「爺ちゃんは試したかったのかもしれないな……俺が殺して罪の重さに耐えかね自滅する人間か、例え他人を殺しても潰れず正気を保ち生き延びる人間かを、さ」

 

幸か不幸か俺は生き延びるタイプの人間だったらしい。

かつてゲームの中では自衛でPKをやったことがないわけじゃないけど、俺は殺したことを現実として認識しても、それなりの苦悩や葛藤はあったけど大して変わらずにいられた。

自分は自分だと、見失わずにいられた。

 

 

 

***

 

 

 

「それからは戦いが半ば日常化したかな? キャラバンの護衛だけじゃなくて自警団やモンスター・ハント、盗賊団の討伐……割と見境なく戦いに参加したよ」

 

外での殺伐とした戦いと家に帰れば待っている優しい女性達……命がけの緊張とスリル、そして安らぎと弛緩。そのメリハリとコントラストは、確かに平穏の在り難さを感じさせ、それがいかに得難いかを嫌が上でも思い知る。

なるほど。確かに爺ちゃんの言うことにも一理あると思ったものだ。

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン……それが俺だ。確かに冒険者になってから半月、Lv.で言うなら駆け出しの底辺かもしれないけどさ、」

 

でも、俺はそれだけじゃない。

”前の世界”でも”この世界でも”たしかに生きている。

生きているからこそ積み重ねてきたものがある。

 

「だが戦うことと斬ること……そんなモンにはそれなりに慣れてる。それが俺、キリト・ノワールさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。

アイズさんが原作と明らかに違う反応をしていた理由は、どうやらミノタウロスと対峙していたのが『白いけど可愛い兎さん』ではなく、『もっと獰猛な別の何か』だということを優れた武人である彼女が肌で感じたからだと思われます(^^

次回はアイズさん視点のモノローグでも書こうかな?

亀展開もいよいよ磨きがかかった感はありますが、次回も楽しみにしていただければ幸いです。
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