Fate/overlord ~雨生龍之介は死と出会えたようです~   作:bodon

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*感想欄にて*
制限とか何かしらについては次話でお楽しみに!(説明するとは言っていない)


逃走

 部屋を覆う死の気配。

 絶望のオーラとも取れる強烈な死。

 龍之介は今それを肌で感じ、今までの行為が陳腐なものだと感じた。

 拘束されていた少年は、とっくに気配(オーラ)に充てられて死んでいる。

 龍之介にとって幸いだったのが、そう言った死を探求し続けて、人とは違う感性を磨いた事により耐性が出来上がっていたことだ。

 もし龍之介が普通の感性を持っていたなら、アインズが現れた瞬間即死していただろう。

 死を元々受け入れていたことにより、そう言った精神的即死耐性を皮肉なことに持っていたのだ。

 

 「ううう…………ああああああ!!!」

 

 (えっちょ!!急に何か泣き出したんだけどこの子!!)

 

 雨生龍之介は歓喜のあまり、決壊したダムのように、濁流となって涙を流していた。

 こんな、こんなことがあるのだろうか!!!偶然見つけた本に導かれるまま、たまたま見かけた家族を惨殺して、出てきたのは正に求めて止まなかった死!!

 うれしくないはずがない。歓喜に叫ばないはずがない。雨生龍之介は間違いなくこの瞬間、世界の誰よりも幸せであった。

 

 (えっちょ……え!?まってまってまっ━━━あっ沈静化した)

 

 当の本人、アインズ・ウール・ゴウンことモモンガは、急なことでテンパり、アンデット特有の精神効果無効化により落ち着きを取り戻しつつあった。

 

 (うん……聖杯の知識が来てるな……それにしてもまたか……)

 

 アインズ、元は鈴木悟という冴えない小卒サラリーマンという過酷な出時に、のめりにのめり込んでいたオンラインゲームのキャラのまま、全くの異世界にギルドごと転移してしまったことがある。都度これで二度目となるが……

 

 (聖杯から送られてきた知識では、どうやら私はかなりのイレギュラーというわけか…)

 

 聖杯戦争、どのような願いも叶えるという万能の願望器。興味は当然強いが、しかしそれを降臨させるには英霊といわれる人類でなければならない。

 アインズの場合、肉体は骨しかない、見たまんまアンデットではあるが、元の魂は変質したからと言って、鈴木悟という人間には変わりない、そこのところは聖杯的にもグレーだが許容の範囲内だったようだ。

 問題は英霊の座である。英霊はそもそも呼び出されるのは分霊のようなもので、本体はその座と呼ばれる人類の守護者のような立ち位置だ。人類全体の願い、所謂概念の集合体であり、その力は人間では到底叶わない領域らしい。故に呼び出される場所に、その英霊のイメージが強ければ強いほど、その座に居る本体と近くなりより強い英霊、サーヴァントとして顕現する。

 アインズの本体は今もナザリック地下大墳墓に居る。”今は全てが片付き、ナザリックで友たちの帰還を待っている身”、英霊としてのシステムが正しいならアインズは本来居るべき存在ではないのだが…。

 次第に送られてくる聖杯の知識には以下のとうり。

 

 1、ここは鈴木悟のいた世界から数百年前の世界

 2、異世界側の世界征服を行い、莫大な信仰を得たことによる神霊化

 3、それに伴い聖杯がナザリックを英霊の座、またはそれ以上に順受ると判断

 4、平行世界などからも呼べるからいいんじゃね、と安定の例外大好きガバガバ判定

 5、反則まがいだが召喚に成功

 6、いまここ

 

 (………はあ!?)

 

 まず一番に驚いたことが、ここが彼の故郷で、しかもかなり昔、2138年に異世界に転移した。現在1990年だとすれば、148年ものタイムスリップだといえよう。

 

 (えーうっそ、俺の故郷昔に魔術なんて当たの!すっごいビックリなんだけど!!)

 

 しかし、そう考えると辻褄が合う。

 アインズは長年、どうやって異世界に来たのか結局わからずじまいであった。

 しかし、聖杯の知識が本当だとすれば、未来の鈴木悟は何か神秘的な力が働き、異世界に転移したと考えるべきか?それ以外の方法があったとしても、やはり魔術といった、超常的神秘でもなければ、異世界転移など出来るはずもない。アインズはそう結論付けた。

 他にも、2138年には技術停滞などと叫ばれていたが、それが進歩を嫌う魔術師の妨害によるもののせいなのかどうか知らないが、一応は筋が通る。

 

 (ふう……精神抑制はほんと便利だ)

 

 余りにもショッキングすぎてビビるアインズではあるが、恒例の精神抑制で目の前のマスターらしき人物に醜態をさらす、といったことはなかった。

 

 (……てかこの子いつまで泣いてんの!?周りも拷問部屋みたいだし…)

 

 今更気づく赤く染まったダイニングに、子供のように大泣きする大人。

 控えめに見てすっごい絵面である。

 

 (流石に話をしないと、このままじゃ聖杯戦争を勝ち抜く作戦も練れないし)

 

 「……マスターよ」

 

 「う……あ」

 

 不意に声をかけられ、龍之介は戸惑った声を発す。

 一体何と言えばいい、いやそれよりこの御方に自分の醜態を見せていたことが恥ずかしい。

 だが抑えきれなかった。龍之介自身、無気力な人生ではあったがここまで心揺さぶられたことなど一度もなかったのだから。

 

 「……そろそろ話をしてもいいかね?」

 

 「……あ、はい」

 

 「よろしい」

 

 アインズは一つ頷く。

 

 「さて……もう一度確認しよう。君が私のマスターだね?」

 

 「……?」

 

 「おいまて」

 

 つい口が出てしまった。言われた本人はアインズ以上に状況を飲み込めていない様子……つまり、

 

 「……確認するが聖杯戦争について知っているかね?」

 

 「え?何ですかそれ?」

 

 (やっちまったーーー!!)

 

 まさかの偶発的召喚。いやそもそもアインズ自身そんな正規の手順を踏んだ召喚なんかじゃ呼べないような、正しくイレギュラーのような存在なのだ。ド素人の奇跡的なまでの偶然が呼んだ召喚と、今回は言えるだろう。

 

 (だがそれにしてもだ。俺はユグドラシルの魔法しか知らないんだぞ!!こっちの世界、もとい、俺の故郷の魔術なんて表の世界で育った俺が知るはずないし!!てか俺の故郷こんな人外魔窟だったのかよ!!聖杯の知識でさわり程度でも知ったがヤバすぎるだろ!!なんだよ死徒二十七祖って!!チートじゃん!!こっちの世界の英霊もやばいんじゃないの!?タブラさんの話もっと真剣に聞いとくべきだった!!あー情報ほしい!!せめてこっちの魔術がどんなものか知らなくちゃ対策立てられないっていうのに!!!いきなりど素人、てか魔術師でもない召喚士かよ!!くっどうすりゃ………ふう)

 

 「あの……どうしましたじゃなくて、どうされました?」

 

 「ん?いやなんでもない、そもそも私を呼べるのも偶然じゃなければ出来ないようなことだからなうん、そう思おう、うん」

 

 自分のことを棚に上げて人外魔窟と称する魔王は、ひとしお混乱した後また精神抑制…今回何度使用されることやら。

 

 「……とりあえず私の方から説明するが、いいかね?」

 

 「えっと……あの……その……」

 

 「?」

 

 龍之介はもじもじと、腫れ上がった瞼を下げ、とても言いづらそうに、だが決心したかのように答える。

 

 「お、お、お、おれっれ」

 

 「落ち着け」

 

 「ふーふー」

 

 (あー俺も精神抑制なかったらこんな感じなんだろーなー)

 

 「ふー……あ、あの!!」

 

 「ん?」

 

 

 

 「………俺を傍に置いてください!!」

 

 

 

 「………うん?」

 

 

 

 *********

 

 

 

 「つまり君は”死という物”を知りたくて、この現場のような行為を何度も行っていると?」

 

 「は、はい光栄です!!」

 

 (光栄でもなんでもないんだけどなー)

 

 先ほど龍之介から説明を受け、なぜ自分はアインズの元に居たいかを、熱狂的、それも超がつくほどのロックスターにでもあったかのようにテンパりながら喋るファンのように、これまで自分が歩んできた人生観など含め、現状の儀式殺人に至るまで、テンパりながらだが事細かに説明を受けた。

 

 (なるほど……マスターの死の探求心と、私の”死の支配者(オーバーロード)としての特性が、今回偶然かみ合い、このような結果になったとみるべきか…)

 

  アインズは納得し、同時に自分はほかのライバルたちとかなりの差を開けてしまっていると実感していた。

 

 (……ふむ、やはり情報が足りない。聖杯戦争を目指して準備してきたものなら、何かしら敵マスターの情報があると思ったが……今回は数合わせのマスターみたいだからな、仕方ない参加できただけよかったと考えよう)

 

 「あのそれで俺いや私は、神様のそばで死をもっと見たいのっです!!」

 

 「あーうん、わかった。そちらの事情は、だが神様というのはやめてもらう」

 

 「え?何故です。神様は神様じゃ…」

 

 「あーまあ向こうじゃ神みたいなもんだが…とにかくこちらからも説明する。いいなマスター?」

 

 「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 *アインズ様説明中*

 

 

 

 

 

 「っというわけで、聖杯戦争とは7騎のサーヴァントとの殺し合いの末、何でも願いが叶う聖杯が手に「すっげー!!」……うんまあすごいな」

 

 テンションダダ上がりの龍之介とは対照的に、アインズは心配になってくる。

 

 (……警察にも追われ、魔術も使えず、おまけにサイコパスな殺人鬼…いやここは他人事じゃないか)

 

 正直敵が未知数な中、このマスターでは勝機は少ないと思った。

 唯一の救いはアインズを崇拝していることでしかない。

 

 (最悪損切として別のマスターを探すのも一考か…)

 

 アインズは真剣にそう考える。

 無理もない話だ。彼にはどうしても叶えたい夢がある。

 その為には、どのような手段も厭わないつもりだ。

 世界を征服し、人の輝きにも触れ、世界の素晴らしさも理解した。

 

 (だからどうした)

 

 そう、だからどうしたのだ。

 至高帝とも呼ばれ、友の来る日を待ち望みながら。

 他の人間種のプレイヤーともいざこざを避けるため、異世界側にも目に余るほどの繁栄を与え、ナザリックを、アインズ・ウール・ゴウンを称えるようにし、正しく世界はアインズ・ウール・ゴウンこそ最高の物だと言えるほどにしたのだ。

 もちろん、百年周期に現れるプレイヤーとも会話し、プレイヤーの保護と銘打って監視を付けながら、アインズ・ウール・ゴウンは自分の知らないところで頑張り、とてもいい組織になったと思わせていった。それがダメなら闇に葬るが。

 そこから本当に長いときである。来る日も来る日もカレンダーにチェックを入れ、百年たったら世界中に張り巡らせた”目”を使い、プレイヤーと思しき者達と接触する。そんなことを繰り返しはや数百年。それまでの楽しみと言ったら配下の僕たちとの語らいや、ハムスケと一緒に送られてくる供物を、あれがいいこれがいいそれがいいと言いながら、芸術にも目が肥え、収集癖で骨董品なんかにも嵌りだしたりしていた。それが楽しくなかったとは言わない、寧ろ異世界に来る前、鈴木悟の頃より充実していた。それでも…

 

 (ああ……また会いたいものだ……)

 

 アインズの願いは変わらない。

 かつてのギルドメンバーとの再会。それは異世界に転移してから全く変わらずアインズの行動原理としていた。

 征服した世界も、いつでもメンバーが訪れていいように、たっち・みーの為に弱者にやさしく(少なくとも表面上は)、ブルー・プラネットの為にできる限り自然に手を付けず、ペロロンチーノに至っては、魔法でエロゲーは出来ないかと考えたものだ……まあ考えただけで出来るかどうかは分からないが。

 

 (だからこそ……だからこそ絶対このチャンスを逃さない!)

 

 ナザリックでの生活は不確かなものだった。来るか来ないかわからないそんな日々、だが今は違う、確実に世界級(ワールドアイテム)クラスの、ウロボロス・リングのような効果だが、与えられた知識ではこちらの方が汎用性が高い、つまりもう一度、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーと出会うことが出来るかもしれないということ。

 

 (最悪、もう一つの手段も考えられるが…まあそれはこっちの戦力を把握してから考えよう)

 

 アインズは更なる決心を固め、恐らく生半可な戦いではないが、それでも今までにない希望が転がり込んできたのだ。俄然やる気は出で来る。

 

 「くう~流石神様…じゃなかった。キャスター…様……なんか違うな~」

 

 「アインズでいい、どちらにしろ真名がバレタところで…ああいや、もしかしたら…」

 

 こちらの世界での魔術、呪術も含まれると何がアインズに効果を及ぼすかわからない現状、こちらの強みともいえる、まだ他陣営に情報が渡っていないというアドバンテージを捨てることはない。もし仮に、真名から様々な情報を抜き出す宝具やら魔術やらがあれば目も当てられないからだ。

 

 「……やはり情報収集が最優先か…異世界に来た時を思い出す」

 

 「あの~神様?」

 

 「ん?ああすまん、呼ぶときはやはりキャスターで頼む」

 

 「はいキャスター様!!」

 

 「…さんでいいぞ」

 

 びっしっと敬礼をする姿は本当に子供のように、今すぐにでもはしゃぎたくなるような子犬のような印象を、アインズは抱く。

 

 「しっかしほんとにすごいっすね~キャスター様っじゃなかったさん」

 

 「そりゃな、私も驚いたよ、まさか願望の万能機なんて、私の故郷にあったとはな」

 

 「違いますよ~そんなんじゃなくてですね~」

 

 「?」

 

 「世界征服なんて、ちょーーーーCOOOOOOOOOLじゃないっすか!!」

 

 「え?!なに、さっきから興奮してたのそこ!?」

 

 てっきりアインズは、聖杯戦争について興奮しているとばかり思っていた。

 しかし実際、龍之介自身聖杯なんてものには興味はない。それ以前に目の前の御方と出会えた時点で自身の夢の半分は叶ったも同然だ。残り半分はこの御方と共に居たいと思う、純粋な崇拝からくるものだ。

 アインズが龍之介がした身の上話のように、かなり掻い摘んでだが、これまでの自分の歩みと、自身が聖杯に託す思いを語った。社会人として相互の理解を深めるのは基本である。

 

 「ほんとにほんとにマジマジリスペクトつーか、マジすげーとしか言えないっすよキャスターさん!!」

 

 「お、おう」

 

 (こ、これがこの時代の若者なのか?このテンションはついていけないぞ?!)

 

 ただし相互の理解は実際深まるとは限らないが。

 

 「…う゛う゛ん、興奮するのは分かるがそこまでだぞマスター」

 

 「あ……すみませんキャスターさん、でも俺のマスターじゃなくて龍之介でいいんすよ?」

 

 「いや、何処から情報が漏れるかわからん、現状このままでいい、それより」

 

 アインズは向き直ると、その眼球の無い、変わりに赤い炎を宿す目で、龍之介を見る。

 見つめられた龍之介は、改めてアインズの美しさに目を奪われている。正しく死の芸術として。

 

 「…マスター、君の願いとスタンスは何かね?聖杯戦争を知らなかったとはいえ君は巻き込まれた、ならば最終的に私は聖杯を手にするつもりでいるが、君の願いや聖杯戦争に対するスタンスを聞いておかなくちゃ、お互いわからず作戦を立てられないだろ?何を許容し何が許せないか、それくらい聞かせてくれないか?私はさっき言った通りどのような手段も厭わないが、暫くは情報集で穴熊を決めるつもりだが?マスターの願いとスタンスは何だい?」

 

 「……え?俺っすか?」

 

 「そうだ、君以外に誰がいる?」

 

 アインズは語り掛けるように言っているが、実際ここでお互いのスタンス、たとえばアインズが『いのちはだいじに!』と言っているにもかかわらず龍之介は、『ガンガンいこうぜ!』と言った場合、アインズは本格的に損切を行うだろう、まあやるにしても代わりのマスターの目途が立ってからだが。

 

 「……俺はキャスターさんの言う通りにしますよ?」

 

 「ん?つまり暫く穴熊でいいと?」

 

 「はい!」

 

 (ふむ、第一段階はクリアか…)

 

 「では願いは何だい?」

 

 実際ここが難しい。

 聖杯には使用限度があり、貯まった魔力を使い奇跡を行使する。単純に使ったらなくなるのだ。

 ここで龍之介が聖杯のリソースを大幅に失う願いを持ち、尚且つそれを諦めなければ、龍之介はそこでアウトとなる。

 第一アインズの願いはもう一度友と出会うこと、時間跳躍や、出来れば本体の居るナザリックに、行きたい者達だけでも連れて行ってやりたいのだ。当然リソースは莫大だ。そんな大きな願い大抵他の願いとバッティングするが…。

 

 「……俺の願い」

 

 「そう、君の願いだ」

 

 「そんなのありませんよ?」

 

 「へ?」

 

 予想外だ。

 まさかないとこうまで完璧に言われるとは思いもしなかった。

 

 「ほ、本当か!?万能の願望器、どのような願いさえも叶うのだぞ!」

 

 「はい!だって俺の願い叶ってますもん!」

 

 「…あ」

 

 そういえばコイツは、死を知りたいが余り連続殺人なんてやってるやつだ。

 アインズを一目見たとき傍に居させてくれと頼む狂人だ。

 

 「え~とつまりマスターの願いは…」

 

 「俺の願いはあなたです!!神様!!あなたと出会えたことが俺の願いなんです!!」

 

 (……あ!フールーダかこいつ!!)

 

 自身のナザリックで、エルダーリッチになった弟子を思い出す。

 そういえば誰かに似てるなと思えば、正しくフールーダではないか。

 

 「あー……わかった。マスターよ、この聖杯戦争に勝ち残ったら、お前を我がナザリックの一因にする」

 

 「あ!!ありがとうございます!!!神様!!」

 

 へへーと、土下座姿勢で平伏する姿に、こっちでも死の支配者として疲れそうだと改めて痛感するアインズ。

 

 「いよ~し!!そうと決まれば雨生龍之介、微力ながら頑張ります!!拷問でもなんでも頑張ります!!」

 

 「お、おう、期待している」

 

 「はい!!

 

 (心配だ…)

 

 やっぱり情報収集と並列してマスター探しでもするか?と、龍之介の能力に不安しかないアインズ。

 例えどれだけ相性がよかろうと、アインズはユグドラシルの魔法しか使えない。

 こちら側、というより鈴木悟の元いた故郷の、それも1990年まで使われている魔術なんて使えないし、これから学んで技術を習得できるのかも謎だ。

 自身の魔法が、こちらじゃ魔術、一部魔法のようなものもあるが、それらに対しどれほどの対抗力があるのか見当もつかないのだから当たり前だ。

 

 (最悪、ユグドラシル魔法がこちらじゃ全くの役に立たない物だったとしたら…マジックキャスターの自分は絶望的だな…)

 

 「あのーキャスターさん?」

 

 「?どうした」

 

 「キャスターさんの願いって、お仲間ともう一度会いたいってやつですよね?」

 

 「そうだ、それがどうした」

 

 「てことはキャスターさんの仲間ってすごい方たちなんですよね!!」

 

 「!?そ、そうだぞ!!私の仲間たちはそれはもう━━」

 

 先ほどとは打って変わって上機嫌なアインズ、仲間を褒められるとテンションが上がるのは昔からのようだ。  ちょろい。

 

 「かー!!俺も会いたいなー!!」

 

 「……そんなに会いたいか?」

 

 「もちろんすよ!!キャスターさんの仲間なんて、どんなすごい方たちなんだろ、死とはまた別なのかな?あーわくわくするー!!」

 

 (……まあ暫くはコイツがマスターでいいか)

 

 ほんとチョロインである。

 

 「あ!そうだそうだ」

 

 龍之介は何か思い出したか、先ほどから黙している少年へと駆け寄る。

 

 「ごめんごめん坊や、すっかり忘れてたよ。今キャスターさんに……あれ」

 

 「…?どうした」

 

 「死んでる…。キャスターさんの為に残しておいた子が死んじゃってる…」

 

 「ええ…」

 

 そんな悲しそうに言われてもアインズは困るしかない。

 第一生きてても魔法実験にしか使わないから、彼の想像しているようなことはナザリックの者たちぐらいしかやらない。

 

 「あー別にそんあ顔をするなマスター、死体だけでも十分だから」

 

 「あ!そうなんですか!!俺てっきり生きたまま頭をバリバリ食べるのかと思いましたよ」

 

 「やらんよそんなこと」

 

 「ははは、でも不思議だな~いきなり死んじゃうなんて」

 

 「………あ」

 

 《絶望のオーラ》切り忘れてた。

 うっかり召喚された時の混乱で、絶望のオーラをランクⅢとは言え漏らしていたのだ。

 

 (あちゃー、すっかり忘れてた。なんかあの子には悪いことしたな~、それにしてもマスターは平気ということは、やっぱり耐性があるってことか?あっちじゃ奇人狂人問わず物理的に行けたけど…、こっちじゃやっぱり仕様が変わってるのか?)

 

 「……試してみるか」

 

 そうゆうと、アインズは指先を子供の死体に向ける。

 

 「《上位アンデット作成/暗闇の追跡者(ダークネス・ストーカー)》」

 

 直後、少年の内側からタールのようなものが包み込み、それが肉となって、見る見るうちに龍之介と同程度の身長になってゆく。

 姿かたちはまるでニンジャだ。しかし違う点上げろとすれば、その者の目に眼球はなく、腐乱した死体である。

 

 「はあ~すげ……」

 

 ため息しか零せない龍之介。

 圧倒的な死を、映画などではないどこまでも遠く、どこまでも近い死がそこにあり、感動で声にできないのだ。

 

 「さて、デスナイトはデカすぎるし情報収集向けじゃないからコイツにしたが……」

 

 (何故だ?日に数回アンデット作成は魔力の消費はないスキルに該当するはずだが…こちらの英霊になったせいか色々な面で弱体化してるのか?やはり異世界の英雄では知名度補正が痛いか……)

 

 もしもアインズが異世界で英霊として現れたのなら、それはもう反則チートの領域だ。誰も勝てないような、こちら側での神霊としての最上位の存在である。

 

 (後でいろいろ試さないとな…その前に)

 

 「そこの死体もダークネス・ストーカーにしておくか」

 

 これで計三体の上位アンデットが出来た。

 アンデットはまあ効果としては代償が増えた程度、そこまで気にする程ではないが、今のところ作成したアンデットのレベルが最低レベルの60なのが気になる、まあ素材にした物が悪かったのだろうと結論付けた。

 

 (ダークネス・ストーカーは戦闘向けじゃなく、斥候向きのスキル構成だから戦闘しないしこれでいいだろう)

 

 「ダークネス・ストーカーよ、戦闘はせず聖杯戦争に関する情報と、この世界の魔術に対する知識を集めろ、ただし絶対に見つかるな。見つかった場合すぐさま自害しろ。いいな」

 

 ダークネス・ストーカーは無言で頷くと、闇に溶けるようにその場から消えていった。

 

 「うわ~COOL」

 

 「さて…隠蔽しなくちゃな」

 

 龍之介の惨殺現場、ついでにこれを隠すのにも魔法を使ってみる。

 

 「《修復(リペア)》」

 

 アインズが指さした先の割れた花瓶は、巻き戻しの映像を見ているかのように、みるみるうち元に戻って行った。

 

 「ひゅー!すげー!!すごいぜキャスターさん!!」

 

 「この程度造作もない、しかし…うん、これもMP消費が多少上がった程度か…」

 

 「キャスターさんからなんか見えてくる、BとかCとかのステータスみたいな表記もやっぱキャスターさんの魔法っすか!なんかCCOLでいいっすね!!」

 

 「いやそれは違うがやっぱりユグドラシル魔法は制限がかかっているか、一々試さなくてはならんとは、宝具だって確認しなきゃ━━━━」

 

 「…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうだステータス確認すればいいんじゃん(今更)

 

 

 (すっかり忘れていたッ!!聖杯から知識が来ていたにも関わらず、最初にテンパって忘れていたッ!!!)

 

 「キャスターさん?」

 

 「ああ大丈夫だ!今から確認を━━」

 

 「なんか朝日出てきてます」

 

 「………」

 

 

 

 

 (時間かけ過ぎたーーーー!!!)

 

 「ええいとにかく隠蔽は私がしておく!!マスターは逃走経路の確認を!!」

 

 「らッらジャー!!」

 

 焦る焦る焦る。

 アインズは僕たちがここに居てくれたらとどれほど良かったかと思う。少なくともデミウルゴスなら、こんなことになる前に勝手に進めてくれただろう。

 

 「《修復《リペア》》!、《修復《リペア》》!!、《修復《リペア》》!!!、ああもうここは《消滅《デリート》》!!!うっわすっごいMP減った!!」

 

 何気なく使った第九位階魔法が思いのほか消費量が多くビビるアインズ。

 この世界の自分の立ち位置、しかし元は自分がいた過去の世界だとしても、自分が知らなかっただけで裏では恐ろしい月の姫など、死徒二十七祖の居る世界だ。正確に自分の力を確認するまで目立ちたくはない。

 異世界の時はもっと楽だったな~と、精神抑制の効果が利いて落ち着く、もとい現実逃避になっているが、現場はもう完璧に、凄惨な事件があった場所とは思えないくらい片付けれてた。

 

 「━━━ふうよし!後はマスターが」

 

 「逃走経路確認終わりましたー!!」

 

 「早いな!」

 

 「任せてくださいよ!俺って42人も殺してるのに、警察に一度も尻尾掴められて無いんですから」

 

 「まじか」

 

 龍之介の何気にすごいスキルを目の当たりにし、やっぱりこの世界の人間ヤバいんじゃ…いやでも元は俺の世界だし、いや待てもしかして、過去の俺の世界がヤバかったのか!?っと、どんどん故郷に対し危険意識のハードルをガン上げにするアインズ。

 

 「ととにかく脱出するぞ!!」

 

 「はい!!一生ついていきます!!」

 

 その後、首尾よく元凄惨な一家惨殺現場からの逃走に成功。

 翌日のニュースでは、一家全員が忽然と姿を消したとして、連続殺人犯との関連を調べるが依然行方不明、この事件は迷宮入りとなったのであった。

 

 

 

 

 

 

 「ところで拠点はどこだマスター?」

 

 「下水道ですキャスターさん!!」

 

 「マジか━━…」

 

 




はいという感じでgdgdにオワタ回でした。
アインズ様の鈴木悟の設定とか、型月世界の設定とかなんか無理やり感がありますがそこら辺はパラレルということで、どうか~どうか~ご容赦をお願いいたしまする~
まあ色々こじつけるのが型月だしいいかなって(おい)
実際無理矢理でもなんか繋がり持たせんと呼べる気がしないもの、仕方ないじゃない!!

結論、菌類が悪いQED

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