Fate/overlord ~雨生龍之介は死と出会えたようです~   作:bodon

6 / 9
そに2
*セイバー陣営加筆
*ライダー陣営加筆
*ライダー陣営ビデオ修正


波紋その2

 どこにでもあるビジネスホテルの一室。

 703号室の扉を一定のリズムで叩く。やつれた黒コートの男が居た。男が叩くのをやめると、何秒かしてからチェーンの隙間から、色白の端整な美人が覗き見る。

 確認し終えたのか、女が鍵を外し、男を部屋へ招き入れ誰もいないかを確認した後、扉を閉めた。

 

 「……装備品一式、全て到着しております」

 

 冷淡な、機械的な音質で、女は男に答える。

 そこの主はテロリズムにでもかられたのか、ワルサーWA2000とキャリコM950A、多数の爆発物にワイヤー、ナイフ。極めつけは大口径に改造された銃、トンプソン・コンテンダー等が置かれていた。

 そのような物騒極まりない代物を持っているのは誰か?それはセイバーのマスターにして、『魔術師殺し』と恐れられた人物。衛宮切嗣だ。

 片腕の相棒。久宇舞弥は切嗣に、機械的にセイバーの偽マスターとして冬木に来た、アイリスフィール・フォン・アインツベルンの動向について報告する。

 

 「マダム達も既に到着し、動き始めています。これで他のマスター達は、マダムをセイバーのマスターと思い込むことと……」

 

 「…わかった」

 

 「昨夜、遠坂邸で動きがありました。…記録した映像です」

 

 ブラウン管テレビには、軍でも使用するCCDカメラによって記録された映像が、ハッキリと、アサシンが倒される姿が映し出されていた。

 

 「……この展開、どう見る?」

 

 切嗣は、先ほどの映像に不信感を持ったのか、舞弥に意見を求める。

 

 「……出来過ぎのように思えます、アサシンの侵入から、遠坂のサーヴァントとの攻撃までのタイムラグが短すぎます。気配遮断スキルを持つアサシンを事前に察知できたとは思えませんし、侵入者があることを承知していたのではないかと、そう思っておりましたが……」

 

 「……が?」

 

 「こちらの映像をご覧下さい」

 

 舞弥は映像を切り替え、今度は朝の時間帯の映像を見せた。

 そこには遠坂邸で起きた。朝の襲撃の全貌が映し出される。

 

 「!……これは」

 

 切嗣が驚くのも無理はない。アーチャーの攻撃から煙が晴れると、そこに写るアサシンと思われる…いや、生きた屍(リビングデッド)は、遠坂邸が陰になっている右側から急に現れたのだ。

 それだけではない。アーチャーの次の攻撃、縄などと言った拘束系の武器を用いた攻撃を寸でのところで躱したのだ。現存する死霊術師で、此処までの異常な個体を作り上げる物など居る筈がない。

 切嗣の予想では、恐らく俊敏はAを行くと見る。気配遮断もアサシンのクラスであれば申し分ない。それが……

 

 「……自害か」

 

 「………」

 

 謎のリビングデッドは、アーチャーの拘束を逃れるためか、僅かに早く自分の首を跳ね飛ばし、砂となって消えてゆく。

 

 「一切の情報も渡さないつもりの様だったが……文明の利器に救われたな」

 

 あれ程の高位のリビングデット、もはや準サーヴァント級と見てもいいほどだ。それも躊躇いもせずに切り捨てるとは……相手マスターはよほど情報を重視する存在なのだろう。

 

 「CCDカメラで、24時間体制の監視を行なっていたのが幸いでした。恐らく機械を頼らない魔術師では、此処までの早朝の戦闘、まともに感知したものは少ないかと…」

 

 「全くだ…ん?」

 

 切嗣はテレビに映る。アーチャーの行動に注目する。

 

 「あれは……銅鏡か?」

 

 「はい、恐らくあれが、昨晩のアサシンと、早朝のリビングデッドを発見した宝具かと。あれの存在がアサシンの襲撃を予期した原因だと思われます」

 

 「……厄介だな」

 

 切嗣は生まれつきの暗殺者であった。師と仰いだ存在からも、お前は感情と指先を切り離すことが出来ると言われたほどだ。肉体と精神を完全に制御できる男にとって、陰から狙うそのスタイルは、このサーヴァントにとって、何ら意味をなさないと言われているようなものである。

 

 「映像は以上です。今回は昨晩のアサシンの襲撃から数時間後の早朝、明らかにアサシンの襲撃に合わせたものかと思われます。アサシンを倒した早朝の、遠坂陣営の気が緩んだ隙を突いた暗殺だったのでしょうが……、先ほど私が、アサシンの死が不自然だと思ったのと、このリビングデッドを嗾けた存在が同じ結論を持っていたのなら、あの瞬間こそ暗殺の絶好の機会だったと思ったのでしょう」

 

 「……しかし、実際は探知系宝具の効果によって、アサシンは敗退、結果このリビングデットも塵となったか……」

 

 切嗣と舞弥は、先ほどの映像から得られる情報を統合。そこから浮き出る疑問を切嗣は舞弥に投げかける。

 

 「…サーヴァント戦では、英霊の正体を秘匿するのが鉄則だ。何故遠坂は、昨夜のアサシン戦のみならず、此処まで数多の宝具を使えると、みすみすサーヴァントをさらす様な真似をした?そして今度のリビングデットでは、何故あそこまで迅速に対処しようとした?」

 

 昨夜の戦い。あれは正しく見てくださいといと言わんばかりであった。しかし今回の拘束系と思われる宝具か武器は、昨夜に比べれば数は多くない。いや、内包する神秘はこちらの方が大きいだろうか?ただ派手さで言えば、最初の一撃目の槍以外、パッとしない攻撃ばかりで、速攻で片を着けようとする様に見えた。

 

 「……早朝の襲撃以外は見せる意図があった……と言うことでしょうか?」

 

 「うん…恐らく朝の襲撃は、向こうにとって予想外だったのだろう。何故そうだったのかわからないが………、舞弥、アサシンのマスターはどうなった?」

 

 「昨夜の内に教会に避難し、監督役が保護下に置いた旨、告知されました。アサシンのマスターは言峰綺礼」

 

 「ん……」

 

 切嗣はその名に心当たりがあるのか、声音に緊張が走る。

 

 「……舞弥、冬木教会に使い魔を放っておけ」

 

 「良いのですか?教会の不可侵地帯にマスターが干渉するのは禁じられているはずですが…」

 

 舞弥は疑問の声を上げる。それも当然、教会は冬木の聖杯の降臨の為、中立の立場として、その監視及び、神秘が人目に触れないように調整を行う立場だ。それに対し肩入れをしようものなら、監督の立場として、一体どんなペナルティが与えられるのかわからない。

 切嗣にしても、アサシンの襲撃を予測できる宝具を持ったアーチャー、ただただ嫌な相手だが、それが今回アサシンの敗退が濃厚になったと、切嗣は思うのだが……

 

 (言峰綺礼……事前情報では元代行者、大成できる能力を持ちながらそれを溝に投げ捨てるような人生を歩んできた……この男は危険だ。ここで終わるような者ではない)

 

 「監督役の神父にばれないよう、ギリギリの距離をうろつかせておけばいい。問題はあのリビングデット……あれは一体だけかと思うか?」

 

 「いえ……あれほどの準サーヴァント級の存在が大軍でいるとは思えませんが、それでも複数体居る可能性は高いかと」

 

 暗殺に失敗し自害した。これが単に情報を少しでも漏らしたくない無いのだったらわかる。事実そうなのであろうが……

 

 「……それでも遠坂を襲撃するのはリスキー過ぎる」

 

 今回の暗殺が成功すると、相手は確信していたとしても、そうやすやすとあれほどの、サーヴァント級のリビングデッドを先兵として使うだろうか?切嗣がその立場ならきっと、実際にアサシンを打ち取ったアーチャーではなく、別のマスターを暗殺に仕向けただろう。その方が、映像に写った銅鏡のような存在があるかもしれないサーヴァントに、態々襲撃しなくとも、アサシンに対し手薄になっているのは他の陣営もそうなのだから、そこを狙えばいい話だ。

 

 (アサシンが未だ敗退では無く、このリビングデッドの主人がそれを見抜いていたとしよう……なぜ遠坂に?)

 

 アーチャーの宝具数もそうだが、謎のサーヴァント級のリビングデットを操る何者かも異常だ。

 今回の聖杯戦争、何かがおかしいと、数多の戦場を渡った切嗣は直観的に理解できるが、何故ここまで初日から派手に暴れている?

 

 (裏で何が起きている?……ん?)

 

 切嗣は先ほどの映像を巻き戻し、丁度リビングデッドが陰から浮かび上がるところで止める。

 

 「どうかされました?」

 

 「……舞弥、これをどう思う」

 

 「これ……とはこの屍ですか?」

 

 「そうだ」

 

 切嗣はリビングデッドのある個所に注目していた。それは…

 

 「こいつ……忍者に似ていないか?」

 

 「?……そう言われれば見えなくもないですが━━」

 

 生きる屍リビングデッド、その姿は真っ黒な頭巾を被り、額当ては何やら紋様が描かれている。衣装も忍び装束に見えなくもない。実際は似ても似つかない、ノリを張ったような、かなり角ばった全く出鱈目な姿だ。

 映像が鮮明でないのが残念だが。実際に忍が衣装に着替える時は滅多になく、大抵はその場に紛れるため大衆と同じ服を着ていた。これはその実際の忍びとは真っ向から違う。

 かなり分かり辛いが、何やら草鞋風のシューズのような、現代的な靴を履いているようにも見える。さらには腰辺りに星形の……手裏剣まであるではないか!これは映像をじっくり見なければ判らなかったから正確ではないが、決して普通でないことは分かった。

 

 「……なんですかコレ」

 

 舞弥もよくよく見ていくと、そのチグハグな像が浮き彫りとなって行く。

 これを直接見たギルガメッシュは、日本の隠密家業の衣装など、聖杯が一々知識として送るはずはないし、時臣はそもそも忍者とか余り知らなく、アサシンの一種としか認識していない。西洋かぶれここに極まりである。

 綺礼も日本の生まれだが、西洋圏の教会の人間だ。忍者の衣装など、想像でしか知らないのだ。

 故にこの時、この奇妙な存在に気づいたのはセイバー陣営のみである。その事実に切嗣たちはより大きな混乱となってゆく。

 

 「これじゃまるで、創作物に出てくる架空の忍者ではないですか!?」

 

 「ああ……僕もそう思うが……」

 

 (相手は創作の人物を作れるサーヴァント?シェイクスピアと言った文学史の英雄の可能性もあるのか…)

 

 切嗣の読みは遠からず当たっている。

 暗闇の追跡者ダークネス・ストーカーは元はユグドラシルと言う創作物のゲームが元だ。切嗣はサーヴァント自身が考えた存在を生み出せるのではと考えているが、アインズは決められたコマンドから選んで呼び出しているに過ぎない。

 

 「聖杯戦争はその術式から、東洋の英霊は呼び出せない。必然、このリビングデッドは西洋のサーヴァントから造られた……となると」

 

 (創作系……芸術の分野で功績を残したサーヴァント……ならクラスはキャスターか?)

 

 かなりいい線に迫ってきている切嗣だが、前提からして間違った思考に陥っている。

 そもそもアインズは異世界の英雄だ。真名当てクイズなる物が出されたら、問答無用で出題者に殴り掛かっても許されるレベルの答えだ。正解を当てられない切嗣を責めてはいけないし、寧ろここまで迫れたのは切嗣の洞察力の賜物だろう。

 

 「ふう……今夜は荒れそうだ」

 

 ポケットから出した、もう絶版の不味い煙草に火を着ける。

 切嗣の視線は紫煙から、これから行われる戦争の先を見据えていた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 「ライダーライダーライダーライぶふぅ!!」

 

 「うるさいぞ坊主、ビデオの音が聞こえんではないか」

 

 ウェイバー・ベルベットはベットの上。

 自身が召喚した英霊、イスカンダル王のデコピンにより撃沈。煙を出しながらうずくまっている。

 

 「っで?どうしたお前さん、今夜に備えて寝ていたはずであろう」

 

 「そ、そうなんだけどさ~」

 

 額を抑え、涙目で答えるウェイバーは、今自分の使い魔が得た情報をライダーに伝える。

 

 「い、今さっき、遠坂で戦闘があったみたいで」

 

 「ほう!アサシンの襲撃から立て続けにやられるとは…相当恨みでも買っていると見る……で」

 

 「え?」

 

 ほら続き、とライダーは催促するが、実はウェイバー、余りにもいきなりの戦闘で、終わった辺りからしか見ていなかったのである。

 

 「いや……実はあんまり見れなくて…」

 

 「ぶわっかもおおおおおん!!」

 

 「痛ぅわい!!」

 

 強烈なデコピンがウェイバーを襲う!!

 

 「お前さん何やっとんじゃ!」

 

 「っだ、だって遠坂でまた襲撃が、こんな朝早くから行くと思ってなくて…」

 

 「思ってなくともお前さんはマスター、余がどれだけ強くとも、それを扱う奴がへたっぴでは話にならん!!アサシンの時と言い全く……で?何か見んかったのか!?」

 

 「見たって……」

 

 ウェイバーの記憶では、丁度何者かが消える所からだ。

 その後は何か鏡のような物を出した後、投げるように閉まったところしか………

 

 「………ん?」

 

 あの鏡はなんだ?

 

 「……どうした坊主、何か思い出したか?」

 

 「いやそれが、あの金色のサーヴァント、何か鏡みたいなのを取り出したんだ」

 

 「鏡……」

 

 ライダーも自慢の髭を手で触り、考え込む。

 

 「多分……あれも宝具だと思うんだけど……」

 

 「なるほど…」

 

 「なにかわかった!?」

 

 ライダー合点がいったと言うふうに頷き、ウェイバーに自分の見立てを聴かせる。

 

 「なに、それは恐らく探知の鏡じゃろ、アサシンを倒した聞いたがこれで合点が言ったな!そ奴はそれでアサシンを見つけ出し、自慢の飛び道具で一気に倒したのだろう……しっかし増える剣の次は探知の鏡か~」

 

 厄介だの~っと、呑気に言いながら、またビデオを見ながらスナック菓子を食べ始める。

 何を呑気なとも思うが、これはライダーの自信の表れだろう。あれだけの強力な宝具を厄介の一言で片づけるのは、流石征服王の名を名乗るだけある。

 

 「お!!74式戦車の後継機の、この90式戦車とか言うのは中々、これから配備される予定なのか……おお!!水陸両用なるものまであるのか!!」

 

 「………」

 

 ライダーの意見にウェイバーは考える。

 確かにあれは何らかを見つけ出す鏡なのだろう……

 

 (でもあのアーチャー、最後になんであんな風に……諦めた感じでいたんだ?探知の鏡を使ったんだよな?その後何度か試したようだったけど…、何も見つからなかったのか?)

 

 「そうだとしたら……」

 

 

 

 気配遮断スキルを持つアサシンですら見つけた宝具が、見つけられない存在があった?

 

 

 

 「………いやいやいやそんな馬鹿な」

 

 しかし、実際にあったとしたら……

 ウェイバーの脳裏にはそんな嫌な気配が纏わりつく。

 

 (……もしもそんな存在が居たら、誰にも見つけられるはずがないじゃないか)

 

 ウェイバーは布団を被り、また仮眠を取り始める。

 彼はこれから知るだろう。この聖杯戦争が、過去に類を見ない程、恐ろしき結末になるのを……

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 巨人が投じた一石は水面を大きく揺らす

 

 理解の外の怪物は神の杯すら飲み干すだろう

 

 世界の力すら超えた法則は新たなる秩序を生み出す

 

 これはその始まりの波に過ぎないのだ

 

 心せよ矮小なる者共よ

 

 彼の名は超越者(オーバーロード)

 

 彼を殺すのは英雄だ

 

 彼が殺すのも英雄だ

 

 故に彼に慢心は無い

 

 人の強さを知る怪物がどれほど恐ろしきことか

 

 その身をもって刻むがよい

 

 彼の名は死の支配者(オーバーロード)

 

 誰よりも臆病な怪物だ

 

 




はいと言うわけで、深夜テンションの最後の部分は見なかったことにしてください…
此処まで色々勘違いみんなしてきたが……一番いい線行ってんのどこだろ?
まあみんな出したし一家!……あれ?なんか忘れてるような?
感想お持ちしております!








バーサーカー「(;ω;)」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。