ダンジョンにキリトが潜ってるのは間違っているだろうか 作:ボストーク
明日も仕事だというのに深夜アップをしているおバカなボストークです(^^
今回は前回の続きのアイズ視点とキリト視点が微妙に切り替わったりします。
そして副題は……何か別作品の匂いが(笑)
ちなみにこの『ダンキリ』のアイズは、鋭いのはもちろん賢い悪寒が……
それはある意味、予定調和の風景だったのかもしれない。
あるいは【
私の望む風景がそこにあった。
『少女と見紛う華奢な少年が中層最強クラスのモンスター、ミノタウロスの首を一刀の下に刎ねる』、そんな
***
「馬鹿にしないでください」
気が付いたら、私はその漆黒の少年にそう口走っていた。
(どうしてこうなったんだろう……?)
でも、私は悪くないと思う。
ミノタウロスを倒す腕を認めたのに、
『俺の腕じゃないさ。貴女が投げてくれたこの”漆黒の長剣”のおかげだ』
『俺の長剣じゃミノタウロスに手傷は負わせても致命傷を食らわせることはできなかった。じゃなければ二つ名もない、所詮Lv.1の駆け出し冒険者風情にミノタウロスなんて大物が倒せるわけはない』
だって。
あんまり甘く見ないで欲しい。
「ミノタウロスは、武器が良くてもただの”駆け出し冒険者風情”に倒せるようなモンスターじゃない」
武器がどれほど良くても『武器単体』ではモンスターは倒せない。
人あっての武器で、武器あっての人じゃない。
武器は使い手が居て始めて武器になりうる。
ましてや強力な武器になればなるほど固有の癖が強いのが普通で、一級品装備に数えられる武器ともなれば、その性能を引き出すのに人を選ぶ。
「それに私は貴方の戦いをみてました。確かに貴方の剣はまだ荒削りで荒々しいかもしれません……だけど、貴方の振るった剣は間違いなく【ミノタウロスを一撃で屠れる】に相応しい鋭さと技術を持っていました」
だから惹かれた。
だから目が離せなかった。
もっと知りたいと思った。
もっとこの不思議な……見た目と強さがとても”アンバランス”なこの人を。
「貴方は一体、何者ですか?」
***
「アイズ・ヴァレンシュタイン……それが俺だ。確かに冒険者になってから半月、Lv.で言うなら駆け出しの底辺かもしれないけどさ、だが戦うことと斬ることにはなれてる。それが俺、”キリト・ノワール”さ」
彼の生い立ちはわかった。
正直に言えば、私と大きな差はないと思った。
でもきっと、私が気付かないだけでどこかが大きく食い違っている。
だからその食い違いが……
「キリト、だから貴方は強いの?」
きっと私との差だろう。
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いや、何の冗談だよ?
口調が唐突に切り替わったのはいいとしても……
アイズ・ヴァレンシュタインは俺に『キリト、だから貴方は強いの?』と聞いてきた。
正直、俺は返答に詰まる。
最初は皮肉か嫌味かと思ったが、どうもそういう訳ではないらしい。
「別に強くはないさ。アイズ・ヴァレンシュタイン、君を含めて俺より強いやつはごまんと居る。何しろ君は俺の目標の一人だ」
本人を目の前にして言う台詞じゃないかもしれないけど、せっかくの機会だしここは宣言したほうがいいかもしれないな。
「納得した。なら私はキリトを目標にする。これでおあいこ」
「だからちょっと待ていっ」
「なに?」
だからなんでそこできょとんとする?
小首をかしげるその仕草が、小動物チックで可愛いと感じた俺は負けたのだろうか?
「だからどうしてそうなる。俺は君が目標にする物なんか何一つもっちゃいない」
「まず一つ」
彼女は何を思ったか人差し指を立て、
「”君”じゃなくて”アイズ”。私がキリトと呼んでるのにキリトが私の名前を呼ばないのは不公平」
いや、俺も名前を呼んでくれと頼んだ覚えもなければ、名前を呼んで良いと言った覚えもないんだけど。
別に嫌じゃないし、断る理由もないけどさ。
「わかった。じゃあ”アイズ”、改めて聞くけどLv.5の一級冒険者のアイズを俺が目標にするのは当たり前だけど、半月前に冒険者になったばかりの俺をアイズが目標にする理由はないだろ?」
『暖簾に腕押し』と言うか『糠に釘』と言うか……さっきから会話が微妙に噛みあってない気がするのはなんでだろう……
というかとらえどころの無いアイズの会話に翻弄されてる気さえする。
(こういう手合いは下手に反発しないほうが吉だな。余計に話がややこしくなる……)
名前を呼ぶことでアイズが満足するならそれでいい。
「理由ならある。キリトは強い。私は強くなりたい」
「ミノタウロスを倒したことを言ってるなら、繰り返すが俺の腕じゃなくてどう考えてもゴブニュ・ファミリア謹製の長剣……【
***
「キリトは思い違いをしている」
不意にアイズが視線を鋭くした。
「確かに【エリュシオン】の性能は凄いと思う。少なくてもただ”
あの感触からすれば、そう言われるくらいの性能はあるだろうな。
「でも同時に武器に限らず一級装備は癖が強い。それを扱うには相性の壁があるし、性能を引き出そうとすればそれに相応しい腕前がいる」
いや、確かにその通りだけどさ。
「キリト……その剣を使ったとき、どう”感じ”た?」
「ひどく馴染むな。初めて握った時からそう思ったけど、振るうたびにオーダーメイドみたいに吸い付くように益々馴染んだよ」
俺は正直に答えた。
「そう」
得心いったと言いたげにアイズは頷き、
「振るってみて重いと感じた?」
「いいや。むしろ羽根のように軽いって印象を受けた……というか、そういう効果を付与された剣なんだろ?」
だけど、予想に反してアイズは首を横に振った。
「私が振るったとき、そんな付与効果は感じられなかった」
えっ……?
「確かに【エリュシオン】は様々な隠し機能やステータスがありそうな強力な剣だし、それがなくても威力のあるいい剣だと思う。ただ”魔剣(魔法を射出できる剣)”としての機能はないみたいだけど」
え~と……アイズは何を言いたいのだろうか?
「でも私が振るっても、手に吸い付くような感触も無ければ手に馴染む感覚も無かった。もちろん、羽根のように軽いなんて感じなかった。私の感想は『エリュシオンは普通の剣より重くて強力な剣』って当たり前のもの」
何かこの続きは聞かないほうがいいような気がしてきたけど、アイズは口を止める気はないようだ。
「結論は二つ」
さっきの人差し指に代えて、今度はピース・サインを見せ付けるようにしてのたもうた。
「一つはキリトは【エリュシオン】と相性がいい」
台詞と同時にアイズは中指を曲げて、
「もう一つはキリトは【エリュシオン】の”本来の力”を引き出すだけの実力がある……どうかな?」
立てたままの人差し指を俺に向けた。
皆様、ご愛読ありがとうございました。
妙に長くなってしまっている『キリトとアイズの邂逅編』ですが、お楽しみいただけたでしょうか?(^^
もはや亀展開は『ダンキリ』のトレードマークのデフォになりつつあるような気がしますが、最後までお付き合いしていただければ幸いです。
ではまた次回お会いできることを願いつつ。
ご意見ご感想お待ちしております。